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襲撃

諸々の準備を終えて、アレリア達は検問所に向かった。

しかし、そこはやはり大陸の国境検問所という事もあって大いに混んでいた。


「うわあ、何時間待ち!?」

「ざっと見て、三時間くらいじゃない?交代で最後に市場を見に行こうか。国境付近は土産屋や他国の交易品なんかが多くて面白いよ」


この人たちは私が捕虜っての忘れてないかな


思えば、尋問から解放された時くらいから、敵視されているような感じはしなくなった。どちらかというと、協力者として保護されているような?


まあ、見せてくれるって言うなら見なくちゃね


最初はルイが列の留守番として残ってくれたので、ジーク、ラエル、そしてアレリアは人混みの中を進んでいった。しばらく歩くと途端に広場のような騒がしい場所に出る。


「うわあ、凄い!出店ってこんなに活気があるものなんだ!?あ、あれ!あれは何!?」

「おい、落ち着け。見てるこっちが恥ずかしいぞ」


ラエルに首根っこを掴まれるのを、ジークが見て笑う。


「ここら辺はアセノーの特産品だよ。海が近いからそこで取れるものを使った土産品が目立つでしょ」


貝殻などを使った色とりどりの装飾品から、あまり見たことない食べ物まであり、どれを見てもアレリアには新鮮だった。


「初めて見たけど、海って凄いんだね」

「海を見たことがない?帝国人でも隣国まで行けば海くらい見えるだろ。どんな田舎人だよ?知ってたか?初めて海視る奴は、まず頭を下げて三回拝まなきゃ海の魔物に襲われるんだぜ」

「こらこら、ラエル。本当に信じたら大変だからやめなさい。アレリア、嘘だからね」


アホな事を言いあっていると、交易品が並んでいる店のエリアにやってきた。

帝国に献上されるものはたまに見るが、平民が買うようなものを見るのは初めてだった。


「アセノーは商人の出入りが盛んなんだ…、けど帝国のものはあまりないね」


店の主人らしき人が、帝国のは仕入れてもあまり売れないからねと付け加える。やはりこの国で帝国人が嫌われているというのは事実のようだ。


「これくらいならあるんだけどね」


そう言って手渡されたのは、絵本だった。帝国人なら子供から大人まで知ってるような昔話だった。


「絵本?」

「動物が出てくるから子供には結構人気なんだけどね、まあ女王を好きになるように作られた本って言うか、旅人と動物達の絆の話だよ」


旅人は世界中を周りながらこの国にやってきた。

そして、どうしても旅人にこの国にいて欲しい三匹の獣があれこれ引き留める可愛らしいお話だ。

けれど終盤、旅人は病気になってしまい、黒豹は弱った旅人を守る為、そして鷹は薬を探す為に出て行った。そして白狐は最後まで旅人の側にいた。


「バッドエンドじゃねーか!物語ならハッピーで終わらせろよ!?」


ラエルの叫びに引きつった笑いを浮かべる。確かにそうだ。

これは旅人は女王、そして三匹の獣は三大貴族を模していると言われている。最後まで忠誠を誓う様を描きたかったのだろうか…?


絵本を閉じて店主に返す。せっかく国を出るのに帝国の思い出はいらないだろう。アレリアは全てを置いてきたつもりだ。


そして次は武器や防具が並ぶ場所に出た。国を出れば安全な街や国ばかりじゃないうえ、街道でも襲われる危険もある為、武器を買ったり護衛を雇ったりする人は多いそうだ。


平民向けだから、モノはそこまで立派じゃないけど


じっと見ては触っていると、ジークから話しかけられた。


「弓が欲しいの?狩りでもする?」

「あっ、ううん…」


騎士は剣、もしくは槍を武器として当然持っている。騎士の精神が強い程、メインの武器とは思われない。弓は貴族が狩りに使うくらいで、暗器と同じく暗殺者や冒険者が使う特殊武器扱いだった。ジークもラエルも剣を持っているが、やはり弓は狩りの道具としての認識が強いようだ。


弓は一撃での殺傷能力は低いし、前衛がいないと使えない為、特に西大陸では弓兵よりも魔法使いを使った方が利便がいいからかもしれない。


感慨に耽っていると、後ろから叫び声があがった。


「な、なに!?」


出店から火と煙があがっている。放火!?


「ジーク!」

「うわっ」


ラエルの叫び声と共に、ジークに物みたいに担がれた。


「うわわわっ」


すると今度はアレリアの近くをひゅんっと何かが通り過ぎた。その先を追うと、また煙があがった。


火矢?


また別方向から矢が飛んできたと思ったら、別の人間に当たりそのまま倒れてしまった。今度のは火矢ではない、多分毒矢だ。


もしかして、私が狙われてるの?


ぞっとしながら、ジークに担がれて建物の陰に隠れたが、また近くに矢が落ちてくる。多分隠れている場所が見えているようだ。


なんで?


「身に覚えは?」


やや低い声で聞いてくるジークに無言でかぶりを振る。


「そう。帝国は返して欲しいと言っていたけど、嘘だったのかな?それとも…それとは別に君を殺したい人間もいるって事かな」


そんな事言われてもわからない。帝国にいる間、命を狙われる事何てなかったからだ。


「…ラエルは?」

「彼は大丈夫。リアが出て行って関係ない民が傷つくのはむしろ迷惑だよ」


確かにその通りだと肩を落とした。


「もう帝国からの暗殺者がこんなに入り込んだのかな」


ジークたちに捕まってそんなに時間も経ってないのに用意周到過ぎる。一体誰が…?


「多分、帝国人ではないだろうね。彼らならもっと確実に最初の矢で殺してたんじゃないのかな。つまり、雇われの素人。ほら、あそことあそこ、矢を構えているのが見えるでしょ?プロはあんなマヌケに姿を見せない」


ただし剣じゃどうしても届かない距離な為、確保には時間がかかるだろう。市場は今もパニックで市民が逃げまどっている。

それを見ながら、アレリアは両手に力を込める。


「…ジーク。弓を下さい」

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