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氷銀の魔女  作者:
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8-13 社会の闇

 翌朝。


 和真は医務室のベッドで朝食を食べていた。それは医療棟で入院する生徒の為に作られる食事、いわば病院食だ。焼き鮭の味付けが薄い一方で、タコの酢の物は異様に酸っぱい。なかなかご飯が進まないが、和真は文句をこぼさずに淡々と食べた。


 ゆっくり寝ていた甲斐もあり、身体を起こすことができるようになった。しかし、歩くのは文字通り骨が折れるものの、トイレに介助無しで行くことはできる。


 朝食を完食し、トレーをワゴンによけた。画面にヒビが入ったスマートフォンでニュースを見る。ここ数日、日課であったニュースチェックが出来ていなかったため、世捨て人のような感覚に陥った。


━ユリィ、どうしてるかな。せめて夢の中で……。


 女性キャスターの読み上げを耳に入れつつも、和真の頭の中には銀色の少女が住んでいた。


『先週木曜日の未明に起きた山梨県の医薬品工場の襲撃事件に、魔法主義集団、暁星学院が関与していた可能性が、新たに分かりました。調査の結果━』


━どういうこと?これじゃまるで、学院が悪者じゃないか……。


 さらに別のニュース。


『魔法の技術向上を目指す組織、株式会社ホープフルのあるオフィスビルの入り口付近で抗議デモが行われ、約200人が参加しました』


 画面の中の人々は、『魔法反対!』や『戦争反対!』、『魔法テロリスト集団は消えろ!』などのプラカードを掲げて拡声器で叫んでいた。さらに、ホープフル社の社員と思われるスーツ姿の男性に集団で暴行する映像。この騒動に警官隊が出動し、何人かのデモ参加者は拘束されたが、彼らは『暴力反対!』などと叫んでいた。


 あまりの衝撃に、和真は言葉が出なかった。


 何を信じればいいのか、何が正しいのか。


 魔法は本当に悪なのか。


 社会、メディアに対する不信感。堂ノ上を信じたい思い。色々なものが混ざり合う。


━分からない、でも━


 ユリィを守る。ユリィと共に生きる。


━そのために、色んなことをこの目で確かめたい。





 同時刻。


 貝塚兼孝は全く同じ一連のニュースを3年男子寮のラウンジで見ていた。


 兼孝の口元は緩み、眉間に皺が寄り、目は細くなっていた。


━これは、明らかな偏向報道。


 学院のニュースが流れると、それまで各々に過ごしていた男子生徒たちが、長方形の板の向こうの映像に食いついた。休日の朝の清々しい雰囲気が一転して重苦しくなった。


「え?これ、大丈夫か?」


「俺たち、どうなるんだ?」


 突然当事者になったことで、不安を隠せない生徒たちがほとんど。


「大丈夫だよ」


 兼孝がニヤッと笑いながら、一言。


 鶴の一声の発生源に、一斉に視線が向く。


「どっちが悪か、いずれわかるさ」


 沈黙。


 兼孝はふふふっ、と不気味に笑う。


 兼孝の一言に、誰も何も言わなかった。


 事情を知ってしまった兼孝は、向こう側に「悪」が潜んでいることを確信していた。


━でも。


━堂ノ上理事長が正義だとも思えない。


 さらに、ホープフル社へのデモのニュースが流れる。


━正義を唱えるのは自由さ、だけど━


━暴力に訴えた時点で正義じゃなくなるのさ。


 兼孝はラウンジを後にし、ある場所へ向かう。


━予定変更だね、アレの準備を少しでも急いだ方がいいかも。


 気分転換に流行りのアニメ映画を鑑賞しに行く予定だったが、その場でキャンセル。特に予約していたわけでもないので金銭的な損害は無し。


 兼孝は、自身の研究室に入り、照明のスイッチを入れる。


「アレの調査報告書は確か━」


 ノートパソコンを起動させ、パソコン内のフォルダを漁る。


 目的のファイルを発見。PDFとして保存されている報告書をくまなく眺める。


「まさか、こんなバカげたものが役に立つ日が来るとはね……」


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