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風が囁いた:サバイバルの授業

ヴァリス湿原を歩き続けて、もう何時間も経っていた。


峡谷から逃げて以来ずっと積み重なっていた疲労に、この場所から決して消えそうにない湿気まで加わり、一歩進むごとに身体が重くなっていく。


筋肉は疲れ切り、肩の痛みもまだ残っていた。ネモニオンに付けられた浅い傷も、湿ったままの服が擦れるたびにひりついた。


破れたチュニックは今も着ていない。


エリッサに脱ぐよう言われてからずっと、畳んだ状態で持ち歩いていた。


片方のブーツだけで歩くのも、状況をさらに悪くしていた。


残っている方は水を吸い、泥で重くなり、少し嫌な匂いまでし始めている。


一方、左足は完全に裸足だった。


泥の下に隠れた根。


尖った石。


木の皮の破片。


そのすべてに注意しながら歩かなければならない。


何度か立ち止まり、指の間に入った泥を落としたり、新しくできた擦り傷を確認したりしてから進んだ。


だが、時間が経つにつれて、身体の痛みよりも別の問題の方が気になり始めた。


喉の渇きだった。


喉はどんどん乾き、唇もひび割れ始めている。


長く話すだけでも不快だった。


そして何よりひどいのは、水に囲まれているのに、そのほとんどを飲めないことだった。


暗い水路が湿原をあらゆる方向へ走り、水たまりや浅く水没した場所がそこら中に広がっている。


それでも、その水のほとんどは腐った葉や泥に覆われ、表面には薄い汚れまで浮いていた。


とても飲もうという気にはなれない。


「ちょっと馬鹿みたいだよな」


私は普段よりかすれた声で呟いた。


「こんなに水に囲まれてるのに、喉が渇いて死ぬかもしれないなんて」


エリッサは数歩先を歩いていた。


怪我をしていても周囲の地面を注意深く観察し続けている。


ただ、歩く速度は最初よりかなり遅くなっていた。


「ここの水を飲んだら、喉の渇きなんて一番小さな問題になるわよ」


彼女は振り返らずに答えた。


「寄生虫がいるかもしれない。毒のある植物も、死んだ動物の残骸もあるかもしれないし、ほかにも身体の中へ入れたくないものがいくらでもある」


私は近くの水路を見て顔をしかめた。


「じゃあ、飲んでもあとから俺を殺そうとしない水を見つけるまで、あとどれくらいかかるんだ?」


エリッサは何本かの根の近くで立ち止まり、周囲を見渡した。


「場所による。比較的きれいな水には、いくつか特徴があるの。周りの植物が違ったり、地面が少し固かったり、高い場所から流れてきていたり……そういうものね」


私には、どこもほとんど同じにしか見えなかった。


曲がった木。


泥。


霧。


暗い水。


だがエリッサは、私なら気づかずに踏みつけてしまいそうな細かいものまで見ていた。


根の形。


幹に生えている苔の種類。


小さな動物の動き。


さらには、虫が飛んでいく方向まで。


喉の渇きのせいで、私はどんどん苛立ってきた。


何度か、どこかの水たまりへ膝をついて、そのまま飲んでしまうという考えが、思っていたほど馬鹿げて感じられなくなった。


良くない判断だとは分かっている。


それでも身体が、水をよこせと無視できないほど強く訴え始めていた。


エリッサは私よりうまく耐えているように見えた。


もちろん、彼女も疲れている。


時々歩く速度を落とし、右脚へ多く体重をかけ、深く息を吸ってからまた進んでいた。


ただ、私より文句を言わないだけだった。


しばらくして、彼女は植物が少し低くなっている場所の前で足を止めた。


怪我をした脚をかばうため片手を膝につきながら慎重にしゃがみ、泥の上にある黒っぽい塊を調べ始めた。


私は眉をひそめ、近づいた。


彼女が何を見つけたのかはまったく分からない。


だが少なくとも、あの湿原で初めて、エリッサが本当に興味を示したもののようだった。


エリッサが濡れた地面の上にある黒っぽい塊を調べているのを見て、私は少しだけ期待しながらゆっくり近づいた。


一瞬、食べられる根でも見つけたのか、それとも泥の下に隠れた湧き水の痕跡でも見つけたのかと思った。


だが実際には、エリッサは二本の指でその表面に触れ、小さな欠片を取ると、まるで何でもないことのように中身を調べ始めた。


湿り具合を確かめ、まだ形の残っている植物の繊維を見て、数秒ほど顔の近くまで持っていく。


それから周囲の泥へ視線を移した。


そこには深い足跡がいくつかあり、背の低い草木の間を抜けるように続いていた。


私は顔をしかめながら、彼女が一体何を調べているのか理解しようとした。


「それ、何?」


エリッサはすぐには答えなかった。


地面の跡と手に持ったものをしばらく調べ続け、何かに納得したような顔になる。


「うん……水を見つけた」


私はその場に立ち尽くした。


エリッサを見る。


次に地面の塊を見る。


そして、もう一度エリッサを見た。


「水?」


エリッサは手に持っていた小さな欠片を持ち上げた。


私へ渡そうというより、見せるための動きだった。


喉はからからだった。


まともに考えるのも難しくなっている。


それに、この世界へ来てからすでに相当おかしなものを見てきた。


それでも私は数秒、その物体をじっと見つめた。


一体どの部分を「水」だと思えばいいのか、本気で分からなかった。


前の世界で見たサバイバル番組を、ぼんやりと思い出した。


植物から水分を取り出したり、地面を掘ったり、ひどい場所の水を濾過したり。


普通なら絶対に試したくないようなことを、人がやっているのを見たことがある。


もしかすると、これもダークエルフの生存術の一つなのかもしれない。


ここまで色々なことを経験した以上、馬鹿げて見えるという理由だけで可能性を否定できる立場でもなかった。


私は手を伸ばした。


エリッサは眉をひそめたが、その欠片を私に取らせた。


匂いはすぐに鼻へ届いた。


胃がきゅっと縮む。


私は息を止め、数秒それを見つめた。


どう見ても糞だった。


だが、エリッサは水を見つけたと言った。


もしかすると、中に残っている水分を取り出すのかもしれない。


もしかすると今から、この世界でも最悪に気持ち悪いサバイバル方法の一つを知ることになるのかもしれない。


私は目を閉じ、手を口へ近づけ始めた。


その時になって、エリッサはようやく私が何をしようとしているのか気づいた。


「何してるの?」


私は即座に止まった。


欠片は唇から数センチの位置にある。


目を開け、エリッサを見た。


「飲もうとしてる」


彼女は数秒間、完全に動きを止めた。


ただ私を見つめている。


そして、目を大きく見開いた。


「それを口に入れようとしてたの!?」


私は手に持ったものを見て、それから彼女を見た。


「水を見つけたって言っただろ!」


彼女の表情が、信じられないという顔から恐怖に近いものへ変わった。


そして、私が何か説明するより先に笑い始めた。


最初は、思わず漏れてしまったような短い笑いだった。


だがすぐに、もっと大きな笑いへ変わった。


エリッサは片手で腹を押さえ、息を整えるため近くの木の幹に身体を預けなければならなかった。


私は彼女を見つめながら、腹を立てるべきか、それともこの欠片を投げつけるべきか迷った。


彼女がこんなふうに笑うのを見るのは初めてだった。


私をからかう時に見せる、口元だけの笑みではない。


エリッサは本当に笑いを抑えられなくなっていた。


「あなた……」


何とか話そうとしたが、また笑い出した。


「本当にそれ食べようとしたのね!」


私は欠片を遠くへ投げ捨て、持っていた破れたチュニックを引っ張り出した。


まだ比較的ましな部分を使って手を拭く。


「笑うな! 水を見つけたって言っただろ!」


「これが水だなんて言ってない!」


彼女はまだまともに息を整えられないまま答えた。


「これが草食動物の糞だから、水を見つけたって言ったの!」


エリッサは地面に残っている塊を指し、それから泥の上へ続く深い足跡を示した。


「繊維を見て。葉っぱや草が、ほとんどそのまま残ってる。それに、この足跡も新しい」


私は下を見た。


説明されてみれば、確かにその中には植物の欠片が混ざっている。


地面に残された足跡も、小さな動物のものとは思えないほど大きかった。


「で、それが何を意味するんだ?」


エリッサはようやく少し笑いを抑え、足跡が続いている方向を指した。


「大きな動物はたくさん水を飲む。この糞はまだ新しいし、足跡も新しい。少し前に草食動物がここを通って、そのままあっちへ行ったってこと。この湿原の辺りを歩いてるなら、近くにもっとまともな水場がある可能性が高い」


私は数秒彼女を見てから、自分の手へ視線を落とした。


「だったら、これを俺に触らせる前にそう説明できなかったのか?」


エリッサはまた笑い始めた。


「まさか『水を見つけた』って聞いて、『よし、これ食べよう』って考える人がいるなんて思わなかったもの」


「俺の目の前で持ってたじゃないか!」


「見せてただけよ!」


「それじゃ分からないだろ!」


エリッサは姿勢を戻そうとした。


だが私の手を見るだけで、また笑ってしまう。


「これをカエリアが見てたら、どんな顔すると思う?」


私はすぐに彼女を指さした。


「絶対に言うなよ」


「まだ決めてない」


「エリッサ」


「北の村に戻ったら、最初に話すことになるかもね」


「お前、本当に性格悪いな」


彼女はまだ笑顔のまま肩をすくめ、動物が残した足跡を追い始めた。


私は破れたチュニックをもう一度脇へ抱え、後をついていった。


もし本当にカエリアへ知られたら、たぶん一生この話をされるのだろう。


そのことは考えないようにした。


再び歩き始めたあとも、エリッサの怪我も、疲労も、ヴェリダンが死んでから起きたすべても消えたわけではなかった。


それでも数分間、彼女は小さな笑みを浮かべたまま泥の中の足跡を追っていた。


時々こちらを見るたび、まだ小さな笑い声が漏れるのも聞こえた。


私は何も言わないことにした。


たとえ私が笑われた結果だったとしても、すべてがおかしくなり始めてから、エリッサが心から笑う姿を見たのはこれが初めてだった。


エリッサはどうにか落ち着きを取り戻した。


それでも、まだ口元には少し笑みが残っていた。


数秒ほど周囲の地形を確認してから、前方の霧を指さした。


「水はあっちよ」


私は目を凝らし、植物や木の幹、泥の間に何か違うものがないか探した。


だが、湿原のほかの場所と違って見えるものは何もなかった。


「どこ? 何も見えないんだけど」


「探し方が違うのよ」


エリッサは私へ近づき、片手を肩に置いた。


もう片方の手で、自分の耳を指す。


「見ようとしないで。聞いて」


何を言いたいのか理解するまで少し時間がかかった。


そこで、シルヴァリスが私に与えられた感覚について説明していたことを思い出した。


夜目は、特に意識しなくても使えた。


だが聴覚は少し違う。


以前よりずっと多くの音を聞き取れる。


それでも、耳に入ってくるものを全部うまく分けて、何の音なのか判断できるわけではなかった。


私は目を閉じ、集中してみた。


だが、思ったより難しかった。


音が多すぎる。


湿原のあちこちから蛙の鳴き声が聞こえる。


木々の間では虫が飛び回っている。


風で葉が動き、少し離れた水の中では何かが動いていた。


さらに上からは、蝉の声があまりにも大きく響き、ほかの音のほとんどをかき消しているように感じた。


それ以外の音へ意識を向けようとした。


だが、うまくいかなかった。


私は目を開け、首を横に振った。


「いろんな生き物がうるさく鳴いてるのしか分からない」


「全部を同時に聞こうとしてるからよ」


「耳が良くなったなら、もっと聞こえるのが目的じゃないのか?」


エリッサはため息をついた。


だが、肩に置いた手はそのままだった。


「よく聞こえても、音を分けられなきゃ意味がない。もう一度目を閉じて」


私は言われた通りにした。


「一つだけ選んで」


彼女が続ける。


「何でもいい」


私は蛙の鳴き声へ集中した。


「じゃあ、それがどこから聞こえてくるか考えて」


私は少し頭を動かし、左右の耳に届く音を比べてみた。


「左……だと思う」


「そう。じゃあ今度は、その音を気にしないで」


私は眉をひそめ、片目だけ開けた。


「どうやって?」


「もうそこにいるって分かったでしょ。ずっと探し続けなくていいの。別の音に意識を向けて」


エリッサが言うと簡単そうに聞こえた。


私はもう一度目を閉じ、言われた通りにやってみた。


蛙の声はまだ聞こえている。


だが今度は、虫の羽音へ意識を向けた。


しばらくすると、その一部が右側の木々から聞こえていることに気づいた。


さらに、もっと近い位置から聞こえる音もあった。


「じゃあ、それももう放っておいて」


エリッサが言った。


私は続けて試した。


だが、すぐにはできなかった。


何度か蝉の声へ意識を引き戻された。


近くで何かが鳴るたびに、そちらへ注意が向いてしまう。


何度も最初からやり直さなければならなかった。


喉の渇きも集中の邪魔をしていた。


それでも何度か繰り返すうちに、少し違う音に気づいた。


途切れない音だった。


ほかの音にほとんど隠れている。


もっとよく聞こうと頭を傾けた瞬間、蛙の声と虫の羽音に紛れて見失った。


「くそ……」


「何?」


「何か聞こえた」


私はさらに強く目を閉じ、その音をもう一度探した。


数秒間は、さっきまでと同じ音しか聞こえなかった。


だが、やがてその音が戻ってきた。


遠い。


そして一定だった。


周囲の生き物の声とも、湿原の淀んだ水の音とも違う。


大量の水が落ち続け、何かへ何度もぶつかっているような音だった。


私は目を開けた。


「滝みたいだ」


エリッサが笑った。


「滝だからね」


私は彼女を見た。


「最初からそう言えばよかっただろ」


「せっかくなんだから、その耳が少しは役に立つか確かめてもいいでしょ?」


私は呆れて目を回した。


だがエリッサは肩から手を離しただけだった。


「どっちから聞こえるか分かる?」


私はもう一度目を閉じた。


今度はさっきより早く音を見つけることができた。


だが、方向を突き止めるのは別の話だった。


まず右を向く。


音が弱くなった。


元へ戻り、今度は左へ頭を向ける。


少しだけはっきり聞こえる。


私はその方向へ数歩進み、止まってもう一度耳を澄ませた。


少しずつ音の強さを比べていく。


やがて、苔に覆われた二本の木の間を指さした。


「あっち?」


エリッサは私が示した方向を見た。


「あっち」


思わず少し笑ってしまった。


「当たった」


「何回か失敗したあとでね」


「いちいち台無しにしなくていいだろ」


エリッサは小さな笑みを残したまま、また歩き始めた。


「ほら、祝おうとし始める前に行くよ」


私は後を追いながら、滝の音へ意識を向け続けた。


まだこの聴覚を上手く使えるとは到底言えない。


エリッサに何を探せばいいのか教えられていなければ、あの方向に流れる水があることすら気づかなかっただろう。


それでも今は、ただ多くの音が聞こえることと、本当に必要な音へ意識を向けることの違いが少し分かった。


私はエリッサの後ろを歩きながら、蛙や虫、そのほか湿原の音から、滝の音だけを分けて聞こうとした。


まだ時々、数秒ほど見失うことはあった。


だが、もうエリッサに教えてもらわなくても、自分で見つけ直すことができた。


少なくとも今回は、自分たちがどちらへ向かっているのか分かっていた。


景色の変化は少しずつ現れた。


進んでいくにつれて地面は少しずつ固くなり、泥も浅くなっていった。周囲の木々も、それまでより高く、ねじれの少ない形で伸びるようになっていく。


霧はまだ後方に残り、ヴァリス湿原の大部分を覆っていた。


だが、もう目の前のすべてを隠すほどではなかった。


最後に低木と太い根が密集した場所を抜けると、自然にできた開けた場所へ出た。


目の前には、苔や小さなシダに覆われた高い黒い岩壁があり、その上から滝が流れ落ちていた。


水は、湿原へ入ってから見たどの水よりもはるかに澄んでいた。


滝は大きな天然の水溜まりへ落ち、その後は岩の間にできた細い流れとなって先へ続いている。


その水の一部は、そのままヴァリスの湿地帯へ向かっていた。


滝から離れ、再び湿原へ入っていくにつれて、泥や腐った葉、暗い水路の水と混ざっていく。


数百メートルも進めば、これほど綺麗な場所から流れてきた水だとは想像もできなくなるだろう。


私は数秒、その場に立ったまま眺めていた。


何時間も泥と淀んだ水、腐りかけた植物に囲まれて歩いてきたせいで、こんな場所に出ること自体が少し不思議に感じられた。


滝の絶え間ない音が湿原の多くの音をかき消し、空気まで少し涼しく感じる。


前の世界でも、公園や景色のいい場所をいくつか訪れたことはあった。


だが、そこには必ず道や案内板、柵、何かしらの人工物があった。


ここには何もない。


水と、岩と、木だけだった。


最初に動いたのはエリッサだった。


慎重に水辺へ近づき、綺麗な岩の上を水が流れている場所のそばで膝をつく。


身体を下げた時、怪我をしている脚が痛んだらしく、少しだけ顔をしかめた。


それでも両手で水をすくい、そのまま飲んだ。


私は彼女がもう一度水を飲むのを待ってから、ようやく近づいた。


「何?」


私がためらっていることに気づき、エリッサが尋ねた。


「飲んだあとに倒れて死なないか確認してる」


エリッサはしばらく私を見つめた。


「早く飲んで」


私は膝をつき、水を口へ運んだ。


あまりにも冷たくて、最初の一口では歯が痛くなった。


だが、そんなことはもうどうでもよかった。


今度は少しゆっくり飲む。


一気に大量に飲もうとするのを自分で止めなければならなかった。


喉の具合は、ほとんどすぐに楽になり始めた。


顔を濡らし、手を洗い、腕に付いた泥も少し落とした。


左足の裏にできていた小さな傷も慎重に洗ったが、水が触れた瞬間、ひりっと痛んだ。


顔を上げると、エリッサがこちらを見ていることに気づいた。


口元が上がるより先に、その表情が何を意味しているのか分かった。


「やめろよ」


「まだ何も言ってないけど」


「言わなくても分かる」


彼女は笑いをこらえようとした。


だが、無理だった。


「それで? さっきの別の選択肢よりは美味しい?」


私は水の方へ視線を逸らした。


「その話は忘れるって言っただろ」


「そんなこと言ってない」


「言うべきだった」


エリッサは短く笑ってから、また水を飲んだ。


私たちはそこでさらに数分休み、息を整えながら、川へ落ちて以来初めて見つけた本当に綺麗な水を飲んだ。


少しずつエリッサの笑みも薄れていった。


それでも、あの糞の一件から生まれた軽い雰囲気は、まだ少しだけ残っていた。


しばらくして、エリッサが立ち上がった。


完全に身体を起こす前に、一度だけ手を膝につかなければならなかった。


そして、滝の上を見上げる。


「次は登る」


私も同じ方向を見た。


「どこに?」


彼女は岩壁の横を指した。


「あそこ」


私は濡れた岩と流れ落ちる水、そして苔に覆われた場所を見た。


「滝を登るってこと?」


「横よ」


「ほとんど状況変わってないだろ」


エリッサは私の言葉を無視し、滝の上を指した。


「もっと高い場所へ向かって、水の流れを追う必要がある」


私は眉をひそめた。


「川を追うんじゃなかったのか?」


「追ってる」


彼女はまず湿原へ向かって流れる水を指し、その後で上から落ちてくる水を指した。


「ヴァリスへ入る前に、本流が分かれてるの。一つは湿原へ下っていく。もう一つは高い地域を通って、この滝へ流れてくる」


そして上を見た。


「ここを登って、その流れを追えば、いずれ本流に近い場所へ出られる」


私はもう一度、滝の上を見た。


「それで北の村の近くまで行けるのか?」


「直接じゃない。でも巡回隊が知っている地域には出られる。そこまで行けば、自分たちがどこにいるのかも分かりやすくなるし、帰る道も見つけやすい」


それで十分だった。


エリッサは地図も巡回隊の報告も知っている。


あの水の流れを見つけたことで、自分たちの位置を判断する手がかりが増えたらしい。


洞窟を出てから自分たちがどの方向へ進んでいるのか、私はまだ完全には分かっていなかった。


だが今は、それについて反論する理由もなかった。


「陸から回れないのか?」


「たぶんできる。でも道を探すだけで何時間もかかるかもしれないし、また湿原の危険な場所へ入る可能性もある」


エリッサは滝の横へ近づき、根や岩の小さな出っ張り、苔の濡れ方が少ない場所を調べ始めた。


両手で一本の根を引っ張って強さを確かめると、頷いた。


「ここなら登れる。足をかける場所も十分ある」


私は裸足の左足を見た。


次に、片方しか残っていないブーツを見る。


そして最後に、目の前の濡れた岩壁を見上げた。


「俺、片足は裸足なんだけど。それ分かってるよな?」


「分かってる」


「それでも予定は変わらない?」


「変わる」


私は続きの言葉を待った。


その間、エリッサは別の根を掴み、自分の体重を支えられるか確かめていた。


「もっとゆっくり登ることになる」


私は一度目を閉じた。


「そうだろうな」


最初に登り始めたのはエリッサだった。


今回は、普通の状態なら出せただろう速度では登れなかった。


左脚の怪我がまだ痛むらしく、足を置く場所をより慎重に選び、根も引っ張る前に一つずつ確かめていた。


それでも、怪我をしている彼女の方が、私よりずっとこの登りに慣れているように見えた。


私は数秒見上げていた。


エリッサが数メートルほど登ったところで、下を見た。


「そこにいるつもり?」


私はため息をつき、まだ持ち歩いている破れたチュニックを持ち直し、岩壁へ近づいた。


これしか先へ進む方法がないのなら、私も登るしかなかった。


登るのは、エリッサが見せていたよりもずっと大変だった。


彼女は怪我のせいでゆっくり登っていたが、それでも手足をどこに置けばいいのか正確に分かっていた。


体重をかける前に根を確かめ、岩の小さな出っ張りを探し、より濡れた苔に覆われた場所を避ける。


時々、怪我をした脚を休ませるため数秒止まってから、また登り始めていた。


私には同じような技術はなかった。


裸足の足には岩の凹凸が一つ残らず伝わってくる。


一方で、残った一足のブーツは相変わらずびしょ濡れで、泥まみれだった。


右足を少し滑らかな場所へ置こうとすると、靴底が滑り、そのたびに腕だけでほとんど全体重を支えなければならなかった。


左右の足の違いも、思っていた以上に邪魔だった。


片方は直接岩へ足を置けるのに、もう片方は濡れた靴底に頼らなければならない。


三度目に同じことが起きたあと、頭上からエリッサの声が聞こえた。


「助けが必要? 偉大な英雄様」


顔を上げる。


彼女は数メートル上で太い根に身体を預け、私を待っていた。


「黙れ」


口元が少し上がった。


「聞いただけよ」


「俺も答えただけだ」


エリッサは短く笑い、また登り始めた。


私はできるだけ彼女と同じ足場を使いながら後を追った。


滝の水が直接こちらへ落ちてくるわけではなかったが、風が絶えず水しぶきを岩壁のこちら側まで運んでくる。


岩はずっと濡れていて、根の中にはあまりにも滑りやすく、体重を預ける前に二度、三度と確かめなければならないものもあった。


途中で、エリッサが少し高い出っ張りへたどり着き、身体を引き上げた。


私は同じ場所を見て、数秒間、自分にも同じ動きができると思った。


根を掴み、裸足の足を岩の小さなくぼみへ置き、身体を引き上げようとした。


力を入れた瞬間、ブーツの靴底が滑った。


身体が突然下へ落ち、胸が岩へぶつかる。


さらに滑り落ちる前に両手で根を掴むことには成功した。


そのまま数秒、足を置ける場所を探した。


エリッサが下を見た。


だが今回は何も言わなかった。


私がもう一度足を安定させるまで待ち、それから少し左にあるくぼみを指した。


「そこに足を置いて。その辺りの方がしっかりしてる」


言われた通りにすると、数センチ上へ進むことができた。


それ以降、エリッサは私との距離が開きすぎるたびに待つようになった。


時には丈夫そうな根を指し、別の時には足を置きやすい岩の場所を教えてくれた。


また別の場所では、裸足では十分な足場を見つけられなかった私のために、上の出っ張りで身体を低くして手を伸ばした。


今回は文句を言わなかった。


私は彼女の前腕を掴み、引き上げてもらった。


同じ出っ張りへ登れるまでエリッサは力を貸し、その後は互いに何も言わず先へ進んだ。


ようやく滝の上へたどり着いた時には、腕が疲労で震えていた。


先に最後の縁を越えたエリッサは、身体のバランスを整えてからこちらを向き、手を伸ばした。


「ほら」


私はその手を掴み、最後の数センチを引っ張り上げてもらった。


縁を越えた瞬間、そのまま横へ転がり、岩の上に仰向けになった。


息が苦しい。


「もう二度とやりたくない」


「文句が多すぎる」


「片方しかブーツがない状態で滝を登ったんだぞ」


「横をね」


私は顔だけ彼女へ向けた。


「それで少しはマシになるのか?」


エリッサは肩をすくめただけだった。


疲れているにもかかわらず、顔にはまだ小さな笑みが残っていた。


そして初めて、彼女にからかわれても以前ほど腹が立たなかった。


本当に私へ苛立っている時と、ただ反応を楽しんでいる時の違いが、少しずつ分かるようになってきた。


座れるようになるまで、少し時間がかかった。


破れたチュニックはまだ持っていた。


どうにか畳み、登っている間ずっと脇の下へ挟んでいたのだ。


片袖はネモニオンに破壊され、裾の辺りも逃げる途中でいくつも布が失われ、ほとんど全体に泥の染みがついていた。


腕には小さな切り傷があり、左足の裏には擦り傷と、登っている途中からまた痛み始めた小さな傷が残っていた。


それから、まだ履いていた唯一のブーツを見る。


以前よりさらにひどい状態になっていることに気づいた。


水と泥のせいで革は柔らかくなり、つま先に近い部分では靴底が剥がれ始めていた。


岩へ足を押しつけると、その隙間が少し広がり、さらに水が中へ入ってきた。


私はため息をつき、ブーツを脱いだ。


隙間を下へ向けた瞬間、水と泥が混ざったものが岩の上へ流れ落ちた。


指で側面を押してみると、革そのものも何か所か弱くなり始めている。


「気持ち悪いな、これ」


エリッサがちらりと見た。


「さっき口に入れかけたものを考えたら、ずいぶん基準が下がったと思ってたけど」


「本当に一生忘れないつもりか?」


「たぶんね」


私は首を振り、もう一度ブーツを確認した。


靴底はすでに剥がれ始めている。


中はまだびしょ濡れで、登っている途中にも何度も滑った。


あとで乾かせたとしても、長く使えるとは思えなかった。


エリッサの方も、状態がいいとは言えなかった。


服には小さな裂け目や逃げる途中についた跡があり、手首の近くには蜘蛛の糸で焼けた部分も残っている。


腕と顔には擦り傷があり、肩の近くの痣も以前より濃く見えた。


濡れた髪を顔からどけようと腕を上げた時、彼女は少し顔をしかめた。


「肩、悪くなってる?」


私が聞いた。


エリッサは何度か腕を動かした。


「まだ動く」


「それを聞いたんじゃない」


エリッサはこちらへ目を向けた。


「あなたは全身傷だらけで、両足もボロボロ。昨日は溺れかけた。私の怪我に文句を言える立場じゃないと思うけど」


「文句を言ってるんじゃない。聞いてるだけだ」


彼女は少し黙ってから答えた。


「痛い。でもまだ進める」


それ以上は聞かなかった。


私は自分たち二人を見て、それから隣に置いたチュニックとブーツを見る。


「一週間くらい森で迷ってたみたいだな」


エリッサは慎重に立ち上がった。


「村を出るずっと前から、あなたは迷ってるように見えたけど」


反論しようと口を開いたが、結局小さく笑ってしまった。


「今のは酷いな」


「でも本当でしょ」


「それでも酷い」


エリッサは少しだけ笑ってから、また森へ目を向けた。


ここまで登ると、水の流れを以前よりはっきり見ることができた。


川は木々の間を抜け、下の湿原に広がっていたような大量の泥や水路もない、もっと固い土地を流れている。


ここもまだ恐怖の森だった。


そして私は、森のどこであっても本当に安全だと思ってはいけないことくらい、すでに学んでいた。


それでも少なくとも、腰まで水に浸かって進む必要はなさそうだった。


私はゆっくり立ち上がり、ブーツを拾って数秒眺めた。


剥がれた靴底を革へ押し戻してみる。


だが手を離した途端、また剥がれた。


このまま持ち歩いても、どこかで捨てることになるだろう。


それに、この一時間だけでも役に立った以上に邪魔をしていた。


私はブーツを岩の脇へ投げ捨てた。


「もう諦める」


エリッサは私の足を見た。


「このまま裸足で行くの?」


「そうなるみたいだな」


「じゃあ、踏む場所には気をつけて」


「ここまで来たんだ。さすがに気をつけるよ」


破れたチュニックを脇へ抱え直し、前方の道を見た。


エリッサはすでに木々と水の流れを確認しながら、どこを進むべきか探していた。


既知の地域へたどり着くまでどれほど残っているのか。


その前に何が待っているのか。


まだ何も正確には分からない。


それでも川へ落ちて以来、初めて本当にヴァリス湿原を後にしつつあるように感じた。


今は、それだけで十分だった。

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