新しい武器と酒場とカルラの思い
ゼナ達は、アリアンワースに戻り、エミリオにガザールでの出来事を報告していた。
「なかなか激しい事に巻き込まれて居たんだな!よく無事に帰ってきた!」
エミリオはゼナ達を労い、カルラ、ヴェルテ、キスカを呼び寄せる。
カルラには、新調したハルバートを渡した。新調したハルバートは、全体はミスリルで作られ、刃金の一部にはオリハルコンを使い、軽さと斬れ味を両立させていた。ミスリルの加工には、ドワーフの秘術を用い、気の伝導も以前とは比べ物にならない物となっている。
カルラは、大喜びでハルバートを受け取った。
ヴェルテには、ハイオークの大剣をエンハンスした物を渡した。グリーンメタルで構成された剣をドワーフの秘術を使い強化し、フレアストーンを研磨し宝玉として、はめ込んでいる。剣の持ち手もヴェルテの手に合わせて加工し魔力を高める為のミスリルの鞘も合わせて作られていた。原型はハイオークの大剣であるが、ドワーフの秘術のエンハンスで能力的にはオリハルコンと同等に近い強度とミスリルに負けない程の属性付加が可能である。
ヴェルテは、エミリオに抱きつき喜んでいる。
キスカには、ヴェルテ、ゼナが加工に加わって作った両手杖を渡す。ドワーフの秘術を使い外装はミスリル仕立て、核となる神樹にノームの宝石が埋め込まれ、銀の装飾をゼナが作った物が付けられていた。魔力の増幅は勿論のこと、打撃武器として使用も出来る様に作られている。
キスカは、エミリオから両手杖を渡された時に泣きそうになりながら感謝していた。
三人に渡された武器は、もはや値段を付けれない程、価値のある物であった。オーダーメイドで選りすぐりの素材を使い、加工の段階でドワーフの秘術を使った武器は、都市カルカナと言えどアリアンワースでしか手に入らない逸品である。三人は、大いに喜び、その性能を試す為に、裏庭に向かった。
カルラが、新しいハルバートを使い美しい演武を披露する。
「凄い凄い!こんなに扱いやすいハルバートは初めて!」
エミリオが、カルラに問い掛ける。
「カルラの気功は、攻撃強化だと思うんだけど、今の武器で最大出力で気を練ったら、飛ぶ斬撃が出せるんじゃないかな?」
エミリオは、ドワーフの秘術を使い、気の流れを刃金に伝える際に独自の術式を組んで製作していた。
「試して見てもらえるかな?」
カルラは、コクコクと頷き気を貯める。すーっと息を吸い込み、気を送り込み易い様に両手でハルバートを構える。
「はああああっ」
カルラの気がハルバートに伝わり、オリハルコンの刃が金色に輝く、ハルバートを上段に構え振り下ろした。
振り下ろした金色の刃から気が刃の形となり真っ直ぐに飛翔する。矢の的に使っていた立て木に炸裂した。
放ったカルラが一番驚いている状態でエミリオを見る。
「僕から、気弾が出せる様になるなんて思っても見なかったよ!!」
エミリオは、満足そうな表情で答える。
「練習してコツが掴めれば、実戦で有効な武器になると思うよ」
カルラは、エミリオに再度感謝し、気弾の練習を始める。
その横でヴェルテがハイオークの大剣を構え演武を始めた。
「何か、初めて持った時より軽くて扱いやすい!これなら片手で簡単に振り抜くことも出来そう!」
「エンハンスする時にドワーフの秘術を使って剣を打ち直したから、見た目より軽いはずだ!ヴェルテ!その剣のを持って火属性を付加して見てくれ」
ヴェルテはエミリオに言われ火属性を大剣に付加してみる。大剣に埋め込まれたフレアストーンが真紅の輝きを放ち、刀身が紅蓮に染る。
ヴェルテは、紅蓮の剣を使い演武してみる。
「魔力の消費が凄い気がする!」
エミリオは、立て木に黒鉄の盾を括り付けた。
「ヴェルテ、その盾に斬り込みかけてみてもらえるか?」
エミリオの言葉を聞き、ヴェルテは、頷く。
「いっくよ〜。」
ヴェルテは、片手で紅蓮の剣を構え盾に斬りかかる。激しい金属音と共に盾は両断され、切断された盾から炎が上がっている。
「すっごーい!物凄い斬れ味だよ!」
「魔力の消費は、かなりあるかもだが、魔力を込めている間の斬れ味は、オリハルコン以上だ!それに、通常の魔法も剣を持って放てば威力は、今迄とは比べ物にならないはずだぞ!」
ヴェルテはエミリオに頷き、大はしゃぎしながらゼナに歩み寄り剣を見せて喜んでいた。
キスカも両手杖を構え魔法を唱える。ノームの宝石が夕焼けの様な綺麗な琥珀色に輝く。補助魔法を唱えて見たが、その力は今迄とは比べ物にならない程の威力となっていた。
「凄いです!いつもの魔力回復の魔法なんですけど効果が凄いです!自分の魔法じゃないみたい」
「魔力の増幅が今迄とは比べ物にならないはず!回復魔法も補助魔法も威力は格段に上がったはずです!」
エミリオは、満足そうにキスカに伝える。キスカは、これ程魔力が上がれば、今迄使えなかった魔法が使えるかもと言い、唱え始めた。
「大地の精霊よ、その偉大なる加護にて我らを護る盾を、悪しき者達に立ち向かう勇気を、大地の祝福を我らに授け守りたまえ」
キスカは杖を振りかざし、杖が輝きを帯びる。その場にいた全員に防御魔法が展開された。
「これは…」
ゼナがキスカに問い掛ける。
「防御と気力を上昇させる魔法です。初めて使いましたが成功した様です!」
キスカの話だと、大地の神官が使える魔法で通常の打撃などのダメージを軽減する物だと言う。斬撃に対しても効果は有り、装備している防具の能力以上の防御力となるはずと説明してくれた。
「凄い魔法だ!」
エミリオは、キスカを褒めちぎる。キスカは顔を赤らめ照れていた。
三人の武器の、お披露目会も終わり、夕日が沈みかけていた。今日の晩御飯は何処に外食しに行こうとヴェルテが言う。たまに外食も良いかもと全員が賛成し、外食することになった。
カルカナ3番街、こぐま亭に皆で向かう。こぐま亭は、昼はカフェレストラン、夜は酒場として営業している、料理は一流!料金は高めではあるが、カルカナのレストランでは上位に入る人気店だ。大坑道が有る都市カルカナは、冒険者が一番金を落として行く。一攫千金を得た冒険者は食事に関して妥協は無い。明日は命を落としてしまうかも知れない身の彼等は、他より高かろうが関係無く美味い物を望み、皆こぐま亭に足を運んでいた。
「久々に来たね!」
ヴェルテが意気揚々と店内に入って行った。こぐま亭は、煉瓦造りの洒落た外観と、店内は魔鉱石を使ったランプで彩られている。中央には、醸造酒 を作る銅造りの醸造用の仕込み釜が構えていて、自家製の醸造酒 は、こぐま亭の名物となっていた。
若い女性店員さんの誘導に従い、案内されたテーブルに着く。取り敢えず飲物を注文した。エミリオとキスカさんは醸造酒 ゼナとヴェルテは果実酒、カルラは蒸留酒を店員さんに頼む。その間に料理を選ぶ事にした。
「自家製チーズのピッザは外せない!」
ヴェルテが力説している。自家製チーズのピッザは、チーズと岩塩、オリーブ油だけのシンプルなピッザで有るが、その味の調和は見事な物で、ゼナ達も大好物であった。
「バイソンのロースト焼だな」
エミリオが、選んだバイソンのロースト焼は、岩塩と胡椒、野草などで香りを付け表面は焼き目が付く程焼き、その後、低温の石焼釜で、じっくり焼いた肉料理だ。中は赤みのままで口に含むめば、その柔らかい食感が至福の時を約束する大人気の一品である。
「腸詰めの盛合せと自家製チーズの野草和え」
カルラとキスカが選んだのは、豚の腸詰めを燻製にした物で、様々な種類が有る。大きさや、中に入っている肉の違い、調味料の違いや、燻製時間の違いなどバリエーション豊かで人気の一品!それと自家製チーズの野草和えは、季節の野草に細かく粉の様にされたチーズを振りかけたシンプルな品であるが女性に人気の一品でヴェルテも大好物の品である。
「鳥の香草焼き!」
ゼナの選んだ鳥の香草焼きは、乾燥させた野草と岩塩、胡椒に果実酒を加えて表面はカリッと焼き、中は柔らかい食感の、こぐま亭で一番人気の一品である。乾燥させた野草と果実酒のフルーティな香りが肉の旨味をより昇華させゼナの大好物であった。
店員さんより、飲物が運ばれ皆に行き渡る。エミリオの乾杯の声と共にグラスを重ねた。
「くうぅ〜。やはり、ここの醸造酒 は絶品だ」
エミリオが幸せそうに醸造酒 の入ったグラスを瞬く間に空にする。ヴェルテがエミリオに親父くさいと笑い飛ばす。エミリオは、良いんだ!親父だろうと何だろうと醸造酒 が飲めれば気にしないと、おかわりを店員さんに頼んでいた。キスカも飲み易いとグラスを空にし追加で注文している。二人は、意気投合し杯を重ねていく。
料理が次々とテーブルに並びゼナ達は至福の時を迎えていた。どれも絶品でヴェルテは店員さんに料理のレシピを教えて欲しいと話をしている。店員さんと仲良くなり、ゼナ達は、冒険者さん達ですかと尋ねられた。
「いやいや、うちらは近くで雑貨屋を営んでる仲間達だよ」
「そうなんですネ!お店教えて下さい!遊びに行きますから」
店員さんは、雑貨屋に興味を示しヴェルテが店の場所を教えていた。その後、店長らしき人に呼ばれ店員さんは、まずいっ!と呟き、厨房に戻って行く。余りにも、ゼナ達との会話に夢中になっていたから怒られて無ければ良いけどとヴェルテとゼナは思いながら、果実酒を、ゆっくり飲み干した。白葡萄を使って作られた果実酒は、フルーティで、とても飲み易く二人は、再度果実酒を注文する。それに合わせてエミリオとキスカも醸造酒 を追加し、カルラも蒸留酒を頼んでいた。ゼナは、ヴェルテに小声で話す。
「前から思ってたんだけど、エミ兄とキスカさんって、お似合いだと思わない?」
ゼナの言葉にヴェルテも頷く。
「二人とも気は有るよね!あとはエミリオ次第かな?」
エミリオとキスカは二人の世界を展開し幸せそうである。
二人は、エミリオ達を見ながら、笑っていた。
「僕も、彼氏が欲しいな〜」
蒸留酒を浴びながら、カルラが突然切り出してきた。その発言にゼナ達は、一瞬固まった。カルラは、完全に酔っている様で、制御不能の様子である。。
「砂漠で、ガルシア夫妻やダジール夫妻を見た後に、エミリオとキスカのラブラブぶりを見せつけられたら、そりゃ僕だって相手が欲しくもなるさ〜」
エミリオは醸造酒 を吹き出し、キスカは、顔を真っ赤にして硬直している。
「ヴェルテには、ゼナが居るし、僕も頼れる人が欲しい!」
カルラは酔った勢いで暴走中…
ヴェルテとゼナもカルラの一言で、真っ赤にされていた。
「僕にも、幼馴染は居るんだよ!」
カルラは、自分の幼馴染の事を語り始める。
「幼い頃から、一緒に居たんだけど、僕より弱いし頼りないし…顔は、そこそこ良いけど優しくもあるかな…でも優柔不断だし、僕に逢いに来てくれないし…z…z..zzzZZ」
「カルラ?」
ヴェルテがカルラの様子を伺う。カルラは、酔い潰れてテーブルにひれ伏していた。微妙な空気が流れたが、ヴェルテが、皆の意識を取り戻すべく切り出した。
「この酔っ払いめっ!店員さーん、お水貰えますか!」
ヴェルテの声に反応した店員さんは、冷えた水の入ったグラスを持って来る。
「エミリオは、もう飲んだら駄目だからネ!カルラを背負って帰って貰うから!」
カルラが潰れたのは、エミリオの所為だと言わんばかりに醸造酒 の入ったグラスを奪い取る。
エミリオは、とほほと項垂れ、キスカは苦笑いをしていた。
ヴェルテは、代わりに冷えた水のグラスを与えている。
ゼナは、会計を済ませ、エミリオはカルラを背負う。ゼナ達は、今度来る時は、カルラの幼馴染を連れてこようと心に決めるのであった…
「…カルラの幼馴染って何をしてる人だろう…」
ヴェルテは興味を示し、明日カルラが起きたら聞こうと心の中で思いながら、ゼナの横に並び帰路についた。




