気付いたらってやつ~たくみの初めての恋~
9月1日、二学期初日の放課後。ひろし、クラスメイト2人と俺は、黒板の前で教卓を囲んで、初恋の話で盛り上がっている。これまでの流れからすると、次がひろしの番となる。
ひろしがゆいこを好きなのは言うまでもないが、素直にゆいこと答えるだろうか。ひろしのことだからなんとなく別の名前を言いそうな気がする。
「で、ひろしは?」
「いつも一緒に帰ってるあの幼馴染み?」
クラスメイトは、期待の眼差しをしながら聞くとひろしは答える。
「いや、そういうのじゃないから」
やっぱりね、と思いながら、俺は尋ねる。
「へー、じゃあ誰?」
「小5の時の教育実習生。」
そう来たか、と思っている間に2人は茶化し出す。
「ひろし、おっとなー。」
「やっぱマセてるな。」
質問責めにあったあと、ひろしは諦め顔で訴える。
「そろそろ次へ移ろって。」
「ラストはたくみだな。たくみも幼馴染みじゃないの?」
「俺の初恋はゆいこだよ。」
ひろしの顔をしっかりと捉えて宣言すると、ひろしはばつの悪そうな表情をして目を逸らした。
「いつから?」
「いつからだろう…気付いたらってやつ?」
そのあともクラスメイトからの質問にそつなく答えたつもりだが、頭の中に浮かんでいたのは、幼いゆいこの笑顔だった。所々に黄色のタンポポが咲いた芝生でゆいこと2人でいる。
「ゆいこ、手を出して。」
「手?こうでいいかな?」
差し出した手を取り、俺は摘んだタンポポを手首に巻いて取り付けた。そうするとゆいこは嬉しそうに
「ありがとう!」
と笑った顔で言った。
「そろそろ帰れー!」
担任の一声で、初恋告白大会はおしまいになり、片付けて昇降口に行く。下駄箱の横でゆいこが待っていた。
「ひろし、たくみ、おっそーい。」
「悪い、ゆいこ。」
と答えると、背後でクラスメイトがひろしをいじっている気配が伝わってくる。
ゆいこはきょとんとしながら、俺の後ろにいるひろしに声をかける。
「ひろし行くよ?」
俺を通り越して、ひろしの近くに駆け寄るゆいこは、ひろしの腕を取り、戻ってきた。そして、もう片方の手で俺の腕も掴んで、いつもの場所に収まった。でも腕は心なしかいつもより力強く握られているような気がした。
「ゆいこの初恋の相手は誰なんだろう。俺?ひろし?俺ら以外?いや、それとも初恋はまだとか。それもあり得る。」
ゆいこを横目に、そんなことを思っていた。




