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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第7節・一人じゃない
55/150

第1話

この話より第7節に入ります。


今後とも超光戦機フォトングラストをよろしくお願いします。




前回のあらすじ


タキネ祭りでの勝負を終え、全敗で終わった光は花音に慰められながらも自分達が守った景色に感銘を受ける。

その裏で縁は僅かに様子がおかしくなっていた。

夜も更けてほとんどの物音がしなくなった時間帯、光平と博士の二人は滝音コーポレーション最上階の社長室にて背中合わせに立っていた。


「……なるほど、成長が著しい……か」

「うむ、先の戦闘も彼があそこまで動けなければ我々は敗れていたかもしれん」


執務机を挟む形で立つ二人は背を向け合い話す。光平の手には先のクロノギアスとの戦闘映像が、博士の手には誰かの人体の状態を記した書類が握られている。


「だが、まだ足りないのも事実だ」

「うむ、先のクロノギアス……あれは一種の境界じゃろう。今後はあれ等と同等の機体が常に現れると見てもいい」


先のクロノギアス……今までフォトングラストが戦って来た進化態のクロノギアスに匹敵する力を持ったクロノギアス。それが今後のスタンダードになると予想する博士に、光平も小さく頷く。


「幸い分離・合体機構のお陰で大部分のパーツが残っている。それを再利用してフォトンファイターを除く二機の改修を頼む」


光平は先の戦闘で撃墜した残骸のパーツを用いてフォトンランダーとグライダーの二機の改修を博士に命ずる。博士はそれにすぐに頷く様な事はせず、手元の資料を捲ると目だけを振り返って問い掛ける。


「目標は、どれ程じゃ?」

永続的な合体を目安に(・・・・・・・・・・)


改修を行う目標として光平が挙げた基準に博士は思わず眉を跳ねさせる。けれどそれを知ってか知らずか──おそらく気付いていて──光平は言葉を続けた。


「進化態が基準値となるなら相応のスペックアップが必要だ。正直言えば、フォトングラストはランダ(・・・)ーとグライダーが足を(・・・・・・・・・・)引っ張っている(・・・・・・・)

「それは仕方の無いことじゃ。その二機は地球で作り上げられたもの、クロノシアスのテクノロジーであるフォトンファイターについて行くのが精一杯なのじゃから」


フォトングラストの戦闘を、機体を構成するフォトンランダーとグライダーが足を引っ張っていると言う光平に博士は仕方無いと首を振る。彼は技術職だからこそクロノシアスのテクノロジーで作られたフォトンファイターと、幾つか技術を取り入れたとはいえあくまで純地球産の二機ではどうしても埋めようが無い差があるのだと理解していた。

だがそんな博士の諦観を否定する様に光平は反論する。


「だからこそだ。今のままではリミッターを解除し(・・・・・・・・・)たフォトンファイター(・・・・・・・・・・)にも劣る(・・・・)、そんな状態で今まで以上に激しくなる戦闘は越えられない」

「っ!?お主……フォトンファイターのリミッターを解く気か!?」


光平の口にした言葉を聞いた博士は目を見開いて振り向き、慌てた様子で光平に問い詰める。それに光平は背中越しとはいえしっかりと頷いたのが博士にも分かった。


「あくまで最悪の場合だ。リミッターを解かずに勝てるならそれでいい……今回の改修もリミッターを残したまま勝利するためのものだからね」

「……そうじゃな。リミッターを外す事は悲劇を早める……既に予兆が現れている以上避けられぬ悲劇が、な……」


博士がそう言うと光平の拳が握られ軋む音が鳴る。激情を拳に秘めながら、光平は冷静に告げる。


「……本当は、こうなる前に決着をつけたかったけどね……」

「世の中、ままならぬものじゃな……」


そう言い残すと博士は部屋を去って行き、社長室には光平だけが残される。残された光平は一人社長室の窓から湖を照らす月を見つめていた。






タキネ祭り前日の襲撃以来、クロノイド制圧軍による侵攻が行われなかった滝音市にて、常磐高校は一学期の終業式を迎えていた。

光達のクラス内でもクロノイド制圧軍の話題は鳴りを潜め、夏休みに何をするのかに関しての話で盛り上がっている。


「今日で一学期も終わりかー……」

「光、ずいぶんと力抜けてるね?」

「去年からこうよ、気にしないで」


そんな中一人机に上半身を預けぐてっと倒れる光が何の力も籠ってない言葉を呟き、それに縁が首を傾げると花音が呆れた様に言う。

長期休暇が始まるという事は部活動に携わる時間が一気に増えるという事で、白部の相手をするのに酷い心労を感じているからこそ今光は溶けていた。


「別に今気が緩むのは問題無いが、何時までもそうされるのは迷惑だ。早く戻れ」

「おーう……」


溶ける光に向かって久遠は容赦無くピシャリと言うが、光の力無い返事に溜め息をつく。


「今はクロノイド制圧軍の侵攻が鳴りを潜めているとはいえ、何時再度襲来するかは判らないんだ。そんな時にその様な状態で足を引っ張る気か」

「そうだなー」


何時までも溶けてられないと言って光に喝を入れようとするも、光は理解しているのかしていないのか分からない──一応顔は持ち上げたが──溶けた様子で返事をする。

すると二人の話を聞いていた縁が、何処か考える様な様子で呟く。


「それにしても……何で襲撃して来ないんだろうね……」

「え?」


縁の呟きが聞こえた花音が首を傾げながら縁の方へと振り向くと、縁も聞こえていたのに気付いて改めて説明をし始める。


「前に戦った分離・合体する奴、あいつと同格の奴が来たら今度こそ勝てないかも知れない。それなのに立て続けに送るんじゃなくて沈黙してるのが不気味なんだよ」

「不気味……そうよね、結構な頻度で来てたのも、此所三週間は何も無かった訳だし……」


縁は後一歩まで追い詰めたクロノイドがあるというのに、それと同格の奴をぶつけようとしない。

そんなクロノイド制圧軍の現在の状況に不気味さを感じ、花音も三週間も何事も無かった日々に幸せを感じていたものの、同時に得もいえぬ不気味さを感じていた。

光も二人の話を聞いて、溶けていた体を持ち直し机に肩肘をついて考える。

その視線を自ずともう一人の久遠へと向け、徐に問い掛けた。


「なあ久遠、お前はどうして襲撃して来ないのか何か解るか?」

「解る訳無いだろう。そう言うお前は、何か考えがあるのか?」

「いや全く」


久遠に襲撃して来ない理由が何なのか解るか聞くも、逆にどんな事が理由で来ないのかを返されてそれに光はきっぱりと答える。

ただその答えが全く解らないという答えで、却って久遠を怒らせてしまい光は頭を叩かれた。


「いってぇ!?急に何だよ!?」

「ふざけた解答を抜かすからだ」

「いや、質問に答えただけだろうが……」


理不尽な叩かれ方をした光は叩かれた箇所を擦りながら久遠をジト目で睨み付けるも、久遠は何処という風にその視線を受け流す。

そんなやり取りをしていると朝のホームルームの予鈴が鳴り、既に席に座っている光を除いた三人はそそくさと自分の席へと戻って行く。

その後のホームルームを終えて体育館に行き、全校集会を終えた後の大掃除。光と縁を始めとした男性陣が床の雑巾掛けを行っている最中、ふと四人の携帯に通知が届いた音が鳴った。


「おーい、誰の携帯だー?」


教室内で生徒と共に掃除をしていた担任が掃除を中断させ、誰の携帯が鳴ったのかを問い掛けると再び携帯の通知音が鳴る。

掃除中の騒がしさで余り聞こえなかった一回目と違い、多少静かになった二回目ははっきりと聞こえ、光と花音、久遠と縁の四人が顔を見合わせた。


「済みません、それ俺達です」

「達……って事は、そこの四人か?」

「はい」


代表して光が手をあげると、担任は音の聞こえた数から先程顔を見合わせた四人が通知の鳴った携帯の持ち主と確認を取る。

光がそれに頷くと担任は何かを思い出す様に顎に手を当て、四人がジャナ部所属であることを思い出すと苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべて携帯のある鞄を指差す。


「お前達四人同時となると部活関係かも知れない。代表で誰か外に出て見てこい」


そう言って四人の内誰かに内容を確認させようとする。普通なら掃除中である以上許されないのだが、特例として認めた様だ。決して白部の対応が面倒になるからではない。


「はい。えっとそれじゃあ……」


確認してよいと言われた光は、誰に確認を任せようかと三人の方を振り返るが、花音はモップ掛けにそそくさと戻り、久遠は窓拭きのために布巾を濡らしに向かい、縁は床掃除を再開し始める。


(マジか……)


誰も取る気が無い……というよりかは手をあげたのだからそこまで頼むと言いたげな態度に光は思わず頬をひきつらせるが、溜め息と共に鞄の中に入れていた携帯を手に教室を出て行く。

そのまま廊下に出ると近場で誰も居ない場所を探し、階段の踊場付近が既に掃除を終えたと見るや光はそそくさとそこに向かい携帯を起こす。


「何々……」


画面がつくやすぐにメッセージアプリを起動して、白部から送られて来たメッセージへと目を通す。最初のメッセージはどうやら備品に異常が見られたらしく、それの調査を行うとの事らしい。

二つ目のメッセージは上記の理由でしばらくは部活は休みになるとの事だった。


「こういうのは後で送ればいいのに……ってか部長、掃除サボって何やってんだか……」


送られて来たメッセージを読み終わり、白部の現状を察して光は思わず溜め息をつく。そして自分も何時までも此所にいる訳にはいかないと携帯をスリープモードにするとそそくさと教室へと戻って行く。

教室に入ると掃除中のクラスメイト達の視線が一気に集まるが、光はそれを無視して鞄に携帯を仕舞うと教室を出る際に置いてた雑巾を手にして床掃除を再開する。

光が床掃除に戻ると、同様に床掃除していた縁が隣に並び共に床を拭き始める。その最中に縁が光に話し掛けて来た。


「光、部長からのメッセージは何だったの?」

「あ?えっとだな……備品の調子が何かおかしいから少し調べるって、後それが理由でしばらくは休みだとさ」

「えっと……掃除中にそれが来たんだよね?」

「ああ」

「部長も、普通だったら自分のクラスで掃除してなきゃいけないはずだよね?」

「サボったんだろうなぁ……」


光から聞いた白部のメッセージの内容を聞き、白部がサボってメッセージを送って来たと知って縁は思わず苦笑いを浮かべる。


「お前達ー、喋るのは後にして今は掃除に集中しろー」


そんな二人の様子を見ていた担任が注意し、はっとなった二人は慌てて掃除に戻る。その後は特に何も起きず、スムーズに掃除が終わる。

全員が掃除用具を片付け終え、担任が幾つかの資料を配り帰りのホームルームが終了すると、担任が教室を去って行った瞬間、教室内が一気に騒がしくなった。


「っ…………耳が痛い……」


余りの喧騒に久遠が顔をしかめて耳を抑える。転校当初も似た様な状況になっていたが、今回はそれ以上の喧騒で許容範囲を越えたらしい。


「夏休み始まると何処もこんなもんだ、すぐに慣れるわ」

「余り慣れようとも思わないがな……」


喧騒に肩を竦めながら耳を抑える久遠に光がそう語りかける。久遠は慣れた様子の光を横目でちらりと見ると、げっそりとした様子でそう返しうつ伏せになる。

そんな二人の元に隣に座っていた縁が顔を向け、離れた席でクラスメイトと話していた花音が断りを入れると光達の元へとやって来る。おそらく用件は例の事だろう。


「高坂、掃除の時のメッセージは何だったの?」

「備品の調子が悪いからしばらくの間部活は無いって」

「そうなんだ……って、何でそんな事を掃除時間に送って来たのかしら……」


花音は光から白部のメッセージを聞くと、送られて来た内容に頷きはするも同時に何故それが掃除時間に送られて来たのか首を傾げる。

縁もその隣でそうだよねと言いたげに頷く中、光は溜め息をつくだけで何も言わない。


「……それより、部活が無いって事はこの後はもう各自帰宅だよな?」

「そういう事になるわよね」

「せっかくだし、部長も誘ってどっかに飯食いに行かねぇか?ジャナ部一学期お疲れ様みたいな感じでさ」

「へぇ……よさそうじゃないか」


光がこの後の予定として提案した五人での外食。予想外に縁がそれに食い付き、花音もよさげな表情を浮かべており平常通りの表情をしているのは久遠だけだ。


「それじゃあ、部長にメッセージ送るね」

「おう、頼んだ。久遠も一応知らせてた方がいいんじゃないか?」


花音が白部に対して全員での外食の誘いのメッセージを送るのを見た光は、続けて久遠に光平達に外食する旨を伝えたらどうかと聞くと、久遠は眉を寄せて首を振る。


「まず許可を出すかすら判らないのに、行って来ると言える訳があるか」

「そうか?タキネ祭りの時の事を考えたらすんなりと許可出しそうなものなんだけどなぁ……」


許可を取らなければまず行けないと言う久遠に、光はそう呟きながらタキネ祭りの事を思い出す。

久遠がタキネ祭りで着ていた浴衣は、光平がわざわざ久遠のためにかき集めたものの一つだったらしい。それ程娘に愛情を持つ光平なら顔見知りの友人達との食事位は許すと思うのだが、久遠は許可を出されるか判らないと言う。

とりあえずと言いたげに久遠が携帯を取り出し、メッセージアプリを起動しようとした瞬間、花音の携帯にメッセージの着信が来た。


「あ、部長からだ」

「多分返事だろ、どうだって?」

「えっと……あ、備品の確認のために教師と話し合うから無理だって……」


そうメッセージの内容を読み上げて顔を伏せる花音を見て、光も困った様に頭を頭を掻く。


「マジかよ……流石に部長抜きでそれやるのは気が引けるな……一応名目上ジャナ部のお疲れ様会みたいなもんだし……ん?」


どうしたものかと考える光だが、彼の携帯にも突然通知が来る。光だけでなく久遠と縁の二人の携帯も通知音が鳴り、三人揃って携帯を取り出した。


「番号付けのメッセージ……げっ!?マジか……」

「高坂、どうしたの?」

「わりぃ。俺が提案したのも何だけど、行けなくなった……」


自分で提案しといて行けなくなったと謝る光は、ちらりと横目で久遠と縁の二人を見る。花音も釣られてそちらへと目を向けると、視線に気付いた二人が小さく頷いた。


「あれ関係ね……解ったわ、今回の外食は無しって事で」

「済まん、一人勝手に言っては勝手に無しにして……」

「それは仕方無いもの。それじゃあ、また部活がある時にね」


光──否、三人が行けなくなった理由を察した花音は小さく頷くと、頭を下げる光にそう微笑んで先に教室を出て行く。


「はぁ……それじゃあ、行くか」

「うん……今回は色々と噛み合わせが悪かったね」

「その話は終わりだ、行くぞ」


ジャナ部減員で外食が出来なかった事に肩を落とす光に縁がそう慰めるが、久遠が話を断ち切って教室を出て行こうとする。

縁がその後に慌てて続き、光も溜め息を一つついてその後を追ってフォトンガードナーの迎えの車の来ている駐車場まで向かって行った。


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