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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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50/52

50.花の女神である私にふさわしい

 飛行船は、地上から数百メートルほどの上空を高速で移動している。

 船内に操縦席らしきものはなく、誰も操縦をしていない。

 エルールの指示に従い、自動で飛んでいるのだ。

 飛行音もなく、何を動力にしているのかは謎だ。


「うわあ、ほんとに飛んでる」


「鳥になったようであるのであるこん」


「地面があんなに下の方に」


 ルナ、ミサキ、イヨは、空を飛ぶ飛行船からの景色を見て大喜びだ。

 きゃあきゃあとはしゃいでいる。

 遊園地の小さな子供のようだ。

 眼下に広がる川や森などの地形。

 間近に迫り通り過ぎる雲。

 全体が透明な飛行船からあちこちを眺めようとせわしない。

 アレクも、はしゃぎこそしないが、初めての空に感動している。

 見たことのない光景を目に焼き付けようと必死だ。


 一方、ギーゼラとその取り巻きたちは、至っておとなしい。

 壁に収納されていた椅子に無言で正しい姿勢で座っているだけだ。

 景色を楽しんでいる様子はない。

 内心では景色を楽しみたいのだが、貴族のプライドが許さないのだ。

 しかも、ルナたちがはしゃいでいるので、余計に意地を張ってしまう。


「空の旅はどう?」


 エルールが、皆に尋ねる。


「もう最高よ」


 ルナたちは、目を輝かせ興奮気味に口々に感想を述べる。

 ギーゼラたちは、軽く礼を言うだけだ。


「今のところ何もないみたいだけど、本当にこれから何かが現れるの?」


 アレクが、ルナたちが忘れていることを問う。


「そうだよ」


 エルールは、飛行船の進行方向を手で庇を作りながら見る。

 ちょうど太陽の沈む方向に向かっていてまぶしいのだ。

 しかも、飛行船の飛行速度と太陽の沈む速度がほとんど同じだ。

 ずっと同じ位置に太陽がある状態になっている。


「ていうかさ、その敵のいないところを通るとかできないの?」


 続けて、ルナが質問する。


「残念ながら無理なんだ」


 首を横に振るエルール。

 何故無理なのかは教えてくれない。

 言えない理由があるのだろうか。


「どのような敵で、どう戦うつもりなのか、何も伺っていないのですが」


 黙っていたギーゼラが口を開く。

 よく考えてみれば、飛行船に乗ってよかったのかも疑問だ。

 元の世界に帰りたいので、エルールに言われるままに乗ってしまった。

 そもそもエルールが完全に信用できる保証もない。

 皆が、エルールの答えを待つ。

 しかし、エルールに回答の必要はなかった。


「来るよ!」


 エルールが叫ぶ。

 同時に飛行船の内部が暗くなる。

 突如として厚い雲が湧き上がり飛行船を包んだのだ。

 景色が全く見えなくなった。

 飛行船が動いているのか止まっているのかもわからないほどだ。


「来たのね」


 腰のダガーに手をかけて身構えるルナ。

 敵がどこから来るかはわからない。

 全方向に意識を集中する。


「急に魔力が強くなりました」


 イヨは、ゾナを強く抱きしめる。

 ゾナのエネルギーは回復していない。


「この飛行船は、頑丈な物質でできているはずだけど、攻撃に耐えられるのか?」


「頑丈ではあるんだけど……」


 アレクの問いに、エルールは言いよどむ。


「あれ、何……こん?」


 ミサキが、飛行船内の中心付近を指さす。

 どこからか雲が入って小さな竜巻のように渦を巻いている。

 竜巻は、全員が見つめる中、次第に人の形に変化する。


「まさか、私が撃ち落としたはずですのに……」


 目を見開くギーゼラ。

 出現したのは、ギーゼラに銀の弾丸で脳天を撃ち抜かれた女神だった。



ᓚᘏᗢ



「私は女神だから、復活できちゃうのよね」


 人間の姿の女神が、円形の船内の中心に立つ。

 銀の弾丸で撃ち抜かれたはずの眉間に傷はない。

 アレクたち、ギーゼラたち、エルールが、女神を取り囲む。

 邪妖精は、面倒を避けて部屋の端に退避している。


「何が女神よ!」


 ルナが、女神に怒鳴りつける。


「あんたなんて魔物じゃないの!」


「魔物だろうと何だろうと、圧倒的に強ければ神様なのよ」


 女神は、高らかに宣言する。

 ルナに返す言葉はない。

 相手は、実際に復活してきたのだ。

 倒す方法などないと言ってもよいだろう。


「それで、わざわざあの世から舞い戻って、何をしに来たのです?」


 続いてギーゼラが問う。


「前にも言わなかったかしら?

 あなたたち女の子を食べて栄養にするのよ」


「女神にしては食べ物に執着しすぎで卑しいようですわね」


「ふふふ」


 女神にギーゼラの嫌みに動じる様子はない。

 不敵な笑みを浮かべ、周りを囲む少女たちを眺める。

 アレクは、改めてエルールも含め八人に幸運付与を行う。

 次の瞬間、激しい光が女神から発せられた。

 雷撃だ。

 アレクたちは、思わず目を閉じ身を屈める。


「え、あれ?」


 驚いて目を丸くしたのは、女神の方だった。

 雷撃が人間たちに何のダメージも与えられていなかったのだ。

 二人の邪妖精だけが、体から煙を出し体を痙攣させながら倒れている。

 飛行船自体にも特に影響はない。


「何だったの、今の?」


「ただの虚仮威しであるこん?」


 ルナとミサキは、不思議そうに顔を見合わせる。


「アレクさんの幸運付与のおかげですよ」


 と、イヨ。


「邪妖精たちにかけるのを忘れてたけどね」


 申し訳なさそうに頭を下げるアレク。


「またアレクに助けられちゃったよ。

 だけど、アレクって、自分には幸運付与ができないんじゃ?」


 ルナが、首をかしげる。


「その男には雷が当たらないようにしてあげたのよ!」


 女神が、ルナに向かって怒鳴る。

 少し照れくさそうな顔になり、早口で捲し立てる。


「そしたらなんか知らないけど変な感じになっちゃって。

 幸運付与だなんて、ほんとに食えない男ね。

 でも、幸運なんてそんなに続くものじゃないわ。

 次であんたたちはおしまいよ」


 再び雷撃を繰り出そうと両手を広げる。


「待って」


 エルールが、女神の前に立つ。

 強い目つきで女神を睨みつける。

 女神は、相手は子供なのにたじろぐ。


「まずは私と勝負しましょう、女神ルーレ」


「何を言い出すのかと思ったら、面白いわね、お嬢さん」


 笑い出す女神。

 しかし、どこか無理をして作っているような笑いだ。


「ちょ、ちょっと。

 あなたに勝負なんてできるの?」


 ルナが、慌ててエルールのそばに寄る。

 小さなエルールに女神と戦えるとは到底思えない。


「うん、一応ね」


 エルールは、自信ありげに頷く。

 

「それじゃ、例のあれで勝負よ」



ᓚᘏᗢ



「例のあれって……、ああ、あれのことね。

 確かに花の女神である私にふさわしい」


 ルーレは、エルールの言葉を理解した。

 アレクら他の人たちには何のことだかさっぱりだ。

 頭上に疑問符が浮かぶ皆を尻目に、エルールは、部屋の端に移動。

 透明な壁に手をかけ、壁から引き出しを出す。

 取り出したのは、片手に乗るほどの大きさの箱。

 まるで空中から箱を取り出す手品のようだった。

 再び部屋の中央に戻り床に座ると、おもむろに箱を開ける。

 箱の中身は、何枚かの小さなカードだった。


「これは、花札であるこん」


 ミサキが、驚きの声を上げる。


「君って、もしかしてコンカイ国の獣人だったの?」


 エルールは、花札を床に広げながら聞く。


「そうであるこん」


「何なの、そのカードみたいなのは?」


「我が国に伝わるカードゲームであるこん」


 ルナの質問にミサキが答える。

 大まかなルールも説明する。

 だが、ルナには一度でルールを理解できなかった。


「これから始めるから、私のやるのを見ていればいいよ」


 エルールは、すでに勝負の準備を終えていた。

 女神との間に、山札、場札、両者の手札が配置されている。


「じゃあ、私からだね」


 先攻はエルールだ。


「まずは、『桜に幕』を、と」


「なるほど、堅実なやり方ね」


 女神は、手札の「紅葉もみじ青短あおたん」で「紅葉に鹿」を取る。


「おや、『猪鹿蝶いのしかちょう』狙いかな」


 エルールが、「桐に鳳凰」を拾いながら、相手を牽制する。


「さあ、どうだか」


 微笑ほほえみで感情を隠す女神。


「よくわからないけど楽しそう……」


 花札で対戦する二人を見て、ルナがつぶやく。


「楽しんでいる場合なのでしょうか」


 ギーゼラは、唐突に始まったカードゲームに呆気にとられている。

 脳が状況の理解を拒む。

 森の少女と自称女神の魔物とが、何故カードゲームをするのか。

 いくら考えても謎の展開だ。

 二人の勝負は、表面的には和気藹々と進行する。


「三光が揃ったよ」


 エルールの取り札に「桜に幕」と「松に鶴」と「坊主」が並ぶ。


「うっ、だったら当然『こいこい』よね」


「いや、今回はこれで上がり」


「ちっ」


 舌打ちする女神。

 一回戦は、エルールの勝利。


「これ、エルールが勝ったの?」


 先ほどから、ルナは、ミサキに質問しながら観戦している。


「今回は、であるこん。

 これを全部で十二回行って、合計の点数を競うのであるこん」


「へえ、そんなにやるんだ」


 すぐに二回戦が始まる。


「いいのが揃ってるわね」


 女神は、自分の手札を見て、にやりと笑う。

 エルールの方は、どの札を使うか決めかねている。


「今回は、私の方が不利みたいだね」


 エルールの取り札にカス札ばかりがたまってゆく。

 女神は、勝ちを確信。


「ほら、『月見で一杯』で同点」

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