風が囁いた:エリッサの古い知り合い
私はカヌーの座席で姿勢を正し、目を細めながら前方に村の兆候がないか探した。エリッサから色々聞いていたので、水上に建つ家や木々の間の足場、少なくとも南のエルフたちがいると分かる何かしらの建造物が見えると思っていた。だが、何もなかった。目の前にあるのは川と、水へ沈む巨大な根、垂れ下がる蔓のカーテン、そしてその向こうがほとんど見えないほど密集した植物だけだった。
一体どこから村へ入るんだと聞くより先に、鋭い口笛が空気を切り裂いた。次の瞬間、すぐ横で乾いた音がして、一本の矢が私の左脚から手のひら一つ分も離れていない場所にあるカヌーの側面へ突き刺さった。衝撃の強さで矢柄はまだ震えており、私は声にならない悲鳴を漏らし、危うく櫂を手から落としかけた。
「襲われてるのか!?」心臓を激しく鳴らしながら、私はどもった。
腹立たしいことに、エリッサはまったく驚いた様子を見せなかった。ただ顎を少し上げ、矢を確認し、それからどの方向から飛んできたのかを目で追った。
「違う。ただの警告よ」
私は木へ刺さった矢を見つめ、それから彼女を見た。
「脚を削り取られそうになった警告なんだけど!」
「その通り」彼女は腹が立つほど平然と答えた。「殺すつもりなら、矢は木じゃなくてあなたの胸に刺さってる」
まったく安心できなかった。私は岸辺を見回し、根や葉の間に隠れている射手を探したが、不審な動きは一つも見つけられなかった。その時、矢の後ろについている羽に気づいた。今まで見た普通の矢とは違い、その羽は薄い青色に染められていて、黒っぽい矢柄の木材によく目立っていた。
「なんで羽が青いんだ?」
エリッサは矢をちらりと見た。
「警告用の矢だから。南の巡回隊は、射る意図を示すために色を使い分けるの。青は止まって身元を明かせって意味。そうすれば、もう攻撃されてると思って相手が反撃することもない」
私はもう一度、脚の横でまだ震えている矢を見た。
「何かを俺に向かって撃つ以外の連絡方法を選べなかったのか?」
「効果はあったでしょ。止まったんだから」
何を言ってもまた後頭部を叩かれそうだったので、私は黙った。
エリッサはカヌーの上で慎重に姿勢を正し、両手が見えるようにして武器から離した。それから深く息を吸い、長く変化のある口笛を吹いた。最初は高い音から始まり、途中で低くなり、最後は短く鋭い二音で終わった。普通の口笛とはまるで違う。間の取り方や音程の変化が、偶然とは思えないほどはっきりしていた。
強化された聴覚のおかげで、その変化の一つ一つを簡単に聞き分けることができた。ここ数日、森の音を分けて聞く練習をしていたせいもあって、余計にはっきり感じられた。エリッサが何を伝えているのかはまったく分からなかったが、口笛のそれぞれの部分に意味があることだけは分かった。
そのあとは待った。カヌーの下を川がゆっくり流れ続け、葉から落ちる水滴の音だけが周囲に響いていた。数秒後、前方のどこか見えない場所から別の口笛が聞こえた。エリッサのものと似たパターンだったが、終わり方が違っていた。
彼女の肩から力が抜けた。
「近づいていいって」
「口笛だけで全部分かったのか?」
「覚えれば難しくないわ」
「お前にはな」
エリッサはその言葉を無視して、また座り直した。私は返事をした相手を見つけようと岸辺を見続けたが、誰の姿も見えなかった。この水と根と植物が入り組んだ場所で、巡回隊があれほど簡単に姿を隠せることが少し不気味に感じ始めた。そこにいると分かってしまった今では、葉の間にある暗い隙間のすべてに、こちらを見ている誰かが隠れているように思えた。
私はカヌーの側面へ刺さった青い矢をもう一度見た。
「ずいぶん歓迎の気持ちにあふれた客の迎え方だな。そこは認めるよ」
エリッサは顎で櫂を示した。
「進んで。カヌーは水路の真ん中を保って、岸には近づかない。それから急な動きもしないで」
私は櫂を握り直し、今度は自分の動きにずっと注意しながら、再び船を進め始めた。
「もし急な動きをしたら?」
エリッサは矢へちらりと視線を向けた。
「次は違う色かもしれないわね」
それがどういう意味なのか、聞く必要はなかった。私はすぐに姿勢を正し、南の村の領域を進む間、カヌーをきっちり水路の中央に保った。
カヌーは、前方の視界がほとんど完全に植物で塞がれた場所を進んでいた。木々の梢は川の上で重なり合い、ほとんど光を通さないほど密集した自然の屋根を作っている。何百本もの蔓が枝から垂れ下がって水面へ触れており、私は何度か片手でそれを払いのけながら、もう片方の手で櫂を動かし続けなければならなかった。
太陽の光はどんどん弱くなり、周囲すべてが緑がかった薄暗さに包まれていった。葉や根、幹に囲まれた狭い水路では、流れの音さえ小さくなったように感じた。私はエリッサの指示を正確に守り続け、カヌーを水路の中央に保ち、隠れている巡回隊に脅威だと受け取られそうな動きを避けた。
そして最後の蔓のカーテンを抜けると、目の前の空間が突然開けた。
南の村が目の前に現れた。
狭い水路の先には、湖を思わせるほど広大な水面が広がっていた。ただし穏やかな流れはその場所を横切り、木々の間を抜けながら先へ続いている。大きな葉や水生の花が水面の一部を覆い、小さな蛍の群れが根や岸辺の植物の近くを漂っていた。長い間、木々や泥、霧に囲まれた狭い通路の中ばかり進んでいたせいで、目の前に広がる空間の大きさに、私は数秒間櫂のことを忘れてしまった。
南の村の木々は、北の村を支配する古代の巨木とは大きく異なっていた。あれほど異常な高さまでは伸びていなかったが、幹は太く、水の中から直接生えているものや、湖のあちこちに点在する小さな陸地から伸びているものがあった。巨大な根は木から伸びて再び水中へ沈み、アーチや小さな自然の島、それに何十艘ものカヌーを繋いでおける場所を作っていた。
家の造りもまったく違っていた。巨大な幹の内部に作られているのではなく、太い根や頑丈な枝に支えられた足場の上に建ち、黒っぽい木材、編まれた植物繊維、茅葺きの屋根で作られていた。水面から数メートルしか離れていないものもあれば、木々のより高い位置に点在しているものもある。近くの建物同士は細い渡り道で繋がっていたが、多くの場所は縄梯子かカヌーでしか行くことができないようだった。
村の中は活気に満ちていた。ダークエルフたちは小さく細い船で湖を行き来しており、その扱いは、私がさっきまでしていた苦戦をさらに惨めに思わせるほど自然だった。何人かはカヌーの上で微動だにせず、槍を水面の上に構え、魚を突く瞬間を待っていた。別の者たちは、水中へ沈んだ根の間に張られた網を回収している。足場の間では籠が運ばれ、岸辺では魚が仕分けされ、いくつかの集団が共同用の船の整備をしていた。
さらに奥では、何人かの子供たちが足場や枝から直接湖へ飛び込んでいた。一人は濡れた木の上を走り、私ならこれまでの人生の選択すべてを考え直しそうな高さから飛び降り、そのまま水の中へ消えた。数秒後、ほかの子供たちの笑い声の中、何メートルも先の水面へ姿を現した。別の少年は足場から飛び出し、水面へ落ちる前に空中で回転すると、そのまますぐ近くの根へ向かって泳ぎ始めた。
私は口を少し開けたまま、その光景を見続けていた。別の足場では、二人のエルフの女性が魚でいっぱいになった大きな籠を抱え、濡れた根の上を、まるで平らな道を歩いているかのように進んでいた。少し先では、一人の男がカヌーの端でバランスを取りながら、私まで一緒に水へ引きずり込みそうなほど重そうな網を引き上げていた。
エリッサが私の表情に気づいた。
「口を閉じなさい、アルヴェン。蚊でも飲み込むわよ」
私は村を見続けた。
「信じられない」
「蚊が?」
私は彼女へ顔を向けた。
「違う。村が」
エリッサは腕を組み、建物や船、足場を、明らかによく知っている場所とは思えないほど批判的な表情で見回した。
「まあ、悪くはないけど……それでも私の村の方が上ね」
声に込められた誇りがあまりにも分かりやすかったので、反論する気にもならなかった。ここまでの道中で村同士の張り合いについて色々聞いたせいで、エリッサは南の村の何かが北より優れていると認めるくらいなら、ヴァリス湿原を泳いで戻る方を選ぶのではないかと思い始めていた。
だが、穏やかな到着は長く続かなかった。最初の足場へ近づく前に、三艘の小さな船が根の間の別々の位置から出てきて、真っ直ぐこちらへ向かってきた。すぐにさらに二艘が現れ、私たちのカヌーの周囲を驚くほど素早く塞いだ。その動きを見れば、入る許可を受けた時点から、こちらを止める準備をしていたことは明らかだった。
南の戦士たちは軽い槍、短い弓、そして太腿に固定した短剣を持っていた。服装は北の村の巡回隊が着ているものより短く身体に密着しており、泳いだり船の中で動いたりしやすいよう、腕や脚が自由になっている。何人かの腕や肩、顔の一部には幾何学模様の彩色が施されていたが、その異なる模様が家系を表すのか、役割なのか、それとも巡回隊の中での立場なのか、私には分からなかった。
一人の衛兵が手を上げた。
「そこで止まれ」
私はすぐに漕ぐのをやめた。別の戦士は弓を引いたまま、矢を真っ直ぐ私の胸へ向けている。巡回隊が使う矢の色についてエリッサから説明を聞いたあとだったので、その羽が何色なのか確認しなくても、おそらく青ではないことくらいは分かった。
エリッサはすぐに苛立った。
「こっちはもう合図に返事をして、決められた手順にも従ったでしょ! 今すぐその武器を下ろしなさい!」
集団を率いているように見える戦士は、彼女の口調をまったく気にしていなかった。
「合図で許可されたのは、川から近づくことだけだ、エリッサ。村へ自由に入る許可ではない」
彼は私へ視線を移した。
「それに、お前の隣にいるそのよそ者は何者だ?」
エリッサの手が自分の膝の上で強く握られた。
「私が誰かくらい、あなたたちはよく知ってるでしょ!」
「お前が誰か知っているからといって、そいつが誰なのか、なぜ二人ともそんな状態でここへ来たのかまで分かるわけではない」戦士は、ぼろぼろになった私たちの服と傷ついたカヌーを示しながら答えた。「それを説明するまでは、ここから先には進ませない」
それでも彼女の表情を見る限り、理屈だけで言い争いを止めるのは無理そうだった。
「待って。全部説明できます」状況が悪くなる前に、私は割って入った。まだ矢を向けられていることもあり、両手は相手によく見える位置に置いた。「こっちは揉めるつもりなんてありません」
エリッサは、ほかの者たちの前にいるエルフへもう一度視線を向けた。
「私は北の村の長カエルレスの娘、エリッサ。森の奥からここまで来たの。南の村の指導者たちと話す必要がある。それだけで武器を下ろすには十分なはずよ」
「確認が取れれば十分だ」
戦士が続きを口にするより先に、女性の声が割り込んだ。
「お願いですから、落ち着いてください。武器を下ろして」
声は近くの足場の一つから聞こえた。穏やかだったが、巡回隊の態度を即座に変えるだけの威厳があった。弓兵は矢を下げ、ほかの戦士たちも一切反論することなく槍を引いた。ただし、誰一人として完全に警戒を解いたわけではなかった。
矢先が自分の胸から外れて初めて、私は息を止めていたことに気づいた。エリッサも声が聞こえてきた足場へ視線を向け、その表情がすぐに変わった。衛兵たちへの苛立ちは消えていなかったが、そこへすぐに別の苛立ちが加わり、それと同時に、疑いようのない反応も浮かんだ。
エリッサは、その声を知っていた。
私は声のした方へ視線を戻し、上の足場の一つに取り付けられた縄梯子を、身軽に降りてくる若いダークエルフの女性を見つけた。暗い肌は長い白髪と鮮やかな対比をなし、その髪には何本か濃い青の筋が混じっていた。瞳は深い青緑色をしている。服装は北の村の住民が身につけるものよりずっと軽く、この地域の暑さと、水のそばで暮らす生活に明らかに合わせられていた。黒や青みがかった布が動きを妨げないよう必要な部分だけを覆い、革紐で固定されている。さらに小さな緑色の石、磨かれた牙、いくつかの貝殻が飾られており、彼女が動くたびに控えめな音を立てた。
装飾はあっても、その姿に儀式めいたものは何もなかった。彼女は濡れた足場を危なげなく渡り、私が部屋を横切るのと同じくらい自然な動きで、近くのカヌーの一艘へ乗り込んだ。中にいたエルフの一人が櫂を渡すと、彼女は小さな船をこちらへ進めてきた。
彼女が綺麗だということには、どうしても気づかずにはいられなかった。知らない相手をじろじろ見ないよう一度視線を逸らしたが、彼女のカヌーがこちらの横へ止まると、結局もう一度見てしまった。
そのエルフが落ち着いた仕草をすると、まだ武器を構えていた最後の衛兵たちも、ようやくそれを下ろした。それから彼女は真っ直ぐエリッサを見た。
「エリッサ? これは予想してなかったわ」
彼女の唇に笑みが浮かんだ。
「まあ。南に顔を出す気になったのね」
エリッサは腕を組み、すぐに不機嫌そうな顔になった。
「あなたとは話すことなんて何もないわ、セラヤ」
それで二つの疑問が一度に解決した。目の前の女性の名前が分かり、何より、この二人には何かしらの過去があることも分かった。
「いやいや、どうか彼女のことは許してください」私は急いで割って入り、カヌーの上で姿勢を正した。「ものすごく大変な旅のあとで、ただ疲れ切っているだけなんです」
エリッサが怒りに満ちた目でこちらを向いた。
「私は別に――」
その先に何が起こるか深く考えもせず、言い終える前に彼女の口を手で塞いだ。
「こうして迎えていただいて、本当に感謝しています」私はセラヤへ礼儀正しい笑顔を保とうとしながら続けた。
鋭い痛みが手のひらを走った。
「痛っ!」
すぐに手を引くと、皮膚にはエリッサの歯形が残っていた。
「噛んだな、この厄介者!」
「なら私の口に手を置かないことを覚えなさい」まるで全部こちらが悪いとでも言うように、彼女は言い返した。
セラヤは笑いをこらえようとしたが、無理だった。エリッサが私を睨みつけ、私がまだ指が全部ついているか手を確認している様子を見て、笑い声を漏らした。
「相変わらず昔と同じ、怒りっぽいおチビちゃんね、エリッサ」
反応はすぐだった。エリッサは顎を上げた。
「私はもう子供じゃない。北の村に認められ、尊敬されている立派な大人よ」
セラヤは同じ笑みを浮かべたままだった。
「それなら、そろそろ大人らしく振る舞った方がいいかもしれないわね」
エリッサは口を開き、明らかに言い返そうとして息を吸った。だが、言葉が出てこなかった。彼女と知り合って以来、誰かが即座の反論を封じたのを見るのは初めてだったので、私は笑って次の標的にならないよう、かなり努力しなければならなかった。
明らかに、これは何年も前から続いている関係だった。セラヤは子供の頃からエリッサを知っていて、少なくとも今見ている限りでは、彼女を怒らせるには何を言えばいいのかをずっと前から理解していたらしい。
ようやくセラヤが私へ視線を向けた。
「それで、あなたは? 名前は?」
「アルヴェン」
彼女は数秒私を観察した。視線は傷んだ服、腕や脚に散らばる切り傷、裸足で傷だらけの両足、それから壊れたカヌーへと移っていった。私たちの姿が、答えよりも疑問を増やすものだということは、想像力がなくても分かる。
「二人のその状態を見る限り、ここまでの道はあまり穏やかではなかったみたいね」
私はエリッサに噛まれたばかりの手をさすった。
「起きたことを表すには、かなり優しい言い方ですね」
セラヤは短く笑ってから、もう一度私たちを見た。
「来て。何より先に、休んで、何か食べて、その傷を手当てした方がいいわ」
エリッサは腕組みを解いた。
「村の長と話す必要がある」
「話せるわ」
「急ぎなの」
「エリッサ……」
「ノールが大規模に集まり始めていて――」
「父はもうそのことを知ってるわ」セラヤが遮った。
エリッサの顔から苛立ちがほとんど一瞬で消え、代わりに驚きが浮かんだ。
「どうして?」
セラヤはすぐには答えなかった。
「その話は本人とした方がいいわ」
「なら今すぐ連れていって」
「それはできない」
エリッサが目を細めた。
「どうして?」
「ヴァエロリンは村にいないから」
エリッサの反応を見れば、誰なのか聞く必要はなかった。彼女が口を挟む前に、セラヤは続けた。
「父は今朝、何人かの巡回隊員を連れて出たの。何も遅れなければ今日中には戻るはず。戻ったら、カエルレスの娘が来て話したがってるって伝える。そのあとで話せるわ」
エリッサは納得していなかった。
「ただ待ってるわけにはいかない。ノールのことをもう知ってるなら、それなら――」
「知ってるからこそ、父は出たのよ」セラヤがもう一度遮った。今度はからかうような調子はまったくなかった。「父が戻ったら、見たことを全部話せばいい。それまでは、本人の前で疲労で倒れても何の得もないでしょう」
私はエリッサを見た。セラヤが現れてから初めて、すぐに言い返さなかった。まだ議論を続けたいのは明らかだったが、言い張ったところでヴァエロリンが早く戻ってくるわけではないことくらい、彼女にも分かっているはずだった。
セラヤはその沈黙を逃さなかった。
「休んで。何か食べて、傷を手当てして、その服も着替えて。父が戻ったら、私が直接連れていくから」
エリッサは不満そうに鼻から息を吐いた。
「分かった」
セラヤは満足そうに笑った。
「まだちゃんと話が通じるのね」
私は必死に笑みを隠した。
セラヤは巡回隊へ合図し、進路を塞いでいた船が離れていった。それから少し先にある、入り組んだ根の上に作られた広い足場を指した。そこには何艘かのカヌーが繋がれており、村人たちが村の異なる高さの間を籠を運びながら行き来していた。
再び進み始めると、セラヤは私たち二人をもう一度見た。今度はエリッサの方を少し長く見つめ、破れた服、泥汚れ、ここ数日でついた痕をわざとゆっくり眺めた。それから私にも視線を移し、こちらも大差ない状態だと確認した。
「あ、それからお風呂にも入ってね」
からかうような笑みが、また顔に戻った。
「二人とも必要だから」
「セラヤ……」
エリッサが言い終える前に、彼女はもう漕ぎ始めていた。
私は笑いをこらえ、また自分たちのカヌーを進め始めた。私が何か反応すれば、北の村への許しがたい裏切りと見なされそうだったからだ。巡回隊がそれぞれの持ち場へ戻り、村の日常の動きが周囲で続く中、私たちはセラヤのあとを追って示された足場へ向かった。
最後の区間でも、私は吊るされた家々、根の間を進むカヌー、足場を行き来する住民たちを見続けていた。エリッサは「おチビちゃん」と呼ばれたこと、そして彼女にとってはそれ以上に最悪かもしれない「風呂に入った方がいい」とセラヤに言われたことのせいで、ずっと不機嫌なままだった。
だが、仲間たちと離れてからここまでに経験したすべてを考えれば、私にとっては食事と休息、それに数時間でも何かに食べられそうにならずに済むだけで十分だった。ノールの問題はまだ残っていたが、少なくとも今は、南の村も森で何かが起きていることに気づいていると分かった。
あとは、それが正確には何なのかを突き止めるだけだった。




