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カルカナのゼナ  作者: ななかまどっ
23/27

ムスタファの野望と盟友

ゼナ達は、盗賊達と共にガザールに戻って来た。


「警備本部隊が、走って来るとは思わなかったわよ」


クリスがゼナの小耳に呟く。ゼナは、流石ガルシアだよと苦笑いしている。


ガルシアは、早馬に向かわせた隊員にはボロボロの装備を装着させ、警備本部に今まさに襲撃されて、盗賊は約50人、ファイアードレイクまで居る!助けてくれと報告させていた。


その情報を受けて、警備本部の兵が出発する前にムスタファ自らも私兵20人を引き連れて現場に向かっていた。ムスタファは、ガルシアを亡き者にした後に、警備本部の兵と合流して討伐と称して盗賊達の口封じもするつもりであった。


ガルシアはガザールに帰る際にワザと、傷を負った隊員を先頭にし、自分の荷馬車だけ先行させて、道端で待機させている。


ムスタファが、ガルシアの負傷兵を見つけ声をかけてきた。


「ガルシアは、どうした?盗賊は?」


負傷兵は、おおおと泣き出す。自分達は、逃げて来たと言い。あの状況では、皆無事では無いだろうと泣きじゃくる。


「ならば、お前達も死ね」


「なっ、ムスタファ様、何故に我々を…」


「死人に口無しと言うだろう?ガルシアも、お前達も皆殺しにしてしまえば、ガザールは俺の物だ!だから死ね」


ムスタファは、ニヤリと笑い、号令をかける。


「かかれ!」



包帯を巻きまくっていた負傷兵の振りをしていたのは、ダジールである。ドレイクの血を使い包帯は真っ赤に染め、負傷して無くても三角巾を着け、痛々しく見せていた。


「お止めください、ムスタファ様」


ダジールは、荷馬車の後ろに走り逃げる。


「もう茶番は、いらんだろう?」


ガルシア達が荷馬車から現れ、ダジールにボーガンを渡す。


「言質は取った!ムスタファ…砂漠の蠍も、お前の関与を白状したぞ!そして盗賊共は降伏した」


ムスタファは驚愕の表情を浮かべる。ゼナは弓を構え、ダジールに迫って来ていたムスタファの私兵達を射抜く。皆、腕や足を射抜かれ地面に転がり落ちた。


「馬鹿な50人とドレイクの兵力があったんだぞ!」


「確かに、我々だけでは勝てなかった!その弓使いと仲間に助力して貰ったからな」


ガルシアはムスタファを睨み告げる。


「どうする?お前達も降伏するか?それとも?」


ガルシアの挑発に顔を真っ赤にしながら、ムスタファは叫ぶ。


「ガルシアを殺せ!皆殺しにしろ」


ムスタファの命令を受け私兵がガルシア達に襲いかかろうとした刹那


「そこまでだ!動くな」


警備本部の分隊長が馬車から降りてくる。またもや驚愕の表情を浮かべるムスタファ。状況が理解出来てないようだ。

ガルシアは、淡々とムスタファに事の成りを伝える。


「ムスタファ、お前の行動は筒抜けだったんだよ。今回のカルカナ行きの話も、お前を動かせる為の行動だったし、警備本部に態々報告させたのは、お前の手駒から偽の情報を報告させる為のものだ」


ガルシアは、自分の家にムスタファの内通者が送り込まれていた様に、ムスタファの家にもガルシアの内通者を送り込み情報収集をしていた。今日襲われることは、事前に警備本部の幹部には伝え、見回りと称して分隊長と部下3名は街の正門付近で待機していたのだ。早馬で来たガルシアの兵から、本当の状況を聞き先行して合流し荷馬車の中で待機していたのである。


「これ以上暴れても罪が重くなるだけだぞ。都市内乱罪も適用になり、商業ギルドも動くことになる」


分隊長の言葉に私兵達は怯み、後退りした。それでもムスタファは私兵に皆殺しにしろと叫び、抜刀してガルシアに斬りかかる。一部の私兵はムスタファに合わせて動くも、半数は傍観する動きになった。

ダジールは、ボーガンで、向かってきた私兵の腕や足を狙撃し落馬させる。


「無駄なことは辞めろ!今更ムスタファに忠義を尽くしても死ぬだけだぞ」


ダジールが私兵に叫び、私兵達の戦意は喪失していた。ムスタファがガルシアに迫りくるも、ゼナの弓で右腕を貫かれ落馬する。


「畜生!お前さえ居なければ…」


「俺が居なくても、サリアは、お前の元になど絶対に行かなかっただろうよ」


ムスタファは、警備本部の兵に捕らえられ、私兵も全員降伏した。

その後、警備本部の本隊が到着しムスタファと盗賊全員を連行する。

ムスタファには、商業ギルドからも、調査が入りムスタファ商会は解体されることが決まった。違法とされている人身販売をしていたことも発覚し、ムスタファ商会に属する全ての人に捜査が入る。ムスタファと癒着していた警備本部隊員も捕縛され、都市ガザールを揺るがす大不祥事となった。


今回ムスタファは、ガルシアを亡き者にしたかった理由は、商業のことだけで無く、妻のサリアのことも起因している。ガザール市長の娘であったサリアを巡ってガルシアとムスタファは恋敵でもあった。まあ、ムスタファの一方的な横恋慕だったことはダジール市民も知っている話であるが…余りにも執拗に求婚してくる為、ガルシアとサリアは市長に相談し婚期を早め、半年前に結婚した経緯があった。


「動機の半分くらいは、サリアさん目当てかしら?」


「強引に事を進めても女性の気持ちは靡く訳など無いのにネ」


「哀れだわ」


クリス、ジェシカ、ソフィアが、ムスタファの行動を非難し、その言葉にヴェルテ達も頷き女性陣からは、異様なオーラが出ていた。


「なんか、自分が悪いことした訳では無いが、近寄りがたい空気が出てないか?」


「うん。」


「だな!」


ガルシアの言葉にゼナとダジールも頷き笑っていた。


ガルシアの家に戻り、ムスタファの内通者は、警備本部に連行されていく。


「ただいま!」


サリアがエントランスから走り、ガルシアに抱きつく。


「無事で良かった」


サリアは、ガルシアと人目を憚らず、熱い口づけを交わしていた。

ジェシカは、羨ましいと嘆き、マリカは、刺激されダジールを抱き締める。その様子を見て、クリスがコホンと咳払いをした。


「失礼!今夜は、ムスタファと盗賊を壊滅させた慰労と感謝をこめて晩餐会を開く、心ゆくまで楽しんでくれ」


ガルシアが皆に伝え各自、部屋を案内されゼナ達は一旦解散した。

ゼナは、その間に今日倒したファイアードレイクの皮の下処理をすることにし、庭にミントと共に出た。

樽に皮とミントの水魔法とエルフの英知で作った秘薬を混ぜで皮を洗う。カルラは、まだ怪我が完治して無いので、引き続きキスカの治療を受け、ヴェルテもカルラの側で様子を見ているようだ。ゼナは、洗い終わった皮を風魔法で乾かし下処理を終わらせて部屋に戻ることにした。


部屋に戻る途中でガルシアに呼び止められダジールと共に書斎に入る。ガルシアは、かけてくれとソファーに手招きした。


「二人には、本当に世話になった。改めて礼を言いたくてな!本当にありがとう」


ガルシアは、深々と頭を下げる。ゼナは、お互い様だと言い、ダジールは、今更そんなこと言うなよと笑っている。


「それでだ、ゼナ!俺と盟友になってくれないか?これだけ助けられたんだ、もしゼナ達の力になれることがあれば、俺は、どこにでも駆け付けるし力になりたい。」


「ガルシアさん!喜んで友にさせてください」


「ありがとう!堅苦しい返答は不要だ!さん付けも禁止な。今後、俺の事は、アルバートと呼んでくれ」


「わかったよ!アルバートこれから宜しく!」


アルバートとダジールは、昔からの友で盟友になっていた。そして、アルバートの提案で、ゼナ達が作った商品は、ダジールの雑貨屋でアリアンワースブランドとして販売させて欲しいと言われる。革の防具の出来が素晴らしいことは先の戦闘で立証済みで、同じ作りを真似ても強度の違いは明白である。ゼナ達の使っている武器も他で作っている武器よりも優秀だし、小物も含めて販売させて欲しいと再度、嘆願された。


「兄のエミリオに相談してからになるかと思うけど、僕は賛成です!」


アルバートは喜び、改めてアリアンワースに挨拶に行くから、その時に詳しく話を決めようと言っていた。


夜の晩餐会は、大いに盛り上がり、クリス達も、アルバートの勧める料理を食べ幸せそうに笑っている。

カルラは、キスカの治療の甲斐もあり、ほぼ全快し、皆と宴を楽しんでいた。


「内容の濃い、皮集めだったね!」


ヴェルテがゼナに微笑みながら言ってきた。


「うん!結局リザードを狩らなくても上位のドレイクの皮が集まったし、今後の皮の入荷ルートも確立出来たし、良いこと尽くめだね!」


ゼナは、ヴェルテに笑いながら答え、果実酒のグラスをヴェルテのグラスに、ぶつけ二人はグラスを空にした。



翌日ゼナ達は、ガザール市長の邸宅に招かれていた。今回の事件の解決に大いに貢献したゼナ達に褒賞が贈られる。5000万ゼジルと砂漠の遺跡より発掘された賢者の石、月の雫と呼ばれる蒼く輝く宝石を貰い受けた。


褒賞金の額にも驚いたが、伝説級の宝石を貰い受けることにゼナ達は驚きを隠せないでいた。

市長曰く、これでも足りないくらいだと言う。娘婿を助けてくれただけで無く、ガザール自体も救ってくれたと言い、ガザール商業ギルドから、カルカナ商業ギルドにゼナ達の活躍を報告すると伝えられた。


授与式も終わり、ゼナ達は、カルカナに帰る準備を進め、皆で戻る事になった。ゼナ達を見送る為に、ダジール夫妻も駆けつけていた。アルバートは、近い内に必ずエミリオに話を付けると手を振り叫んでいる。ダジール夫妻も、また来てくれと二人で手を振って見送ってくれた。





ゼナ達は、皆が見えなくなる迄、手を振りガザールを後にした。














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