風が囁いた:森で何かがおかしい
エリッサはすぐに立ち上がった。私がまだ飲み物の最後の一口を飲み終えている途中だというのに、気づけば彼女はもう扉の近くまで行っていた。
「二秒くらい待ってくれてもいいだろ」
それでも彼女は出ていった。私はため息をつき、食事への礼を手短に言ってから、そのあとを追った。
私たちは戦士のあとについて、吊り橋のような渡り道や縄梯子を進み、南の村のより高い場所へ向かった。村の長の家は二本の木の間に固定された大きな足場の上にあり、湖の大部分と、根の間を行き交うカヌーを見渡すことができた。周囲の建物より大きかったが、豪華という感じではない。梁のいくつかには貝殻や磨かれた骨、水棲生物の牙が飾られており、村のほかの場所で見てきたものと同じ様式だった。
会議室は簡素だった。中央には黒っぽい木で作られた低い卓が置かれ、その周囲を長椅子や座布団が囲んでいる。壁には装飾された櫂や槍、それに水棲生物の顎骨がいくつか掛けられていた。
ヴァエロリンは中央の席に座っていた。青緑色の瞳と、濃い青の筋が混じる白髪は、かなりセラヤに似ていた。髪の一部は短い編み込みにされ、暗い服の上には貝殻と小さな牙で作られた首飾りがかかっていた。
セラヤは彼の近くに座っていた。その隣には、同じく白髪に青みがかった筋を持つ別のダークエルフの女性がいたが、表情はずっと真剣だった。
最初に口を開いたのはヴァエロリンだった。
「南の村へようこそ」
彼の隣にいる女性が、軽く頭を下げた。
「私はマエリエル。ヴァエロリンの妻で、セラヤの母です。どうぞ、お座りください」
私は礼を言い、長椅子の一つに座った。エリッサも隣に座ったが、セラヤが近くにいるとほとんど自動的に浮かぶ、あの不機嫌そうな表情のままだった。
ヴァエロリンは彼女へ視線を向けた。
「北の村の長カエルレスの娘、エリッサ。あなたの到着は予想外でした。特に、あの状態で来たことには驚きました」
それから私を見る。
「それで、こちらの若者は?」
彼に見られた瞬間、反射的に姿勢を正してしまった。
「アルヴェンです。俺は……エリッサの友人です」
エリッサがその場で固まり、純粋な恐怖でも見たように目を見開いてこちらを向いた。
「友人?」
私は首を傾げた。
「仲間?」
彼女は黙ったまま私を見続けた。
「本気か?」私はもう少し苛立ちながら聞いた。「野宿して、怪物と戦って、それにお前は変な虫を俺の口に押し込んだんだぞ。そこまでして、仲間ですらないのか?」
エリッサは一歩も譲らなかった。
私はため息をついた。
「分かった。知り合い?」
口元に小さな満足そうな笑みが浮かんだ。
「知り合い」
それまで黙って見ていたセラヤが、少し前のめりになった。
「ちょっと待って……二人で一緒に野宿して……しかもエリッサが口に食べ物を入れてあげたの?」
エリッサの顔が一瞬で赤くなった。
「違う! いや、そうだけど、そういう意味じゃない! ちゃんとそれぞれ別の場所にいたし! あなたが考えてるようなことじゃないから!」
自分たちが何を言っているのか気づいた時にはもう遅かった。私は助けようと口を挟んだ。
「いやいや。優しさとかそういうのでやったわけじゃないんです。実際、ほとんど無理やり食べさせられたというか! いや、その……」
セラヤは卓の上へ手を伸ばし、エリッサの手を握ると、この上なく穏やかな声で聞いた。
「ねえ……お願い。詳しく聞かせて?」
エリッサはすぐに手を引っ込め、顔を覆った。それから指の隙間越しに私を見た。その表情だけで、この場を出たあと誰のせいにされるのかは十分分かった。
「お願い、アルヴェン……」まだ顔を赤くしたまま彼女が言った。「シルヴァリスに誓って、口を開く前に考えることを覚えて」
「ごめん。反射で……」私はそう呟きながら、少し長椅子に沈み込んだ。
セラヤは笑い始めた。ヴァエロリンは咳払いをして会議の真剣な空気を取り戻そうとしたが、自分も笑いをこらえているのは明らかだった。
ヴァエロリンへ意識を戻すと、セラヤはまだ笑みを隠そうとしていたが、彼はすでに真剣な表情を取り戻していた。
「分かりました。何があなたたちを南の村まで連れてきたのですか? カエルレス、あるいは北の村から何か正式な要請があるのですか?」
答えようと口を開いたが、エリッサが先に話した。
「要請なんて何もない。父や北の村の命令で来たわけでもない」
マエリエルがわずかに目を細めた。
「エリッサ、口調を慎みなさい。あなたの前にいるのは南の村の長です」
エリッサは言い返しそうな顔をしたので、私はさりげなく彼女の方へ身を寄せた。
「お願いだから始めるな。お前の父親にまで迷惑がかかるぞ」
彼女は苛立った目を向けてきたが、黙ったままだった。ヴァエロリンもそれ以上は追及しなかった。
「セラヤから、私が戻る前にノールの話をしていたと聞きました。何があったのか聞かせてください」
エリッサの表情がすぐに変わった。私はまず彼女が姿を消したこと、カエルレスが捜索隊を組織したこと、そしてその痕跡を追って渓谷までたどり着いたことを話した。野営地の話まで来るとエリッサが引き継ぎ、捕まる前に私たちが巨大なノールの集団を見つけたことを説明した。捕まっていた間に何があったのかについては詳しく触れず、その部分は手短に話した。
「千体以上はいた」エリッサが言った。「たぶん、もっとずっと多かった。正確には数えられなかったけど」
ヴァエロリンが眉をひそめた。
「あの渓谷に千体以上」
「そう言ったでしょ」
「正確には違います。あなたは、あれが主要な集団であるかのように話していました」
エリッサは腕組みを解いた。
「どういう意味?」
「ここ数週間、私たちの巡回隊は複数の地域で異常な数のノールの集団を確認しています。一つの集団ではありません。いくつもあり、中には数百体規模のものもあります」
私は彼を見た。
「どれくらい?」
ヴァエロリンは答えるまで少し間を置いた。
「あなたたちが来る前の時点で、私たちの推定はすでに四千体近くでした」
胃が締めつけられるような感覚がした。
「四千?」
「森の複数の地域に分散しています」彼は続けた。「もし本当にあの渓谷に千体以上いたのなら、私たちが把握しているだけで五千体を超えています」
想像していたよりもずっとひどかった。私はすでに渓谷の野営地の大きさを見ていたが、それでもなお、森の各地にさらに何千体ものノールがいるというのは簡単には想像できなかった。
セラヤが両腕を卓の上に置いた。
「しかも、それは巡回隊が見つけた集団だけの数よ」
「その通りです」ヴァエロリンが確認した。
エリッサが少し身を乗り出した。
「どうしてノールを探していたの?」
ヴァエロリンはマエリエルと素早く視線を交わした。
「探していたわけではありません。最初は、ここから南の地域にいたゴブリンの集団を追っていたのです」
「何体?」
「数十体ほどです。村にとってすぐに脅威になるほどではありませんでしたが、その中にゴブリンキングが一体いたため、巡回隊をつけて監視していました」
その言葉は知らなかった。
「ゴブリンキング?」
マエリエルが答えた。
「ほかのゴブリンよりはるかに強い個体です。身体も大きく、頑丈で、ほかのゴブリンを自分の支配下に置くことができます。そうした個体に率いられた集団は、まとまりを保ったまま縄張りを確保することが多いのです」
ヴァエロリンは続けた。
「数日前、巡回隊がその地域からゴブリンたちが姿を消していることに気づきました。調査に向かったところ、ほとんど全員が死んでいるのを発見しました」
エリッサが眉をひそめた。
「ノール?」
「痕跡を見る限り、そうです。かなりの数がいました」
「ゴブリンキングは?」
ヴァエロリンは首を横に振った。
「死体はありませんでした」
セラヤが少し卓の上へ身を乗り出した。
「何か大きなものが引きずられていった跡は見つかったわ。その時は、傷ついたまま逃げたのか、それとも連れ去られたのか分からなかった」
私はエリッサを見た。表情からして、同じことを考えたのが分かった。
「檻」
ほとんど同時に口にした。
ヴァエロリンがこちらへ視線を向けた。
「檻?」
エリッサは深く息を吸った。
「渓谷にあったの。ノールたちは、生き物を捕まえて閉じ込めてた」
ヴァエロリンの表情が変わった。
「何体もいました」と私は付け加えた。「野営地のあちこちに檻が置かれていて、森にいる色々な生き物が閉じ込められていました。中には何体ものノールを殺せそうなくらい大きいものもいたのに、それでも生かされたまま捕まっていました」
「何のためかは分からない」エリッサが続けた。「でも、ただ食べるために狩ってたわけじゃない」
セラヤは父親を見た。
「じゃあ、ゴブリンキングも捕まった可能性があるのね」
「その可能性はあります」ヴァエロリンが答えた。「そして、それが一体だけとは限りません」
マエリエルはしばらく考え込んでから口を開いた。
「それなら、状況はさらに奇妙ですね。ノールは食料や縄張りを巡って常に争います。大きな集団は普通、これほどの数になる前に分裂するものです。それなのに、私たちは何週間も同じ地域に留まり続ける巨大な集団をいくつも確認しています」
ヴァエロリンは頷いた。
「しかも、組織化されているようには見えません。巡回隊は今でも集団内部で争いが起きているのを確認しています。隊列もなく、規律もなく、明確な指揮系統らしきものもありません」
「渓谷でもそうでした」と私は言った。「食べ物を奪い合って、ずっと互いに襲い合っていました」
「それでも、千体以上が同じ場所に集まり続けてた」エリッサが付け加えた。
マエリエルは私たちへ視線を戻した。
「そして今、少なくともそのうち一つの集団が生きた生物を捕獲していることも分かりました」
セラヤが眉をひそめた。
「じゃあ、何か理由があってそんなことをしてるってことね」
「おそらくは」マエリエルが答えた。「ただ、それが何なのかは分かりません」
エリッサは数秒黙っていた。
「誰かがノールを操ってるって言いたいの?」
「必ずしもそうとは限りません。誰かが一部の集団を誘導している、特定の地域へ引き寄せている、あるいは彼らを一緒に留まらせる何かを与えている可能性もあります。まだ私たちが把握していない別の理由があるのかもしれません。今のところ分かっているのは、この行動が普通ではないということだけです」
ヴァエロリンは片手を卓の上に置いた。
「五千体を超えるノールというだけでも十分に問題です。その一部が生きた生物を捕獲していると分かったことで、状況はさらに深刻になりました」
それまでは、あの渓谷を巨大ではあっても孤立した問題だと考えていた。だが今では、あの野営地は森全体で起きていることの一部分にすぎないのだとはっきり分かった。
ヴァエロリンは続けた。
「まだこれらすべての集団が繋がっているかどうかは分かりません。証拠もないまま事実として扱うつもりはありません。今夜、助言役たちを集め、今ある情報を他の村へ伝えるために使者を送ります」
それから真っ直ぐエリッサを見た。
「あなたの父親にも知らせる必要があります」
エリッサは少し間を置いてから頷いた。
「必要ね」
彼女は一瞬視線を落とし、それから再びヴァエロリンを見た。北の村へ戻ることには触れなかったので、私も聞かないことにした。
話を終える前に、ヴァエロリンは卓の上で指を組み、再び私たちへ意識を向けた。
「一つだけ確認したいことがあります。あなたたちは、どの道を通って南の村へ来たのですか?」
エリッサが先に答えた。
「ヴァリス湿原を抜けた。そのあと滝のある地域を通って、川の上流へ出たの。そこから川沿いにここまで来た」
ヴァエロリンは一瞬考え込んだ。
「その区間で、何か変わったものを見ませんでしたか?」
「コモロクに殺されかけた」
エリッサは腕を組んだ。
「それは珍しくないわ。コモロクはあの地域に住んでるから」
「背中を引き裂こうとしてくる生き物は、十分話す価値があると思うんだけど」
「普通じゃないものがあったかって聞かれたのよ」
「じゃあ、そのあとの出来事なら当てはまる」
私はヴァエロリンへ向き直った。
「川に巨大なワニが現れたんです。コモロクがほとんど俺たちのカヌーの中へ入り込んでいた時に噛みついて、そのまま水の中へ引きずり込みました」
ヴァエロリンはすぐにマエリエルを見た。
「ワニ? 本当に?」
「間違いありません。それに巨大って言っても大げさじゃないです。頭だけでも、俺たちのカヌーの横ではものすごく大きく見えました」
マエリエルはゆっくり息を吐いた。
「では、まだあの地域にいるのですね」
その答え方が気になった。
「あの生き物のこと、もう知ってたんですか?」
「約一か月前に現れました」ヴァエロリンが説明した。「あの地域に本来生息している生物ではなく、どこから来たのかもまだ分かっていません」
「それ以来、あの区間の通行は制限しています」マエリエルが付け加えた。「すでにカヌーを何艘か壊しています。幸い、それに乗っていた者たちは生きて逃げられましたが、あの場所では普通なら捕食者を持たないほど大きな動物まで殺しています」
エリッサが眉をひそめた。
カヌーの横から顎が現れ、コモロクがほとんど一瞬で消えた光景を思い出した。
ヴァエロリンが付け加えた。
「斥候を送って調べさせましたが、あの生物が現れた理由を説明できるものは何も見つかりませんでした」
その話を聞いて、あることを考えた。
「別の地域から来たのかもしれません」
エリッサは首を横に振った。
「あんな大きさのワニは恐怖の森にはいないわ。おばあちゃんは海の向こうの土地に巨大な爬虫類がいるって話をしてたけど、こっちにいるのはもっとずっと小さい」
「なら森の外から来たのかもしれない。俺の知る限り、海をかなり長い距離移動できるワニもいる。潮の流れを利用したり、海岸線に沿って進んだりして」
エリッサはため息をついた。
「アルヴェン、あなた、海を渡る話をしてるのよ」
「別に一気に海全部を渡る必要はない。海岸沿いに進んで、区間によっては潮の流れを使ったり……」
「それとも、船を作る方法を覚えたのかもね」
私は彼女を見た。
「少しくらい、その無知な態度をやめてくれてもいいだろ」
「ふーん」
私が言い返すより先に、ヴァエロリンが身を乗り出した。
「待ってください。ワニは本当に海を移動できるのですか?」
声の調子がすぐに変わった。
「できる種類もいます。正確にどれくらいの距離かは分かりませんが、塩水に耐えられて、かなりの距離を移動できる種類もいるはずです」
「それで、そのあと岸へ戻れるのですか?」
「俺の知る限りでは、はい」
ヴァエロリンは数秒の間、会議の目的を忘れたようだった。
「興味深い。では種類によるのですか? ほかにも似たようなことができる生物はいるのでしょうか?」
マエリエルが彼の腕へ軽く触れた。
「ヴァエロリン」
彼は止まり、彼女を見た。それから、私たち全員がまだ待っていることに気づいた。
「そうでした」
セラヤが笑みを隠した。
私も同じようにしなければならなかった。マエリエルの表情を見る限り、ヴァエロリンが何か興味を引く話を聞いて会話を脱線させるのは、これが初めてではなさそうだった。
「この話はまた別の機会に続けましょう」と彼が言った。
「ぜひ」
エリッサが鼻から小さく音を出した。
「二人で何時間も話してそう」
「たぶんね」
マエリエルは再びヴァエロリンへ視線を向けた。
「ワニの話です」
「そうでした。ワニ」
彼女は続けた。
「たとえ海から来たとしても、あの地域までたどり着くには、そこからさらに川をかなり長い距離進まなければなりません」
「そうですね。じゃあ俺の説には少し問題がある」
「少し?」エリッサが聞いた。
「完璧だとは言ってないだろ」
また言い争いになりそうになる前に、ヴァエロリンが手を上げた。
「今ここで、その生物の出所を突き止める必要はありません。しばらくの間、対処する安全な方法が見つかるまでは、巡回隊をあの区間へ近づけないようにします」
それから私を見た。
「ですが、その話はあとで続きを聞かせてください」
「分かりました」
ヴァエロリンは本題へ戻った。
「ノールについては、今日中に助言役たちを集めます。推定数を見直し、できるだけ早くほかの村にも知らせる必要があります。明日、情報を整理したうえで改めて話しましょう」
彼はセラヤを見た。
「二人を客人用の家まで案内してあげなさい」
セラヤが立ち上がろうとしたが、その前にエリッサが答えた。
「必要ない。戻り方は分かってる。そうでしょ、アルヴェン?」
道の一部は覚えていたが、あの入り組んだ渡り道と梯子を一人で戻れると言うのは、さすがに楽観的すぎた。
「いや、その……」
エリッサが私の腕を掴んだ。
「分かってる」
「まだ答え終わってないんだけど」
「必要ない」
私が抗議するより先に、彼女は卓から引き離すように私を引っ張り始めた。
「ごちそうさまでした!」私は肩越しに何とか言った。
マエリエルは軽く手を振って返し、ヴァエロリンは私が引きずられていくのを見ながら笑みをこらえていた。
扉を出た瞬間、私は腕を取り戻そうとした。
「離してくれない?」
エリッサは振り返りもせず、そのまま渡り道を歩き続けた。
「早く歩いて」
「歩いてるって! 肩が抜けそうなんだけど」
「あなたの問題よ。もっと速く歩けば、引っ張る必要もない」
数歩進んだところで、ようやく彼女は手を離した。日はすでに暮れ始めていて、梢の隙間から入るわずかな光も急速に消えていた。ただ、シルヴァリスの加護を受けてから、暗闇はもう問題ではなくなっていた。
歩きながら、私は横目でエリッサを見た。彼女は前だけを見て、必要以上に速く歩いていた。
「今度は何なんだ?」
「何でもない」
「あそこを出てからずっと、ズボンの中に蟻の巣でもあるみたいに落ち着かないぞ」
「早く客人用の家に戻って休みたいだけ」
もう一度聞いてみたが、彼女は話す隙を与えなかった。どうして急にあんなに機嫌が悪くなったのか分からないまま、私は彼女の隣を歩き続けた。




