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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第3節・新たなる影
19/150

第1話

この話より第3節に入ります。


今後とも超光戦機フォトングラストをよろしくお願いします。


前回のあらすじ


フォトンガードナーの基地にてフォトンガードナーが国連の特務機関となった事が全世界に放送された。

光はそんな発表の後に、改めてフォトンガードナーに協力すると光平に返事をした。

辺り一面暗い紫に彩られた謁見の間。柱に取り付けられた赤黒い照明が照らすその一室で、ジェネルとシュタイン、そしてリーリスの三人は部屋の中央にて同じ方向を向いて跪いていた。

そんな彼等が向いている方向、天蓋に包まれた玉座にて天蓋越しにその影を表す一人の男──クロノーア皇帝が三人に向かって口を開く。


「……して、その報告は真なのか?」

「はっ!!此方を……!!」


ジェネルから課せられた報告──地球に存在する敵対勢力の情報を聞いたクロノーア皇帝はジェネルに真実かを問い、それにジェネルは一枚のメモリーカード──北丘の会見を記録したメモリーカードを差し出すと、それは腕を突き出したクロノーア皇帝の力によってジェネルの手から離れクロノーア皇帝の元へと向かう。

天蓋の隙間から入って来たそれをクロノーア皇帝が手にすると、しばらくの沈黙の後にメモリーカードを握り潰す音が謁見の間に響き渡った。


「愚か者めが……一度や二度の偶然でつけあがりおって……」

「「「──っ!!」」」


暗い地の底から響き渡る様な怒りの声を露にするクロノーア皇帝に、三人は体の細胞全てが怖気立つのを感じる。クロノーア皇帝は言葉と共に放った威圧感を戻す事無く、頭を垂れる三人へと口を開く。


「これより、身の程知らずの地球人の希望であるフォトングラストの破壊を貴様等に命ずる。この命令をやり遂げた者には、特位公爵の地位をくれてやろう……」

「「「はっ!!」」」


クロノーア皇帝から下された命令に三人が揃って返事を返す。それを聞いたクロノーア皇帝が指を弾くと、三人は一瞬で作戦司令部へと転移させられた。


「……ハァ~~~~~ッ……こればかりは生きた心地がせんわい……」


クロノーア皇帝の前から解放されたシュタインが、まともに出来なかった呼吸を此処で取り返さんとばかりに大きく息を吐く。そんな彼に続いてジェネル、リーリスも無事に戻って来れた事に安堵の息を零す。


「ハァ~~~~ッ……あの情報、高くつかせてもらうよ……!」

「出世払いだ。だが……お前に貸しを作ったな……」


リーリスがにそう声をかけると、ジェネルは悪態をつくように吐き捨てる。

先程ジェネルがクロノーア皇帝に私たメモリーカードは、クロノドローンだけが地球へと出撃した際にリーリスが地球へと送った情報収集メカからもたらされた映像だったからだ。


「それにしても、皇帝陛下はずいぶんとお怒りの様じゃな……」

「そうだねぇ……命令達成の褒美が特位公爵の地位だなんて……よっぽど邪魔されたのが苛立ったんだろうねぇ……」


リーリスに貸しを作る事に苦虫を噛み潰す様な表情を浮かべるジェネルを他所に、シュタインとリーリスの二人はフォトングラスト破壊命令を出したクロノーア皇帝の心情を鑑みて、過去最高に怒っているのを感じ取る。

クロノーア皇帝が軍事に政治、その双方の実権を握るこの国にて最高位の貴族階級である公爵、更に有事の際には特別な権限の使用が許可されている特位の称号を授けるということは、それほどフォトングラストを相手に怒っているのだと伝わった。


「ならば急いで奴を倒さねば。何時までも皇帝陛下の気を煩わす訳にはいかぬからな」

「あたしも今回は色々と本気で行かせてもらうよ。公爵階級に特位称……こんなもん見せられたら、是が非でもやる気が出るってものさ」


ジェネルはクロノーア皇帝に対する忠誠心から、リーリスは褒美としてもたらされる権力に対する野心から打倒フォトングラストに燃える。

そんな彼等のやる気を見て、シュタインは僅かに首を振って口を開く。


「儂はお主等の権力争いに関しては関わらんよ。そこまで本気になれんわい」

「む……そうか」

「あたしとしゃ、ライバルが減っていいけどね」

「儂は儂の作ったクロノギアスでフォトングラストを倒せればそれで満足じゃ。新造のクロノギアスの設計に関してはお主等に任すわい」


あくまで技術者のシュタインにとって余計な権力は自らを縛る鎖にしかならない。先んじて権力争いに参加しない事を表明する事で二人からの邪魔を無くし、更に双方にクロノギアスの開発を約束することで、クロノギアスを独占しようとする抗争にも巻き込まれない様に彼は立ち回った。

ジェネルはシュタインの権力を求めない姿勢と双方に公平な条件を与えるその姿に感心した様子で頷くが、リーリスはシュタインの思惑に感付いたのか小さく舌打ちをするが、その思惑を指摘する様な真似はしない。

もし彼から不興を買ってクロノギアスに関するサポートを受けられなくなれば、リーリスが主導となる地球侵攻は一気に滞るからだ。


「ならば早速新しきクロノギアスの設計を行わなければ!その活躍を持って皇帝陛下に吉報を届けるのだ!」


そう気合いを入れたジェネルは新たなクロノギアスの設計を行うために自らの執務室へと戻ろうとするが、それに一人待ったを掛ける。


「待ちな、あんたは既に二回も出てるんだろ?だったら次はあたしの番だよ!」

「リーリス、お前は……!」

「ここで譲ってくれたら、情報に関する貸しは返した事にするけど、どうだい?」

「ぬぐぅ……!?」


リーリスがジェネルに対して次は自分だと言った瞬間、部屋の温度がジェネルの圧で二、三度程下がるが、当のジェネルはリーリスから告げられた貸しの清算に顔を歪める。次のたった一回の出撃と未来の何時起爆するか分からない爆弾、その双方を秤に掛けたジェネルは酷く苦々しい顔をしてリーリスへと答えた。


「いいだろう……だが、皇帝陛下のためにもやるなら勝て」


酷く苦々しい表情でそう呟くジェネルを見てリーリスは目を見開くと、堪えきれずに大声で笑い始める。


「~~っ!!あっはっはっはっはっ!!まさか政敵にさえそんな事を言えるなんてねぇ!?大した忠誠心だこって!!」

「ええい!!いいから行け!!」


大声で笑うリーリスに向かってジェネルが怒鳴り、足音を大きく立てて作戦司令部より出て行く。そんな彼を見て未だに笑うリーリスを見ながらシュタインが小さく溜め息をつくと、彼も作戦司令部を出ようと歩き始めた。


「儂も時空転移ゲートの調整がある以上戻るわい。設計が済んだら技術部に連絡を入れるのじゃぞ」


そうリーリスに告げるとシュタインも作戦司令部より出て行き、リーリス一人が残される。

ある程度笑いが収まってきたリーリスは、懐から自分のタブレットを取り出しフォトングラストの映像を映すと嗜虐的な笑みを浮かべて舌舐めずりをした。


「さぁて……先ずは小手調べかねぇ……!」






フォトンガードナーの基地の一室、そこでモニターを前に博士が教鞭を手にして話をしている。

光がフォトンガードナーに入って三日、光は訓練の合間に博士からフォトンガードナーについて色々と教わっていた。


「──という経緯で、この組織は創られたのじゃ……聞いておるか!」


博士の教鞭が床を叩く音が部屋中に響き渡る。しかし部屋の中に居た光は、身動き一つ取ろうともしない。


「わ……分からねぇ……」

「……どうやら詰め込み過ぎた様ですね」


モニターの前に置かれた長机、光はそこにうつ伏せになって倒れ付しており、頭からは煙が昇っている幻覚が見える程に消耗している。

そんな彼を見て苦笑いを浮かべて縁が博士に伝えると、博士は顔を歪めて再びモニターへと向き直った。


「仕方無いの……まずは一つ一つ覚えさせるか……」


博士はそう呟くと手にしたリモコンを操作して、モニターの映像を切り替える。先程まで文字しか映ってなかった画面が切り替わり、紫に染まった大気を持つ地球とよく似た惑星がモニターに映し出される。

光も話が変わった事で多少回復したのか顔を持ち上げモニターに映った未知の惑星へと目を向け、博士も光が回復したのを見て小さく頷くと説明を始めた。


「今画面に映しているのは異世界『クロノシアス』、時空転移ゲートを隔てた先にあるクロノイド達の世界じゃ」

「クロノシアス……クロノイド達の居る世界……」

「うむ、地球と似た様な外観をしておるが地上は全く違う。時空転移ゲートいった超技術を持つ高い文明を持った世界じゃ」


そう博士が告げるとクロノシアスの映像がズームアップされ、その地の文明を映し出す。

他所の世界への侵攻にロボットを使っていた通り高い技術水準を誇り、建物は巨大なビル群が立ち並ぶ街並みとなっていた。


「ずいぶんと発展してるんだな……」

「上っ面はの」


光がクロノシアスの文明に対して感嘆の声をあげると、それを否定する様に博士は吐き捨て映像を切り替える。

そこには先程までの華々しいビル街とはかけ離れた、廃墟と変わりはしない家に住まう人達の姿が映し出された。


「先程見せた中央区に住まうのは一部の特権階級とその従属者のみ、他の市民達はこの様に貧困した生活を送っておるのじゃよ」


余りにもかけ離れた格差社会の図を見せる博士は、今にも唾を吐き捨てんと言わんばかりの態度で説明する。

けれど光の目を引いたのは、クロノシアスの格差社会ではなく別の要因だった。


「地球人によく似ているな……」


映像に映っていた家族を見て光が小さくそう零す。廃墟同然の家で暮らしていた人達は、揃いも揃って地球人と似た容姿をしていたのだ。

唯一の違いと言えば髪の毛や瞳の色が、地球人では自然に生まれる様な色では無いという点だろうか。


「うむ、髪と瞳の色以外地球人とクロノイドの差は殆ど無い。むしろ酷似した容姿じゃったからこそ、亡命して来た者達を受け入れられたのであろうな」


博士はクロノイドが地球人と似通った容姿をしている事に頷くと、それによってもたらされた利益の事を思い浮かべて何度か頷く。

けれどその言葉は光にあることを思い至らせ、光は顔を青くして博士に問い掛ける。


「それじゃあ、俺達はあの人達を殺したってのか……!?」

「その心配は要らぬ。クロノドローンにクロノギアス、どちらも基本は無人の兵器じゃ」


彼等の様な人を殺していたのでは無いかと冷や汗をかく光に対し博士は安心する様言うと、光も意思疏通の出来る人達を殺していなかった事に安堵の息を零す。


「じゃが……いずれ有人のクロノギアスも侵攻に使われるじゃろう、その時は……」

「……」


しかし、博士より出て来た有人のクロノギアスを相手取らなければならない事に光は再び表情を暗くする。博士の隣で聞いていた縁も表情を険しくし、光に向かって口を開く。


「地球に侵攻してくる以上、何処かでぶつかり合う可溶性があるんだ。それは覚悟していてほしい……けれど……もう一つあることも覚えていてほしいのじゃ」

「あること……?」

「あくまで敵は地球に侵攻してきておる一部の者達、それ以外のクロノイドには罪はないということをな」

「……」


博士の言葉を聞いた光は無言だがしっかりと頷く。歴史の授業で敵対していたからいう理由で一族郎党処かその部族の人間全員が殺されるという事例は地球にもある。クロノシアスから亡命して来たクロノイド達のお陰で侵攻して来る相手に立ち向かえるのを考えれば、それはやってはいけないことだ。

光がそれを理解しているのだと確認すると博士は小さく頷き、再びモニターの映像を切り替える。

今度は先程まで映っていた貧困している人達ではなく、巨大な城が映し出された。


「市勢の話はここまで。ここからは敵の情報を伝えて行くぞ」

「敵っていうことは、こいつらがクロノドローンやクロノギアスを……」

「うむ、クロノイド制圧軍……クロノシアスを支配するクロノーア皇帝が頂点に立つクロノシアス唯一の軍事組織じゃ」


博士が説明しながら、モニターに映る城の城壁内の映像を拡大する。そこには滝音市に攻め入って来た時とは比べ物にならない程のクロノドローンの大軍勢が、規則正しく整列していた。


「何て数のクロノドローンだよ……!」

「僕もこの映像を見た時は度肝を抜かれたさ。今一番の幸運は、この大軍勢が攻め入って来ない事だね」

「それはおそらく時空転移ゲートの問題じゃろう。だからこそ、何時本格的に攻め入って来るか解らぬのだがな……」


余りの大軍に戦く光に、縁もその反応は最もだと頷き今は戦わずに済んでいることを呟くが博士の言葉を聞いて複雑な表情を浮かべる。

表情を暗くする二人を見て話を戻そうと博士は咳払いをし、再び映像を切り替えて話を続けた。


「そしてこの男かクロノーア皇帝……クロノシアス国内で大きな格差社会を作り上げ、地球に対して侵攻を決めた皇帝じゃよ」


切り替わった映像には天蓋に覆われた玉座から、シルエットだけが見える一人の男が居る。敵のリーダーの姿を見た光は表情を険しくしつつも、一つあることが気になって博士へと問い掛けた。


「一つ気になったんですが……クロノーア皇帝って、一体どういう理由で地球侵攻に踏み切ったんですかね?」


光はクロノーア皇帝がどうして地球侵攻を行おうとしているのかが気になりそれを博士へと聞くと、博士は眉を寄せて困惑した様子で答える。


「……それは分からん。亡命して来たクロノイド達も、何故地球侵攻を計画したのかは分からぬと言っておったからな……」

「そうですか……」


侵攻理由を知らずに苦々しげな表情を浮かべる博士に光が一礼すると、光は改めてクロノーア皇帝の姿へと目を向ける。その目には敵意の他に困惑の色が浮かび、クロノーア皇帝の目的を計りかねていた。

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