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カルカナのゼナ  作者: ななかまどっ
25/27

カルラの思いと新しい仲間

久々に自宅のベッドで朝を迎えたゼナは、窓の外を見つめる。


「今日も良い天気になりそうだ!」


ゼナは、小鳥の囀りを聴きながら身支度を整え、食堂に向かう。

キスカとヴェルテが朝食の準備を始めていた。


「おはよ〜」


「おはようございます」


ゼナは二人に挨拶し朝食の準備を手伝い始める。今日の朝食は、オムレツとパンとレモールティ。キスカがオムレツを焼き、ヴェルテがパンを切り分けていた。ゼナは、レモールティをコップに注ぎ、テーブルに置いていく。エミリオとカルラも食堂に入ってきた。


「おはよう!」


「おはよう〜。」


エミリオは、皆に挨拶しテーブルに着き、カルラもフラフラしながら席に着く。カルラは昨日の暴走したことについて全く覚えていない様子で、現在は二日酔に悩まされていた。キスカが食後に薬草を煎じてくれると言っていたので大丈夫だろう。いつもの様に、エミリオがゼナに今日の予定を聞いてくる。


「昨日、話してたドレイクの皮の加工とアクセサリーを何点か作りたいと思ってた! 後、アルバートに手紙を書いて、販売の件を報告しなきゃいけないかな」


エミリオは、ふむふむと頷いていた。


「革鎧用のミスリルとグリーンメタルのプレートは作ってあるぞ!」


「ありがと!流石エミ兄仕事が早い!」


「午後に時間を空けておいてくれ!ギルドに皆で行かなければならないからな」


ガザールの商業ギルドから、カルカナ商業ギルドにゼナ達の活躍が報告され、ギルドから表彰されることになった。


「了解!今日は工房で作業してるから、時間は合わせられるよ!」


エミリオに伝え、ゼナは、アルバートに手紙を書き始めた。ガザールでの販売の件は、エミリオが了承し、詳しい話は、アルバートがカルカナに来た時に決める旨をしたためる。午後にギルドに向かう途中に配達屋に届ける予定だ。

手紙を書き終え、製作作業を始めるた。下処理していたドレイクの皮にミントの鱗粉と薬品を混ぜた樽に皮を再度漬け込み、その間にアクセサリーを作る事にした。銀とダイヤモンドを使った首飾りを作る。首飾りには、エルフの英知を使い、魔力を蓄積する術式を組み紋様を入れ、中心部にダイヤモンドを囲む様に四方にルビーを配置し作り上げた。この首飾りは、ヴェルテ専用に術式を組んで製作していて、ヴェルテが装着すれば、魔力を常に蓄積できる様にしている。


「良いできだ!これなら喜んでくれるかな!」


ゼナは、ヴェルテに渡すのを楽しみに思いながら、次の作品に取り掛かる。次は、カルラ用に腕輪を作り始めた。気が充実できる様に水晶にエルフの英知で紋様を刻み、銀の装飾を加えた腕輪を作る。腕輪が完成し、出来を見ている所に、ヴェルテとカルラが工房に入ってきた。


「調子は、どーお?」


「良いタイミングで来た!ヴェルテ、カルラ!二人に装飾を作ったから見て欲しい!」


ゼナは、首飾りと腕輪をヴェルテとカルラに渡す。ヴェルテは、首飾りを見て感動し、泣き出した。


「ゼナ!嬉しい!!」


ヴェルテは、首飾りを身に付けゼナに抱きつき喜びを表現している。カルラも腕輪を装着し、ゼナに感謝していた。


「ゼナ!これ付けたら気が漲る感じがする」


「うん!カルラの腕輪は、気を充実させる様に紋様を刻んだから!優れものだよ」


ヴェルテもカルラも幸せそうである。ゼナは、その様子を見ながら満足気に微笑んだ。


「あっ!ゼナ、うちら、別の件で来たんだよ」


ヴェルテが、カルラの幼馴染の話を始めた。カルラの幼馴染は、エリエスト家の隣に邸宅がある名家。カルカナとゼジルと共に都市を築いた アマデウスの末裔で、名前は、ヴォルフ・ダーヴィット。ヴォルフの家系は、吟遊詩人の家系で、その歌と音楽は魔物すら魅了する。当然、人々も魅了して止まない存在であった。戦闘は苦手で、武器は弓を使用するがゼナ程の弓師ではないとのこと。そのヴォルフのことが気になるカルラの力になりたいとヴェルテは、拳を握りゼナに力説していた。


「ヴォルフさんは、いつも家にいるの?」


ゼナの問いに、ヴォルフと言う単語が出るだけで、赤くなっているカルラが答える。


「森に行って、動物達の前で歌ってるか、カルカナの広場で演奏したりしてる」


「家に行っても会えない可能性が高いのね」


ヴェルテが、うむむと唸りながら、考えこんでいる。午後にギルドに行くから、帰りに広場に寄って見ようとゼナが言い皆が頷いた。


「でね!ヴォルフさんをアリアンワースの仲間にしたいと思ってるの!」


ヴェルテは、ヴォルフをアリアンワースの仲間にし、雑貨屋を改装して、キスカのパンと紅茶などを出す喫茶店を開きたいと言う。そこで、歌や演奏を披露して貰えば、喫茶店も繁盛するし、ダンジョンに入る時も支援職として同行して貰えれば、ゼナ達の生存率も飛躍的に上がる。尚且つ、カルラがヴォルフと一緒に居れることが重要だと語る。また、ヴォルフは、紅茶の入れ方も超一流だとカルラは言う。


「エミ兄に相談してみよう!また、ヴォルフさんの意思が優先される様にしないとね!」


ゼナ達は、エミリオの工房に向かい入室した。そこでは、エミリオが新しい防具用のプレートを製作していた。助手としてキスカが、お手伝いしている。


「エミ兄!相談があるんだけど、今良いかな?」


エミリオは、作業を切りの良い所で終了しゼナ達に歩み寄った。


「どーした?皆勢揃いで!」


「カルラの幼馴染さんを、うちらの仲間に引き入れたいと考えていて、相談しに皆で来たんだ」


ゼナが切り出し、ヴェルテが説明する。カルラは、モジモジしながら、ヴォルフの情報を補足していた。


「ヴォルフさんが、自分の意思で、うちらの仲間になりたいと思ってくれるなら良いぞ!喫茶店の件も賛成だ」


エミリオは、ゼナ達に微笑み告げた。


ゼナ達は、昼食の準備をし、皆で昼食を取った後にギルドに向かった。

ギルドでは、ゼナ達の功績を讃え、贈呈品が贈られる。魔鉱石を使用した、壁掛けの時計を戴いた。ギルドからの時計の贈呈は、大変名誉なことであった。商業ギルドの紋章が入った時計は、ギルドに認められた証で、容易く貰える物ではない。ギルドの壁掛け時計は、その店の格付を飛躍的に上げる代物であった。また、カルカナの時計店で作られる時計は精巧で特産品となっている。今回戴いた時計も、文字盤は、ミスリルを使用し、数字の部分は、ダイヤモンドと、ルビー、エメラルドなどが散りばめられていた。

エミリオが組合長より受け取り贈呈式は、無事終了した。


「凄い物を戴いたね!」


「だな!名誉なことだよ」


ゼナは、クシャっと破顔しながら、エミリオに微笑んだ。しかし、ゼナ達の気持ちは、贈呈式よりも、カルラの幼馴染を探すことに気持ちが向いていた。皆、足早に広場に向かう。


「いつもは、どの辺りで演奏してるの?」


ヴェルテがカルラに聞く。


「多分、噴水の側で演奏してると思うよ!」


ゼナ達は、広場の中心部にある噴水へと向かう。そこではリュートの流美な音色が聴こえてきた。


「人集りが出来てるね」


ヴェルテが呟き、人集りの先を見る。そこでは、優し気な表情をしながら、リュートを奏でる少年が皆の注目を集めていた。


「カルラ!あの人?」


「うん。」


ゼナの問いかけに取り敢えずは反応するも、カルラは、心ここに在らずの状態だ。


「演奏が終わるまで待とう!」


エミリオの言葉に皆が頷き、ヴォルフの演奏に聴き惚れた。

どこか悲しげな、その旋律は、人の心を掴みカルラは、涙を流している。釣られてヴェルテも感動して泣いていた。演奏が終わり、広場中の人々が、拍手喝采を上げている。

ヴォルフが、噴水から移動しようと動いたのを見て、ヴェルテがカルラの手を引きヴォルフを呼び止める。


「カルラ?聴いててくれたんだ!」


「う、うん!僕達と一緒に来て!」


カルラは、ヴォルフの手を引き、ゼナ達の前まで連れて来た。周囲は、まだヴォルフの演奏に聴き惚れてた人々で混沌としている。


「ここだとゆっくり話出来ないから、雑貨屋に戻ろう!」


ゼナの言葉に一同頷き、ヴォルフは状況が分からないままカルラに手を引かれて雑貨屋に向かった。


雑貨屋アリアンワースに戻り、食堂にヴォルフを案内する。キスカが皆に紅茶を入れ、全員が席についた。


「ヴ、ヴォルフ!僕達と一緒に雑貨屋をやらないか?」


カルラが、緊張の趣きでヴォルフに告げる。ヴェルテが補足して説明を始めた。


「ヴォルフさんが、もし良ければ、カルラと一緒に雑貨屋店内で喫茶店を営んで欲しいと思ってて、連れて来たんだ!」


ヴォルフは、急な話で困惑しているが、カルラがたたみかける。


「ヴォルフ!君の紅茶を居れる技術を埋れさせるのは勿体無いし、僕は、ヴォルフの紅茶が飲みたい!歌も、演奏も、ここでやるのはどうだろう?」


カルラは、アリアンワースの状況を説明し、坑道から、救出してくれたこと、ガザールでの出来事を伝えヴォルフの力が必要だと語った。

ヴォルフは、少し悩み返答する。


「カルラのことは、心配だから、力になれるなら、協力するよ。でも俺、戦闘は、苦手だよ?」


キスカが援護射撃をする。


「私も戦闘は苦手でパーティでは支援しかしてませんよ」


ゼナも合わせて言う。


「カルラの信頼出来る仲間なら、自分達とも仲良くなれると思うし、信頼出来る人と一緒に冒険したい!」


「ヴォルフ!僕は、君と一緒に冒険や、仕事がしたい!」


ヴォルフは、うぬーと唸り、返答する。


「カルラとは、常に一緒に居たから、俺も側に居たい。カルラが坑道に入る様になって、戦闘が苦手で付いて行けなかったけど、話を聞いて、分かったことは、知らない間に危険な目に遇っていたこと!カルラが危険な所に行くのをやめれないのは、分かるから、それなら側に居て、少しでも安心出来る様にしたい!俺を、アリアンワースの仲間にして下さい」


ヴォルフは、皆に頭を下げる。カルラは、喜び、無意識にヴォルフに抱きついていた。

雑貨屋アリアンワースに新たな仲間が入り、今日は、歓迎会を開くことが決まる。カルラとヴォルフは、どちらも末っ子で、いずれは、家を出ることになる。親同士公認の仲の二人の為に今回、雑貨屋を改装する際に二人の部屋と喫茶店を作ることで話が決まった。ヴォルフとカルラは、一度実家に帰り、状況を説明して来ると雑貨屋を後にした。


「一気に話が決まったね!」


ヴェルテがゼナ達に微笑み言う。


「うんうん!改装のレイアウトと、備品の製作を進めないといけないね」


喫茶店で使用する、椅子やテーブル、食器やテーブルクロス、ケトル

や調理用器具は、全てアリアンワースブランドで揃えることになる。喫茶店専用で新たに作る物も多数ある為、素材も集めなければならない状況であった。


「明日から、素材集めと加工を開始しないといけないな!忙しくなるね」


ゼナは、皆に微笑んでから、朝、漬け込みしていたドレイクの皮の加工の為、工房に戻り加工を開始した。一通りの作業が終わり、ドレイクの皮の乾燥しているとエミリオが入室して来た。


「ゼナ!店舗の拡張の件だが、軽く図面を書いてみた。見てくれ」


エミリオから図面の書いた羊皮紙を受け取る。アリアンワースの店内は、通常の雑貨屋とは品揃えが異なる。武器防具が多数ならび、武器屋、防具屋として役割も果たし、冒険用の雑貨や日用品まで揃えていた。今回は、喫茶店の新設と薬品売り場を拡張する。二階もカルラとヴォルフの部屋を隣合わせてにして作り、いずれ結婚したら、部屋を繋げることも出来る様に作る予定だ。


「うん?二階の部屋の配置も変えるんだね!」


エミリオの持ってきた設計図は、一番奥がゼナの部屋になり、隣がヴェルテ、食堂が二階の中心に有り、その隣がキスカ、エミリオに配置換えをしていた。カルラとヴォルフの部屋は、廊下を挟んで、団欒室の隣に配置されている。あとは、客間として3部屋作る配置になっていた。一階に繋がる階段は、三箇所作り、ゼナの部屋の側と、エミリオの部屋の側、ヴォルフの部屋の側に作る予定のようだ。


「ゼナ!俺は、キスカさんに正式に交際を申し込んだ!出会って間も無いが、彼女こそ生涯を共に出来る女性だと思ってる」


エミリオは、真剣な眼差しでゼナに告げる。鍛冶のことばかりで女性に興味の無かったエミリオから、この様な台詞を聞くと思ってなかったゼナは、両眼を見開き驚く。


「エミ兄!おめでとう!!びっくりしたよ!皆には、これから伝えるの?」


エミリオは、照れながら頷き、アリアンワースをカルカナ一番の雑貨屋にしようと笑っていた。エミリオは、歓迎会の準備をしてると言い、ゼナの工房をあとにした。


ゼナも、ドレイクの革の製作を一旦終了し、歓迎会の準備をする為に食堂に向かう。キスカとヴェルテが料理を作り、エミリオが食器を並べていた。


歓迎会の準備が、間も無く整う辺りにカルラとヴォルフが戻って来た。カルラの使用人のレイチェルも同行している。ゼナ達は、三人を向かい入れ、食堂に向かう。

全員が席に着き、エミリオの乾杯の声で歓迎会は始まった。

カルラとヴォルフから今後の報告を受ける。


「家の人達は、ヴォルフと喫茶店をやることに喜んでくれたよ!で、レイチェルが、喫茶店の従業員として働きたいと嘆願して着いてきちゃった」


カルラの説明では、両家は二人がアリアンワースで喫茶店を開く事に全面的に協力すると言っていて、明日にでも、建築家を寄こすそうだ。また、レイチェルは、カルラの付き人として、喫茶店の従業員として入れて欲しいとのこと。レイチェルの給金については、エリエスト家から出ることになる。

ヴォルフの家からは、建築資材を用意すると言われた。明日、建築家が来た際に、皆で間取りを考え、使いたい資材を選んで欲しいと告げられた。エミリオは、改築は自分達で費用を出すと言ったが、カルラとヴォルフは、譲らない。今回はゼナ達の、おかげで二人は一緒に過ごせる様になるし、両家は婚約した二人の祝いも兼ねているとのことで、そこは譲れないみたいだ。




ゼナ達は、新しく仲間になった、ヴォルフとレイチェルを囲み、夜遅くまで宴は続いた。

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