表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷銀の魔女  作者:
73/88

7-9 撤退

「敷地の外まで頑張って!」


 一行は敷地の出入り口まで最短距離で走る。


 しかし、出入り口付近には10人以上の機関銃を持った兵士達が待ち構えていた。


「止まれ!」


 兵士の怒号で一行は急停止せざるを得なかった。


「くっ、もう電源が復旧したのね……っ!」


「AKFも展開できない……っ!」


「それじゃあ……」


「腹を括るしかないっ!」


 和真はそう言って、姿勢を低くしつつ、刀を携えて敵陣に走り出した。


 兵士達は、和真に向けて弾丸を連射し始めたが、既に和真に接近を許していた。


━ごめん!


 敵相手に心の中で謝りつつ、斬りつけた。赤い何かが噴き出していたが、急所は外したはずだ。和真は極力見ないように目を逸らした。


「かずま!」


 後を追うようにユリィも素早い動きで銃弾の弾幕をすり抜けた。


 兵士を1人、2人、3人と、パンチとキックで次々と機械的に無力化していく。


 後方から、此人は銃のレーザーで兵士の武器を的確に無力化させた。


「こーんにーちわあぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 拡声器で大音量の声が響き渡る。同時に軽トラックがこちらに向かってきた。


「えっと、ブレーキは、左!」


「きゃあああっ!」


 軽トラックの荷台からは女子の悲鳴が聞こえた。ゆかりと紅葉が荷台乗っていた。


 兼孝が運転している軽トラックは、敵を1人轢き飛ばした後、急ブレーキで停止した。


「みんな、乗って!」


 兼孝の声に、和真、ユリィ、此人が軽トラックのほうに駆け寄る。ガコッという音がした。


「えーい、今時マニュアルトランスミッションの軽トラなんてっ!」


 兼孝が不満を吐露しつつ、クラッチとシフトレバーの操作に悪戦苦闘していた。エンジンが空回転する音が響く。


「ユリィ!先にっ!」


 和真がそう言った次の瞬間━


 振り向くと、兵士達が倒れている。


 その中に、流血しながらも銃を向けている者が━


 和真にとって最も守るべき少女に━


 発射音━


 時間の流れが、遅くなるような感覚━


「危ないっ!」


 和真はとっさにユリィを庇うように身を乗り出していた。


 弾丸が当たったのかどうか、判断がつかない。


「かずま!傷が!」


 ユリィの悲痛の叫び。右肩に焼けるような痛みが走った。


「がっ……!」


 此人がレーザーで兵士を撃つ。ユリィと和真を強引に荷台へ持ち上げた。


「兼ちゃん!」


 此人自身も荷台に乗り込み、合図を出した。


「がってん!」


 軽トラックは国武院の敷地の外を走り抜けた。年式が古い為か、エンジン音が悲鳴を上げているようにも聞こえた。


「……かずま」


 ユリィの今にも泣きそうな声に、横たわる和真は胸を突き刺されるような痛みを覚えた。


「追撃の様子はなさそうね。コズミックに連絡するわ━兼ちゃん、運転代わりなさい、原付の免許しか持ってないでしょ」


 軽トラックを路肩に停車し、兼孝は助手席に、此人は運転席に座った。


「……ごめん、なさい、かずま……わたしの、せいで……」


「君が無事でよかった、僕は、大丈夫だから……」


 応急処置は受けたものの、普段より呼吸がしにくい。


 暁星学院に到着するまで、ユリィはずっと何も喋らずに、ただ俯いていた。


 空は、灰色の雲で覆われていた。時々冷たい水滴が、身体を叩きつけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ