表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

女子大生でございます(4/6)

看護婦たちに当たった女子大生の続き。


「…そうそう、これ持って来たわよ」


 翌日。

 お見舞いに来た母親は一頻り娘――綺羅々(きらら)――を心配した後、彼女の携帯電話を取り出した。


「ずっと鳴ってたわよ」

「…ありがとう」


 彼女は身体が無意識に強張ったが、平静を装って携帯電話を受け取った。

 最近はもう、彼ら(・・)以外からの電話なんて掛かって来ていない。


「心配して何度も掛けて来るなんて、良い先輩を持ったわね」

「?! まさか電話に出たの!?」


 母親は突然食って掛かった彼女に驚きながらも答えた。


「ええ。あまり掛け直させるのも良く無いでしょ? ああ、案して頂戴。勿論、家の電話からよ」


 携帯電話にはロックが掛かっていたので、着信通知の電話番号を見て、据え置き電話から電話を掛けたのだ。

 彼女からすれば有難迷惑な話である。


「…なんて…言ってた……の?」


 彼女は恐る恐る尋ねた。


「病院に行くのは迷惑になるから、話せるようになったら電話を貰えたら嬉しいですって。わざわざ連絡をくれてありがとうとも言ってたわあ。やっぱり一流大学の生徒さんは礼儀正しいわねえ」


 連中が母親に話さなかったと知って、彼女は心の中でそっと胸を撫で下ろした。


(…当たり前か。もし聞いてたら母さんが冷静でいられるはずが無い。ましてや礼儀正しいなんて絶対に言わない…)


 彼女が携帯電話の着信履歴を確認すると、やはり相手は全てサークルの先輩からだった。

 何度も電話を掛けて来るのがどういうことかは想像に難くない。

 その後も母親の話は続いたが、彼女の頭には入って来なかった…。


***


 ♪~♪~♪~…。


 母親が帰ってから綺羅々が暫く悶々としていると、急に携帯電話から着メロが鳴った。

 今となっては皮肉な、イケてる女を謳った流行歌だった。

 着信履歴に表示されているのは当然あの男。

 彼女は覚悟を決めて電話に出た。


「お、やっと出た」


 彼女に取っては聞き慣れた、思い出したくも無い声。


「お前の母ちゃん、見舞いに行った時に携帯渡すって言ってたしな」


(…母さんのバカ!)


「いい母ちゃんだよなぁ、本当。わざわざ電話くれるなんて思わなかったぜ」


(ほんと余計なことばっかり!)


「まあ連絡が無くても、その内こっちから家に電話したけどな」

「!?」


 彼女は母親が馬鹿正直で無くても結果は同じだったと知って愕然とした。


「自殺したんだってな?」

「………」


 彼女は返事をしなかったら怒るかと思ったが違った。


「まあ仕方ない。お前が死んだら親に写真見せて金貰って終わりにするわ」

「?!」


 死んだ娘の恥ずかしい写真をバラ撒かれると言われて無視出来る親がいるだろうか?

 多くは泣き寝入りし、また多くは覚悟して通報することになる。

 彼らは慣れていた。

 名前も口座もダミーを使い、脅して搾れるだけ搾り取り、通報されたら面倒を避けて終わりにする。

 彼らからすれば一人の女に拘る必要が無い、幾らでも代わりがいるからだ。


「早速、今晩病院を抜け出していつもの場所だ。出たら電話をしろ。分かったか?」

「…わかった」

「言葉遣い…は、まあいいか。後で立場を思い出させてやる」


 ぶるるっ。


 彼女は絶望に身震いした。

 ぶっきらぼうに答えて小さな抵抗をしたところで無駄だった。

 もうどうしようも無いと心も体もわからされている。


 その夜、彼女は病院を抜け出した。


***


 彼女が病院を抜け出して電話を掛けると、間も無く車の迎えが到着した。

 大学生が自腹で買うには少し高価過ぎる、そして女を釣るには優秀なスポーツカーだった。

 普通なら親の七光りか借金、学業を疎かにしての水商売を予想されるところだが、その資金源は押して知るべし。


「待たせたな。乗れよ」


 運転席の男が愛嬌よく助手席に誘う。

 知らない人が見たらデートの待ち合わせに来た男に見えるだろう。

 尤も、女の方は病衣の上に服を羽織っているので、寝間着で男と待ち合わせをする、はしたない女と思われるだろうが。


 彼女が黙って車に乗り込むと車は走り出した。

 男は「久しぶり」だとか「元気だったか」とか他愛ない言葉を口にするが、別に返事を求めてはいない。

 女は何も言わないが気不味くなることも無い。


 間も無く到着したのは、夜に彼女が呼び出されることの多いマンションの一室。

 部屋の中にはサークルの男たちが居た。

 彼らの手にあるアルコールや煙草の臭いはするが、前に遊んでから換気をしたらしく、お楽しみの残り香は無い。

 彼女には見慣れた面子、嗅ぎ慣れた臭いだった。


「久しぶりだったな。休暇は楽しめたかな?」


 会長が余所行きの顔で、彼女に親しげに声を掛けた。

 何処にでも居る、イケメンを集めれば埋もれてしまう、そこそこのイケメン。

 だからこそ大学でも目立ち過ぎず上手くやって来れたのだ。

 この顔に騙された女は数知れない。


「…別に」


 彼女はぶっきたぼうに答えた。

 本当は口も聞きたく無かったが、全く答えないと余計に酷い目に合わされるからだ。


「それは残念」


 会長はニヤニヤと笑って全然残念そうには見えない。

 周りの男たちも待ちきれないとばかりに服を脱ぎ始めた。


「…んじゃまあ、とっとと始めますか」


 会長が彼女の肩に手を掛けて服を脱がせ始める。

 宴は始まった…。

続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ