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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第7節・一人じゃない
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第8話

前回のあらすじ


襲い来るクロノドローンを相手に一人で戦う縁とフォトンファイター、そのサポートを光と久遠の二人は行う。

一方クロノイド制圧軍では、遂に攻め入るためのクロノギアスが開発された。

フォトンランダーとグライダーのオーバーホールを含めた改修作業から四日目、光と久遠の二人は改修作業が行われている格納庫へと来ていた。

格納庫内では三日前の痛々しい姿の二機は無く、外装が全て取り外されてはいるもそこから見えるパーツが全て新品同然の輝きを放っている事から、ほとんどのパーツが入れ換えられたのだと気付く。


「ずいぶんと見違えたなぁ……!」

「もう少しで作業も終わる。そうなれば元通りだ……」


光は輝きを放つフォトンランダーに目を輝かせ、久遠も頷きながら改修作業が進んで行くフォトングライダーを見て縁だけが戦う現状が終わり、再び三人での戦いが再開されるのを実感する。

しかし、それと同時にフォトンファイターのパイロット変更問題を思い出し、複雑な表情を浮かべた。


「久遠?そんな表情浮かべて一体どうしたんだ?」


自分の機体が直って行くのを見て複雑そうな表情を浮かべた久遠に首を傾げた光が彼女へと声を掛ける。

突然声を掛けられて久遠は思わず目を見開き言葉に詰まり僅かばかり逡巡するも、躊躇いがちに口を開いた。


「いや……私達も替えの利く存在なのだと思ってな」

「久遠……」


部品が丸々変わったマシンを見て、パイロットも替えの利く部品と縁のパイロット変更問題を思い出したのだと気付いた光は、どう声を掛ければいいのか言葉に詰まる。しかしすぐに自分の考えを出すと、久遠に向かって答えを言う。


「パイロットってのはマシンを動かす上で一番大事な部品だからな、何かしら異常が見つかった時点で交代させられるんだろうよ」

「光……?」


何処かパイロット変更を受け入れている様にも思える光の言葉を聞いて、久遠が予想外だと言わんばかりに目を見開く。けれど光はそれに首を振って言葉を続ける。


「でも、部品だって丁寧に使えば長持ちするんだ。俺達が頑張ればそれだけ縁の交代が先送り……もしくは無かった事になるかもしれないだろ?だったら、俺達で負担を掛けない様に頑張ろうぜ、せっかくマシンも新品同然になるんだからさ」

「光……」


自分達が頑張ればそれだけ縁の負担が減り、縁と共に戦える時間が長くなる。光からそんな事を聞いた久遠は目をパチクリさせるも、光の言う通りだと言いたげに小さく笑みを浮かべると再びフォトングライダーへと目を向けて小さく呟いた。


「そうだな、その通りだ」

「だろ?」


自分の言葉で久遠が立ち直った事に、光が得意気な笑みを浮かべる。けれど久遠はそんな彼の揚げ足を取る様に口を開く。


「ならば、お前は縁と競い合う様な事をしない様にな」

「うぐ……っ、それは……」


光との勝負も負担になっているのでは無いかと言う久遠に、光は今までの勝負の内容を思い返して言葉に詰まる。


「あれは……どちらかと言えば俺のモチベーションの問題で……」


縁に勝ちたいという思いがモチベーションになっている光だが、それが負担になっていると言われると一気にしどろもどろになる。そんな彼の姿を見て、久遠が思わず吹き出した。


「……ぷっ!ははははっ!冗談だ冗談。お前との勝負は縁のいいストレス解消になっているさ」

「ストレス解消って……俺はサンドバッグかよ!」


自分との勝負がストレス解消になっていると言われ、負け続けている自分はサンドバッグかと光は言い返すと、久遠はそれを否定する様に首を振る。


「いいや、お前との勝負をしている縁は、普段より溌剌とした表情を浮かべているからな」

「そうかい……」


溜め込んでるものを勝負で吐き出していると聞かされ、サンドバッグでは無いと言われても釈然としない表情を浮かべる光。

そんな中光はある事に気が付くと、それを久遠へと指摘した。


「お前も、ずいぶんと感情を表に出す様になったよな。前はむすっとしてたり眉間に皺が寄ってたり……表情を余り出していなかったのに」

「む……」


光に自分の事を指摘され、僅かに久遠の眉が跳ねる。そんな事は無いと否定しようと思い返すと、確かに表情を表に出す事が多くなっている事に改めて気が付く。


「そうか……余り、意識した事は無かったのだが……」

「……無自覚に抑え込んでたのが出て来たんだろ、むすっとしてるよりそっちの方がお前には俺は好きだぞ?」

「な──っ!?」


表情を表に出している方が好きだと言われ、久遠は思わず言葉を詰まらす。光は自分の言った言葉がどう取られているのか気付かずに、再び改修作業中のフォトンランダーとグライダーへと目を向ける。


「お、そろそろ内部の改修も終わりか……って、いてぇ!?何すんだ久遠!?」

「うるさいお前のせいだ!」


改修作業に目を向けていた光の背中を久遠が苛立ち混じりに叩き、突然叩かれた光が振り向いて文句を言うも久遠から理由の分からない怒りを向けられる。その姿に釈然とせずに眉間に皺を寄せていると、突如として基地内にアラートが鳴り響いた。


「このアラートは……!」

「久遠、行くぞ!!」

「っ、ああっ!!」


時空転移ゲート出現を告げるアラートが鳴り響き、慌ただしなる格納庫を背にして光達は頷き合うと司令部に向かって走り出す。

二人が司令部へとたどり着くと、正面のモニターには滝音市上空に生成された時空転移ゲートが大きく映し出されていた。


「来たか、二人共」

「司令!!状況はどうなってますか!?」

「つい先程滝音市上空に時空転移ゲートが出現、そこより現れたクロノドローン四機が街を破壊している」


司令部に入って早々二人を出迎えた光平に、久遠が街の状況を聞くとモニターの映像が切り替わり街を破壊するクロノドローンがモニターに映る。


「改修作業はどうなっている!!」

「後は内部の部品幾つかと、外装の取り付けです!!」

「解った……二人は改修作業が終わるまで此処で待機!!作業中にクロノギアスが現れた場合は、しっかりと観察しろ!!」

「「了解!!」」


光平がオペレーターの一人にフォトンランダーとグライダーの改修作業の状況を確認し、それがもう少しで終わると知ると光達に司令部で待機する様命令する。

光達がそれに頷く裏で平野がフォトンファイターへと通信を繋ぎ発進シークエンスを進めており、今まさにフォトンファイターが出撃せんとしていた。


「進路クリアー。フォトンファイター、発進!!」

「了解!!フォトンファイター、行きます!!」


縁の発進コールと共に基地が振動し、モニターに基地より飛び立ったフォトンファイターの姿が映し出される。

光と久遠は一人先に戦いに向かう縁の姿を、固唾を呑んで見送った。







クロノイド制圧軍作戦司令部のモニターに、現れたフォトンファイターによりクロノドローンが劣勢を強いられる映像が映し出される。

それを目にするリーリスを始め、ジェネル、シュタインの三人は冷静な様子でフォトンファイターとクロノドローンの戦闘を見ていた。


「今回もコアマシンのみ……残る機体は万全では無い様じゃな」

「リーリス、既に準備は出来ているのだろうな?」


フォトンファイターしか現れない戦場を目にしてシュタインは残る二機がまだ不調だと判断し、今こそ攻め時だと言わんばかりの視線をジェネルがリーリスへと向ける。


「分かってるよ!!クロノギアス・キュマーラ、発進準備!!」

『了解、クロノギアス・キュマーラ、発進準備』


リーリスからの命令を受けオペレーターがクロノギアス・キュマーラの発進シークエンスを進めて行き、モニターの一角に一つのウインドウが現れる。そこには格納庫の様子が映り、今まさにカタパルトへと運ばれて行くクロノギアス・キュマーラの姿が映し出された。

最初に地球へと侵攻したクロノギアス、アンファを核として胸部は防御力に特化したシルドの装甲を身に付け、背部には機動力を補う様にヘイドの大型スラスターが装備されている。

武装面は脚部にジューネのミサイルポッドを装備し、両腕部にはシルドの大盾をベースにアンファの爪とジューネのビーム砲を内蔵したウェポンラックを装備する等、水中用のセーレスや分離・合体を行うレギオスといった変わり種を除いた今までのクロノギアスの集大成と言える機体が、今まさに地球へ向かわんとカタパルトへと降り立つ。

クロノギアス・キュマーラは上空に生成された時空転移ゲートへと顔を向ける、と背部のスラスターより震える様な重低音が鳴り始める。そして膝を曲げて跳躍に必要な力を溜めた瞬間──


「■■■■■■■■■■■────────ッ!!」


基地の全てを震わす程の咆哮をあげ、飛び上がると同時に背部のスラスターが最大出力で吹かされ時空転移ゲートへと一直線に向かって行く。

その光景をモニター越しに見る三人はもたらされたスペックに勝利を確信し笑みを──ジェネルのみリーリスが手柄を立てる事に若干不服そうだが──浮かべる。


「…………」


そして、時空転移ゲートへと消え行くクロノギアス・キュマーラを、格納庫脇から一人の人影が見上げていた。







「これで……最後!!」


地球ではフォトンファイターがクロノドローン相手に大立ち回りを演じ、遂に残り一機にまで追い詰める。

残るクロノドローンはフォトンファイターを近付けさせない様に後ろに後退しながら両腕からビームを放つが、一機だけの射撃程度恐れるに足らずと言わんばかりに縁はビームの中を突っ切って行く。

フォトンファイターの側面をビームが飛び交う中距離を一気に詰め、眼前までたどり着くと頭部にパーティクルショットの銃口を宛て躊躇い無く引き金を引き、頭部を完全に吹き飛ばした。


(全部倒したけど……変な戦い方だったな……)


最後の一機が地面に倒れ込むのを見て縁は一息つくが、余裕が出来た事でクロノドローンの戦い方に違和感を覚える。

前回までの積極的な攻撃ではなく時間を稼ぐ様な立ち回り、まるで何かを待っている様な行動を思い返して眉をひそめていると、コックピット内に新たな敵機の出現を告げるアラートが鳴り響く。


「っ!増援か!!」


アラートの指し示す方向──時空転移ゲートへと縁が目を向けると暗雲の中を一つの影が突き抜け地面へと落下し、大きな衝撃を引き起こしながら地面と激闘したそれは土煙を巻き上げ、一歩また一歩とフォトンファイター向かって歩を進める。

縁が身構える中それは土煙の中からその姿を現すと、フォトンファイターを前にして自らの力を誇示する様に高らかと咆哮をあげた。


「寄せ集め……って感じじゃないか……!」


土煙の中より現れたクロノギアスの姿を見て思わずそんな事を呟く。今まで戦って来たクロノギアスの特徴を有する眼前のクロノギアスは、フォトンファイターを前にすると体を前に倒し、両腕の盾より爪を伸ばすと背部のスラスターを起き上がらせて今まさに飛び立たんとする重低音が響き渡る。


「──っ!!」


その行動に嫌な予感を感じ取った縁は咄嗟に防御姿勢を取り直線上から飛び退くと、先程までフォトンファイターが立っていた所をクロノギアスが猛スピードで突撃し爪で切り裂いた。


「くうぅぅぅっ!!」


猛スピードの突進と爪によって引き裂かれた空気によって起きる衝撃に縁は歯を食いしばって耐え、大きく距離を取られたクロノギアスへと顔を向ける。

クロノギアスもフォトンファイターを仕留め損なったのに気付いてか、振り向くと同時に脚部のミサイルポッドからミサイルを雨あられと放つ。

それを見るや縁は舌打ちし、右手に握らせたパーティクルショットを投げ捨てると、両腕をミサイル郡に向かって突き出す。


「パーティクルマシンガン!!」


手首付近の発射口より機関銃の様にビームが連続して放たれ、向かって来るミサイルを撃ち落とし二機の間に爆発が広がる。

爆煙により姿を隠され縁は再度の突撃に備える様に身構えスラスターの音を聞こうと耳を澄ます。


「これは……──っ!?」


そんな彼の耳にスラスターの音では無いが何かエネルギーを溜める様な音が聞こえ、僅かに首を傾げるが嫌な予感を感じ取り咄嗟に上空へと飛翔する。

その瞬間、爆煙を引き裂いてビームが現れ先程までフォトンファイターが立っていた場所を通り過ぎる。ビームの飛んで来た先ではクロノギアスが爪を盾に格納し、代わりにビーム砲を突き出した姿勢で立っていた。


「あのビームは……二体目のか!!」


先のビームがあのビーム砲から放たれたものだと気付き、それが二番目に戦ったクロノギアスのものだと思い当たる。


「けど……今なら!!」


中に飛ばされた縁もただでは転ばず、スラスターが動く素振りも見せないのを好機と見るや、スラスターを吹かして右足を突き出して一直線にクロノギアスへと向かって行く。


「パーティクル……キィィィィック!!」


縁の叫びと共に光子エネルギーが右足に集中し、足先が青白く輝き始める。

砲撃の反動から立ち直ったクロノギアスは、急接近して来るフォトンファイターを目にするとビーム砲を盾の裏へと格納し両腕を合わせて巨大な大盾として受け止める構えを取った。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


足先より青白い光の尾を引く流星と化したフォトンファイターの蹴撃をクロノギアスが大盾で受け止めた瞬間、空気を震わす轟音が鳴り響く。

大盾で受け止めたクロノギアスは、足元に轍を残しながら盾を蹴りつけるフォトンファイターに圧され後ろへと強引に下がらせられるが、盾による防御を決して解く事無く受け止め続け後退も踏ん張り耐えると、後退の勢いが徐々に弱まる。


「く……っ!!」


勢いが弱まって行くのを感じた縁はスラスターを吹かして更に速度を乗せようとするがクロノギアスの踏ん張りの方が強く、轍が刻まれなくなり完全に受け止められる。フォトンファイターの一撃を完全に受け止めたクロノギアスは、咆哮をあげると両腕を振るい盾に蹴りを放った姿勢のままでいたフォトンファイターを吹き飛ばした。


「ぐうう……っ!!防御力は健在か……!」


吹き飛ばされた衝撃に縁は呻きつつもすぐに受け身を取り、片膝をついて着地させると蹴りを受け止めた盾へと目を向けて思わず呟く。

ウェポンラックを兼任している以上強度面に僅かな劣化があるも思っていたが、前回に戦った重装甲のクロノギアスと遜色の無い防御力を誇っており、縁は無自覚に冷や汗を流す。


「さて……どうしたものか……!」


高機動高耐久を実現した眼前のクロノギアスを相手に、どうすれば勝ちを手にする事が出来るか縁は思わず弱音を呟く。

そんな縁の都合など知った事では無いと言わんばかりにクロノギアスが咆哮をあげると、フォトンファイターに向かって走り出し両腕の爪を振りかぶって行った。


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