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第4話 結局こうなるのよね

 攻略対象から具体的に依頼されたのはこうだ。


 学園内で行方不明になっているドラゴンを倒して消した生徒がいるという噂がある。

 その生徒が誰なのか突き止めて欲しい。


 へー!ドラゴンを討伐した上に消した生徒がいるんだ!

 優秀な生徒がいる我が校には、ドラゴンを討伐できる生徒がたくさんいるから、誰が犯人かなんて分からないわよね〜

 

 ……って!んな学生が居てたまるか!ドラゴン討伐する高校生って何よ?!?


 こんな大事件なのに、この事件はメインストーリーに関わっていないから、私のプレイ知識はまたもや役に立たない。

 苦労することは必須。

「裏でエアリスがこんなことになっていたなんて……」

 この時期はエアリスもヒロインちゃんと出会ったばかりなので、そこそこ物語に絡むから暇なイメージはない。

 あなた学園生活を結構楽しんでいたのね……

 


 ***


 事件が依頼されたことは、新聞部員達には秘密だ。

 信頼に足る人物になら事件について詳しく話しても良いと言われているが、どう考えても部員達はバラすだろう。

 助手のいない探偵は孤独過ぎる。


(本当エアリス、恨むわよ……!)


 私は手がかりを探すため、ドラゴンと戦ったのではという噂の場所を見に行った。

 さっきから噂噂って、曖昧な情報にも程がある。


 行った場所は、校庭の一区画だった。

 ここが妙に汚れている気がするらしい。

 あと、薄暗くて事件が起きても分かりにくいとか。


「……」

 

 このそんな広くない一区画が怪しいって。

 RPGみたいに一箇所に止まってバトルしてくれたりするの?


「この乙女ゲームにはRPG要素みたいなのはなかったはずなんだけどなぁ……」

 

 エアリスは万能なので、ある程度なら魔法を使った痕跡を探知できる。

 痕跡を探したが、それらしいものは全く見当たらなかった。

 私が見つけられないだけかもしれないけど。

 ここで見つからないとなると、学内全域を探さなければならない。


 その後3日間、私は学校のあらゆる場所でドラゴンの手掛かりを探したけれど、見つけることができなかった。

 この学校は小中高一貫校で敷地がものすごく広い。それでもくまなく探したのに。

 校内を歩き回り調査をしている間、魔物保全委員会のメンバーも何度か見た。

 彼らも現場検証なのだろうか。

 だとしたら、私のやっていることは彼らと同じことをしているわけで、彼らの方が犯人に辿り着くのは早そうだ。

 現場検証を諦め、犯人から絞ろうとエアリスの記憶を探る。


 ドラゴンを討伐できるような生徒はいるの?


 ——いなくはない。一握りの存在だが、複数人であれば可能だ。


 そうして脳内に出てきたのは、ヒロインちゃんと生徒会メンバーだった。


(でも依頼者が生徒会メンバーの一人なんだよね……あり得る?)


 犯人を捕まえて、腐った生徒会を変えてくれ!みたいな?

 生徒会のメンバーの中に攻略対象は多い。

 逮捕エンドなんてなかったわよ?


(あとあり得るのは、生物部部員?)


 生物の生態に詳しい生物部部員ならドラゴンの弱点が分かるのでは……?


 前回の犯人もあの中にいたわけだし、意外とヤバい組織なのかも。


「……私の推理力はここまでのようね」

(ぜーんぜん分からない!もう探偵なんて無⭐︎理)


 ***


 家に帰ると、今日もクロードと顔を合わせることになった。

 正体がバレてからクロードとは気まずいままだ。

 今のところエアリスを探すために何か協力しろとも言われていないので、ろくに話をしていない。

 しかし、いよいよ事件の方が切羽詰まってきて、私はクロードに頼りたくなっていた。


「えーと、クロード……さん?」

 2人きりの時にそう切り出すと、クロードの眉間の皺が深くなった。

「実は、また事件の解決を依頼されて……それで困っていて……」

 エアリスお嬢様でもない貴方に協力するわけないでしょうと言われるに決まっている。

 だってクロード絶対私のこと嫌いだし……


「なぜそれを早く言わないのです」

「えっ……」

 優しい言葉と裏腹に、かなり苛々とした顔だった。


「何日その問題を放置していたのですか」

「えーっと、依頼された日から4日、くらい……?」

「我が家の名折れです。

 エアリスお嬢様であれば、その4日で事件を解決してみせたでしょうに」

「いや!エアリスだって4日では難しいはず!だって魔物保全委員会まで動いて調査しているのに見つからないんだから!」

「……とりあえず話を聞きましょう。判断はそれからです」

 私はクロードに事件の概要を話始めた。


 ***


「何か分かりますか?」

「4日経って、そんなことしかしていないのですか?」

「そんなことって!足を使ってこんなに頑張ったのに!」

 

「まぁ、学園中の魔法の痕跡を洗い出して下さった事で、一つ分かったことがあります」


「なに?」

 

「痕跡が残されていないのであれば、ドラゴンは学園内で討伐されていないのは確実という事です」


「え……?で、でも“学校の領域内でドラゴン一体が行方不明“って魔物保全委員会の人達が言ってましたよ」


「領域内で行方不明と言っただけで、領域内で討伐されたとは言っておりません」


「何その屁理屈……」


「魔物保全委員会はどのような状況を“行方不明“と指したのでしょうか?

 行方不明という言葉をそのまま捉えるならば、生死不明で学内で消えたという意味になりませんか?」


「そう言われればそう、かも」


「学園内で行方不明と言われて、“学園内で生徒が討伐して(殺して)消した” と思った生徒達が、そのような噂を流したのでしょうね。

 確実な情報を得るため、まずそのドラゴンについて教えて下さい。

 どのような形状、大きさのものでしょうか」

 

「小型のドラゴンらしいです」


 本によると体高2〜3m、尻尾込みで体長3〜4mくらい。

 サイズは手綱を付けて人が乗るのにちょうど良い大きさっていうところ……


「……あの、気になったことを言っても良いでしょうか」

 クロードが居心地悪そうに私の話を遮った。

「もう何か分かったんですか?!」

「いえ、敬語なのが気になりまして」

「えーっと、転生前の私もクロードさんより年下だし……なんか上司っぽくて……」

「上司……まぁ、2人の時だけなら構いませんが。皆の前では示しがつかないのでやめて下さい」

「クロードさんは私のこと呼び捨てで良いですよ!エアリスさんの前ではそうして……」

「やめて下さい」

 ギロリと睨みつけられて身体がすくむ。

「私の主人はエアリス様だけですので、貴方と話す時はあくまで敬語です」

「す、すみません……」


「さっさと解決してしまいましょう、こんな事件」


 呆れるように言ったクロード。

 魔物保全委員会が手を焼いている事件をさっさと解決なんてできるの?


「貴方が懸命に考えていたドラゴンが死んだ場所ですが……これは割とどこでも良いかと」


「えっ?!?」


「それよりも、どのように消したかが重要かと思われます」


「どうしてですか?」


「その方が可能性を絞れるからです」

 

「どこで殺したのか?という話では、学園内をくまなく探して下さった貴方の回答は“分からない”でした。

 つまり、学校外のどこかとしか分からない。

 しかし、消し方にそこまで選択肢はないでしょう」


 学外を探すと思うと気が遠くなるので、消し方から考える方が賢いかもしれない。

 頭の良い人ってこういう考え方をするのね〜


「前提条件を考えます。

 魔物保全委員会は“行方不明”と言ったので、生きてる可能性を検討してみます」


「生きてるとは思えませんけど……」


「そうですね。生きているならば、学校の敷地内のどこかにいるのですから、すぐに見つかるでしょう。

 とっくに魔物保全委員会やあなたが見つけているはず。

 なので、死んでいるとします。魔物保全委員会は死骸を探しに来ている。

 いつ死んだのか情報はありますか?」


「明確な情報はありません。魔物保全委員会が教えてはくれませんし」

 

「状況から鑑みるに、割と時間が経っている気はします」


「どうしてですか?」


「死んだと判明してから魔物保全委員会が来たのがすぐだった場合、念のため生きている可能性も考えたり、うっかり死骸に触れて怪我をすることを懸念しそうです。

 学校が休みになったり、もっと大事になっているでしょう」


「確かに……」

 

「学内にはまだ魔物保全委員会がいるんですよね?」


「はい……ということは、まだ見つかってなくて探し中?」


「そういうことになりますね。

 魔物保全委員会が4日見つけられずにいる。

 ドラゴンの死骸を隠すのは難しいです。ドラゴンには魔力がありますから、少しでも肉が残っていれば魔力探知に引っかかってしまう」


「じゃぁ魔法みたいに完全に消えたってことですか!」

 

「魔法みたいに、ですか」

 ふ、とクロードは笑った。


「ドラゴンの死骸を完全に消すなんてどうしたら……」


「人間の死体と大差ないです」


「なんで知ってるんですか?」

「年の功というやつでしょうかね。

 まぁ、今はお嬢様が使っているその板で検索したら何でも出てくるのでは?」

 そういえば、クロードがスマホを使っているところを見たことがない。あまり好きじゃないのかもしれない。


「とはいえ、その板で真相までは出てこないでしょうがね」

 皮肉そうに言うクロード。

 

「え?!?分かったんですか?」

「どこまでこの事件の真相を知りたいですか?」

「ぜ!全部!」


「欲張りな方だ」

 口の端を上げてクロードは笑った。

次回 ドラゴンの死体隠し解決編です

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