第30話:【資料】特殊事象対策課・組織改編案
【警視庁内部文書 極秘】
202X年〇月〇日
件名:特殊事象対策課の規模拡大および特別顧問の処遇について
作成者:特対課長
【1. 課の現状と成果】
本年度、当課の検挙率・解決率は異常な数値を記録している。
都市伝説系怪異の解決件数は前年比500%増。
これは、新人刑事・九条湊と、特別顧問・口元裂(Subject-K)の連携による成果である。
これまでの「放置・隠蔽」方針から、「積極的解決(物理)」へと転換したことが功を奏した。
ただし、解決と同時に発生する器物破損件数も500%増である。
【2. 組織改編案】
現在、地下3階の湿気の多い倉庫を間借りしている状態だが、専用フロアへの移転を提案する。
(※換気が良く、壁が防音、かつ防爆仕様であることが望ましい。彼女が暴れた際の耐久性を考慮し、核シェルター並みの強度が求められる)
また、人員の増員も検討するが、口元裂氏の性格(協調性の欠如、唯我独尊)を考慮し、慎重に行う必要がある。
普通の人間では、採用初日に精神崩壊する恐れがあるため。メンタルタフネス研修を修了した者のみを選抜する。
【現在の協力者リスト(非正規雇用含む)】
・トイレの花子さん(情報屋として活用中。報酬:新品のトイレットペーパー、最高級ダブルロール)
・人面犬(警備員見習い。報酬:ドッグフードおよびステーキ。たまに骨)
・雪女(夏季限定・空調係。報酬:アイスクリーム食べ放題。ハーゲンダッツ要求中。※現在、彼女の周囲1メートルだけ霜が降るため、床の腐食が進んでいる。補修費申請中)
・隙間女(備品管理。あらゆる場所の『隙間』から備品を出し入れする。報酬:隙間。※最近、部長の机の引き出しの隙間に住み着き、部長がノイローゼ気味。転居勧告済み)
・テケテケ(交通課への出向を検討中だが、スピード違反常習のため保留。下半身がないため制服のサイズがない。※本人は『上半身だけでも特注で作れ』と激怒している)
・メリーさん(通信傍受・逆探知担当。報酬:最新機種のスマホ(iPhone Pro Max)。※常に電話をかけてくるため、通話料が国家予算を圧迫しかけている)
【3. 特別顧問・Subject-Kの処遇】
当初予定されていた「危険度S級怪異としての廃棄処分」については、【無期限の凍結】を提案する。
理由:
1.彼女の戦闘能力は、対怪異において代替不可能である。
2.九条湊による制御が一応機能している(カツ丼等による買収工作が有効)。
※ただし、最近は高級志向になりつつあり、「黒毛和牛でないと動かない」などと供述しているため、接待費の増額が必要。
3.彼女を敵に回した場合、警視庁が壊滅する恐れがある(最重要)。
※シミュレーションの結果、彼女が敵対した場合の警視庁生存率は0.02%と算出された。核攻撃と同等の災害と認定する。
【懸念事項】
彼女が破壊した公共物(ガードレール、信号機、ビル外壁等)の賠償請求が予算を著しく圧迫している。
先日も「信号機の色が気に入らない」といって切断した件については、現在も協議中である。
「怪異災害保険」の適用枠を拡大することを強く推奨する。
なお、Subject-Kの精神安定のため、定期的な「スイーツ・セラピー」の導入も検討されている。
予算項目は「機密保持費」として計上しているが、実態はただの高級パフェ代である。
監査官に突っ込まれた際は、「霊的安定を保つための供物」と強弁する予定。
【課長メモ】
九条くんへ。
上層部は彼女の力を認めたようだ(というか、恐れて手が出せないようだ)。
ただし、これ以上請求書が増えると、私の胃に穴が開く。今月だけですでに3回胃カメラを飲んだ。医者には「ストレス性胃炎」と言われている。
頼むから、彼女の手綱をしっかりと握っておいてくれ。君だけが頼りだ。
【九条湊のメモ(走り書き)】
手綱なんてありませんよ。
あるのは、カツ丼と、彼女の気まぐれな信頼関係だけです。
あと、俺の残業代も増やしてください。命の危険手当込みで。
最近、彼女が「新しいコートが欲しい」と言い出しました。経費で落ちますか?(落ちないなら俺の自腹です……)
あと、トイレの花子さんが「三枚目の戸が建付け悪い」と抗議しています。あと、トイレットペーパーの「ダブル」を「トリプル」にしろと。
これ、誰に相談すればいいんですか? 厚生課ですか? それとも神社庁ですか?
最近、自分が刑事なのか、妖怪専門のホストなのか分からなくなってきました。
とりあえず、カツ丼は大盛りを3人前発注しておきます。事件がない平和な日が、1日でいいから欲しいです。




