エピソード760 非の打ち所が無い口上です
『アルトゥール卿、受叙者を代表して皇帝陛下に御礼の言葉を申し上げて下さい』
帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下でもあります、帝国女騎士と帝国騎士身分を示すミスリル銀製の記章でもあります襟章を拝受しましたが。典礼省の式部官がアルトゥール卿に対して、予行演習には無かった口上を述べるようにと言われますと。
『恐れながら、受叙者一同を代表いたしまして、御礼を申し上げます』
宮城の叙冠之間にて、ケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様を含まれます、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方の視線がアルトゥール卿に集まりますが。
『本日、皇帝陛下より賜りました帝国騎士並びに帝国女騎士の栄誉は、我ら一人ひとりの身に余る光栄に御座います』
式部官から突然口上を述べるようにと告げられたアルトゥール卿でしたが…。
『この栄誉は、過ぎし日の功績に対する褒章では無く、これより先、帝国と臣民の為に一層励めとの御期待であると、深く胸に刻んでおります』
突然事前の予行演習には無かった口上を述べよと式部官から告げられたアルトゥール卿でしたが、淀みなく堂々と述べられています。
『我ら五名は、この名誉に恥じぬよう、更なる研鑽を積み、剣と根元魔法を磨き、いかなる任務にも怯むことなく』
チラッ
ケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様は、アルトゥール卿によります淀みの全く無い口上を、完全に表情を消して聞いていられます。
『天命の下、皇帝陛下への忠誠を尽くし、帝国の平和と繁栄のため、生涯を捧げる事をここに御誓い申し上げます』
叙任式に列席なされていられます、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方の大半は、ケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様と同じく完全に表情を消してアルトゥール卿によります口上を聞かれていますが。先のブランデンブルク家の侯爵閣下であらせられました御爺様は、楽し気な表情にて聞かれていられます。
『皇帝陛下の限りない御恩顧に、受叙者一同、心より感謝申し上げます。皇帝陛下の御治世が末永く栄え、帝国が永遠に繁栄せん事を天に願います。本日は、誠に有難う御座いました』
…完璧です、非の打ち所が無い口上です。




