旅立ちの一歩
「…誰もいない」
ついさっきまでレンヤと村長がいた集合場所に一人の蜥蜴人がいた。
「まさか遅れたことに起こって帰ってしまったんじゃ…!」
どうしたらいいのか分からず困惑しているとあるものに目がいった。
「何かしらあの煙?」
煙を見て彼女は思った。もしかしたら村で火事が起こって村長とレンヤは火事の起きた場所に向かったのではないかと。すぐに彼女は煙が上がっている場所へ走って行った。
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火事は村の人々が消してくれ周りに火が広がらずに済んだ。そう、あくまで周りだ。俺の家は当然、近くに位置する飼育小屋と畑には火が移ってしまい燃え尽きてしまった。
そして俺はその事実に対しショックを受け立ち直れないでいた。
「もうやだ…どうすんのこれ…」
「バジル…落ち込む気持ちは分かるがいい加減立ち直ってくれぬか?今日中にはゲイルへ向かって欲しいのだ。」
恐らく無理を承知で村長は俺に言ったのだろう。だが今の俺には無意味だった。
「すいません…今いける気分じゃないんです…他の人に頼んでください…」
「お前いい加減に「いたーーー!!!」なんだ?」
俺の態度に腹を立てたレンヤさんが俺を叱ろうとしたが遠くから聞こえてくる大声でそれは遮られた。そして…
「グヘェッ!!」
横になっていた俺の顔面を思いっきり踏まれた。すぐに退けと言いたかったが頰を踏まれ口が動かず喋れない。
「レンヤさんひどいじゃないですか!門の前で集合って言ってたのにいないなんて!私すっごい不安だったんですよ!」
「あっああ…すまない。だが遅刻をしたお前にも非はあるんだぞ」
「うっ!それはすいませんでした…レンヤさんから直々の依頼なんでつい張り切ってしまい準備に手間取ってしまったんです。」
俺を踏んで気付かずそのまま話しているのに対しレンヤさんは若干引きながら受け答えをしていた。てか痛いんだけど。いつまで踏んでんのこの人?!
「依頼をしたのは儂なのだが…あぁ、リングリよお主の足元を確認してみよ」
ナイス村長!これで足を退けてもらえる!
「……は?」
その声はやけに低く冷たかった。
「アガァッ!」
ちょ、痛い痛い!なんでより強く踏んでくんの!!
「何かってに私の足に触れてるのよ?死にたいの?死にたいのね?死なせてあげるわよ…!」
「あぎゅあッ!!」
こいつ何勝手に決めてんだよ!足を掴んで退かそうにも力が馬鹿みたいに強くて全く動かなねえ!ヤベッ、潰れ…
「やめんかリングリ!」
「あたッ!」
あっぶねーー…レンヤさんが拳骨を食らわして
くれなかったら頭潰されるところだった…
「あー死ぬかと思った…」
解放され顔を動かせるようになったので顔を上げると、そこには灰色の髪を肩まで伸ばしていて、冒険者が着るような布の服を着て腰に剣を指している人に近い姿の女性のリザードマンがいた。
…スッゲー美人だな…
「リングリ、こいつはお前と一緒にゲイルへ向かう者なんだぞ。出発する前からそんな態度をとってどうする。」
「す、すいません…てっきり痴漢だと思って…」
いやあんたが急に俺を踏んできたんだからね。俺被害者だからね。ってあれ?
「レンヤさん今何て言いました?」
「ん?『そんな態度をとってどうする』と。」
「その前ですよ!」
「『一緒にゲイルへ向かう』か?」
まじかー…俺この女と一緒に行くのか。不安だ…
「そうだ。お前達自己紹介がまだだろ。一緒に行動をするんだからさっさと済ませておけ」
レンヤさんがそう言うと女のリザードマンは自分から喋り出した。
「私はリングリ。親愛なるレンヤさんの弟子よ。」
胸を張るような感じで言って彼女は行ってきた(胸無いけど)こいつがレンヤさんの弟子?なんかイメージと違う…
「何よ変な目で見てきて。気持ち悪い。」
グハッ!女子からの悪口は刺さる…!この人本当にレンヤさんの弟子かよ!?口悪すぎない?!
「だからそんな態度をとるなリングリ。全く、その困った性格は直せないのか」
「それは無理です。だって私はレンヤさん一筋ですし。私にとってレンヤさん以外は全員ゴミクズ当然なんですよ?」
まじで一緒に行きたくねー…下手したら殺されんじゃない俺。そう思っているとレンヤさんから「お前も早く済ませろ」と催促された。
「はぁ、俺はバジル。色々あってあんたとゲイルへ向かうことになりました。」
「へえ、あなたがあのバジルなの。」
あの?
「なんだよあのって?」
「あなた自分のことなのに知らないの?成績最下位、戦闘皆無、チャランポランのニートって村ではみんな知ってて当たり前よ?」
「何その最悪な風評被害!!」
いや成績と戦闘に関しては事実だけども、なんだよチャランポランのニートって!ちゃんと農業で働いてるわ!俺裏ではそんな風に言われてたの!?
「まあそういうなリングリ。こいつは私の命の恩人なんだぞ。」
「え!こいつがレンヤさんの命の恩人!?」
レンヤの言った台詞に彼女は凄く驚いていた。
しかし肝心の俺はレンヤさんの台詞に見に覚えがまったくなかった。
「俺助けましたっけ? 」
どちらかと言うと助けられるほうなんだが。
「俺はあの時ゾンビに受けた呪いで死ぬ筈だった。だがこいつがゾンビを倒したおかげで呪いは解けわたしはこうして生きているのだ」
「こいつがゾンビをね〜…」
なんで疑いの眼差しを向けてくるんだよ。偶然とは言え倒したのは事実なんだぞ。
「わかったわよ。ゾンビを倒したってことはそれなりの戦力になりそうだし。」
まだ疑ってはいるようだが多少は認めてくれたみたいだ。もしかしたら良いやつかも。
「ただし!私の足を引っ張っるんじゃないわよ!いい!?」
「…はーい」
やっぱり嫌なやつだよ…
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準備を済ませた(と言っても俺の荷物は全て焼けてしまったので手ぶらだが)俺たちは、村の門の前にいた。
「それじゃ村長、レンヤさん!行ってきます」
「あぁ、気をつけろよ」
「儂よりセンヤを呼ぶ方が元気なのは気のせいかの?」
「気のせいですよ村長。」
ごめんなさい村長嘘つきました。
この短時間でわかったことだが、リングリはレンヤさんのことを溺愛している。超がつくほどに。
付き合ってはいないんだよな二人は?あれだけ感情をオープンにしているリングリに対してレンヤさんは子供を相手にしてるように接してるし…
「…あーなるほど、理解したわ俺。」
例えるなら幼稚園の子供が先生に将来結婚してくださいって言ってるようなもんだ。子供は本気で結婚したがっても相手はそれを本気で受け止めないって感じのやつと正しく同じだ。しかしそう考えると気の毒だな彼女。
「何よ?『気の毒だな』って感じで見てきて」
「えっ!いや別に…」
こいつエスパーかよ!いや単に俺が顔に出やすいだけか?今度表情を隠す特訓でもしようかな。
「改めて確認するが。お主たちには今からゲイル王国へ行き救援を頼んでもらう。必要なのは食料に建築のための材料に人員だ。」
「わかってますよ村長。ちゃんと救援を呼んできますから」
「気をつけるんじゃぞ。お主は村の外へ出るのは初めてだ。面倒なことは起こさないでおくれよ」
「村長、俺が面倒ごとが嫌いなの知ってるでしょ?そんなこと起こしませんよ。」
…フラグじゃないからな。王国でトラブルとかまじでやだからな俺。
不安を持ちながら俺たちはゲイル王国へと向かった。
「そうだバジル道中で襲ってくる魔物はお前一人で倒すんだぞ」
「……はあ!?」
レンヤさんの放った言葉に俺は絶望した。
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キャラクターデータ
リングリ
肩まで伸びた紅色の髪
鱗の色も紅色
レンヤを心の底から溺愛している
胸はほぼ壁(本人にそれを言うと半殺しにされる)




