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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第11節・落光
95/150

第5話

前回のあらすじ


クロノイド制圧軍の襲撃に、主力であるフォトンファイターを欠いた状態で出撃した光達だが、新たに現れたクロノギアスにより一対一の戦いを強いられ打ち倒される。

止めを刺さんと迫りくるクロノギアスから二人を守ったのは、見たことの無いロボットの編隊だった。

「…………うぐっ……」


全身にじんわりと広がる鈍痛、それによって光は顔をしかめ意識が浮上する。痛む体に鞭打ちながら開けた瞼の先には、フォトンガードナー基地内医務室の天井が映った。


「医務室……?」


気絶から起きたばかりの回らない頭を、鈍痛で気が散る中光は必死に回し、何故自分がここで寝ているのかを思い出そうとする。

記憶に浮かぶのは二体のクロノギアス、強引に強いられる一対一、ジリ貧な状況から一転した窮地、そして突如として現れたロボット部隊──


「──っ!っ゛あ゛っ゛!!」


光がロボット部隊の事を思い出した瞬間意識が一気に覚醒し、勢いよく起き上がろうとしたが全身を鈍痛が包み込む。着ている服はパイロットスーツから病人服へと着替えさせられ、襟元からは包帯が体のあちこちに巻かれているのが目に入り、自分が思っていた以上に重症なのだと気付かされる。


「…………うっ……!」

「っ!く、久遠か……?」


痛みに悶える中隣のベッドから呻き声が聞こえ、光が横に顔を向けるとそこには自分と同じ様に病人服へと着替えさせられていた久遠が顔をしかめて呻き声をあげている。先程の光の行動が寝ている彼女の意識を覚醒させたのか、しかめた顔の瞼はピクピクしており、やがてゆっくりと開かれて、彼女の意識の覚醒を光へと告げた。


「ひ、光……?ここは……?」

「フォトンガードナー基地の医務室だ……」


意識を取り戻した久遠は顔を光の方へと向け、自分達が今何処に居るのかを問いかけてきて、光はそれに痛む体な鞭打って久遠の方へと全身を向けて説明する。


「……そうか……っ!」


自分達が何処に居るのか聞かされ、それが医務室であると聞かされて力が抜けたのか、僅かに表情を緩めるとすぐに顔に苦悶の色が浮かぶ。

光も体を包み込む鈍痛をこらえながら、自分達が意識を失う前の出来事を久遠へと問いかけた。


「久遠……覚えているか……?」

「……何をだ……?」

「俺達が、戦えなくなった後の事……」


光の言葉を聞いて久遠の動きがピタリと止まる。その反応を見て、彼女もあのロボット達を目にしたのだと確信した光は、更に言葉を続ける。


「あいつら……一体何だったんだろうな……」

「さぁな……ひとまず判っているのは、敵の敵という事だろうな……」


久遠の出した敵の敵という判断に、光は小さく頷く。確かに彼らはクロノギアスを討滅し、自分達を助けたであろう。けれどその意図に関して二人は全く知らず、その意図が解らない以上軽率に味方と判断する事は憚られた。

二人がその様な事を話していると、医務室の外からコツコツと靴が床を叩く音が聞こえ、何者かが医務室に近づいてくるのを感じる。その足音は医務室の扉前で足を止めると、徐に扉を開いて中へと入ってくる。


「二人共、目を覚ましたようだな」

「「司令っ……っ!」」


二人の様子を見にきたと思われる光平が声をかけると、二人は咄嗟に起き上がろうとして鈍痛に呻き声をあげる。それを見て光平は苦笑いを浮かべながら手で二人を制した。


「寝たままでいい、君達の体には全身に打撲や擦り傷があったんだから」


全身打撲に擦過傷、鈍痛の原因を知った二人は顔を歪めつつも小さく頷き甘んじて横になる。横になる事でだいぶ楽になった二人は、光平に自分達が気絶した後の事を問いかける。


「あの……」

「なんだい?」

「俺達が気絶した後……どうなりました……?」

「……君達が気絶した後、クロノギアスを撃破した部隊に君達を回収してもらい、すぐさま医務室に運ばれたんだ。フォトンランダーとファイターの二機は、今急ピッチで修理を行っている」


先の戦闘でフォトンランダーは近接型の攻撃を受けてダメージを負い、フォトングライダーは推進機がミサイルとパーティクルキャノンのエネルギーの誘爆で破壊されてしまっており、戦闘中の二機を見た光平達はそれこそ二人の死が脳裏に過る程追い詰められた。

だが、そんな彼らの胸の内を知らない光達は、別の事に意識が向けられていた。


「あの、あの時俺達を助けたロボット達について、何か知ってるのですか……?」

「少なくとも、手にしていた武器はフォトングラストの廉価版といった様子でした。もしかしたら、何処からかデータが……」


光はあのロボット達が何者なのかを問いかけ、久遠はロボット達の武装から、あれがフォトングラストの技術が下地に使われていると気付きデータ流出を危惧する。そんな二人を安心させる様に光平は笑みを浮かべると、二人の質問に一つずつ答える。


「ああ、私達はあのロボットが何者なのかを知っている。そして、確かにあのロボットにはフォトングラストのデータが使われているが、別にデータが流出している訳ではない。所属先の情報も私達は知っているからね」


ロボットの正体や使われている技術の由来を聞き、更にあのロボットが所属している場所の情報もあると言われ、二人は小さく安堵の息を漏らす。

そしてロボットの正体や所属を聞こうとしたのだが、疲弊が今になって襲ってきたのか二人の瞼がゆっくりと下がり意識が微睡み始める。


「二日後に彼らはここにくる事となっている。その時までに、体をしっかり治していてくれ」

「「了……解……」」


微睡む二人に光平は優しく微笑みかけ、二人に体を治すよう言うと医務室から出て行こうとする。二人はそれに小さく了承の返事をし、光平が医務室の扉を閉めて遠のいて行く足音を耳にすると、瞼が一気に重くなり微睡む眠気に身を任せ、意識を闇の中へと落としていった。







クロノーア皇帝の居城である界城クロノシアス、謁見の間より一礼して出てきたジェネルがクロノイド制圧軍基地に繋がる通路を靴音を鳴らし歩いて行く。その道中で、ジェネルは先程の謁見の間での出来事を思い返していた。


(皇帝陛下のあのご様子……一体何が……?)


平時であれば作戦の失敗を告げる際にクロノーア皇帝は天蓋越しにでも寿命を削られそうな圧を放つのだが、それが何故か今回は無く不思議に思っていた。それだけではない、作戦の失敗を告げたのにも関わらずクロノーア皇帝から告げられた言葉が未だに信じられなかった。


「……よい、下がれ」

「…………は?」

「下がれと言った、二度は言わん」


そう言うや苛立ちを露にしジェネルは慌てて敬礼し謁見の間を出て行ったのだが、あの苛立ちも作戦の失敗というよりかはジェネルが一度の命令で下がらかった事に対する苛立ちだと感じる。

何故作戦の失敗に対して苛立ちが無かったのか考えながら歩いていると、向かい側から歩いてくるリーリスとかち合い、リーリスはジェネルの顔を見て謁見の間から来たと見るや、ニヤリと笑みを浮かべて口を開いた。


「へぇ……?自分の作戦の失敗を自分から怒られに行くなんて、殊勝な心がけじゃないか」

「は?」


リーリスから言われた言葉を耳にして、ジェネルは思わず目を見開き足を止める。そんなジェネルの反応に、リーリスも訝しんで足を止めてジェネルの顔を覗き込む。


「あんた、先のクロノギアス二機を使ったご自慢の作戦の失敗を報告しに行ったんじゃないのかい?」

「いや待て、あれはお前の作戦では無いのか!?」


リーリスはクロノギアス二機を使った作戦がジェネル主導のものだと言い、全く身に覚えのない事だと首を振るとその作戦はリーリスが計画したものでは無いのかと問い詰める。

それを聞いたリーリスは大きく目を見開くと、不機嫌な表情を隠そうともせず鋭い口調でジェネルへと口を開く。


「ふざけんじゃないよ!あんたの作戦の失敗をあたしの責任にするな!」

「何だと!?無人機一式を用意しろという要望をシュタインに送っておいてしらばっくれるつもりか!?」

「はあ!?なんだいそりゃ!?あたしゃ初めて知ったよ!」


自分ではないと口にするリーリスにジェネルはシュタインの元へと届いた無人機一式の再生産の要望を告げるも、リーリスは初耳だと言いたげに目を見開いて逆に問いかけてくる。それを見た瞬間、ジェネルはリーリスが嘘を言っていないと気付いた。


「……本当の様だな……」

「だから言っただろう?……ってか、ずいぶんと簡単に信じるねぇ?」

「お前の場合、密かに用意していた戦力を暴かれるとむしろ暴かれた事をプラスに話すからな……」


無人機一式の用意なんて知らないと言い切った言葉が、ジェネルにリーリスを信じさせる。自身の性分が切っ掛けで信じられた事に複雑な表情を浮かべるも、リーリスは改めてジェネルへと問いかける。


「そういうあんたこそ、件の作戦の計画者じゃないよね?」

「違う。無人機一式に関しても、シュタインの元にタキオルドの確認を行いに行った際に知ったものだ。当のシュタインも、差出人の名前が無く、俺が要望を出していないと知るとお前が出したものだと思った様だがな」

「そうかい、その件については後で訂正しに行くとして……一体誰が……」


リーリスとジェネルは誰が自分達に内緒でシュタインにクロノギアス製造の依頼を出したのか考える。その最中にふとジェネルは先程の事を思い出す。


「まさか……」

「あん?」

「皇帝陛下は、最初から俺やリーリスが作戦を主導していないと知っていたのか……?」

「はあ?何でそこで皇帝陛下が出てくるんだい」


作戦の首謀者が何者なのかを考えている最中に、一挙一動が目立つ立場の存在が出てきたリーリスは呆れた表情でジェネルに問う。


「ああ、それはだな……」


そう言ってジェネルは先の謁見の間での出来事を話す。作戦の失敗を告げたのにも何のお咎めも無く、苛立ちすら浮かべていない何処か不気味な様子のクロノーア皇帝の態度。その事に関して説明すると、ジェネルと同様に作戦失敗の報告の度にクロノーア皇帝の圧を受けているリーリスは、何か考え込む様に顎に手を宛てる。


「皇帝陛下が知っていて、あたし達が知らない……ねぇ……」

「リーリス……?お前には何か心当たりがあるのか?」


諜報部を纏めるリーリスなら何か知っているのではないかとジェネルが問いかけると、しばらくの沈黙の後リーリスが小さく「まさか……」と呟く。


「っ!何か心当たりがあるのだな?」

「……………………『マーダーズ』」


リーリスの呟きを耳にしたジェネルが勢いよく詰め寄り問い詰めると、リーリスは長い沈黙の後に小さく、一言だけ口にする。


「……マーダーズ……だと?」

「あんたも聞いた事ないかい?皇帝陛下直々に動かせる秘匿された集団についてさ?」


リーリスの問いにジェネルは小さく頷く。独裁者としてクロノシアスに君臨するクロノーア皇帝には、クロノイド制圧軍の他にも自分の意思で自由に動かせる部隊を保持しているという、一部の権力者達も行っている私兵の保有に関する噂話だ。


「では……皇帝陛下の私兵こそが、そのマーダーズだと?」

「私兵、ね……そんな生温いものじゃないよ」


マーダーズをクロノーア皇帝お抱えの私兵の類いだと言うジェネルに対し、リーリスは冷や汗を浮かべて険しい表情で否定する。

リーリスのその様な反応を初めて目にしたジェネルは目を剥くが、リーリスはその事に気付かずに視線を逸らして説明し始めた。


「あいつらは皇帝陛下直々に見出だされて募られた存在なんだよ。表沙汰にならないヤバい案件に、あいつらは幾度となく関わっている……正直、こうあたし達が話している事すらかなり危険なんだよ……」

「身内すら含めた徹底的な秘匿か」


ジェネルの推測にリーリスは頷く。クロノーア皇帝の私兵となればそれなりに名が広まるだろうが、そういった話をジェネルは一つも聞いた事が無い。漏らした者が居ればメンバーから粛清を受けるという徹底的な秘匿、それがマーダーズの名前が噂程度にしかあがらない理由であった。


「あたしからあんたに言えるのはただ一つ、この件は深入りするんじゃないよ」


そうジェネルへ告げるとリーリスは踵を返して元来た道を引き返して行く。元々彼女が謁見の間へと行こうとしていたのは、ジェネルが主導したと思われる作戦の失敗を報告しに行くためだった。それがジェネルは全く関係無いとなると、向かう理由が無くなる。

去り行くリーリスの背中を見つめながら、ジェネルはポツリと小声で呟く。


「忠告、感謝する」


そう言うとジェネルも元々向かおうとしていたクロノイド制圧軍基地に向かい、再び歩を進め始めた。




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