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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第11節・落光
96/150

第6話

前回のあらすじ


気絶から目を覚ました光と久遠は自分達が謎のロボット部隊に助けられた事を知り、光平よりロボット部隊が二日後に来ると告げられる。

一方クロノシアスではジェネルがクロノギアスを発注したのがリーリスではないと知り、リーリスから心当たりのある存在について説明と注意を受けた。

「………………よし、打撲も完治し擦過傷も無くなっている。これなら大丈夫だ」

「ありがとうございます」


クロノギアス二機による襲撃で気絶し、フォトンガードナー基地で目を覚ましてから安静にする様に言われてから二日後。光は観月に怪我の診察を受けていた。

上半身を脱いで包帯を外した光の体には観月の言う通り打撲や擦過傷の傷跡は無くなり、元の傷一つ無い素肌へと回復している。

それを見た観月は完治したと宣言し、それを聞いた光は頭を下げながら椅子にかけていた肌着やカッターシャツを身に付け始め、彼の向かいに座る観月はカルテを捲りながら怪我の経過を報告した。


「二日前は全身に打撲と擦過傷があり、それが昨日には半分近く治り、そして今日には完治……P因子持ちがずば抜けているのは身体能力だけじゃなくて自己治癒力もか……いや、そういった体の働きも一種の身体能力と言えるのか……?」


カルテを捲りながら光の怪我の経過を見てぶつぶつと呟く観月に、カッターシャツを羽織り終えた光がおずおずと声をかける。


「あの……縁の様子はどうですか?俺達、安静にしておく様に言われて見舞いに行けてないので……」


見舞いに行けていなかった二日間の事を主治医の観月に光は問うと、観月はカルテを捲る手を止めて顔をカルテから光へと向けて首を小さく横に振る。


「三日前と変わらず、今も集中治療室で眠っている。それだけP波動に体を痛めつけられたという訳だな……」

「そう……ですか……」


縁がまだ目を覚ましていないと聞き、光は小さく肩を落とす。もしかしたら自分達が安静にしている間に、縁が目覚めているかもしれないという期待は、主治医である観月にキッパリと否定されてしまった。


「それよりも、君は早く動かなくていいのか?そろそろ時間の筈だが……」


観月はそう言うと自身の腕時計に目線を落とし、観月の言葉にはっとなった光は壁に掛けられた時計へと目を向ける。

掛けられた時計は今まさに午後五時三十分になろうとしており、光平に告げられた光達の代わりにクロノギアスを撃破した部隊の到着時刻である午後六時まであと三十分を切っていた。


「す、すみません!それと、ありがとうございます!」


時間が差し迫っているのに気が付いた光は慌てて椅子から立ち上がり、観月へと礼を告げると椅子の横にあるベッド上に置いてあったフォトンガードナーの制服の上着を手にして医務室から出て行く。

光が医務室から飛び出た瞬間、隣の部屋で光と同じ様に女性の医師から怪我の診察を受けていた久遠が出てくる。フォトンガードナーの制服に身を包んだ彼女は、カッターシャツ姿に上着を手に持つ光を見て溜め息をつき、呆れた口調で注意した。


「ボタンは留めてなくていいから、せめて羽織ってから出てこい」

「そう言ってらんねぇよ!あと三十分だぞ!?」


光へ説教する久遠を、それどころではないと一蹴した光は上着を羽織りながら早足で歩き始める。そんな彼を見て久遠は再び溜め息をつき、早足で光と並走する。


「そもそもお前は、何処に集合するのか分かっているのか?」

「あ」


久遠のその一言で光は固まり歩みを止める。突然の急ブレーキに久遠はつんのめりつつも、呆れた様子で光に言う。


「件の彼らがくるのは、隔離格納庫──フォトングラストの分離を行うための大規模な格納庫だ。ここからなら歩いて十分程で着く」

「十分って……まだ時間に余裕あるじゃねぇか……」

「まあ、時間に余裕を持って向かうのは当然の事だがな」


久遠は目的地とそこまでに掛かる時間を伝えると、早足ではないが光よりも先に歩き出す。場所と向かうのに掛かる時間を聞いて思わず脱力した光も、慌てて久遠へと追いつくと彼女の歩行速度に合わせて歩き始める。


「……さっき観月さんに縁の様子を聞いたよ」

「……どうだった?」

「まだ、目覚めないってさ」


医務室を出る前に観月から聞いた縁の状態を久遠へと告げると、久遠は僅かに肩を落とす。彼女も医務室で安静にする様に言われていた間、縁の事を気にかけており光と同じ様に目覚めているかもしれないと口にしていた。


「それだけ、P波動に蝕まれた体のダメージが大きいのだろうな……」

「そうだな……」


P因子を有しているが故の自己治癒力の高さを指摘されたばかりだというのに、それが及ばない程のダメージに光は背筋が震える。


「……俺とお前、どっちが乗る事になるんだろうな……」


そんなフォトンファイターに自分達のどちらかが乗る事になると言われて、光は小さな恐怖心からか思わずそんな事を呟く。

久遠は光から視線を逸らすと、小さく首を振りながら答えた。


「今の所は分からない……けれど、総合的な成績か、それとも機体との相性か、純粋に技量で選ばれるのだろうな」

「……そうだよな」


フォトンファイターのパイロットが未だに未定である事に光は内心安堵の息を零し、そんな自分に自己嫌悪しながら一言も話さなくなる。

光のそんな内心を察したのか久遠もそれ以降口を開かず、二人は無言で隔離のへとたどり着いた。


「久遠、光の両名、ただいま到着しました」

「お疲れ様、二人は私と博士の隣に並んでくれ」

「「了解」」


隔離格納庫へとたどり着いた久遠は先んじて整列していた光平に敬礼して到着した事を告げると、光平は頷いて自分と博士の隣に並ばせる。

前にシュリウスを初めとした国連の役員を出迎えた際もフォトンシリーズのパイロットとして最前列に居た二人は、光平の指示に頷き横へと並ぶ。そうして格納庫の壁に掛けられた時計が例の部隊の到着時刻の午後六時まで五分を切ると、格納庫横のシャッターに取り付けられたサイレンがけたたましく鳴り始めた。


「……来たか」


サイレンが鳴り響く中光平が小さく呟くと、シャッターが開いて行き隔離格納庫と湖底のハッチを繋ぐ通路が露になる。

通路からは湖で濡れた機体を乾かすドライヤーの吹く音と共に、何かが格納庫の方へと近付いてくる音も聞こえてくる。

正体不明の音はやがて巨大な何かの歩行音へと変わって行き、格納庫内からでもその姿が露になり、二日前に光達を救ったロボットがその姿を現した。

そのロボットは一機だけでは無く二機、三機と後に続いて格納庫へと入ってきて、最後に隊長機らしき角付きが入ってくるとサイレンが鳴り止みシャッターが閉まり始める。

十三機のロボットが隊長機を中心に左右均等に整列すると、胸部のコックピットハッチが開きパイロットがハッチに取り付けられたウィンチに足を掛けて降りてくる。最後に隊長機のパイロットが降りてくるとロボットのパイロット達は整列し、一斉に被っていたヘルメットを取り素顔を露にした。


「やはり、貴方でしたか」


光平は隊長の素顔を見て察していたと言いたげなリアクションを取るが、光と久遠の二人は揃って目を見開きかけるが場所が場所なため何とか踏ん張るが、内心では驚きを隠せない。何故ならロボット部隊の隊長、それは前に国連の役員として滝音コーポレーションへとやって来た、シュリウスだったのだから。


「先の戦闘では、彼らを守っていただき、ありがとうございます」

「我々の任務はクロノイド制圧軍の打倒だ。結果的にそうなっただけに過ぎない」


光平は早々とシュリウスに光達を助けてもらった事に礼を言うが、シュリウスはそれに任務の結果そうなっただけだと素っ気なく返す。それに合わせて光達を一瞥すると、何かに気付いた様に眉をピクンと跳ねさせる。


「……滝音光平、CT01のパイロットはどうした?」


光達の方を見たシュリウスは視線を光平へと戻し、この場に居ない縁について言及する。その言及に光平は穏和な雰囲気は崩さずに答える。


「ええ、彼は戦闘で重傷を負っておりまして、申し訳ありませんがこの場を欠席しております」

「先の戦闘、CT01は出ていなかった。その言い訳は通じんぞ」

「前の前の戦闘で負った負傷です。今回はクロノイド制圧軍襲撃のスパンが短くて、治癒する前に襲撃してきたのでやむを得ず、二人だけで立ち向かう事となったのです」


結果ああなってしまいましたがね、と言う光平に光達は肩身を狭くする。そんな光達を見てシュリウスは小さく鼻で笑うと、改めて光平に向かって口を開く。


「やはり突出した性能があるとはいえ、頭数を揃えられないそちらでは限度があったという訳だ。なら、既にお前達の出る幕はない」


見るがいい、と言ってシュリウスは背後のロボットへと振り返る。横から見えた彼の顔は何処か恍惚としており、見るからにあのロボット達へと心酔していた。


「CT01のデータと、お前達が今まで倒してきたクロノギアスのデータを元に建造された傑作機。ACアヴェンジング・クロノシアス01『レイ』だ」


シュリウスの言葉と共にフォトンガードナーの面々が彼らの乗ってきたロボット──レイを見上げる。


「動力にはCCTシリーズの光子バッテリーを発展させた新型の光子バッテリーを搭載し、総合的な出力はCT01には劣るもののフォトンリアクターなんて欠陥品を積んでない分P波動とやらの影響も無い。乗るパイロットを選ばない、万人受けの機体なのだよ」


PC波動の影響が無いロボットと言われ、光と久遠のレイを見る目が見開かれる。フォトンファイターはフォトンリアクターによる膨大なエネルギーにものを言わせた高性能機だが、肝心要のフォトンリアクターが原因で乗り手を選ぶ機体なのに対し、眼前のレイは出力はフォトンファイターに負けるともフォトンリアクターを積んでいない分、P波動そのものが発生せずにどんなパイロットでも操縦出来るという強みを持つ。

乗り手を選ばない機体故にこうして量産もされており、個々の戦闘力ではフォトンファイターに軍配が上がるが量産機としてフォーメーションを組んで戦うとなるとフォトンファイターを凌駕する可能性が出てくるという、数の強みを持つ機体だった。


「……それで?一体何を仰りたいのでしょうか?」


光平はシュリウスのレイの紹介を聞き流しながら、わざと惚けた態度でそう聞き返す。それを聞いたシュリウスは恍惚とした表情を納めると、光平に向かって改めてここに来た理由を説明し始める。


「AC01……レイの先行量産に伴い、今後一定期間の対クロノイド制圧軍迎撃を我々が担当する事となった」


フォトンガードナーに変わっての迎撃が告げられ、光の背後に整列するフォトンガードナーの職員達からざわめきが起きる。そんなざわめきを背にしながら、そこに含まれていた意図に光平は気付き口を開く。シュリウスの言葉、その意味は──


「つまり、我々はお役御免といった訳でしょうか?」

「ああ、CT01並びCCTシリーズによる戦闘行為、それらに対する禁止令が国連よりお前達に下された。それに並び、国連機関としてのフォトンガードナーは本日をもって解散となる」


フォトンガードナーの解体を意味していた。突然の組織の解体宣言に職員達が困惑の声をあげる中、シュリウスはざわめく職員達を一瞥して口を開く。


「そもそも元が一般企業が立ち上げた一組織が、ここまで権限を持つ事自体が異例だったのだ。それが、元の形に戻ったに過ぎない」

「……つまり、今後貴方が指揮する部隊がクロノイド制圧軍の相手をする以上、我々は首を突っ込むな……といった所でしょうか?」

「有り体に言えばそうなる。なお、現在使用しているこの施設は、国連より我々のものとする通達が届いている」


施設丸々の接収に光達や職員達がぎょっとした表情を浮かべるも、シュリウスは隣に立つパイロットの男へと目配りすると男は頷き、シュリウスの乗ってきたレイへと乗り込む。

少ししてウィンチで下りてきた男の手には一枚の書類が握られており、それをシュリウスが受け取ると光平へと差し出し、受け取った光平は書類へと目を通し始める。

話の流れからしてあの書類が施設の接収に関して記された書類だと光は確信し、書類を読む光平へと目を向けていると、光平は小さく溜め息をついて口を開いた。


「分かりました、これより撤収作業に入らせていただきます」


光平の口から語られたまさかの了承の言葉に博士や観月を除いた職員達がぎょっとした表情を浮かべ、対するシュリウスは満足げな表情を浮かべている。


「ただし、フォトンファイターを含めたフォトンシリーズは、全てこちらが持って行きます。あれは登録上我が社の資産なので」

「……いいだろう。戦闘行為が禁止されている以上、迂闊な事は出来ないだろうからな」

「ありがとうございます、それでは……」


しかしただでは譲らんと言いたげに続けた光平の言葉に、シュリウスは僅かに眉をひくつかせるもすぐに切って捨てる。光平は要求が通った事に一礼し、隔離格納庫より出て行き、その後を博士を初めとした他の職員が追いかける。

そんな皆の背を見送り一人佇む光へ、後に続かなかった事を訝しんだシュリウスが声をかけた。


「…………まだ何かあるのか?」

「あ……いえ、何でもありません……失礼しました」


自分しかフォトンガードナーのメンバーが残っていない事に気が付いた光は慌てて頭を下げると皆が向かっていった通路に向かって走り出す。

光が合流した際には全員エレベーターへと乗り込み上へのボタンを押そうとしており、光は紙一重でエレベーターに乗り込んだ。


「済みません……遅れました……」

「いいさ、こうして間に合った事だし」


ギリギリで飛び込んできた光がそう頭を下げると背後に居た光平は許し、全員を乗せたエレベーターは地上に向かって上がって行く。

その道中で、光は光平がシュリウスに向かって言った言葉を聞いて、ずっと気になっていた事を問いかけた。


「司令……本当にここを明け渡してよかったのですか?」

「ああ、問題は無い」


フォトンガードナーとして活動する拠点を奪われたというのにも関わらず顔色一つ変えない光平に光が首を傾げていると、光平は悪戯が成功した子供が浮かべる様な笑みを浮かべ、その理由を説明し始める。


「確かにここは明け渡すさ。でも、誰もここだけがフォトンガードナーの基地とは言ってないぞ?」

「あ……」


光平のその言葉を聞いて光ははっとした表情を浮かべる。前に行った光来島の様に土地を保有している滝音コーポレーションだ、ならば今居る本社ビル地下以外にも基地を作っていてもおかしくない。

光が理解した様な表情を浮かべたのを見て光平は頷くと、改めて話を続ける。


「流石にすぐに追い出すといった事はしないだろう。一週間掛けて引っ越しをするさ」


基地の引っ越しという何処か心を擽られる響きに、先程までの不安は何処へやらといった様子の表情を光は浮かべる。そんな光に笑みを向けつつ、光平は一言光へと口にした。


「光君、君は一週間来なくていい」

「え?」

「な?」


光平の言葉に光だけで無く久遠も困惑の声をあげると、ちょうどエレベーターが一階のロビーにたどり着き扉が開く。その瞬間光の体が何者かに押され、光はエレベーターの外へと押し出された。


「なっ!?ひか……」


突然押し出された光に久遠が驚きの声をあげるも、彼女の言葉を遮る様にエレベーターの扉が閉じて再び上へと上って行く。


「…………え?」


光はエレベーター前で何をされたのか今一つ呑み込む事が出来ず、困惑の声をあげる事しか出来なかった。


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