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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

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8.あー、お腹すいた

「これならすぐにお店で使えるわ」


 ルナが、ゴブリン金貨を拾い上げる。

 ゴブリン金貨とは、ゴブリンの体内に形成される金の塊の通称だ。

 ゴブリンを倒すと、まれに手に入る。

 貨幣と同じように民間に流通している。

 一粒で数日の食事代ほどになる。


 アレクとルナは、ゴブリンと戦った場所を注意深く見て回る。

 小さい粒なので、目をこらす必要がある。

 草の間に埋もれているかもしれない。

 文字通り、草の根分けて探す。

 一時間近く、地面を這うように探し続けた。


「さすがに、これで全部かな」


「十五個もあるわ。

 ここのゴブリンは当たりだったみたいね。

 いつもだと、こんなに手に入らないもん。

 あたしたち、結構なお金持ちよ」


「元々ジンナラ金貨があるけどね」


「ジンナラ金貨は、両替できるところが限られてるからねえ」


 そう言うと、またルナの体がよろめいた。


「大丈夫?」


 アレクが、ルナの肩を押さえて支える。


「あー、お腹すいた。

 もう歩けない」


 空腹過ぎて力が出ないのだ。

 ルナは、空腹を覚えると精神的にも弱ってしまう性質がある。

 さすがのサンダーニカも、空腹までは治療することはできない。


「アレク、どこかで食べるもの買ってきて。

 あたし、ここで待ってるから」


 地面に座りこんでしまう。


「そんなわけにはいかないよ。

 ゴブリンが仲間を集めてまた襲ってくるかもしれない。

 数が多いと赤い宝石を恐れないかもしれないし、早くここから離れよう」


 アレクは、ルナを立たせようとする。

 ルナは、立ちたくなさそうな顔をする。

 甘えるような弱々しい表情だ。




「ごめん、アレク。

 ずっとあたしを背負って歩くなんて」


「別に構わないよ」


 アレクは、ルナをおんぶして森の中の道を進む。

 意外とルナの体重は軽かったので、思ったほどには疲れない。

 背中に当たるルナの胸の感触が、妙に気持ちいい。


 何キロ歩いただろうか。

 いくらルナが軽くても、もうアレクの足は限界だ。

 道を取り囲む森の木々が少なくなってきた。

 もうすぐ森が終わる。

 人の住むところに近づいているということだ。


「はあ、はあ、もうじき村があるはずだ」


 背中のルナに話しかける。

 ルナの反応がない。

 寝ているようだ。


「村に着けば、料理屋ぐらいはあるんじゃないかな」


「えっ、料理?」


 ルナが目を覚ます。

 アレクの背中から飛び降りる。


「どこ、どこ?

 めしぃ、めしはどこぉ」


 どうやら、半分起きて半分寝ぼけているようだ。

 歩けなかったはずなのに、うつろな目でふらふらと歩き出す。


 アレクは、腹ぺこルナの意外なポンコツぶりに、たじろぐ。

 それでも、これ以上背負わずにすんで、ほっとした。

 ルナをうまく誘導して道を進ませる。

 やがて、森が開け、村が見えてきた。


「あそこに行けば何か食べられるよ」


「食べるぅー」


 ルナは、最後の力を振り絞って走る

 千鳥足のようにふらついていて危なっかしい。

 でも、どうにかこうにか、食堂を兼ねた宿屋の前までたどり着いた。

 日はすでに傾き、夕方になっていた。



ᓚᘏᗢ



「このジャガイモと豆のスープも美味しい」


「そ、そうだね」


 アレクとルナは、二人用のテーブルで向かい合って食事をしている。

 アレクは、ルナの大食漢ぶりを見て、あっけにとられていた。

 ルナは、もうすでに三人分ぐらい料理を平らげた。

 ゴブリン金貨のおかげで財布は平気だが、お腹の方が心配になる。

 田舎の小さな宿屋の食堂なので、料理は粗末だ。

 しかし、ルナは、実に美味しそうに食べる。


「ねえ、さっきの肉料理、もうありませんか?」


 ルナは、まだ満腹にならないようだ。


「はい、今作りまぁす」


 店の人も驚いている。

 あまり質のよくない肉なのに、こんなに喜ばれるなんて。

 出入りの猟師から買い取った肉だが、何の肉かも謎なのだ。

 低級な魔獣の肉という噂もある。

 もちろん、ルナとアレクは、そんな噂はしらない。


 ちなみに、魔獣と呼ばれる生物は、狩猟の対象にもなる場合もある。

 ゴブリンなどとは違い、死んでも体が溶けない。

 高級な魔獣なら美味である。




「ああ、食った食ったー」


 ルナは、五人前以上食べて、ようやく満足した。

 アレクは、普通に一人分だ。


「よく食べられるね、そんなに」


「冒険には体力がいるからねえ」


 ルナは、あまり答えになっていないような答えを返す。

 もっとも、並外れた戦闘力を持つルナだ。

 膨大なエネルギーが必要なのは確かだ。


「ところで、もう夜だからこの宿屋に泊まることになるかな」


「いっぱい食べたから眠くなっちゃった」


 ルナは、可愛くあくびをする。


 アレクは、店の主人を呼び、宿泊の手続きをする。

 すると、主人からとんでもない事実を告げられた。

 部屋が一つしか残っていないというのだ。

 この村に他に宿はない。

 二人で一部屋に泊まるしかなくなってしまった。


「困ったことになったねえ」


「そうね」


 アレクとルナは、主人に押しこまれるように部屋に入れられた。

 少々強引で、断る暇もなかった。

 小さな蝋燭に照らされた部屋には、ベッドが二つある。

 ただ寝るだけなら困ることはない。

 異性と一緒に一部屋で一晩寝ることができるかが問題だ。


 アレクもルナも、男女一人ずつの同室を経験したことがない。

 モローニョからクリガへ行くまでの道中でも二人きりの夜はあった。

 その時は、道沿いの原っぱで仮眠を取っただけだった。

 いわゆる草枕だ。

 冒険者は、そういう眠り方をよくする。

 しかし、今回は状況が違う。

 閉鎖空間であることが、いろいろと余計なことを考えさせてしまう。

 異性のルームメイトにどう気遣えばよいのか見当がつかない。


「あの……」


「ええと……」


 二人とも、赤面して、もじもじしながら何かを話そうとする。

 話題が出てこない。

 気まずい雰囲気が支配する。

 お互い、相手の顔を見るのも恥ずかしい。

 二つのベッドに一人ずつ背中を向けて座ったままだ。

 無言の時間が続く。


 すー。

 すー。


 しばらくして、アレクの耳にかすかな音が聞こえてきた。

 ルナの方からだ。

 そっとルナへと視線を向ける。

 そこには、着替えもせずに仰向けに寝るルナの姿があった。

 そばに男がいても眠気には勝てなかったのだろうか。

 アレクは、ルナの胆力に恐れ入る。


 蝋燭の微妙な明かりのせいか、ルナの体が妙に艶めかしく感じられる。

 無防備な寝顔、形のよい胸、細いウエスト、その他いろいろ……。

 アレクは、思わず見入ってしまう。

 だが、すぐに、悪いことをしている気がして目をそらす。

 忍耐力の必要な一夜だ。

 この状況にアレクは耐えられるのであろうか。



ᓚᘏᗢ



 アレクも、いつの間にか寝てしまっていた。

 目を覚ますと、早朝の薄明かりが窓から差し込んでいた。

 結局、何も起こらない夜だった。

 アレクは、昨夜は気にしすぎだったかと恥ずかしく思う。


 ルナは、まだ眠っている。

 寝始めた時よりも服が乱れている。

 やはり、気にならずにはいられないアレク。

 ルナから目をそらし、深呼吸をし、必死に煩悩ぼんのうを押しとどめる。


「うにゃあ」


 突然のルナの変な声。

 びっくりしたアレクが、ルナを見る。

 ただの寝言だったようだ。

 寝ながら体をよじっている。

 服が、余計にくしゃくしゃになる。

 下着の端が見えている。


 アレクは、再びベッドに潜りこむ。

 これ以上ルナの姿を見るのは、さすがに失礼だ。


 ルナは、その後も変な声を出したり寝返りでベッドをきしませたりした。

 アレクは、もう一眠りしようにもできなかった。


 ルナが起きたのは、朝食の時間だった。


「うーん、よく寝た」


 両手を挙げて筋肉を伸ばす。

 爽やかな表情だ。

 アレクが近くにいるのを思い出し、アレクに目をやる。

 まだベッドの中だ。

 安心するルナ。

 自分の恰好かっこうが恥ずかしくなっていないか確かめる。

 思いっきり恥ずかしいことに気づき、赤面。

 静かに乱れた服を直す。


「アレク、朝だよ」


 ベッドの中のアレクを揺する。


「ああ、もう朝か」


 アレクは、今目覚めたふりをする。


「アレクって、お寝坊さんなんだね」


 にこやかな笑顔のルナ。


「そ、そうなんだ……。

 はは……、ははは……」


 アレクは、むりやり笑うが、その顔は引きつっている。




 二人は、宿の食堂で朝食を取る。

 今度のルナは、一人分の食事だった。

 昨晩十分に栄養を摂取したので、大量に食べる必要はないとのこと。


 宿を出る時、主人に宿泊料と食事代を払う。


「楽しむのはいいんですがね、他のお客さんの迷惑になりますんでねえ、あんまり張り切りすぎないでくださいよ」


 主人は、変な笑みを浮かべている。

 アレクとルナには、言葉の意味がわからなかった。

 二人とも、きょとんとしている。


「さっきの宿屋の人、何を言いたかったのかなあ」


 街道を歩きながら、ルナが、アレクに尋ねる。

 アレクは、すでに主人の言葉が理解できていた。

 だが、その答えをルナに教えるわけにはいかないだろう。

 ルナがベッドを軋ませたせいで、恥ずかしい誤解を受けただなんて。


「さあ、よくわかんないなあ。

 無理をせずに旅を続けろよってことじゃないかな、たぶん」


 適当にごまかす。


「あ、そっかあ」


 ルナは、納得したようだ。


 次の目的地であるフェンスターへは、まだ徒歩で数日かかる。

 路銀には余裕があるので、急ぐ必要はない。

 気ままな旅を続ける。




 特級冒険者パーティー「憤怒ふんどしょう」は、崩壊寸前だった。

 再びクエストに失敗したのだ。

 しかも、ランクが下のパーティーに出し抜かれる恥辱まで味わった。

 世間の目は、憤怒の掌の実力を疑い始めている。

 このままでは、ギルドにある憤怒の掌専用室を明け渡す事態にもなりかねない。

 リーダーであるエルベの機嫌は最悪だ。

 専用室の中で聖剣レギアを振り回し、壁やテーブルを切り刻む。


「くそっ、これも全部あの疫病神のせいだ」

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