第9話
前回のあらすじ
改修作業も終盤に差し掛かったその時、クロノドローンの襲撃か起きる。
再び縁が一人で相手取り殲滅するが、とうとうクロノギアスが襲撃して来た。
「危なっ!?」
振り下ろされる縁は爪を横に飛び退き回避すると、ミサイルを迎撃するために投げ捨てたパーティクルショットを転がりながら手にする。
「これでも!!」
効くかどうかは分からずとも牽制になればとそのままパーティクルショットを放つが、クロノギアスは片腕の盾でそれを受け止めると再びフォトンファイターへと向かって行く。
縁は少しでも歩みを遅くせんと後退しながらパーティクルショットを連射するが、クロノギアスはそれを意に介さず距離を詰めて来て、遂にビルを背負う形で追い詰められてしまう。
「っ!?しまっ──ぐあっ!!」
ビルに背中をぶつけた衝撃で意識が背後に向いた瞬間、距離を詰めていたクロノギアスの盾を構えている方とは反対の腕に殴られ、フォトンファイターが勢いよく横に吹き飛ばされる。
「ぐうっ……!!」
地面を転がり轍を刻みながら止まり、痛みで動作が緩慢とする縁が何とか立ち上がらそうとする先で、吹き飛ばされた際に落としたパーティクルショットが踏みつけられスクラップと化す。
(遠距離武器は効かない……格闘も防がれる……どうしたら……)
荒い息を吐きながら打開策を考える縁だが、今のままでは到底敵わないと冷静な部分が告げる。その声を耳にした縁はコックピット横の、防護ガラスで覆われたスイッチへと目を向ける。
(こうなったら……!!)
緊急時に使う様取り付けられたそれを目にし、縁は覚悟を決めて防護ガラスを開けようとする。その瞬間──
「諦めるな!!」
「まだやれるよなぁ!!」
「!!」
通信で基地に居る筈の二人の声が聞こえ、縁は手を止め思わず目を見開く。司令部からの通信では無い、別の発信源から送られた通信。その正体は──
「せっかくリニューアルしたんだ!!出番ちゃんと残しとけよ!!」
「ここからが本番だ、一気に行くぞ!!」
改修作業を終えたフォトンランダーとグライダー、その二機を駆る光と久遠が縁の救援に駆け付けた。
「二人共……!」
「お前は少し休んでろ、あいつは俺達が引き付けてやる!!」
片膝をつくフォトンファイターの横を通り過ぎる際に光はそう言い残し、一気にクロノギアスへと向かって行く。クロノギアスも向かって来るフォトンランダーを敵と認識し、迎撃せんと脚部のミサイルを撃ち放つ。
「その程度で、止まるかよ!!」
向かって来るミサイルを目にして光はそう啖呵を切ると、更にアクセルを踏み込む。
フォトンランダーのエンジンが唸りをあげ速度をあげると向かい来るミサイルを右へ左へとハンドリングでかわして行き、クロノギアスの真正面までたどり着く。
ミサイルを避けられ接近されたクロノギアスはミサイルポッドを閉じると、盾の裏より爪を展開し接近するフォトンランダー目掛けて振り下ろそうとする。
「っ!!危ない!!」
その光景を見た縁は光に向かい声をあげるが、光はアクセルを緩める気配無く突き進み、クロノギアスはフォトンランダー目掛けて爪を振り下ろした。
「掛かった!!」
振り下ろされる爪を目にして光は小さく笑みを浮かべると、車体を横に動かして爪を避ける。そしてそのまま真っ直ぐ行けばクロノギアスと正面衝突しそうな所をドリフトしてUターンを行う。
その最中にパーティクルミサイルのハッチを開き、至近にまで迫ったクロノギアスの上半身に片っ端からパーティクルミサイルを放ち、クロノギアスの上半身を爆炎が多い尽くす。
爆発の衝撃にクロノギアスは上半身を大きく仰け反らされ、フォトンランダーは衝撃を利用してクロノギアスの眼前から一気に離脱した。
「今だ久遠!!」
「ユニット、発射!!」
仰け反ったクロノギアスを見て好機だと確信した光は上空で待機する久遠へと叫ぶと、久遠はフォトングライダーをクロノギアスへと接近させ、機体下部より二つのミサイルを撃ち放つ。
放たれたミサイルはクロノギアスを挟み込む様に左右に飛び、それを認識したクロノギアスは命中せず脅威度も低いと認識すると迎撃せずに自身を攻撃したフォトンランダーへと歩みを進める。しかし、それこそが久遠の狙いだった。
「ワイヤー、展開!!」
久遠の掛け声と同時に左右を飛ぶミサイル間を繋ぐ様に光のロープが形成され、突如として出て来たそれをクロノギアスは反応し切れず拘束される。
これこそ合体を邪魔されない様に拘束するために作り上げられた新武装、パーティクルバインドだ。
「そう易々と抜け出せるとは思わない事だ」
パーティクルバインドに拘束されたクロノギアスの抵抗を見ながら久遠がそう呟くと、クロノギアスを拘束する光のロープがスパークしクロノギアスを痛め付ける。
それを確認した久遠は先に向かった光と同じ様に縁の元へと向かって行った。
「久遠、その武装は……?」
「前に意見を求められた際に、パーティクルロードで拘束するのはリスクが高いと言ってな。遠距離からでも拘束出来る武装を頼んでいたんだ」
「それよりも今がチャンスだ、合体するぞ!!」
光と久遠によって作り出された合体を行う好機、二人の活躍に縁は僅かに目を瞑ると、決意を新たに目を開き二人へと叫ぶ。
「よし……行こう!!超光合体!!」
縁の叫びと同時に光と久遠はコックピット両側の合体ボタンを力強く押し、合体シークエンスが開始される。
機首より生成させるパーティクルロード上を走るフォトンランダーにフォトンファイターが並走し、二機揃って跳躍すると空中でフォトンランダーはフォトングラストの下半身へと変形し、フォトンファイターは脚部を合体準備状態へと変形させて空中で合体、地面に勢いよく着地した。
再び走り出したフォトンファイターに今度はフォトングライダーが並び、フォトンファイターの跳躍に合わせてフォトングライダーも上昇する。
そのまま上空でフォトングライダーが背部に合体すると翼に取り付けられた推進機が肩へと合体し両腕となり、フォトングライダー中央部が胸部へと移動し胸部装甲となる。
最後に尾翼が変形し兜となるとフォトンファイターの頭部と合体しカメラアイが光を放った。
「超光機人!!」
迸るエネルギーを掌握する様に右拳を眼前で握り、スパークするエネルギーを解き放つ様に腕を振るう。
「フォトングラスト!!!!」
縁の叫びと同時に迸るエネルギーが機体を輝かせ、フォトングラストへの合体が完了した事を見せつける。
合体を完了したからか、はたまた耐久限界を越えたからかクロノギアスを拘束するパーティクルバインドが解かれ、解放されたクロノギアスがフォトングラストを目にして咆哮をあげる。そんなクロノギアスの正面に上空からスラスターを吹かして降下して来たフォトングラストは地に両足をつけると、クロノギアスを前に迎え撃たんと拳を構えた。
「エネルギー系が見直されたからか、総じて各所のパワーが上がっている……!」
「関節周りの反応も段違いだ……行けるよな!!縁!!」
「ああ……!行こう、久遠、光!!」
縁の叫びと共にフォトングラストが一歩踏み出し、クロノギアスに向かって走り出す。クロノギアスもそれを見るや咆哮をあげると盾より爪を展開し、背部のスラスターを吹かし始め、今にも突撃せんとするクロノギアスを前に、縁は避けようと動かす事はせず真正面から走る事を止めない。
それを見てクロノギアスは前傾姿勢を取るとスラスターが一際大きな唸りをあげ、爆発的な加速でフォトングラストへ向かって爪を突き出しながら突撃して来た。
「おおおおおおおおっ!!」
突撃して来るクロノギアスを視界に収め雄叫びをあげながら縁は両腕を正面へと突き出すと、フォトングラストを強烈な衝撃が襲い掛かる。
激突したクロノギアスを真正面から受け止め、爪を突き出す両腕を手首から掴んで轍を刻みながら後ろへと下がって行くフォトングラストの中縁は雄叫びをあげて操縦桿を押しペダルを踏み込むと、フォトングラストのカメラアイが輝き背部スラスターより光の粒子が放たれ徐々に後ろへと下がる速度を緩めて行く。
押し込む勢いが弱まるのを感じたクロノギアスは更にスラスターを吹かせるが、それ以上の出力をフォトングラストのスラスターは発揮し、押し込む力は完全に打ち消され遂にクロノギアスの突撃を完全に受け止めた。
「光っ!!」
「至近距離、食らいやがれ!!」
縁の呼び掛けに光はフォトンミサイルを発射し、眼前で動きを止められたクロノギアスにフォトンランダー時よりも威力が上がったミサイルが叩き込まれる。
「■■■■■■────ッ!?」
「っ!!今だ!!」
至近距離でミサイルを食らったクロノギアスは大きく仰け反り、押し込んでいた腕より力が抜ける。それを縁は見逃さずクロノギアスの左腕を放すと代わりに右腕を両手で掴み、そのまま盾をもぎ取った。
右腕の盾を失ったクロノギアスはよろめきながら後ろへと下がると、もぎ取った盾を捨てるフォトングラストを見て低い唸り声をあげ、左腕を眼前へと突き出す。
再び突進が来ると身構える三人の前で盾より爪とビーム砲の二つが展開され、爪に沿う様にビームの刃がビーム砲より形成された。
「どうやら、切った張ったがお望みらしいな」
「乗ってやるさ!光子剣、抜刀!!」
左腕に作り出されたビームソードを構えるクロノギアスを見て光がそう言うと、縁は小さく笑みを浮かべながら頷き光子剣を抜き放つ。
以前よりエネルギーの放出が安定した光子剣を構え、フォトングラストはクロノギアスと向かい合う。
僅かな沈黙、それをクロノギアスが咆哮で破ると背部のスラスターを吹かし一気に距離を詰め、左腕のビームソードを振り下ろす。身構えていた縁は振り下ろされる刃を受け止める様に光子剣を打ち合わせ、実体の無いエネルギー同士がぶつかり合う反発によるスパークが双方を眩しく照らしあげた。
「──シッ!!」
鍔迫り合いの状態から抜け出す様に光子剣を動かし振り下ろす勢いを流してビームソードを逸らすと、返す刀でクロノギアスに薙ぎ払いを仕掛ける。
しかしクロノギアスもただでは受けず素早く左腕を動かすと横に振るわれる光子剣を下からビームソードで掬い上げる様に弾き、お返しとばかりに再び刀身を振り下ろす。
光子剣を弾かれた反動が返って来た操縦桿に腕を取られる縁は、それに対応出来ずにいるがその表情に窮地の色は無い。
何故なら、彼は一人で戦っている訳では無いのだから。
「させっかよ!!」
光が脚部の操作権を縁から奪い取り、フォトングラストを後ろへと飛び退かせる。
標的を捉え損ね振り下ろされたビームソードを目にすると、光は着地と同時に勢いよく飛び掛かった。
「縁っ!!」
「はあっ!!」
後ろ飛びから飛び掛かるまでの間に光子剣を構え直した縁は光から操縦権を返されると、ビームソードを振り下ろし切って隙を晒したクロノギアス目掛けて光子剣を振り下ろす。
咄嗟にクロノギアスは反応して避けようとするが完全に避けきれず、左腕を肩口から切り落とされた。
「■■■■■■────ッ!!」
切り落とされた左腕の断面からオイルやエネルギーが血の様に吹き出て、クロノギアスが絶叫する。反撃としてがむしゃらに繰り出されたミサイルはフォトングラストへと向かって行くが、それ等は直撃しても傷一つ負わせられず、残る右腕で機動力を生かした戦闘をしようにも断たれた左腕からエネルギーが漏れ出てスラスターへと送るエネルギーが確保出来ない。
「動きが止まった!!縁!!」
「ああっ!!」
動きが止まったクロノギアスを前に、今が決め時だと久遠が声をあげると縁もそれに応えてフォトングラストを宙へと飛ばす。
宙へ飛び立つフォトングラストを見上げるクロノギアス、それを眼下に縁は光子剣を上段に構えるとスラスターを吹かせてクロノギアス目掛けて急降下して行った。
「光子剣、フォトン・ストライク!!!!」
上段から振り下ろされた光子剣が、すれ違い様にクロノギアスを真正面から切り裂く。
切り抜けたフォトングラストの背後でクロノギアスは微動だにせず、中心線に一筋の光が走るとそこを境に両断され爆発した。
「はぁ……倒せた……」
「お疲れ様、帰投してくれ」
クロノギアスを無事倒せた事に安堵する縁へ、平野からの通信が入る。縁はそれに頷くとフォトングラストを天高く飛び立たせ、帰投用のハッチのある場所に向かって飛び立たせた。
「そ……そんな……儂のクロノギアスが……!」
クロノイド制圧軍作戦司令部にて、クロノギアス・キュマーラがフォトングラストに破壊される瞬間を目の当たりにし、シュタインが目の前の出来事が信じられんとばかりに目を見開いて爆散したクロノギアス・キュマーラへとモニター越しに顔を近付ける。
取り乱して床に這いつくばるシュタインを目にしたリーリスは、苛立ちの余り彼の顔の真横にヒールを落とし、モニターを破壊した。
「昨日の戦いや今日の戦いの序盤の動きを見るに、今日メンテが終わったようじゃないか!!あんたがちんたらするからだよ!!」
「落ち着けリーリス!!確かに彼のせいで半ば程完成していたクロノギアスの開発が多少遅れたのは事実だが、それ以上はよせ!!」
立て続けにヒールを落とそうとするリーリスをジェネルが割って入ると、リーリスは足をあげたまま忌々しそうな表情を浮かべ、シュタインに向かい舌打ちを打ち司令部より去って行く。
リーリスの姿が司令部から消えるとシュタインは小さく安堵の息をつくが、今度はジェネルがシュタインを片手で持ち上げ彼へと睨みを聞かせた。
「今回の侵攻作戦……貴様も皇帝陛下への報告に立ち合え。日時は後で俺が伝える」
そう言うとジェネルはシュタインを床へと投げ捨てリーリスと同様に司令部を去って行く。
一人残されたシュタインはリーリスのヒールによって破壊され映らなくなったモニターへと目を向け、爆散したクロノギアス・キュマーラに想いを馳せて踞った。
「あ゛~~~~っ、つっかれた~~っ」
「情けない声を出すんじゃない」
「あはは……」
フォトンガードナー基地へと帰投した光達は、報告を終えるや家に帰ろうと駐車場まで揃って歩く。その道中で光は肩を揉みながら疲れた声を出し、久遠が光を注意する光景を見て縁は思わず苦笑いを浮かべる。
そんな風に苦笑いを浮かべる縁を見て、光は勢いよく縁の肩を叩いた。
「お前もお疲れさん!よく俺達が来るまで持ち堪えたな!」
「!……それが、僕の仕事だからね」
ギリギリまで縁が追い詰められるも間に合った事に光は笑みを浮かべ久遠も小さく微笑みながら頷くと、縁は何処か陰りのある様な表情を浮かべる。
それに気付いた久遠が僅かに顔を伏せるも、何か意を決した様な表情を浮かべ徐に縁へと声を掛けた。
「縁……」
「久遠?どうしたんだい?」
「お前……何か私達に隠しているのか?」
「!」
何かを隠していると聞いて来た久遠に縁は思わず目を見開き、光も同様に目を見開く。
「……どうしてそう思ったんだい?」
「……最近のお前の様子がおかしくてな、それで何かあるのでは無いかとおもったんだ」
何故そう思ったのか聞かされると、表情に出ていたとバレて縁は僅かに顔を歪める。そして久遠の問いにどう答えようか考えている最中に、再び久遠が口を開いた。
「……正直言えば今の私達はそれを聞き出そうとは思わん。私達も秘密があるからな」
「え……?」
秘密を白状するか否かを悩む縁に久遠はそう言い、縁は目を丸くする。隣で話を聞く光は、久遠の秘密──彼女がクロノイドである事を──思い浮かべ、そう言ったのだと気付く。
「ただ……何時か私達に話してもいいと思ったら、その時は話してくれないか?」
「……そうだな、お前一人で抱え込んでんじゃねぇよ」
「久遠……光……ありがとう……」
久遠と光の言葉を聞き、縁は僅かにだか表情が和らぐと二人に向かって礼を言う。
そうして三人は駐車場へとたどり着き、送りの車に乗ると自分達の家へと向かって行く。
(二人共……ごめん、これは言えそうに無いんだよ……)
外の景色を見る光や軽く仮眠を取る久遠の横で、縁は胸元を抑えながら内心で二人に謝罪を述べた。
この話で第7節は終わりとなり、次の話から第8節となります。
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