女子大生でございます(2/6)
続き。
「…夢?」
ベッドの上で目覚めた彼女――綺羅々――は呟いた。
「見覚えの無い天井…」
ベッドの寝心地も、いつもと違う。
「――っ!」
上半身を起こそうと手を付いた途端、手首に激痛が走った。
手首を見ると、内側には刃物に因る傷痕があった。
「……そうか…そうよね……」
(…夢じゃ無かった)
彼女はここ数日のことを思い出して呆然と独り言ちた。
***
「え~、それでは新入生とサークルの新しい門出を祝って…」
「「「かんぱ~い!」」」
テニスサークルの新人歓迎会。
歓迎会を仕切るのは男の会長と女の副会長。
当然、新人は参加費無料だった。
(結構いいとこあるじゃん)
歓迎会は大学から少し離れた歓楽街にある居酒屋で行われた。
当然、テニスサークルなので男ばかりではなく、女の先輩も結構いる。
(やっぱり私が一番かな?)
先輩たちは大学生と言うことで高校生より落ち着いて見えるが、服装や化粧は堅いテレビ番組や新聞で叩かれるほど派手では無い。
テレビの街頭インタビューで風景に溶け込んでしまう程度のものだった。
ある意味、正しく高校生以上休日のOL未満である。
万全の準備をして大学デビューした綺羅々なら、自惚れても致し方ないだろう。
「未成年だから、アルコールはごめんなさい」
「えぇ~? きららちゃん美人だから、もう大人だと思ったよ」
「ひでー、留年扱いかよ。お前と一緒にするなよ。きららちゃん、そんな奴は放っておいて、現役組同士で飲もうぜ」
「いえ、アルコールは…」
「大丈夫大丈夫! これアルコール弱いから。カクテルなんてジュースみたいなもんだから。一口飲んでみて。ほら?」
彼女とてアルコールに興味が無い訳では無い。
断ったけれど強引に薦められたと言う免罪符が欲しかったのだ。
「じゃあ少しだけ…」
カクテルグラスを受け取る時、くびれた足の持ち方に気を付ける。
この手のマナーは調べたけれど、正式な持ち方というものは無かったので、上品に見えるよう努力したのだ。
「おっ? きららちゃんグラスの持ち方がサマになってるね。初めてじゃないでしょ?」
「良かった。これで合ってるんですね」
彼女は心の中でガッツポーズをしながら、しおらしく答えた。
グラスに口を付ける。
「…あっ、美味しい」
カクテルは口当たりも甘く飲みやすい。
初めての彼女でも酔って気持ちが悪くなる感触が無かった。
子供の頃に水と間違えてお酒を飲んでしまった経験がある彼女は、普通にお酒を美味しく飲めたことに安心した。
「でしょ? でしょ!」
「きららちゃん、いける口じゃん」
「こっちのもどう?」
男の先輩たちに次々と誘われるが、無理矢理に飲まされる訳では無い。
彼女は迷う振りをして、選べる優越感に浸った。
(ああ~、なんかフワフワするし、ちやほやされるの気持ちいい~)
彼女からあぶれた男たちが、女の先輩たちの方に行くのが見えた。
彼女たちは呆れながら、酒を注いだり、話し相手をしたりしている。
(やっぱり負け犬を見るのは楽しい~)
彼女は調子に乗って遊んでいて大学受験に失敗した高校の同級生を思い出して笑った。
「あ、きららちゃん笑った」
「なになに?」
「何れもらいわ。ちょっろむかひを思いらしらけ……あれ?」
彼女は回らない呂律でやっと自分が酔っていることに気付いた。
「こっちで少し休みなさい」
副会長が膝枕に誘う。
彼女も相手が男なら少し警戒したところだが、副会長は女と言うこともあって、その言葉に甘えた。
「いいなー」
その男たちの言葉はどちらに向けたものか。
副会長は「しっしっ」と追い払う。
「目を閉じると楽になるわよ」
彼女は言われた通り目を閉じると楽になり…。
***
「―――っ!」
痛みに目が覚めた。
見知らぬ部屋のベッドの上。
目の前には裸の男がいた。
そこそこの顔とそこそこの身長と人懐っこい愛嬌のあるサークルの会長だ。
その会長が彼女の片足を抱えて圧し掛かっている。
「…あ、きららちゃん起きた?」
「薬切れるの早くない?」
「お前が下手だからだろ」
「悪かったな。俺は大きいんだよ」
周りから意味不明な言葉が聞こえて来る。
「らりをひて…?」
まだ呂律が回っていない。
身体は悲鳴を上げているのに、酩酊した頭では理解が追いついて来なかった。
「大丈夫、直ぐ気持ちよくなるから」
圧し掛かる男が腰を振る。
彼女は逃れようと必死に抵抗したが、身体に力が入らない。
泣き叫んで助けを求めても誰も助けてくれない。
止めてと懇願しても止めてくれない。
男たちは彼女の反応を楽しんだり、順番待ちの話をしている。
事ここに至って彼女はやっと理解した。
彼女が入ったサークルの正体を。
その後、彼女は男たちが疲れ果てるまで弄ばれた…。
***
綺羅々は帰宅後、自分の部屋に閉じ籠った。
親は入学間も無いから疲れているのだろうと考えて気にしなかった。
彼女には外に出る気力も無かったが、翌日にはサークルの会長から呼び出された。
来なければ歓迎会での飲酒と、恥ずかしい写真をバラ撒くと脅されて。
サークル室に入ると、女の先輩たちが彼女を見て暗い笑みを浮かべる。
綺羅々は漸く彼女たちも同じなのだと理解した。
彼女たちが流行の服を着ながらも、化粧や雰囲気が今一つぱっとしないのも当然だ。
望んでしているわけでは無かったのだから。
(自分もああなるんだ…)
それからは地獄だった。
度々呼び出され、毎日のように犯される。
親に言えるはずも無い。
別のサークルや大学に入った高校時代の友達にも言えない。
言う暇も無く疎遠になっていった。
いつ呼び出されるか怯えながら過ごす日々が過ぎ、彼女は何かが擦り切れていくのを感じ…そして自殺した。
続きます。




