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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第6節・守るべき日々
46/150

第1話

この話より第6節に入ります。


今後とも超光戦機フォトングラストをよろしくお願いします。


前回のあらすじ


残骸のサルベージを終えた光達を待っていたのは無茶した三人に対するオペレーター陣からの説教だった。

説教疲れで眠っていた光は夜中に目を覚ますと前と同じ様に夜に海に入っていた久遠と出会い、そこで今後お互いに名前で呼び合う事を決める。

その裏でクロノイド制圧軍ではクロノギアスが回収した残骸を元に、侵攻が大きく進まんとしていた。

滝音市の住宅地にある坂道を、一つの自転車が下って行く。ブレーキが効かないのか一切減速する様子を見せず坂道を下る速度は増していき、自転車に乗る少女は悲鳴をあげる事しか出来なかった。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


住宅地に響き渡る甲高い悲鳴、それにより何事かと顔を出した住人達が暴走する自転車を目にしてパニックに陥る。

少女も今自分が下っている坂の一番下にT字路がある事を知っており、このままの速度で下って行けば見るも無惨な結末を迎えてしまうと確信しており必死に助かる方法を探すが、既に制御から外れた自転車を無理に動かそうとすると倒れ込んで壁にぶつかるのと同等以上の惨状になってしまうと確信しており、下手に手が出せない状況だった。


「だ……誰か──────っ!!!!」


恐怖の余り目を瞑り甲高い悲鳴をあげる少女は、時間が絶つにつれて死への恐怖がどんどんと膨れ上がって行く。

加速する自転車から振り落とされない様に必死にハンドルを握っていると、幻聴なのか少女の耳に誰かが走って来る音が聞こえた。


「おーい!!大丈夫かーっ!!」


声を掛けられた少女は流石に幻聴だと処理しきれず思わず声のして来た方向へと顔を向け、今度は幻聴を見ているのかと目をパチクリさせる。

声の聞こえて来た自転車の後方には、坂道を素早く下って行く自転車と互角の速度で走って来る少年が目に入った。


「え?」


余りにも非現実的な光景に少女は呆けると、そんな彼女に世間話をする様に少年は少女へと声を掛ける。


「何か見るからに大変そうだな」

「────っそう思うなら助けてよ!!」


正気に戻った──というより軽々しく現状を扱われた事による怒りで元に戻った少女は、自転車と並走する少年に向かって八つ当たり気味に叫ぶ。

自転車に並走する脚力は目を見張るものがあるが、所詮はそれまで。自分を助ける事など出来はしないと諦めが混じった声音で助けてと矛盾した事を言う。


「判った、助ければいいんだな?」

「────え?」


そんな少女の諦めを、軽々と了承した少年に少女は思わず目を丸くする。少年は走る足を更に加速させると自転車へと接近し、その両腕を少女の脇の下へと滑らせる。


「今から言うタイミングでハンドルとペダルから手足を離せ。助かる対価に自転車はおじゃんになるが、命よりかはマシだろ」

「え、ちょっと……」

「何も文句は受け付けんぞ。はい十!……九!八……!」


突然の出来事に混乱する少女を他所に、少年は少女を助け出すためのタイミングを口頭で告げる。少女も訳も分からず少年の言う通りに手足の力を緩めて少年のカウントダウンに備えた。


「三!……二!……一!行くぞ!!」

「~~~~~~っ!!」


少年がそう叫ぶと同時に少女の脇を抱えて体を持ち上げ、ハンドルとペダルから手足を離した少女の体が自転車から完全に離れる。

少女を抱えた少年は、足の回転数を一気に上げて歩幅を細かくし徐々に減速して行く。対する自転車は少女が離れた分車体は軽くなったが不安定となりフラフラと前方を進んで行き、道中で横転して勢いそのまま坂を滑り落ちて行った。


「た……助かったの……?」


少女は自分が助かった現実を受け止められず呆然とし、少年は最低限まで減速する様に足を動かす。

そうして少年がようやく足を止めたのは坂道を下り終えた所で、そこでは上から滑り落ちて来た自転車を取り囲む様に人達が集まっていた。


「……もう下ろしていいか?」

「…………あっ!!ごめんなさい!!」


呆然としていた少女は少年の言葉を聞くと慌てて彼の手から逃れて地に足をつけ、死んだ自分が見ている幻覚では無いというのを何度も地面を蹴って確かめる。

そんな少女の傍らで、急に少年が足を抑えて踞り、少女だけでなく二人の様子を見ていた住人達が心配そうに駆け寄って来た。


「だ、大丈夫ですか!?」

「あ……足つった……」


無理な走りをしたせいで足を痛めたのかと思い声を掛けると、思いもよらない答えが返って来て少女や住人達は安堵の息を零す。


「あ……せめてこれどうぞ」


少女は自転車の元へと向かうと一緒に滑り落ちていた鞄から水筒とタオルを取り出し、水で濡らしたタオルを少年に差し出すと、少年は目をパチクリさせると少女の意図に気付いたのか小さくはにかんでタオルを受け取りズボンを捲ってつった部分を冷やし始める。

これが、水代花音と高坂光の初めての出会いだった──






夢から覚めた花音は着替えを終え、食卓の上に置かれたサンドイッチとメッセージカードを手に取りメッセージカードに書かれた文を読む。

メッセージカードには両親から仕事の都合で遅くなると書かれており、それを制服の内ポケットへと入れるとサンドイッチを咥えたまま家の鍵を取って外へと出る。

夢見の影響か普段だとそのまま道路へと出るのだがそれをせず、玄関先に停めてある自転車のロックを外すと花音は自転車に跨がって道路へと出た。

早朝という事もあって人通りもまばらな道を花音は自転車を漕いで学校に向かって行く。その道中で見覚えのある背中を見つけた花音は、自転車をその近くに寄せて速度を落として声を掛けた。


「おはよう、高坂」

「水代、おはよう。自転車ってのは珍しいな」


声を掛けられた光は花音の方へと顔を向けて彼女が自転車に乗って来ているのを物珍しそうに見つめる。


「ちょっと夢で自転車に乗っててね、それで乗りたくなったの」

「さよか」


理由を聞いた光は特にそれ以上気にする事無く正面を向いて歩き出し、花音も自転車から降りてその横を歩き始める。

しばらく二人が並んで歩いていると、背後から二人に近付く足音が聞こえ、振り返ると足音の主は朗らかに笑いながら手を振った。


「光、水代さん、おはよう」

「おう、おはよう」

「有沢君、おはよう。滝音さんもおはよう」

「……おはよう」


光と花音は自分達に挨拶をして来た縁に挨拶を返し、花音は縁の隣に立つ久遠にも挨拶を行う。久遠も軽く挨拶を返すとその視線を光へと移し、口を小さく動かす。


「光、おはよう」

「おう、おはよう、久遠」


そう互いに名前で呼び合う二人に花音の眉が僅かに跳ねる。そんな彼女に気付かずに縁は彼女が押す自転車へと目が移る。


「へぇ、水代さん今日は自転車通学だったんだ」

「そんな気分だったのよ」

「その割には押して行ってる様だがな」


花音が自転車で通学している事を物珍しそうに縁が見て、それに軽い気持ちで理由を口にする。久遠から茶々が入るがそれを気にせずに彼女達は学校へとたどり着いた。


「それじゃあ、私は自転車停めて来るから」

「おう、いってらー」


自転車を停めに駐輪場へと花音が向かって行くのを光達は見送る。そうして三人だけになった瞬間、先程まであまり口を開かなかった久遠が自分から口を開いた。


「光、今日の昼は空いてるか?」


突然の問い掛けに光は思わずキョトンとし、隣の縁も珍しいものを見たかの様に目を丸くしている。そんな視線を気にせずに久遠は光の返事を待ち、光はおずおずとそれに答える。


「一応空いてるけどよ……どうしたんだ?」

「前に調査した際に見つけた金属についての話がある」


久遠の言葉を聞いて光の表情が険しくなる。クロノイド関係の話をまさか学校でされるとは思わなかったからだ。


「りょーかい、場所は彼処でいいか?」

「そこで構わない、それでは」


光が了承したのを確認すると久遠は小さく頷き、一人先に教室へと向かって行く。その背を見送っていると隣に立つ縁がポツリと言葉を漏らした。


「……珍しいね、久遠からああいう話を振ってくるなんて」

「……言われてみりゃあそうだな」


縁の言う通り、久遠から話を振られる珍しさに光はふと気付く。何時もであればこういった話は縁が伝えて来るのだが、久遠が振って来た事に縁も目を丸くしている。


「ま、あいつも俺の事を信頼してくれて来たってことだろ」

「……そうだね。下の名前で呼び合う様になってるし、僕としても喜ばしいよ」


久遠が光を信頼し始めたと言われ、下の名前で呼び合う様になった事を思い返した縁がうんうんと言いながら頷く。


「とりあえずホームルームも近いし、急いで教室行くぞ」


そう言うと光は壁に掛けられている時計を指差し、その時計が既に八時を過ぎている事を縁へと伝える。ちなみに常磐高校のホームルームは朝の八時三十分からである。


「っと、そうだね。話す事は後でも出来るし、急ごうか!」

「あ!待てや!」


頷いていた縁は光の言葉にはっとなると、一人先に向かおうとする。その後を光が慌てて追い掛け、二人は教室へと向かって行った。

そうして午前中の授業を終えた昼休み、光が購買にパンを買いに向かおうと立ち上がった瞬間、弁当を手にした花音が近くへとやって来る。


「高坂、今日は部室で食べない?」


そう言って花音が光の眼前に、自分の分の弁当が入った小包を見せる。そのやり取りに教室に残っていた女子達がキャーキャー声をあげるが、本人達は気にせずに返事を待つ。


「済まん、今日は予定があるんだわ。縁、久遠、後でな」


光はそう言って花音に手を合わして頭を下げると、後で落ち合う予定の二人へと一声掛けて教室を出て行き購買に向かって走り出す。

背後で花音が膨れているのに若干後ろめたい気持ちを抱きつつも、購買にてパンを買った光は第二校舎の最上階踊場まで誰にも気付かれない様にたどり着いた。


「俺が一番乗りか……まあ、そりゃそうだな」


踊場にまだ誰も来ていないのを見て教室に縁と久遠の二人を残して来た事を思い返していると、階段から誰かが上がって来る音が聞こえる。

手摺から顔を出して光が確認をすると、待ち人である縁と久遠の二人がそれぞれ昼食を片手に階段を上がって来ていた。


「二人共今来たのか」

「ちょっと教室で色々あってね」

「ああ……本当にな……」


何かあったのか教室での出来事を思い返して苦笑している縁に 対し、何故か久遠がげっそりとしている。

何事かと光が首を傾げていると、縁は光を指差して言った。


「ほら、光が久遠の事を名前で呼んだからさ、ちょっとクラスの女子達がヒートアップしちゃってさ」

「ああー……」


縁に理由を説明されて光は思わず頭を抱える。あの年頃の女子達にとって何かしら関係を匂わす様な素振りは格好の餌だ。ただでさえ光は花音との関係を色々と突っ込まれるのに、そこに花音ですらやっていない名前呼びを久遠にしたのだ、久遠は十中八九絡まれる。

久遠も絡まれていた時の事を思い出したのか苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべて舌打ちすると、光達の視線があった事を思い出してすぐに咳払いをして空気を変えるために話し始める。


「こほん……朝に言ってた事だが……」

「ああ、前に俺達が見つけた残骸についてだっけ?それがどうかしたのか?あれ確か今は国連の預りだろ?」


久遠が話し始めたのは光来島にて国連の命令で調査を行った際に発見した残骸に関してだった。回収し滝音市まで運び終えると国連に所属していると言う黒服達が現れ、残骸を回収して行ったのは光の記憶に新しい。


「その事なんだが……」

「向こうじゃ詳しい解析が出来ないから、フォトンガードナーで解析してデータを渡すようにってさ」


久遠がばつの悪そうな表情で言い淀んだ事を、縁が肩を竦めて軽々と言う。それを聞いた光は思わず頬をひきつらせた。


「うーわー…………自分勝手……」

「得てして強欲な奴が何だかんだで上に上がると総司令は言っていたが、ここまで来ると一周回って感心する程だ」


余り他人に興味を示さない久遠も、嫌悪が一周回って感心になると言って頷いている。そんな中で縁が言葉を続ける。


「それで、夜に残骸が送られて来るからそれを受け取る事になってるんだけど……どうも上はフォトングラストに乗るパイロットに関しても興味を持ってるみたい」

「パイロットって……俺達か!?」


目を見開いて問い詰める光に対して縁はしっかりと頷き、嘘や誤解等では無いと光に言う。


「何でパイロットに興味を持つんだよ……そんなのフォトンガードナーからデータを貰えば済む話なのに……」

「そうだよね、僕もそう思っている」


頬をひきつらせながら呟いた光の言葉に同意する様に、縁は腕を組んで何度も頷く。当人もそうして拒否をしたいのだろうが、上からの今後の活動援護を考えると無下に出来ない所があった。


「だから、今日は国連の職員が帰るまでは基地に居てほしいんだけど……大丈夫かい?」


どうやら二人が話したい用件と言うのはこの事だったらしく、光は考える様に腕を組むと、視線を明後日の方へと向けて考え始める。


「う~ん……ひとまず親に電話してからだな。それでどうなるか次第だ……一応夜遅くまで大丈夫なら俺も付き合うから」

「判った、ありがとう光。流石に二人だけだと相手しづらいからね……」

「むしろ一般市民の俺が足引っ張りそうな感じがするが、そん時はフォロー頼むわ」

「確かに」


フォトンガードナーの職員を除いて目上の人間と会話する事が無い光は、苦笑いを浮かべつつも縁にそう頼み、縁も同様に苦笑いを浮かべて頷く。そんな二人を元に戻す様に久遠が手を叩いて視線を集める、


「話は纏まったな、だったらお前達は早く昼食を取れ」


そう言うと久遠は携帯を取り出し、画面に映し出された時計を二人に見せつける。そこには午後一時五分──昼休み終了まで残り五分となっていた。


「──っ!まっず!話し込んでた!」

「い、急いで食べないと!」


現在時刻を把握した二人は顔を青くすると、すぐにほとんど手をつけていなかった昼食を食べ始める。なお久遠は二人が話し込んでいる間に食べ終えており、慌てる二人の姿を見て溜め息をついている。

その後光と縁は昼食を掻き込むとそのまま走り出し、五時限目開始にギリギリ間に合った。

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