第5話
前回のあらすじ
クロノギアスの帰投に伴い、持ち帰ったデータをシュタインへと渡したリーリス。
彼女がデータからクロノギアスの改造案を製作する裏で、フォトンガードナーではクロノギアスに対する対策会議が行われた。
光、縁、久遠達三人の眼前には取り逃がしたクロノイドがビルを背にして膝を曲げ、何時でも飛び出せる様に身構えフォトングラストを待ち構える。
「ここは俺が!!」
それを目にした光は即座に武装レバーをフォトンライフルに合わせボタンを押し、フォトングラストの腰部にマウントされたフォトンライフルからクロノギアス目掛けてビームを放つ。
クロノギアスはそれを横に飛ぶことで回避するが、それを呼んで居たかの様にフォトングラストがクロノギアスへと急接近して拳を振りかぶり、重い一撃を叩き込もうとする。
けれどそれにクロノギアスも反応し、尻尾を地面に押し当てそれを支脚として拳を受け流そうとする。そこまでは先の戦いと同じ流れだったが、今回はそうはいかなかった。
「光!!」
「おう!!」
縁の指示に光が応えフォトンライフルのボタンを押す。至近距離で放たれたビームはそのままクロノギアスの尻尾を撃ち抜き、体勢を崩させる事に成功する。
「今だっ!!」
尻尾が地面から離れ体が宙に浮くクロノギアス。その無防備な胴体にフォトングラストの拳が突き刺さり、前の様な威力を殺された吹き飛びではなく拳の勢いを体全体で受け止めた一撃となってビルへと吹き飛ばされた。
その余りの勢いにビルにクレーターが出来上がり、砂埃が舞い上がりクロノギアスの姿を隠す。
縁は万が一威力を殺された際の事を考えて反撃に備えて身構えると、砂埃が晴れてクロノギアスの姿が露になる。
そこには前回と違ってダメージを負いつつも立ち上がるクロノギアスの姿は無く、体の動きに支障をきたす程のダメージを受けてビルに横たわるクロノギアスの姿があった。
「っしゃあ!!効いてる!!」
「今なら……光子剣抜刀!!」
光がダメージを与えられた事にガッツポーズをし、縁は今がチャンスだと光子剣を抜刀する。
抜刀された光子剣に光の刃が形成された瞬間フォトングラストは空に飛び、光子剣を上段に振りかぶってクロノギアス目掛けて急降下して行く。
「光子剣、フォトン・ストライク!!!!」
急降下と共に繰り出された必殺技は、ギリギリの所で息を吹き返したクロノギアスの尻尾を使った横っ飛びにて直撃を避けられるも、左腕と左足、そして尻尾を半ば程から切られるダメージを受けてクロノギアスは片膝をついた。
「縁!!もう一度だ!!」
光の言葉に縁は頷き、再び光子剣を振りかぶってクロノギアスへと向かって行く。
片足を失い、半ばから断たれた尻尾と片足で立ち上がるクロノギアスは避けようとするもバランスを崩してしまい前に倒れ込む。その隙を逃がさんと縁は光子剣を倒れたクロノギアス目掛けて振り下ろし──コックピット内にアラームが鳴り響いた。
「時間切れ、か」
何処か悔しげな縁の呟き、それと同時に眼前の風景──モニターに表示された街並みやクロノギアス、フォトングラストがビデオの一時停止の様に動きを止め、モニターが映像を映すのを止めて画面だけが光達の目に映る。
先のアラームはシミュレーターの制限時間が来た事を告げるアラームだった。
「あー!!くっそ!!あと少しの所で!!」
「最初に捉えるのに時間が掛かったのが駄目だったな」
光が悔しさの余りハンドルを力強く叩く横で、ハッチが開く音がして久遠がシミュレーターから出て来る。
光もフォトンランダーのコックピットを模したシミュレーターのハッチを開けトレーニングルームへと降り立つと、近くに置いておいたスポーツドリンクを一杯呷った。
スポーツドリンクのボトルに口をつけ何度も喉を鳴らして飲み、口を離して大きく息を吐くと光と同じ様にスポーツドリンクを飲んで休憩している二人へと視線を向ける。
ボトルを首元に宛てて火照った体を冷ます縁に、ボトルを片手にシミュレーターからプリントアウトされた戦績のデータへと目を通す久遠と二人共シミュレーターでの疲れを滲ませながら休憩を取っており、久遠に至っては敗因の分析まで行っていた。
「それにしても、このシミュレーター以外と不便だよなー」
疲れを落とそうとシミュレーターに寄りかかり、気晴らしに光はそんな話を二人に振る。
突然話を振られた二人は光へと顔を向け、縁はきょとんとしながらも光の言葉に問い掛けた。
「光?一体何が不便なんだい?そこら辺報告すれば改善してもらえると思うけど……」
「シミュレーターなのに五分ってのはねぇだろ。普通はもうちょいあるものだろ?」
光がシミュレーターに不満に思う事、それはシミュレーターで戦闘すると五分しか出来ない事だった。少なくとも光達がクロノギアスの対策を練るのと自分達のレベルアップのためにシミュレーターに入って七回、それらは全てがシミュレーターの時間切れで終わっている。
「特についさっきのだって、もう少し時間があったら勝ててたろ?それなのに時間切れで負けたってのが今一納得出来ねぇんだわ……」
先程のシミュレーターでの戦闘を思い返して文句を言う光に対し、縁は苦笑いを浮かべ久遠はそんな事かと言いたげに視線を光から離す。
共感が得られなかった光は若干不機嫌になるも、苦笑いを浮かべていた縁が光に対して説明し始めた。
「光、別にあのシミュレーターは必ず五分って訳じゃないんだよ。ちゃんと制限時間無制限の奴だってあるんだ」
「っ!じゃあなんでそれしないんだよ。それさえ出来れば訓練だって捗るもんだろ?」
時間無制限のシミュレーターがあるというのに時間制限有りの設定でトレーニングを行っている事に光は思わず文句を言う。そんな光に縁は苦笑いを浮かべながらも、何故時間制限のある設定で行っているのかを説明し始めた。
「そもそも今の設定が五分間しか戦えないってのは、ちゃんとした理由があるんだよ」
「理由?」
「うん。フォトングラストでの戦闘が五分しか出来ないから、それに合わせてるんだ」
「フォトングラストが……五分しか戦えない!?何でなんだよ!?」
縁から告げられた衝撃の事実に光は思わず目を見開き、驚きのまま光は縁の肩を掴み彼の体を揺さぶりながら理由を問う。
体を揺さぶられ頭を前後に揺れる縁は説明できず、言葉が発せられない縁を見て光が更に揺さぶるという悪循環が起きる。そんな二人の様子を見て溜め息をついた久遠が、縁の代わりに説明し始めた。
「フォトングラスト……というよりはフォトンファイターに搭載された動力炉、フォトンリアクターが原因だ。フォトングラストの状態でフォトンリアクターを戦闘可能域まで稼働させると、膨大なP波動がフォトンリアクターから発生されそれが機体にダメージを与えるんだ。五分間というタイムリミットは、フォトンランダーとフォトングライダーの二機が戦闘中に発せられるP波動の負荷に耐えられるタイムリミットなんだ」
久遠から代わりに説明された事で光は縁を揺さぶる手を止め、青い顔で彼女を見る。五分間のタイムリミットの重要性に気が付き、さっきまで軽々しく言ってた事が怖くなったのだろう。
「……ん?待てよ?前は合体したまま帰投したろ?その時は戦闘時間とか諸々込みで五分は越えてたと思うんだが……」
「戦闘可能域で五分と言った。通常の稼働率……フォトンファイター時と同等の稼働率なら、ランダーもグライダーも一時間は持つ」
「そうなのか……」
前に帰投した際のフォトングラストがタイムリミットを超過しても動けていた理由を聞いて、光は納得の声をあげる。それに合わせて五分というタイムリミットもちゃんと理由があって付けられたのだと納得して頷いた。
「それじゃ、前回の出撃の際にいきなりフォトングラストで行くって言われた時に困惑してなの、それが理由なのか」
光が思い返すは先の出撃の際に二人が見せた表情。気合いの入った光と違って困惑した表情を浮かべていた二人だが、こうして理由を聞くと納得出来る。
「基本的にはクロノドローンを三機で掃討し、残るクロノギアスをフォトングラストで倒すのが基本戦略だからね。いきなりフォトングラストで行けって言われた時は驚いたよ」
「まだ後続が来るか判断できない状況だったからな……幸いクロノドローンの援軍は来なかったが……」
縁と久遠の口から先の戦闘に対して思うところが口に出される。そんな二人の愚痴を聞いているとトレーニングルームの扉が開き、博士がやって来た。
「そう言うなら、少し難易度を上げようかの」
「「「博士!?」」」
三人が驚くのを気にも止めず博士はシミュレーターの設定を行うパソコンの前へと行き、手にしたメモリーカードを差し込むと設定をいじり始める。
「設定はクロノギアス一機とクロノドローン二個小隊、クロノギアスの進化が行われるまで合体は無しじゃぞ」
「っ!!実践形式って訳か……!」
博士の設定したシミュレーターの内容を耳にして、光はそれが次の襲撃の際に予想だと感付いて笑みを浮かべて拳を合わせる。縁と久遠も表情を引き締めると手にしていたスポーツドリンクを再び置き、シミュレーターの中へと戻って行く。
「ほれ、お主も行かんか」
「っと、そうだ……博士、ありがとう!!」
光も博士に促されシミュレーターの中へと入って行き、ハッチが閉じる間際に博士に向かって礼を告げる。
そうして博士からの反応を見る間もなくハッチが閉じ、眼前のモニターに格納庫の映像が映り、シミュレーターの始まりが告げられて光は改めて前を向く。
「よっしゃ!!行くぜ!!」
光は両頬を叩いて気合いを入れ、アップデートされたシミュレーターに挑んでいった。
クロノイド制圧軍技術局。クロノイドの技術の中枢ともいえる場所であり、制圧軍において作戦の要となるクロノギアス製造プラント。その局長室てシュタインはタブレットに送られる情報を纏めていた。
「発展技術部からのデータは以上……現在進行しとる残りはあれかの……」
一つの資料を纏め終わったシュタインが体を伸ばしながら局長室の窓より見えるクロノギアス製造プラントへと目を向ける。
そこには先の戦いで地球へと侵攻したリーリス設計の元に作り出されたクロノギアスと、その横で新たに作り出されているクロノギアスの姿があった。
「全くジェネルも無茶をする……」
シュタインはそうぼやきながら、机の中に入れていた一つの資料を手に取る。
そこには昨日ジェネルから送られて来た次の作戦の際に用いるクロノギアスの仕様が纏められていた。
「リーリスも早く持ってこんと、此方が先に出向く事になるぞ……」
シュタインはジェネルからこのクロノギアスはリーリスの改造案が出るまでの間に建造を進めてくれと言われており、リーリスの改造案待ちの技術屋達には丁度いい暇潰しとなっていたが、勝つための改造案を考える余り時間を掛け過ぎると先にジェネルのクロノギアスが先に完成しそうな勢いで建造が進んで行っていた。
そんな事を思いながらシュタインが溜め息をついてると、タブレットにメールが送信されてくる。
「ん?誰から……リーリスからか?」
送られて来たメールの送り主を目にし、それがリーリスから送られて来たと気付くとシュタインはそのメールを開き中身に目を通す。
「…………ほう」
メールの中身を見るシュタインは徐々に目に光を宿していき、最後まで読み終える頃には迫力ある笑みを浮かべていた。
「此方局長室よりシュタインじゃ。クロノギアス建造中の職員達はすぐに手を止めて第一会議室へ来るように!!」
シュタインは手元にあったマイクを手にして館内放送を掛けて、クロノギアス建造に関わる全員を会議室へと集める。
窓越しに先程までジェネルのクロノギアスを建造していた技術者達が建造を取り止め、見苦しく無い様に身だしなみを整えに更衣室へと向かって行くのを目にしながらリーリスのクロノギアスへと目を向ける。
「遂にあやつが生まれ変わるか……!」
リーリスから送られて来たクロノギアスの改造案、それによって目の前のクロノギアスがどの様な進化を遂げるか胸の高鳴りが抑えられないシュタインは、頭の中に様々な姿を思い描いて笑みを浮かべる。
しばらくして冷静になったのか何かを思い出したかの様な表情をすると、衣服の中に入れた何かを探すためにあちこちいじくり回し始めた。
「おっと、あったあった……」
そうして手にしたのは携帯通信端末で、シュタインはそれを操作しながら局長室を出て行く。
「ジェネルにもちゃんと報告せねばならぬからな……」
そう言ってジェネルへと連絡を入れる準備をしながら、シュタインは第一会議室へと向かって歩いていった。
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