風が囁いた:英雄は目覚め、戦士は眠りにつく
エリッサは数秒の間、微動だにせずヴェリダンの遺体を見つめていた。
そして突然、立ち上がった。
その顔は未だ涙で覆われていた。彼女は私の方へと向き直ると、震える指先を私へと突きつけてきた。
「――あんたのせいよ!」彼女は叫んだ。「あんたがこの村に現れさえしなければ……あたしがあんたみたいな役立たずの英雄の護衛に派遣されさえしなければ……あたしもあの巡回にいたはずだった! あたしも彼と一緒にいられたのよ! 助けられたかもしれないのに!」
彼女の声は途切れそうになったが、それでも言葉を続けた。
「――叔父様はまだ、生きていたはずよ!」
私は沈黙を守った。
それが真実ではないことは理解していた。私が巡回部隊の配備を決めたわけでもなければ、伏兵を差し向けたわけでもなかった。しかし、その瞬間のエリッサがまともな思考力を失っていることも理解していた。彼女は幼少期から己の人生の一部であった大切な存在を、失ったばかりなのだ。
悲しみが彼女の代わりに言葉を発している時に、何らかの事実に納得させようとする理由は存在しなかった。
セリアが一歩前に踏み出し、私と彼女の間に割り込んだ。
「――やめなさい」彼女は毅然とした調子で言った。「アーヴェンはヴェリダンを巡回に送ってもいないし、伏兵の襲撃を引き起こしたわけでもないわ」
エリッサは荒い息を吐きながら、彼女を睨みつけた。
「――そこを退きなさい」
「――悲しみを盾にして、何の関係もない人を責め立てている間は退かないわ」
エリッサの表情が歪んだ。
素早い動作で、彼女は未だ所持していた私の短剣を腰から引き抜き、その刃先をセリアへと向けた。
小屋の中に集まっていた戦士たちが、即座に反応した。数人が手にしていた武器へと手を伸ばし、別の者は半歩前へと踏み出そうとした。
ヴァレリスが杖を掲げた。
「――誰も動くでない」
全員の動きが止まった。
セリアもまた、身じろぎ一つしなかった。剣に手を伸ばすことも、後退しようと試みることもなかった。ただ、エリッサの視線を正面から受け止め続けた。
「――あなたが苦しんでいるのは分かっているわ」セリアは言った。「だけど、アーヴェンがやっていないことで彼を傷つけるような真似は絶対に許さない」
エリッサの腕が、小刻みに震え始めた。
数秒の間、彼女が襲いかかってくるのではないかと思った。しかし、彼女の肉体から少しずつ力が削ぎ落とされていくかのようだった。
短剣の先が、下がった。
エリッサは目を閉じ、武器を納めると、私たちに背を向けた。それから再び卓の傍らに膝をつき、ヴェリダンの手を握り締めた。
私は彼女の方へと一歩踏み出そうとしたが、セリアが私の肩を掴んだ。
「――やめておきなさい、アーヴェン」彼女は囁いた。「今の私たちに掛けられる言葉なんて、何一つないわ」
私はもう一度だけ、エリッサへと視線を送った。
彼女は卓の傍らで背を丸めたまま、紫色のペンダントを指の間に握り締め続けていた。セリアの言う通りだった。その瞬間に何を言おうと、ただ事態を悪化させるだけに過ぎないだろう。
私たちは沈黙したまま、小屋を後にした。
回廊へと出た瞬間、ヴェリダンを運び込んできた戦士の一人が私たちの後を追ってやって来た。彼は疲弊しきった様子で、その衣類には未だ血痕が残されていた。
「――先ほどの非礼をお詫びする」彼は頭を小さく下げながら言った。「エリッサは普段、あのような振る舞いをする者ではないのだが」
「――叔父様を失ったばかりですから」私は答えた。「分かっています」
戦士は頷いた。
「――ヴェリダンこそが、彼女に戦い方を教えた男なのだ。彼女の母親が亡くなった後も、彼女の養育を手助けしていた。エリッサにとって、彼は単なる親族以上の存在だったのだよ」
私は数秒の間彼を見つめ、手を差し出した。
「――アーヴェンです」
エルフは私の手を握り返した。
「――カエレンだ。名乗る必要はないぞ。村中の誰もが、お前たちが何者であるかを知っている」
彼の表情は笑みを形作ろうと試みたものの、それは即座に消え去った。
私はヴェリダンが運び込まれてきた時の凄惨な状態を思い出していた。
「――カエレン、南の国境で一体何が起こったのですか?」
彼は一瞬、視線を落とした。
「――ノービル(Gnoll)の襲撃を受けた」
セリアが眉をひそめた。
「――どれほどの数だったの?」
カエレンは深く息を吸い込んでから、答えた。
「――数百だ」
彼女の表情が厳しさを増した。
「――ノービルがそれほどの群れを形成するなんて、普通はあり得ないわ」
「――我々とて、あのような光景は一度たりとも目にしたことがなかった」カエレンは応じた。「単に群がっていただけではないのだ。奴らは最初の襲撃を仕掛ける前から我々の巡回部隊を包囲し、退路を遮断していた」
「――伏兵を配置していたと?」セリアが問いかけた。
カエレンは頷いた。
「――複数の方向から襲撃してきた。包囲を突破しようと足掻いた際、一部が後退すると同時に別の群れが前進してきたのだ。そしてほぼ同時に位置を入れ替えてみせた」
セリアは頭を横に振った。
「――そんなの筋が通らないわ。ノービルは指導者に従うこともなければ、命令を聞き入れるような種族でもない。仮に群れをなしたとしても、各自が身勝手に攻撃を仕掛けるのが常でしょう」
「――分かっている」カエレンは答えた。「我々も奴らの間に指導者の姿を目にしなかった。にもかかわらず、奴らの連携は極めて洗練されていたのだ。それぞれの群れが、いつ前進し、いつ後退し、いつ通路を遮断すべきかを把握しているかのようだった」
彼は一瞬、沈黙した。
「――それが、我々の不覚を取った要因なのだ」
セリアは村の彼方に広がる木々へと視線を逸らした。
「――どうやって脱出できたの?」
「――木々を伝ってだ」カエレンは説明した。「地上からの包囲突破が不可能であると悟り、我々は幹を駆け登って枝伝いに前進したのだ。ノービルどもは我々の追跡についてくることができなかった」
「――他の戦士たちは?」私が問いかけた。
「――無事だ。何人かが軽微な斬創や負傷を負ったものの、重傷者はいない」
カエレンは小屋の扉へと視線を送った。
「――手傷を負わずに脱出することができなかったのは、ヴェリダンただ一人だった」
私は一瞬、視線を落とした。
カエレンは頭を小さく下げた。
「――戻って、準備を手伝わねばならん」
彼は向き直し、小屋へと戻っていった。
セリアと私は回廊の上で立ち尽くしていた。彼女は耳にしたばかりの報せに明らかに心を痛め、森を見つめ続けていた。
数百ものノービルが集結しているという事実だけでも、すでに十分な脅威だった。
彼らがそのような組織的な行動をとっていたという事実は、事態をいっそう不可解なものへと変えていた。
北の村の建造物を繋ぐ木製回廊を渡っていると、前方から響いた叫び声によって住民たちの動きが制せられた。
「――道を空けろ! 急げ!」
直後に、別の叫び声が上がった。
「――そこを退け!」
誰もが足を止め、その騒動の方角へと視線を向けた。四人のエルフの戦士たちが、息を荒らげ、埃と煤に塗れながら回廊を駆けてきた。彼らの間には、重傷を負った別の戦士が一人、運び込まれていた。
男の肉体から血が滴り落ち、木肌の上に痕跡を残していた。額から頬にかけて、深い斬創が走っている。革と金属の鎧の一部は破壊され、左腕は身体の脇で動くことなく力なく垂れ下がっていた。その呼吸は弱く、途切れ途切れだった。
彼を担いでいた戦士の一人が、周囲を見回した。
「――ヴァレリス師をお呼びしろ! 早く!」
間もなく、彼は巫女自身が目と鼻の先に立ち尽くしていることに気づいた。
「――巫女様!」彼は接近しながら叫んだ。「――どうか、彼をお救いください! 南の国境で伏兵に遭ったのです!」
ヴァレリスの穏やかな表情は、即座に消失した。
「――私の家へ運ぶのです。今すぐに! これ以上血を失わせてはなりません!」
戦士たちは大きく頷き、巫女の小屋に向かって再び走り出した。
私は沈黙したまま彼らの通過を見送った。彼らが私たちの脇を通り抜けた瞬間、エリッサが息を呑むのが聞こえた。
私は彼女の方を見た。
彼女の瞳は見開かれ、唇は震えていた。先ほどまで保っていた硬直した表情は、完全に消え去っていた。
「……ヴェリダン……」彼女は呟いた。
数秒の間、彼女は両脚を動かすこともできぬかのように立ち尽くしていた。それから一歩、さらにもう一歩を踏み出し、一行の後を追って走り出した。
セリアと私は素早く視線を交わした。私たちの誰もその男が何者であるかを知らなかったが、エリッサの反応は、彼が彼女にとって大切な人物であることを明白に物語っていた。
私たちも直後に走り出した。
ヴァレリス師の小屋に入った時、ヴェリダンはすでに木製の卓の上に横たえられていた。巫女は彼の胸の上に両手をかざし、柔らかな緑色の光に包まれながら、止血を試みていた。彼を運んできた戦士たちは、周囲に沈黙したまま佇んでいた。
エリッサは卓の傍らに膝をつき、血に染まったヴェリダンの手を両手で握り締めていた。
彼女のそのような姿を目にするのは奇妙だった。常に硬質で攻撃的だった戦士の姿は消え去っていた。その瞬間のエリッサは、ただ大切な人を失う可能性を前に怯える一人の存在に過ぎなかった。
「……ヴェリダン叔父様……」彼女は彼の手を強く握り締めながら呼んだ。「……私を見て。私と一緒にいて」
ヴェリダンの指先が、微かに動いた。
苦痛に喘ぎながら、彼は目を開き、脇に膝をつく人影へと焦点を合わせようと足掻いた。ついに彼女を認識すると、その唇に弱々しい笑みが浮かんだ。
「……エリ……」彼は呟いた。
エリッサは彼の手を自らの顔へと引き寄せた。涙が彼女の頬を伝い落ち始めた。
「……喋らないで。お願いだから、体力を温存して」
ヴェリダンは彼女を見つめ続けた。それから、ヴァレリスの方へと視線を巡らせた。
巫女は彼の胸の上に手をかざし続けていたが、その表情はいっそう厳しさを増していた。ヴェリダンは、それが何を意味するのかを理解したようだった。
彼の右腕が苦痛を伴って動いた。彼は自らの首元へと手を伸ばし、紐に繋がれた小さなペンダントを引き抜いた。その中央には紫色の石が埋め込まれており、小屋の光を反射していた。
ヴェリダンはエリッサへとペンダントを差し出した。
彼女は一瞬躊躇った後、手を開いた。
彼は彼女の手のひらの上にそれを置き、叔母の指を石の周囲へと閉じさせた。
「……叔父様……」エリッサは首を横に振りながら呟いた。「……嫌よ」
ヴェリダンはただ、彼女を見つめ続けた。
彼の呼吸が、途絶えた。
エリッサが握り締めていた手が力を失い、卓の上へと落下した。
ヴァレリスは数秒の間、微動だにせず佇んでいた。それからゆっくりと、彼の胸から手を離した。緑色の光が消え去った。
誰も言葉を発しなかった。
エリッサは卓の傍らに膝をついたまま、片方の手にペンダントを、もう片方の手にヴェリダンの手を握り締め続けていた。彼女の息は震えていたが、その口からは何の音も漏れなかった。
聖樹の出口を覆っていた葉の帳をくぐり抜け、私はヴァレリスに伴われて外へと出た。
入口からわずか数メートルの場所で、セリアが樹の太い根の一つにもたれかかっていた。腕を組み、頭をわずかに低くしている。落ち着きを装おうとしてはいたものの、その顔に滲む疲労の色は、ここ数日彼女がろくに眠っていないことを物語っていた。
草を踏みしめる私たちの足音を耳にするやいなや、彼女は頭をもたげた。
私の姿を視界に捉えた瞬間、彼女の顔から緊張の色彩が完全に消え去った。即座に笑みが浮かび、彼女は根から身を離すと、私の方へと急ぎ足で歩み寄ってきた。
「――ようやく目を覚ます気になったのね、アーヴェンちゃん!」戯れるようなトーンで動揺を隠そうとしながら、彼女は口にした。
私が応じるよりも早く、セリアは拳を握り締め、私の腕を軽く小突きしてきた。
「丸二日よ! 私にどれだけ肝を冷やさせたか分かってるの?!」
私は項に手を当て、苦笑いを漏らした。
「……ごめん、セリア。本当に。外でこれほどの時間が過ぎていたなんて、夢にも思わなかったんだ」
彼女は再び腕を組み、腹を立てたような表情を装った。
「でしょうね! あなたが精霊界をお散歩している間、私はあなたがいつか目を覚ますのかどうか、ここで必死になって確かめようとしていたのよ」
「……正確にはお散歩って感じじゃなかったんだけどね」
セリアは数秒間、私を観察した。それから溜息を漏らし、肩の力を抜いた。
「――とにかく、無事に戻ってきてくれたならいいわ」
今度の彼女の笑みには、いかなる挑発も含まれていなかった。そこにあるのは、ただ純粋な安堵だけだった。
その時になって初めて、私は彼女の肩越しに視線を送り、エリッサもまたそこにいることに気づいた。彼女は村の警備兵二人を伴い、数メートル離れた場所に佇んでいた。腕を組み、厳しい表情を崩さず、瞳を私に固定していた。
私は彼女の方へと歩み寄り、しかるべき距離を保って足を止めた。エリッサは近づこうともせず、私が儀式を終えたことに対して何の歓喜も見せなかった。
ただ私を睨みつけ、問いかけてきた。
「――終わったの?」
私は彼女の視線を受け止めた。
「……ああ」
エリッサは数瞬の間沈黙を守り、私の顔と佇まいを見定めていた。それから、鼻から息を吐き出した。
「――少し雰囲気が変わったわね」
私の唇に、微かな笑みが浮かんだ。
「それって、褒め言葉?」
彼女は顔を背け、舌打ちをした。
「――違うわよ」
言葉を完成させる前に、短く間を置いた。
「……前より少しはマシな面構えになったって言っただけよ」
背後でセリアが吹き出し始めた。私自身も短く笑うのを堪え切れなかった。
エリッサは眉をひそめ、私たちを睨みつけた。
「――何がおかしいのよ?」
「ううん、何でもないよ」笑みを抑えようとしながら、私は答えた。
「――けっ。ならさっさと行くわよ」
彼女は踵を返し、村の方角へと歩き始めた。
自らの中に一体何が変わったのかは未だ正確には判然としなかったものの、エリッサは何かしらの変化を察知していた。それだけでも、樹の内部での経験が無駄ではなかったと示すには十分だった。
私たちは北の村への帰路に就いた。ヴァレリス師が先頭に立ち、木々の間を進みながら杖に身を委ねていた。セリアは私の隣を歩き、私が気を失っていた二日間の間に起こったいくつかの出来事を語ってくれた。エリッサと警備兵たちは数歩後ろを、沈黙したまま従っていた。
しばらくの時間の後、私たちは林の境界を抜け、村の建造物を繋ぐ最初の木製回廊へと到達した。
その時、背後で足音が途切れるのが聞こえた。
肩越しに振り返る。
エリッサが回廊の中央で足を止めていた。彼女は私を直視することなく数秒の間佇み、それから問いかけてきた。
「――それで……儀式で探し求めていたものは、解決したの?」
私も足を止めた。
シルヴァリスとの対話、試練、そしてこれから立ち向かわねばならぬすべての事態に思いを馳せた。
「……部分的にね」私は答えた。
エリッサが私の方へと顔を向けた。
「――丸二日もかけて、たったの『部分的に』?」
彼女のトーンは、純粋な挑発というわけではなかった。不信感と焦燥感が入り交じったもののように思えた。
「――問題を半分だけ解決するなんてあり得ないわ」彼女は言葉を続けた。「一気に片付けるか、それとも残存し続けるかのどちらかよ」
一瞬、頭を垂れ、反論することなくその批判を受け入れたい衝動に駆られた。試練を経る前の私であれば、まさにとっていたであろう反応だった。
深く息を吸い込み、私は姿勢を正した。
「……確かに残り続けるのかもしれない」私は穏やかに応じた。「だけど、半歩でも前に進むことは、一度も踏み出す勇気を持てずにその場にとどまり続けるよりは、ずっと良いはずだ」
エリッサは沈黙した。
彼女は答えるために口を開いたものの、即座には言葉が出てこなかった。
「私は……」
自らの躊躇いに気づき、彼女は口を閉じ、眉をひそめた。
「――チッ……あんたと議論して時間を無駄にするつもりはないわ」
エリッサは向き直り、再び歩き始め、素早い足取りで私たちの脇を通り抜けていった。
セリアが微かな笑みを浮かべながら、私を見つめていた。
私は叫び声を上げることも、議論に勝とうと足掻くこともなかった。ただ今度の私は、頭を垂れることをしなかったのだ。
変わらなければならない部分は未だ多く残されていたが、あるいはこれが、始まりなのかもしれなかった。
意識が少しずつ戻ってきた。最初に感じたのは、聖樹の古い木肌の上に横たわる自らの肉体の感触だった。熟睡していたかのように筋肉は弛緩していたが、精神は未だ精霊界の記憶に支配されたままだった。
ゆっくりと目を開く。数秒の間、視界は途切れ途切れにぼやけていたが、やがて樹木の内部の光景を認識した。重なり合う太い枝々が頭上に自然の天井を形作り、儀式が始まる前と全く変わらぬ様子で、数百もの小さな光の精霊たちが空間を漂っていた。
その場所の静寂は、試練の最中に直面したすべての出来事とは完全に異なるものだった。
すべてが本当に終わったのだと理解しようとしていた時、静かな声が静寂を破った。
「――ようやく目を覚ましましたね」
首を横へと向けた。ヴァレリス師は儀式に用いた幹の近くに座ったままだった。黒い根の杖を両手で握り締め、穏やかな笑みを浮かべて私を観察していた。
「――気分はいかがですか、若きアーヴェン?」
答える前に、数秒間思考を巡らせた。両腕を動かし、両脚を屈伸させてみると、自分の肉体が以前よりも軽くなっているように感じられた。
「妙に……いい気分です」木肌の上にゆっくりと腰掛けながら、私は呟いた。「始まる前よりも、ずっと素晴らしい感覚です」
ヴァレリスはしばらくの間、私を見つめ続けた。彼女の笑みが微かに深まった。
「――驚きましたね」
私は眉をひそめた。
「驚いた……ですか? なぜでしょう?」
老巫女は杖の頭の上に両手を重ねた。
「――お前がシルヴァリスに遭遇したからです」
私の目がわずかに見開かれた。
「どうしてそれを……?」
ヴァレリスは低く笑声を漏らした。
「――これでも私はこの村の巫女ですよ」彼女は顎の動きで聖なる幹を指し示した。「この樹を通り抜けるこれほど古く強大な存在に気づくこともできぬようでは、この地位に就く資格などありません」
思わず私も笑みをこぼしてしまった。
「そう言われてしまっては、反論のしようがありませんね」
彼女は衣類を整え、私が言葉を発するのを待つように見つめ続けた。
私は精霊界で起こった出来事を語り始めた。不快な声を上げる小さく緑色の存在たちのこと、シルヴァリスとの遭遇、黒エルフたちに授けられた祝福とそれを阻んでいた障壁のこと。そして、この肉体を自分の一部として受け入れるのを拒んでいた恐怖や思考に対峙するため、試練を経る必要があったことを説明した。
自らの家族のこと、かつての私の姿をしたクリーチャーのこと、そしてアーサーや兵士たちのことについて語った。予言にある裏切り者が自分なのではないかという恐怖をシルヴァリスに明かしたことも伝えた。
ただ、あの顔のない女性の存在だけは伏せておいた。
ヴァレリスを疑っていたからではない。シルヴァリスでさえ彼女が何者なのかを知らなかったからだ。彼はその気配について調べると口にしていたし、未だ説明のつかない事態で巫女を不安にさせたくはなかったのだ。
ヴァレリスは一切言葉を挟むことなく、最後まで耳を傾けた。時には目を閉じながら集中し、時には――特に小さく緑色の精霊たちの口論について口にした時など――微かな笑みを浮かべながら。
話し終えると、彼女は数秒の間、沈黙を守っていた。
「――実に珍しい体験ですね」彼女はついに言った。「私の全人生において、この樹を経た者からそのような報告を聞いたことなど一度たりともありません」
その時、私は未だ考慮していなかった疑問を思い出した。
「師よ……」
彼女はわずかに顔を傾けた。
「――私はどれほどの時間、気を失っていたのでしょうか?」
ヴァレリスは当然のように応じた。
「――かなりの時間ですよ」
私は何度か瞬きをした。
「具体的にはどれくらいですか?」
「――二日間です」
私は固まり、彼女を凝視した。
「二日間……?」視線を落とし、自らの両手を見つめた。「僕にとっては、ほんの数時間に過ぎないように思えたのですが」
「――精霊界における時間の流れは、ここでのそれとは異なりますからね」ヴァレリスは説明した。「あの場所での数時間が、私たちの世界での数日間に相当することもあります。また、その逆が起こることもあります」
理解しようと足掻きながら、自らの肉体を見つめた。
「では、僕は二日間もここに横たわっていたということですか?」
「――左様です。ですが、心配する必要はありません。儀式の最中、聖樹は精霊界と接触した者の肉体を保護し、維持してくれます。通常の形で食料や水を絶たれていたわけではありません」
その説明を完全に理解するのは難しかったものの、私はゆっくりと頷いた。
「この手の現象を完全に理解できる日は、永遠に訪れない気がします」
ヴァレリスは微笑んだ。
「――私とて同じですよ」
彼女は杖を地面につけ、慎重に立ち上がった。
「――いらっしゃい、若者よ。北の村へと戻る時間です」
私も直後に立ち上がった。これほど長い間動かずにいた後だから弱さを感じるだろうと予期していたものの、両脚は何の滞りもなく反応した。
ヴァレリスは聖樹の出口に向かって歩き始めた。
「――お前の帰還を、今か今かと待ちわびている者がいますよ」
返答を確信しながら、私は首を少し傾けた。
「……セリアですか?」
ヴァレリスは頷いた。
「――この二日間、彼女は非常に心配していましたからね」
私は控えめな笑みを浮かべた。
「想像がつきます」
老巫女は可笑しそうに笑声を漏らした。
「――お前には想像もつかないでしょうね」
私は彼女のトーンに違和感を覚えた。
「僕が気を失っている間に、一体何があったのですか?」
ヴァレリスは歩みを止めずに答えた。
「――お前がすぐには目を覚まさないと悟った時、彼女は力ずくで聖樹の中へ押し入ろうとしたのです」
私は目を見開いた。
「……何だって?!」
「――警備兵たちが制止を試みましたが、大した成果は上がりませんでした」
私は顔を手で覆った。
「彼女がそんなことをしたなんて、信じられません……」
ヴァレリスは微笑んだ。
「――幸いなことに、彼女が樹のこの領域に到達する前に、私が彼女を見つけることができましたがね」
私は彼女を見つめた。
「彼女はここまで入ってきたのですか?」
「――いいえ。儀式を中断させることはできず、非常に強い精神的気配がお前の肉体を包み込んでいるのだと説明しました。それ以降、彼女は待つことを受け入れましたよ」
安堵の溜息が漏れた。
「良かった……。師と村の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」
ヴァレリスは手を軽く振った。
「――謝罪など必要ありません。セリアは心配のあまり行動しただけであり、誰も負傷していません。それが最も重要なことです」
私たちは葉で覆われた通路へと到達した。そこをくぐり抜ける前に、私はもう一つ質問を投げかけた。
「彼女は今、どこにいるのですか?」
ヴァレリスは足を止め、可笑しそうな表情で私を振り返った。
「――外ですよ。この二日間の大半を、彼女は村とこの樹の間を行き来して過ごしていましたが、夜が明けてからは入口から離れることを拒んでいます」
目の前にある葉の帳を見つめた。
「では、彼女は朝からずっと待っているのですか?」
「――お前が目を覚ますのを待っているのです」ヴァレリスは認めた。




