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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第3節・新たなる影
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第4話

前回のあらすじ


現れたクロノギアスを相手に光達は最初からフォトングラストへと合体して挑みかかる。

身軽な動きに苦戦しつつも勝機を見出だした三人だが、いざ反撃といった段階でクロノギアスは時空転移ゲートへと吸い込まれて行った。

クロノイド制圧軍基地にて、カタパルト上に開かれていた時空転移ゲートに格納庫から紫の光線──トラクタービームが放たれる。

トラクタービームは時空転移ゲートから一際輝く紫の光を引き出すと、時空転移ゲートは閉じて光は格納庫へと向かって行く。

そして光は格納庫の一角にて固まるとその姿を先程まで滝音市を襲撃していたクロノギアスの物へと変えて、元からそこにあったかの様にそこに鎮座した。


「整備班!!すぐに整備に入りな!!少しでもへまがあったらお仕置きだからね!!」


その格納庫内に張りのいい女性──リーリスの声が響き渡り、格納庫内に居た整備士にクロノギアスのメンテナンスと修理を命じる。

そうして整備士達が駆け回るのを尻目に水からのタブレット端末に目線を落とすリーリスの元に、二人の足音が近寄って来る。

リーリスは足音に気付いてはいるが対して気にも止めずにタブレットへと目を落とし、足音の主達がリーリスの後ろで足を止めたのを聞いて小さく溜め息をつくとようやく振り返った。


「大口を叩いた割にはずいぶんな成果だったではないか。逃げ帰らせた感想はどうだ?リーリス」

「はっ!応援すんのか貶すのか、あんたははっきりしなよジェネル将軍!」


足音の一人、ジェネルは多少の損傷を負いつつも基地へと戻って来たクロノギアスを一瞥し、そのクロノギアスを設計したリーリスに鼻を鳴らしながら嫌味を言う。

リーリスはそんな嫌味を気にも止めず、むしろ作戦の主導権を得た際にジェネルから告げられた言葉を引き合いに出して言い返す。二人の間に険悪な空気が流れ始めるが、その空気は第三者の手によって霧散した。


「そこまでじゃ二人共。ジェネルよ、今回の帰投はリーリスの作戦の内じゃよ」

「何?」


シュタインの口から無様な敗走が作戦の内と告げられ、顔をしかめるジェネル。自ずと視線は作戦を考案したリーリスの元へと向けられ、リーリスは鼻を鳴らしてジェネルの視線を無視すると、手にしたタブレットをシュタインへと差し出す。


「これが今回の出撃で取れた戦闘データさ。つい先程本命プランが出来上がったから、後で送るわね」

「うむ、何時もの端末にの」


タブレットをシュタインへと差し出したリーリスはそう言うと格納庫から出て行き、ジェネルとシュタインの二人、そしてクロノギアスの整備士達だけが格納庫に残る。

残されたジェネルは、タブレットへと目を落とし始めるシュタインと彼が見ている物に僅かばかりの興味を抱き、盗み見ようと体を動かした所でシュタインの白衣の袖で顔面を叩かれた。


「ぬがっ!?」

「何盗み見ようとしとるんじゃお主は。それでも栄えあるクロノイド制圧軍の将軍か」

「す、済まん……だが気になるのだ……」

「……まあ別に隠す物でも無いしの。ほれ……」


盗み見しようとするジェネルにシュタインが溜め息をついていると、隠す物でも無いと言ってジェネルにもタブレットの画面を見せる。

そこにはクロノギアスの目線でのフォトングラストとの戦闘データが映し出されていた。


「奴はこのデータを元に勝てる様にこのクロノギアスを改修するつもりなのじゃ」

「二段構えか……そのため殆どフレームのクロノギアスで挑んだ訳か……」

「場合によっては機体がパーになってる作戦じゃが、奴はその賭けに勝ったのじゃよ」


そう言うとシュタインはタブレットから目を離し、整備中のクロノギアスへと目を向ける。

シュタインの目が気持ち輝いて見えるのは、眼前の素体のクロノギアスがどの様な姿に生まれ変わるのか楽しみでしょうがないと言いたげな様子だった。


「……失礼した、俺も執務へと戻る」


シュタインと格納庫の熱に居心地が悪くなったのか、ジェネルはそう一言だけ告げて格納庫より去って行く。

クロノギアスに夢中になっているシュタインはそれに気付かずに、徐々に修理されつつあるクロノギアスを前にしてリーリスが改修プランを持って来るのを胸踊らせて待ちわびていた。






クロノギアスの襲撃から三日、復興の音が響く滝音市は表向きは日常を取り戻しつつあった。

けれど所々ではクロノギアス襲撃の被害は残っており、常磐高校では部活動が一時的に休止となっている。

それでも部活動が無いからといって運動部は練習を怠ることは無く、ランニングや筋トレ等基礎的なトレーニングを行い、文化系の部活動は襲撃前と変わらずに活動しており、それはジャナ部も同じだった。


「水代ー、こっちの取材は終わったぞー」

「ありがとう高坂。私の方も終わったよ」


六限目の授業を終え、放課後の常磐高校を出た光と花音の二人はクロノギアスの襲撃があった市街地付近に来ており、そこでメモ帳を片手に近場の店を巡っていた。

花音が考えていた新聞のネタ『復興する街の意気込み』の題材として、クロノギアスが現れた場所の近くにある様々な店を取材して、復興への意気込みを取材してそれを記事にするらしく、二人はそれぞれ二十店舗を目安に取材を行い丁度終わったらしく互いに合流する。


「そっちはどんな感じだったか?」

「うん。復興には前向きで、へこたれてられないって意見が沢山あったよ」


そう言って花音は光にメモ帳を開いて光へと見せつける。そこには花音の言ったように復興に対して前向きな意見が書き記されていた。


「俺も似たようなもんだったわ。けどな……」

「うん……」


光も花音に取材の内容が記されたメモ帳を見せつけ、同じ様に前向きな意見が沢山あった事を報告するが、同時に僅かに表情を曇らせると花音も僅かに表情を曇らせ、自らのメモ帳のページを捲る。


「やっぱり、参ってる人達は居るんだよね……」

「そうだな……」


花音が捲ったページには復興に対して前向きな意見と共に、弱音の様な記述が幾つか記されていた。それらはクロノギアスの襲撃のせいで被害を被り、復興に大きな負担が掛かると言ったように店の意見であり、同様の意見は光の方にも多々あった。


「でも、これでも少なくなってるみたい」

「少し前はまだ多かったみたいだしな」


けれどこれでも少なくなった部類だと二人は聞いている。そしてその理由もまた、同時に彼等は取材していた。


「フォトンガードナー……皆期待しているみたいだね」

「そうだな……」


初めてクロノギアスが襲来した時に被害を被り、店を畳もうとしていた人達にもたらされた朗報。クロノギアスを相手に戦うフォトンガードナーの存在は、もう一度頑張ってみようと勇気づける切っ掛けとなっていたらしい。

こういった形でフォトンガードナーの……ひいては自分の活躍の影響を聞けた光は思わず頬を指で掻く。


「高坂?何で頬を掻いてるの?」

「へ?あ、いや……ちょっと痒くなってな……」

「ふーん……」


光が頬を掻いているのに何か違和感を覚えた花音がそう光に問い掛けるが、光が慌てて誤魔化して煙に巻くとそんなものかと言いたげに目を離し、光は安堵の息を零す。

二人がそんなやり取りをしていると、光のズボンから携帯のアラームがなり始める。


「……済まん水代、俺もここまでだわ」

「ううん、お陰で助かったわよ。ありがとう、高坂」


アラームを聞いた光は花音に頭を下げこれ以上取材は出来ないと告げると、花音は首を振って労いの言葉を告げて帰路へ就く。

そんな彼女を見送った後、光は近くにあるコインパーキングへと向かい、そこに停めてあった一般車に偽装したフォトンガードナーの車へと乗り込んだ。

光が乗り込んだのをバックミラー越しに運転手が確認すると、彼は車をコインパーキングから発車させ滝音コーポレーションへと向かって走らせる。


「ずいぶんと仲良さそうじゃないか、もしかしてこれ(・・)か?」


その最中で運転手が光の方を振り返り、面白そうに笑みを浮かべて小指を立てて見せてくる。光はそれに溜め息をついてぶっきらぼうに答えた。


「別にそんなんじゃないですよ。確かに中学時代から付き合いはありますけど……」


そう光は手慣れた様な感じで花音との関係を説明する。実際彼は花音と共に居る時に何度かその手の質問やからかいをうけており、最初の内は確かに慌てふためいていたが時が経つに連れて慣れていき、今じゃ平然とそう返せる程になっている。


「それはともかく、部活動で復興に対する意気込みとかを聞いて回ったんですけど……結構な人が前を向いて頑張ってましたよ。中にはフォトンガードナーの活躍を糧に頑張ろうって人も居ましたし」

「へぇ……嬉しい事を教えてくれるじゃないか」


話題を変えようとフォトンガードナーの職員である運転手にも通じる話題として、花音と共に行った取材の話をしていると運転手は笑みを浮かべて言った。


「だったら、その期待に答えないとな」

「ええ」


そんな話をしながら滝音コーポレーションへとたどり着き地下駐車場に停めた車から光は出て運転手へと頭を下げると、司令部に向かって歩き出す。

そうして光がたどり着いた司令部には、平野を初めとした職員達に司令官の光平、そして博士に縁と久遠が待っていた。


「ただいま参りました」

「よく来たね。それじゃあまとめたデータから会議を始めようか」


光平の言葉と同時に司令部のモニターの映像が切り替わり、三日前に相対したクロノギアスの物へと変わる。


「お主等が相手をしたこのクロノギアス……見てくれから解る通りかなりの軽量化が施されておる。更に長い手足から来る運動性は、前に相手した二体の比ではじゃろう」


モニターに映るクロノギアスを目にしながら博士が解説をし、光に縁、久遠の三人は解説に頷く。


「一応動きは見切る事は出来ましたし、後は着々と詰めていけば勝ち目はあると思います」

「問題点としてあげるなら、尻尾をどうにかしなきゃならないって所ですかね」


戦闘の状況を動画で観ながら縁は勝機があると口にし、光はその勝機を掴むための問題点を指摘する。

モニターに映る映像は、丁度クロノギアスがフォトングラストの右ストレートを尻尾を使って威力を殺す瞬間が映っていた。


「考えられる手札としては、奴を尻尾も手足も使えない上空に浮かすとかか……」


久遠が顎に手を宛てて、クロノギアスを相手にどう立ち回ればいいのかを考え、それに光と縁は頷く。

一度上空に飛ばせさえすれば近くに体重をかけられる様な物が無ければ、あいつは推力の掛かる方向にしか向かえない。そうなったらスラスターで空中も飛べるフォトングラストなら確実に仕留められると三人は思った。


「じゃが、次はそうは上手くいかんじゃろうよ」


そんな三人の対策案に水を差す様に博士が割り込んで来る。上手くいかないと言った博士を光平が見て、光平は何故上手くいかないのだと思われる理由を口にする。


「クロノギアスの進化、か?」

「それもあるが、根本的な問題ではないわい」


今までもあった戦闘中のクロノギアスの進化、それが次の戦いも上手くいく保証が無い理由だと考えた光平だが、博士はそれ以外にもあると言ってモニターへと目線を向ける。


「このクロノギアス、確かに多少は外部装甲を纏ってはおるが殆ど素体そのままじゃ。元々フォトングラストに対する当て馬として出されたと考えた方がよいの」

「素体……」


モニターに映るクロノギアスを素体と博士は言い、素体と聞いて光は初めてあのクロノギアスを見た時に、何らかの素体みたいだと感じたのを思い出した。


「素体に当て馬……ということは……」

「次のクロノギアスは、こやつから取られたフォトングラストのデータを元にした奴が来るじゃろう」


次に現れるクロノギアスがフォトングラストに対して対策を取って現れる様な事を言う博士に、司令部に居る全員を沈黙が包む。

そんな空気を払拭したのは、博士の仮説を聞いて光が拳を打ち合わせた音だった。


「上等だ。向こうが強くなるってんなら、俺達も強くなればいいだけの話ってもんだ」


光が口にした単純な答えに司令部の全員がポカンと口を開き、縁が小さく笑いを堪え始めた。



「くっくっくっ…………!光の言う通りだね。向こうが対策するなら、対策が追い付かない位僕達が強くなればいいだけだね」

「おう、という訳でシミュレーター行くぞ縁!」


縁からの賛同を得た光は、そのテンションのままシミュレーターが置かれたトレーニングルームへと向かうために司令部を出て行く。

縁もその後に続いて司令部を出ようとした所で一旦振り返り、職員達に頭を下げて光の後を追って司令部を出て行った。


「……………………っ待て!!そんな簡単な事ではないんだぞ!?」


二人が去ってしばらく沈黙が司令部を包むが、正気に戻った久遠が出て行った二人の後を追いかける。

フォトンシリーズに乗る三人が出て行った司令部は再び唖然とするが、縁と同じ様に光平も口許を抑えて笑いを堪え始めた。


「くっくっくっ……!そうだな、分からない未来の事を考えたって仕方無い。日々の積み重ねをぶつけて対処しなければな」


光平が持ち直した事で職員達も持ち直して笑いながら仕事に戻る。彼等が仕事に戻ったのを確認すると光平は博士へと目を向けて声を掛ける。


「博士、シュミレーターの件ですが……」

「解っとるよ、儂が想像できる分の進化パターンをデータに入力しとくわい」

「頼みます」


光平の頼みを聞いた博士は三人の後を追って司令部を出て行く。残された光平は司令官の席へと座り、解析されつつある情報に目を向け始めた。

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