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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
2ー4:暗闇の影

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第81話 結局ライムが悪い

影を以って闇を制す。

「えっ、ライムさんが?」

「そうなのよ。昨日事故に遭ったみたいで、亡くなったそうよ」


 僕とクロンはエメラルに呼び出されていた。

 冒険者ギルドに足を運ぶと、とんでもない事実を告げられる。

 まさかライムが死んだ、しかも事故に遭ったらしく、亡くなったらしい。


「そうなんだ。葬式とかは?」

「死体の状態が悪過ぎるみたいね。一応棺桶に入った遺体は見たけど、悲惨だったわ」


 あまりにも突然の死に、流石に納得出来なかった。

 何か証拠でもあるのかと訊ねると、実際にエメラルは遺体を目撃したらしい。

 〈《眩き宝石》〉の代表として花を手向けに行った所、棺桶に入ったライムの亡骸が悲惨な姿で入っていたそうだ。


「そうなんだ。急だね」

「ええ。まあ、人間なんていつ死んでもおかしくないわ。けれどおかしいわよね。冒険者ギルドのマスターが……って、鳴るわよね」

「ん?」


 エメラルの口振りは死を受け入れていた。実際、どれだけ実力の豊富な優れた冒険者であったとしても、命を失うことはある。それが例え事故だとしてもだ。

 けれどおかしなことでもある。冒険者ギルドのマスターが、並のことで事故死するだろうか? 何か陰謀めいたものが隠れていると推測する。


「ただの事故死じゃない?」

「そういうことよ、クロン」


 クロンが確信を付いたことを口走った。

 ただの事故死ではない? 一体何処から出て来る根拠なのか。

 振り返るまでもなく、僕は怪しんでいた。


「ただの事故死じゃないって……根拠はあるの?」

「もちろんよ。言っていたでしょ、ベルト達が調べていたって話。私が一人残って、ベルトから話を聞いていたでしょ?」


 大事になって来るのは、ベルトの調査だ。ライムは裏で何かを企んでいた。

 ネイルとシザースの二人が死んだ。にもかかわらず、ライムの態度は釈然としないものばかり。

 逆鱗に触れ、調査に乗り出した所で制裁を下した可能性を考量する。


「ライムさんの裏を暴いて、場合によっては制裁を下すって」

「そう言えばそんなことを言っていたね……まさか!?」

「そういうことかもしれないでしょ? この街の治安を影から守る。それが〈《黒影の牙》〉の責務なんだから」


 ライムの態度は常に怪しかった。裏で何か企んでいた可能性はある。

 ここ最近、ライムが冒険者ギルドのマスターである立場を利用して、密会をしていたとベルトは話していた。事実を隠蔽するために、冒険者ギルドの記録にも残らないように意図的な細工まで行っていたらしい。


 更にはコボル洞窟での一件。早急に解決させようとしていた。

 アレを逆説的に有耶無耶にしようと画策したいたと捉えることも出来る。

 何故なら報告に僕達が直接会話をした際、常に嫌悪感を纏っていた。僕には残念だけど分かっちゃうんだ。


 ただでさえ職権乱用を働き、秘密裏に計画を立て遂行しようとしていた。憶測ではあるものの、違和感は絶えずあった。

 それを加味すれば、充分可能性は信憑性を増す。命の灯火を消し去られる要因にはなりかねない。

 ましてや咎めることをしない。〈《黒影の牙》〉は仲間の命を無碍にしたライムを決して許さないだけ。制裁を下したと言えば言葉通りであり、僕は尊重するよ。


「それじゃあ仕方が無いね」

「うん」

「うんじゃないわよ。まあ、事情はなんであれ、ライムさんが罪を犯しているって知ったら、擁護は難しいわ」


 僕もクロンも納得すると、すんなり受け入れ諦める。

 反発して来るかと思ったけれど、意外だ。エメラルが何も言い返さない。

 いつもとは反応が違うことに驚くも、エメラルは不思議な口振りで、まるでライムさんの罪を知っている様子だった。


「ん? その口振りだと、本当に裏があった訳だね」

「ベルトに訊いても無いけど教えられたわ。ライムさん、職権乱用を働いていたそうよ」

「「職権乱用??」」


 まさしくその通りで、職権乱用を働いていた。

 つまるところ汚職だけど、ベルト達が秘密裏に調査していたらしい。

 訊いてもいないのに一方的に情報を共有された。共犯に仕立て上げられたらしく、無性に胸が高鳴った。面白いと純粋に思ってしまう。


「つまり、ギルドマスターの地位を使って」

「悪いことをしてた?」

「ええ。今回のコボル洞窟での一件、ライムさん自身が一枚噛んでいたそうなのよね。本当腹立たしいわ」


 一体どんなことを行っていたのだろうか? 表情を変えずに訊ねる。

 訊きたくもない新事実、今回の一件に一枚噛んでいた。コボル洞窟での騒動、その本流に行くまでの流れにはライムさん自身の手引きもあったようで、腹立たしそうにエメラルは唇を噛んだ。

 もちろん僕やクロンもその内には入るけれど、この事実が公になることは多分無い。それだけ禁忌的(タブー)に触れていた。


「ライムさんが仕組んだってこと?」

「そこまでは分からないわ。けれど事情を知っていたことは事実みたいね」

「最低」

「冒険者らしいけどね。権力を手にすると、どんな人間でも闇に触れるよ」


 冒険者らしい末路だとは思った。

 権力を手に入れた結果、危ない橋を渡ってしまったのだろう。

 それをやったのが冒険者ギルドのマスターであり、最低最悪な行為は信用さえ失いかねない。確かに擁護の仕様も無くて、アッサリ受け流す程度で無ければ怒りが爆発してしまいかねなかった。


「それに、ライムさんは冒険者ギルドに来ていた依頼の内、幾つかを強引に拒否していたそうよ。特にダンジョンや政治関係の依頼ばかりね」


 追加で出て来た最低最悪な所業。完全に汚職だ。

 恐らくも何も、冒険者ギルドに来た依頼の幾つかを強引に拒否していたそうだ。

 別に違反では無いものの、危険なダンジョンや政治関係の調査依頼を中心に拒否し、引き受けたとしても適当に捻じ曲げていたことを明らかにされたらしい。


「確定だね。恨みを買っていたんだ」

「それで殺された?」

「事故死に見せかけてね。それで警察や騎士が捜査に乗り出さない辺り、今回の一件はライムさん自身の自業自得な末路ってことでしょ。本当最低よね」


 恨みを買った末路がどれほど恐ろしいか、身を以って体感した結果。

 命を奪われてしまい、残忍な形で体を傷付けられてしまった。

 結局は名誉も何もかも失うと、最低最悪としか言いようがないね。


「まあ、結局の所よね。ライムさんも大概だった訳よ」

「確かにね」

「うん、死んで当然」

「クロン、言い過ぎよ」

「死人に口無しだよ。クロンは悪くないと思うけど?」


 結局はライムも大概な悪人だった。その事実が露呈しただけ。

 クロンの言う通り、死んで当然の人間だった訳だ。


 もちろんエメラルは反発する。ライムを信頼していた訳では無い。

 あくまでも一般的な意見であり、死者を重んじれるだけ。

 でも、死人に口無しだよ。僕はクロンの肩を持った。


「むっ、クロンの肩を持つのね、オボロは」

「そんなつもりはないよ。ただ、この世界に完全無垢な善人ってことはいないってことかな」


 結局、何処の世界どんな場所にでも、本当の善意は存在しない。

 改めて理解すると、胸の奥からザラ付いた感情が湧き上がる。

 完全無垢な人間はこの世に居ない以上、悪人である可能性を考慮するしかない。今回は冒険者ギルドマスターの地位を利用した犯罪が起き、それに伴って起きた必然的な悲劇であると認識するしかなかった。


「まあ、解決してよかったよ」

「二重の意味でね。はぁ、王都の冒険者ギルドでも散々よ」

「うん。聞いてない」


 結局解決したことだけを喜んだ。

 問題はこの後のことで、冒険者ギルドはてんやわんやだ。

 ネシア達残った受付嬢が、新しく後任の銘を受けてやって来るギルドマスターが来るまでの間忙しなく働いていた。手伝えることは何もない。ましてや活動が危うい。散々な今後に愕然としつつも、しばしの平穏を噛み締めた。

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