第2話
前回のあらすじ
タキネ祭り以降クロノイド制圧軍による襲撃は起きず、平和な時を過ごして一学期の終了を迎える。
放課後ジャナ部全員で食事を提案した光だったが、諸々の事情が重なりお流れとなってしまった。
「改修作業?」
終業式を終えた光達がフォトンガードナーの基地に着くと、早々に司令部へと連れて来られる。そこで光平と博士の口より語られた事に光は変な声をあげてしまう。
「うむ、まずはこれを見てくれ」
そう言って博士が近くのパソコンを操作すると、司令部のモニターの映像が切り替わる。そこに映されたのはフォトングラストが二機並び、その内一機の姿が内部構造の状態になると機体の各所が赤く塗られていった。
「これは……」
「今までの戦闘でフォトングラストが負ったダメージを表したものじゃ。儂等も常に万全を期そうと尽力しておるが、どうもダメージが残るのじゃよ」
内部構造で赤く染まった場所がダメージが残る場所だと言われ、予想以上にダメージが蓄積されている事に光達は顔表情を険しくする。特に間接周りのダメージが大きくほとんどが赤色に塗り潰されており、どれだけ無茶な動きをしていたのかを思い知らされる。
「なお、この間接部の消耗は前回の戦闘で負ったダメージがほとんどじゃぞ」
「「…………」」
「…………」(プイッ)
間接部のダメージが前回の分離・合体するクロノギアスとの戦闘でもたらされたものと博士に告げられ縁と久遠は目線を光へと向けると、光は気まずそうに視線を二人から逸らす。
先の戦闘で分離したクロノギアスを打倒する際には光が縁に変わって操縦し、二挺のフォトンライフルで尽く撃ち落としていったのだが所々気取った動きが盛り込まれており、それが原因で負荷が掛かったのだと全員が認識していた。
「コホン……まあ、遅かれ早かれ改修は行うつもりじゃったよ。今回はそれが早まっただけじゃ」
「すいません……」
どちらにしても改修する予定だったと博士に言われるも、光には慰めにしか思えず頭を下げる。そんな光に博士は面倒くさそうな表情を浮かべると無視して再びパソコンを操作し始める。
「表立った損傷は先に見せた通りじゃが、それ以外にもP波動が原因で幾つかガタが来ておる場所があったわい。そこを一から改修し直しじゃな」
「P波動……あ、そういやフォトンファイター周りはダメージがほとんどねぇ……」
改修にフォトンファイターの動力であるフォトンリアクターより生じるP波動に関する情報が出て来て、光は再び図解へと目を向けるとダメージが累積しているのはフォトンランダーとグライダーのパーツで、フォトンファイター自体にはダメージが一切見られない。
それに気付いた光を見て博士はモニターを切り替え、別の映像を映し出す。そこには前の戦闘で破壊したクロノギアスへと合体する戦闘機の残骸が格納庫に積み重なっていた。
「幸いこやつ等を素材とすればある程度P波動に耐えきれる強度を得る事が出来るじゃろう」
「P波動に耐えられる……って事は!?」
P波動に耐えられる強度をフォトンランダーとグライダーが得ると聞いて、光は思わず目を見開いて博士へと問い詰める。
博士は光達の方を振り返ると、笑みを浮かべてそれに答えた。
「うむ、合体時間が延長されるのじゃよ」
「──っ!」
合体時間の延長、それを聞いて光は縁と久遠へと笑みを向けて振り返る。今までシミュレーターでのトレーニングで、合体時間が足らずに倒しきれないというパターンが幾度とあり、それが多少緩和されるのは三人にとって朗報だった。実戦でもある程度タイムリミットに余裕が持て、焦る様な事が無くなる等プラスの側面が多い。
「それに合わせてエネルギー系も改修を行い、今までは決着の時に使用していた光子剣を、短時間なら展開したまま戦える様になるぞい」
「そいつはすげぇ!」
追加で行われる強化内容に光は喜びの声をあげる。光子剣は強力な必殺武器であるが、機体のエネルギーを用いて実体の無い剣を作り上げる都合上エネルギーの消耗が尋常では無い。故に最後の止めに使う事がほとんどだったが、短時間でも振るえるとなると一気に戦闘に幅が広がる。
「それでお主達には誤差修正のために、改修を経た後のフォトングラストのスペックを元にしたシミュレーションを行ってほしいのじゃが……いいかの?」
博士がそう言って光達の方へと問い掛けると、光達は互いにどうするかを相談し始める。現状光は喜んで協力するのが目に見える程に表情が輝いており、二人を説得に掛かっていた。
「やろうぜ二人共!こりゃあ凄い事になるぞ!」
自分の乗る──メインではないが──スーパーロボットの強化とあって、光は目を輝かせて二人に参加を促す。そんな光とは裏腹に眉間に皺を寄せる縁と久遠は、何かを考える様に口許に手を宛てるとしばらく沈黙する。
「……判りました、それではシュミレーターに行ってきます」
しばらくして縁が何か覚悟を決めた様子で顔を上げて博士にそう言うと、一礼してシュミレーターのあるトレーニングルームに向かって司令部を出て行く。
「あ、待てよ!っぐえっ!?」
「二人共先に行くな!……私も、シュミレーションに参加させてもらいます」
司令部を出て行った縁を追い掛けようとする光の首根っこを引っ付かんで止めると、久遠は博士達に一礼してから光を引き摺って司令部を出る。
縁の姿の見えない廊下で、司令部の扉の閉まる音がした瞬間久遠は光を掴む手を離すと、捕まれていた光が久遠に向かって怒った。
「何すんだよ久遠!」
「お前こそ一旦落ち着け、事はお前の思った様な事ではないのだぞ」
急に首根っこを掴まえて引き摺った事に光は声をあげたつもりだったのだが、久遠から返って来た真剣な様子に激情が急速に冷えて行く。
ある程度頭の冷えた光は、改めて久遠の言葉の意味を問い掛ける。
「俺の思った様な事ではないって、どういう事だよ?」
「お前は今回の改修を、あくまでただの性能強化と見ているのか?」
「あ?」
問い掛けた筈の光が逆に久遠に問われ、その質問の答えを考える様に首を傾げる。性能アップが出来る様になったからしたのが理由だとは、久遠は思えていないらしく、逆に光にはそれ以外の理由が一つしか見付からない。その理由も間接部の部品交換のついでに行われるものと、大きな理由では無かった。
「今回の改修は、暗に言えば今後はこれ程に強くしなければ戦いについて行けないと判断しての改修だ」
「──っ!」
久遠は今回の改修は今後の戦いの激化に備えた改修だと口にし、久遠に説明されてはっとなった光は思わず両拳を握り締める。
光のその姿を見て久遠は小さく溜め息をつき、ジト目で光を批難する眼差しで見つめる。視線に晒された光はばつの悪そうに目線を逸らすと後頭部を掻きながら小さく呟いた。
「すまん……パワーアップするって事に目が眩んでた……」
「はぁ……別にいい。博士も一見そう見える様に話していたからな」
光の謝罪を耳にした久遠は溜め息をつきながら、司令部での博士の様子を思い出す。フォトンガードナー内では光平に次いで久遠とは付き合いの長い人だからか、彼がどの様な思惑でその話を振ったのかは多少は理解出来る。
彼は前回戦ったクロノギアスを基準として、今後現れるクロノギアスが強敵になるのを察して改修に踏み切ったのだ。
光も今後の戦いの厳しさに想いを馳せ険しい表情を浮かべるが、すぐに目をキッとさせると頬を両手でひっぱたいて気合いを入れ久遠へと目を向ける。
「まあ、どちらにしろパワーアップする事に変わりは無いんだ。変に悲観してても意味無いだろ」
「それはそうだが……」
「だったら先の事は今は考えずに、出来る事をやって行こうぜ?」
先の事は今はまだ解らない、けれど出来る事がある以上今はそれをするしか無いと光は言う。
久遠はそれを聞いて難しい表情でうつむくも、しばらくして光と同じ様に目をキッとさせると首を振って悲観を追いやった。
「そうだな、むしろそれ程の敵が出て来ると身構えて訓練に望めばいい」
「そうだって!それじゃあ、行くか!」
久遠が悲観を振り切ったのを見た光は小さく頷くと、先に縁が向かったであろうトレーニングルームへと二人で向かう。
そこでは既にシュミレーターが一機稼働しており、シュミレーター脇のパソコンのモニターに映像が映し出されていた。
「縁の奴、一人で先にやってたのか……あんま長く話してた感じしねぇのに」
「まあ、いち早く出たのがあいつだったからな」
モニターでは縁が駆るフォトングラストが、前回戦ったクロノギアスを相手に戦闘している。分離・合体するクロノギアスに翻弄されつつも、縁は何とか捌いて行く。
「今の所は、お前に操縦を代わる前と一緒だな……」
「対処法は解っている筈だから、こっからだこっから!」
苦戦する姿が前回の戦いを思わせると久遠は言うが、光は前回と違い明確に対処法は確立している以上、縁ならここから逆転をやってのけると言う。
すると光の言う通りフォトングラストは防御姿勢を解くと、胸元のレリーフが分離して右手に握られ光子剣が抜き放たれる。
今までは最後の一撃を決めるために使い続けて来た光子剣が、今まさに普通の攻撃のために振るわれんとする姿に光は思わず固唾を呑むと、フォトングラストは光子剣を構え、そのまま周囲を飛び回る敵機をまとめて薙ぎ払った。
出力を引き上げて刀身を巨大化させた光子剣に敵機が次々と呑まれて行き、再生する間も無く対の機体も落とされ、フォトングラストが一回転する頃には過半数の機体が落とされ、残る機体──奇しくも上半身を形成する機体が合体し、フォトングラストの眼前で中に浮かぶ。
合体したのを好機とばかりに再びフォトングラストは光子剣を振るい、今度は直上より全身を飲み込まんと巨大化させた刀身を振り下ろすが、その瞬間アラートが鳴り響きシュミレーターが緊急停止した。
「ど、どうしたんだよ急に!?」
突然のシュミレーターの緊急停止に慌てる光だが、隣の久遠は冷静にパソコンを指差して告げる。
「よく見ろ。単純にエネルギーの使い過ぎだ」
そう言って久遠が指差した所を光は目にする。そこにはフォトングラストの機体状況が映し出されており、合体時間、機体のダメージ、機体のエネルギーの三つの項目がフォトングラスト横に表示されている。
久遠が指差したのはエネルギーの所で、そこにはエネルギー切れと表示されていた。
「マジかぁ……短時間とは聞いてたけどここまで短いかぁ……」
「いや、今のはあくまで縁が一掃しようとして過剰にフォトンエネルギーを光子剣に回した結果だ。本来ではどれくらい維持されるのかはまだ解らない」
光がエネルギー切れがまだ長時間使えないものと考える横で、久遠はエネルギー切れは縁が下手を打った結果だと口にする。
二人がそんな話をしているとシュミレーターのハッチが開き、中から汗だくになった縁が姿を現し近くのベンチに腰を下ろした。
「縁、今のは惜しかったな」
縁がシュミレーターから出て来たのを見るや光は近くにあった縁のであろうスポーツドリンクのボトルを投げ渡し、縁はそれを受け止めると無言で蓋を開けてボトルを呷る 。
半ばまで一飲みすると大きく息を吐いて口元を拭い、勢いよくボトルをベンチに置くと縁は光の方を振り向き口を開く。
「光……よくあれを対処出来たね……」
「そりゃあ、二挺持ちはゲーセンのアーケードでちょくちょくやってたから身に染みてるんだわ……え?もしかして俺勝てた!?」
縁の問い掛けに光はそう答え、同時に縁の様子からあのクロノギアスを相手に勝てていないと知ると光は勝てたと思い目を輝かせた。
「馬鹿。今のシュミレーターは一人でやっていたからで、お前が倒した際は三人で乗ってて私達がアシストしてただろう」
「おごっ!?」
しかし久遠が今の縁のシュミレーションと光が倒した時の状態を比較していささか光の方が有利だと言い、光の頭にチョップを落とす。チョップを落とされて頭を抑えてしゃがみ込んだ光は思わず声をあげようとするも、久遠の言う通り公平な条件で無かった事に納得して引き下がる。
そうして光が引き下がったのを見ると、縁が無意識なのかムッとした表情をして再びシュミレーターの中へと入って行く。そのままハッチを閉めるかと思っていたら、光達の方を振り向いて彼等の使うシュミレーターを指差した。
「早く二人共準備して。今度は三人で挑むよ」
「へ?」「は?」
唐突に告げられた事に二人は揃って変な声を出す。それを気にせず縁は再び二人へと告げる。
「だから今度は三人で挑むんだよ。出来る限りあの時と状況を同じにして、今度こそ勝つ」
「マジかよ……」
縁の言葉をようやく呑み込めた光が思わずそう零す。まさかここまで突っ掛かって来るとは思わなかった光はどうしたものかと考えるが、見た感じ梃子でも動きそうにない様子を見て溜め息をつく。
ちらりと久遠の方へと視線を向けると久遠も同じ発想に至ったのか互いに視線がかち合い、二人は揃って頷くと更衣室へと向かいパイロットスーツに着替えに向かった。
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