女子大生でございます(1/6)
長くなったので内容ごとに分割しています。
「ふふふっ♪」
桜咲く。
満開の桜の下を歩く新入生たち。
その中でも彼女は一際目立っていた。
歩く度に軽やかに揺れる明るい色の髪。
ファッション雑誌から抜け出したような、センスの光るコーディネート。
素材を活かした化粧に、歩いた後に尾を引く微かな残り香。
男も女も10人がすれ違えば9人が視線を奪われた。
(見てる見てる!)
彼女は浮かれる気持ちを必死に隠して大学のキャンパスを練り歩く。
隠すのは浮かれるのが田舎者臭くて恥ずかしいと思っているからだ。
世間ではバブル崩壊から不況が騒がれて久しいが、彼女に焦りは無い。
結婚すれば幸せになれると信じて疑わない。
そんなことよりも、今はまだまだ遊び足りない。
(一流大学に現役合格したんだから頑張った自分へのご褒美は当然よね)
元から遊ぶために進学したことは既に記憶の外である。
しかも一流大学と呼ばれたのも今は昔、過去の栄光。
人口のピークが過ぎても合格枠を減らさないような大学なので、現在の質は推して知るべし。
彼女は合格発表後、入学準備を念入りに行った。
ファッション雑誌を古い物から新しい物まで調べて、地元のデパートでは来る日も来る日も試着を繰り返し、母親の化粧品を練習で使い尽くし…後で思いっきり怒られた…、歩き方や話し方も必死に練習した。
貯金を下ろしても高級品には手が届かなかったが、今日の周りの反応を見れば成功は一目瞭然だった。
大学デビュー成功である。
***
入学式が終わって彼女が講堂を出ると、既に噂のサークル勧誘が始まっていた。
文科系、運動系、芸能系、ボランティア系…サークルは種類も多く、新入生は誰もが目移りしていた。
ファッションに力を入れて大学デビューした彼女のお目当ては、当然のように芸能系だった。
幾つか見て周っていると他の人より多く勧誘されていると実感できて、彼女の自尊心は満たされた。
その内に、テニスサークルから特に熱心な勧誘を受ける。
お目当ての芸能系では無いが次点の運動系。
勧誘して来たのは爽やかなスポーツマン風の男女。
(70点。イケメンと呼べなくも無いし及第点かな?)
彼女はにこやかに先輩たちの話を聞きながら、心の中で採点をした。
(女子も私には劣るけど、引き立て役には十分)
残酷な採点は隣の女子たちにも及んだ。
「仮入会でもいいからさ。助けると思って頼むよぉー。気に入らなかったら直ぐに辞めてもいいからさ。ね?」
彼女に脈ありと見たか、先輩たちが切り札の泣き落としに掛かった。
彼女も肌に合わなければサークルを転々とするつもりだったので、その言葉は渡りに船だった。
「じゃあ、仮入会で良ければ」
「「ありがとう!」」
返事をした途端、先輩たちに両手を握って感謝された。
(悪い気はしないわね)
それが全て罠であることを、彼女は直ぐに思い知ることになる…。
***
――日和見病院。
某県某市の片隅にある、ごく普通の総合病院。
そこには、ごく普通の建物があって、ごく普通のお医者さんが居て、ごく普通の診療が行われていました。
ただ一つ普通と違っていたのは…婦長さんは――だったのです!
続けて投稿予定します。




