7-9 撤退
「敷地の外まで頑張って!」
一行は敷地の出入り口まで最短距離で走る。
しかし、出入り口付近には10人以上の機関銃を持った兵士達が待ち構えていた。
「止まれ!」
兵士の怒号で一行は急停止せざるを得なかった。
「くっ、もう電源が復旧したのね……っ!」
「AKFも展開できない……っ!」
「それじゃあ……」
「腹を括るしかないっ!」
和真はそう言って、姿勢を低くしつつ、刀を携えて敵陣に走り出した。
兵士達は、和真に向けて弾丸を連射し始めたが、既に和真に接近を許していた。
━ごめん!
敵相手に心の中で謝りつつ、斬りつけた。赤い何かが噴き出していたが、急所は外したはずだ。和真は極力見ないように目を逸らした。
「かずま!」
後を追うようにユリィも素早い動きで銃弾の弾幕をすり抜けた。
兵士を1人、2人、3人と、パンチとキックで次々と機械的に無力化していく。
後方から、此人は銃のレーザーで兵士の武器を的確に無力化させた。
「こーんにーちわあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
拡声器で大音量の声が響き渡る。同時に軽トラックがこちらに向かってきた。
「えっと、ブレーキは、左!」
「きゃあああっ!」
軽トラックの荷台からは女子の悲鳴が聞こえた。ゆかりと紅葉が荷台乗っていた。
兼孝が運転している軽トラックは、敵を1人轢き飛ばした後、急ブレーキで停止した。
「みんな、乗って!」
兼孝の声に、和真、ユリィ、此人が軽トラックのほうに駆け寄る。ガコッという音がした。
「えーい、今時マニュアルトランスミッションの軽トラなんてっ!」
兼孝が不満を吐露しつつ、クラッチとシフトレバーの操作に悪戦苦闘していた。エンジンが空回転する音が響く。
「ユリィ!先にっ!」
和真がそう言った次の瞬間━
振り向くと、兵士達が倒れている。
その中に、流血しながらも銃を向けている者が━
和真にとって最も守るべき少女に━
発射音━
時間の流れが、遅くなるような感覚━
「危ないっ!」
和真はとっさにユリィを庇うように身を乗り出していた。
弾丸が当たったのかどうか、判断がつかない。
「かずま!傷が!」
ユリィの悲痛の叫び。右肩に焼けるような痛みが走った。
「がっ……!」
此人がレーザーで兵士を撃つ。ユリィと和真を強引に荷台へ持ち上げた。
「兼ちゃん!」
此人自身も荷台に乗り込み、合図を出した。
「がってん!」
軽トラックは国武院の敷地の外を走り抜けた。年式が古い為か、エンジン音が悲鳴を上げているようにも聞こえた。
「……かずま」
ユリィの今にも泣きそうな声に、横たわる和真は胸を突き刺されるような痛みを覚えた。
「追撃の様子はなさそうね。コズミックに連絡するわ━兼ちゃん、運転代わりなさい、原付の免許しか持ってないでしょ」
軽トラックを路肩に停車し、兼孝は助手席に、此人は運転席に座った。
「……ごめん、なさい、かずま……わたしの、せいで……」
「君が無事でよかった、僕は、大丈夫だから……」
応急処置は受けたものの、普段より呼吸がしにくい。
暁星学院に到着するまで、ユリィはずっと何も喋らずに、ただ俯いていた。
空は、灰色の雲で覆われていた。時々冷たい水滴が、身体を叩きつけていた。




