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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

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6.お前にお似合いの彼氏だぜ

 ルナに声をかけた女は、細く丈の長いスカートをはいている。

 女のチンピラが好むロンタイという衣装だ。

 ルナに対して見下すような視線を向ける。


「まさか、うちを抜けてから一人で冒険者やってるとか?」


 ルナがソロ冒険者になる前の仲間らしい。

 アレクには、この女の態度だけでいろいろと察することができた。


「別に一人じゃないけど」


 面倒くさそうに答えるルナ。

 横目でアレクを見る。


「へえ、そいつ」


 アレクを見た女は、嫌みったらしく笑う。


「いかにも陰キャって感じで、お前にお似合いの彼氏だぜ」


「そう、彼氏なの。

 じゃあ」


 ルナは、その場を去ろうとする。

 アレクは、突然の彼氏認定に戸惑う。

 それでも、ロンタイ女に関わらない方がよいのはわかる。

 ルナとともに歩き出す。


「おいおい、行っちゃうのかよ」


 ロンタイ女は、ルナを引き留める。


「おーい、ここにルナがいるぞー」


 大声で叫ぶ。

 すると、人混みの中から女の仲間が現れる。

 同じようなロンタイ姿の女が三人。

 全員、顔つきまで最初の一人と同じようだ。

 ルナが前のグループで浮いた存在だったことが容易に想像できる。


「へえ、こんなところで生きていたのかよ」


「男連れとか、マジかよ」


「生意気」


 四人でルナとアレクを取り囲んで、口々に罵る。

 アレクは、つくづく治安の悪い町だなあと呆れる。

 それにしても、ルナは、なぜこの女たちを避けるのだろう。

 ルナの強さなら、不良女ぐらい恐れるに足らない気がするが。

 アレクには理解できない。


 そこへさらにもう一人の女が近づいてくる。

 ロンタイの四人と違って、高貴な雰囲気だ。

 貴族の令嬢のようなドレスを身にまとっている。

 しかし、性格が悪そうなのは変わらない。


「あなたのようなゴミにうろつかれると、この町の品位が下がりますわ。

 近くこの町の冒険者ギルドを私が買い取る予定ですのに」


「うるさいわね。

 もうこの町に用はないんだから、引き留めないでよ。

 もしかして、ゴミが気になってしょうがないわけ?」


 あきれ果てた表情のルナ。

 心底関わりたくないらしい。


「ヨランダ様にそんな口の利き方して」


「何様のつもりだ」


 ロンタイたちが騒ぎ立てる。

 ドレスの女は、ヨランダという名前だとわかった。

 ロンタイの一人がルナに近づき、手でルナの胸元を小突く。

 ルナは、相手の手を払いのける。


「あっ、こいつ、暴力に訴えましたよ、ヨランダ様。

 こっちは握手をしようとしただけなのに」


 わかりやすい嘘だ。

 見物人は、面白い見世物とばかりに楽しんでいて、嘘を指摘しない。


「さすが野蛮な人のやることは違いますわね」


 ヨランダは、嫌みな笑みを浮かべる。

 ルナに対してマウントを取りたくて仕方がない感じだ。

 本当に面倒なのに絡まれてしまったと、アレクは困惑する。


「わからせてやんないと駄目みたいっすね」


 ロンタイの一人が、ヨランダの目を見ながら言う。

 ヨランダが頷く。


「へへへ……」


 四人のロンタイが、下卑た笑い声を出す。

 足並みをそろえて、じりじりとルナに迫る。

 ルナも、戦う構えを取る。

 その目つきは、今まで以上に厳しい。

 よほど恐ろしい敵なのだろう。



ᓚᘏᗢ



「ちょっと待ってください。

 こんなところで喧嘩なんてよくありません」


 アレクは、ロンタイ女たちを止めようとする。


「てめえはすっこんでな」


 アレクに怒鳴るロンタイ女の一人。

 男のチンピラとは違った迫力がある。


 ルナとの喧嘩は止められそうにない。

 アレクは、ルナに幸運付与の魔法をかける。

 これでルナは勝てるはずだ。

 だが、ルナの悲壮な表情が、アレクには気になる。

 幸運付与があっても勝つ自信がないのだろうか。


「ただ殺したんじゃもったいない」


「その顔を二目と見られないほど切り刻んでやる」


 よく見ると、一人の女の指の間に光るものがある。

 剃刀かみそりだ。

 いつの間にか剃刀の刃を指に挟んでいたのだ。

 もう一人が、服の中から鎖を取り出す。

 次の一人の武器はジャックナイフ。

 最後のはメリケンサック。

 どいつもこいつも、不良らしさ満点だ。


「キエーーーーーッ!」


 ロンタイの四人が、奇声を発しながら襲いかかる。

 ルナは、ダガーを抜いて応戦する。

 相手の振り回す鎖が近接戦闘を許さない。

 鎖が遠のいた一瞬に、他の三人が代わる代わるルナを攻撃する。

 意外と連携がよい。

 戦い慣れているようだ。


 ルナは、敵の攻撃をぎりぎりで躱すのが精一杯。

 服に剃刀とナイフによる切れ目が増えていく。

 ルナの動きは、今までと違って、精彩を欠いている。

 なぜか、幸運付与も発動しない。


「あたいらの力を知らないわけじゃないんだ。

 どうして無駄な抵抗を続けるのかねえ」


 四人は、ルナとの距離を縮める。

 振り回す鎖の先端が、ルナの目の前をかすめる。


 ルナは、次第に建物の壁に追い詰められていく。

 身動きも取れない状態だ。

 それでも、わずかなチャンスにかける。

 身をかがめて、相手に突進する。

 鎖の女のロンタイをつかんで転倒させる。


「てめえ!」


 ジャックナイフの女が、倒れているルナを突き刺しにかかる。

 ルナは、転がってよける。

 メリケンサックの女が、ルナに馬乗りになる。

 鉄のパンチが、ルナの顔面に振り下ろされる。

 身をよじるルナ。

 メリケンサックが、ルナのサイドテールを貫通し地面に刺さる。

 ルナは、巴投ともえなげの要領でのしかかった女を跳ね飛ばす。

 そこへすかさず剃刀の女が襲う。

 起き上がったルナが、ダガーで剃刀を払い落とす。

 剃刀の女は、指から血を流す。


「ゴミのくせに、やりやがったな」


 四人の女は、四方からルナに跳びかかる。

 ルナは、ジャンプする。

 ミノタウロスと戦った時ほどの高さはない。

 だが、女たちをかわすには十分だった。

 四人の女の体が絡まり、動きが止まる。


 ルナは、ダガーを握り直す。

 今ならロンタイたちを刺し殺すチャンスだ。

 ほんの二、三秒の短い時間の中で、激しく迷う。

 結局、できなかった。

 憎い敵でも、人間の命は奪えない。


「何やってんだよ」


「どけよ」


 女たちは、ののしり合いながらも、すぐに体勢を立て直す。


 バシッ。


 突然、むちの音が響く。


「こんな女相手に何を手間取っていますの」


 今まで離れて見物していたヨランダだ。

 鞭を手にして、ロンタイ女たちのそばに歩いてくる。

 その顔は、前にも増して恐ろしい。

 ロンタイ女たちは、怯えた表情だ。


 この時、アレクは、初めてヨランダから魔力を感じた。

 それまでは、何らかの力で、魔力感知が阻害されていたようなのだ。



ᓚᘏᗢ



 アレクは、ようやく理解した。

 ヨランダには、他者の能力をある程度阻害する能力があるらしい。

 今、苛立ちのせいで魔気が強くなっている。

 それで、アレクが魔力を感じられるようになったのだ。


「あなたたち、我が娯屡権組ゴルゴンぐみの名誉を汚すような戦い方をして恥ずかしくはありませんの」


「す、すみません」


 四人のロンタイは、気をつけの姿勢で恐縮する。

 ヨランダは、四人を自分の左右に二人ずつ立たせる。

 真ん中がリーダーの立ち位置というわけだ。


 バシッ。


 ヨランダが、鞭で地面を叩く。

 鞭の先端が見えないほどの速さだ。

 地面から砂煙が上がる。


「ここは逃げた方がいいんじゃ……。

 あの人、凄い能力が」


 アレクが、ルナのそばに駆け寄って、横からささやく。


「わかってる。

 でも、逃げたくない」


 ルナは、ヨランダたちを見据えたまま答える。


「その女は、ここで死ぬ運命を選んだのですわ。

 この赶塿鞭かんろうべんに切り刻まれてね」


 ヨランダは、赶塿鞭と呼ばれた鞭をゆっくりと振り回す。

 動物の皮と金属の糸を撚り合わせた鞭だ。

 長さは三メートルほどで、黒光りしている。


「心中でもしたいのでしたら、一緒に殺して差し上げますわよ」


「アレクは下がってて」


 ルナは、アレクの体を野次馬の方へ押す。


「あんまり役に立つ彼氏じゃないみたいっすね」


「ルナにまともな男なんて捕まえられるわけないからな」


 ロンタイたちがあざけり笑う。

 と、そこへルナが跳びかかる。

 ルナの回し蹴りが、ナイフのロンタイの首に炸裂。

 その女は、気を失って倒れた。


「あたしだけならともかく、アレクまでも……」


 ルナの怒りに火がついたのだ。

 アッパーカットが、メリケンサック女の顎に命中。

 これも気絶させた。


「ひえっ」


 残りの二人は、恐れをなしてヨランダの後ろに隠れる。

 ルナは、ヨランダに殴りかかる。

 ヨランダは、赶塿鞭を振るい、ルナを寄せ付けない。

 さらに激しく振り回し、ルナに襲いかかる。

 鞭が風を切る音が、ルナの耳元に迫る。


 シュッ。


 鞭がルナの胸のあたりをかすめる。

 服に大きな裂け目ができ、胸が露出しそうになる。

 野次馬から歓声が上がる。


「いいぞ、いいぞ」


「もっとやれ」


 ショーの会場となった町中まちなかは、熱気を帯びてくる。

 その熱気が、ヨランダを後押しする。

 鞭の振りに激しさが増す。


 ルナは、少しずつ後ずさりする。

 ヨランダには隙がなく、反撃のしようがない。

 ルナは、視線を左右に動かし、何か使えるものはないか探す。

 目に入ったのは、まだ残っている二人のロンタイだった。

 その二人へ向かってダッシュする。


「うげっ、何」


 油断していた鎖を持った女から鎖を奪い取る。

 鎖を鞭のように振り回し、ヨランダに抵抗する。


 ズバシュッ。


 ヨランダの鞭が襲ったのは、鎖を持っていた女だった。

 肩から腹にかけて大きく切り裂かれ、大量の血を流し倒れる。


「情けないですわね」


 ドジな手下への罰だ。

 最後に残ったロンタイは、腰を抜かして地面にへたりこむ。

 これでルナとヨランダの一対一となった。



ᓚᘏᗢ



 ルナは、奪った鎖を投げ縄のように振り回す。

 ヨランダの鞭の使い方に比べると優雅さがない。

 しかも、鎖は二メートル弱で、ヨランダの鞭よりも短い。

 これでは、まだ不利だ。


「ただの鉄の鎖では、この赶塿鞭かんろうべんに使われている金属にはかないませんわ」


 鎖と鞭が、空中でぶつかる。

 鎖がちぎれ、半分ほどの長さになってしまう。


「やっぱり駄目か」


 ルナがつぶやく。

 赶塿鞭の威力は、ルナもわかっていた。

 うまく鎖で鞭を絡め取れればと考えたのだが、失敗だった。

 鎖を投げ捨て走り回る。

 ヨランダが狙いを定めづらいようにするつもりだ。

 しかし、ヨランダの動作も軽快で、なかなか思うようにはならない。

 さらに問題なのは、見物人の存在だ。

 自分が見物人に近づけば、見物人にも鞭が当たってしまう。

 だから、あまり自由には動けないのだ。

 ルナの服や皮膚に傷が増えてゆく。

 体のあちこちから血がにじむ。


「ルナ!」


 アレクが叫ぶ。

 何か考えがあるようだ。

 ルナに目配せをする。

 次に、手のひらを前に突き出す。

 幸運付与のポーズだ。


「ふふっ、無駄なことを」


 ヨランダは、アレクを嘲笑う。


「この女がバラバラになるところを見ているがよいですわ」


 ルナは、地面にへたりこんでいるロンタイ女に近寄る。

 ヨランダは、手下の命など気にかけない。

 今まで最も強い鞭(さば)きで手下ごとルナを切り裂こうとする。


「ひいっ」


 ロンタイ女が悲鳴を上げる。


 バシッ。


 大きな音がして、ロンタイ女が切り裂かれたかに見えた。

 しかし、無事だった。

 鞭の威力が弱まったのだ。


 紐や鞭などを激しく振ると複数の複雑な波が生じる。

 それらの波がぶつかる時、特定の条件下で波が打ち消し合うことがある。

 その際、波のエネルギーが周囲の空気の振動に変わり、大きな音がする。

 波形相殺と呼ばれる現象である。


 ルナは、この一瞬の機会を逃さなかった。

 すかさずヨランダに接近。

 ヨランダの顔面に蹴りを入れる。


「ぐえっ」


 ヨランダの声にならない悲鳴。

 鼻がひしゃげ、鼻血が吹き出る。

 続いてルナのもう一本の足が、再び顔面に食いこむ。

 何本かの歯が、口から飛び出す。


「あああ……」


 ヨランダは、両手で顔を覆う。

 手に流れる大量の血で、自分の顔の状態を察する。


「私の顔に……なんてことを……」


 血と怒りで、これ以上ないほどに恐ろしい顔になっている。


「あなたの能力阻害がなければ、あなたの首が吹っ飛んでたところよ。

 ダガーで刺すこともできたけど、それもしなかった。

 感謝して欲しいくらいよ」


「何よ、運がよかっただけでかっこつけて。

 波形相殺さえなければ、あなたの首の方が」


「ま、そうかもしれないわね」


 ルナは、アレクの幸運付与については何も言わなかった。

 秘密にしておいた方がよいと思ったからだ。


 と、その時、遠くから男たちの叫ぶ声がした。

 町をパトロールする治安係だ。


「お前たち、何をやってるんだ」


 人混みが邪魔で、なかなかルナたちのところへ来られずにいる。


「あちゃあ、治安係だ。

 さっき、おじさんがチンピラに絡まれてた時には来なかったくせに」


 ルナは、アレクの手を取り逃げようとする。

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