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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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44.何よ、あの武器?

「あの、この人は……」


 男邪妖精が、アレクが男だと女神に教えようとする。


「ちょっと待って」


 女邪妖精が、男邪妖精に肘打ちする。

 その様子を訝しむ女神。


「いえ、何でもないんです」


 女神に対して笑ってごまかす女邪妖精。

 男邪妖精に耳打ちする。


「この方が面白そうじゃん」


「男じゃ意味ないんだろ?」


「いいから、いいから」


 女邪妖精は、女神の間違いを面白がっている。

 女神は、邪妖精のひそひそ話は気にせず、アレクに歩み寄る。


「食べるって、まさか、でも、どうやって……」


 ルナは、アレクと女神の間に立つ。

 ミサキとイヨも、アレクの左右に寄り添って守る。


「アレクさんに危害は加えさせませんわ」


 ギーゼラは、取り巻きたちに合図をする。

 取り巻きたちは、剣を構えて女神を取り囲む。

 女神は、剣など気にするそぶりも見せない。


「食べるっていうのはね……」


 突然、女神の体がゴムを引っ張ったように縦に伸びる。

 瞬時に蛇の姿に変わってしまった。

 全長十メートルを越える大蛇だ。

 素早くアレクに躍りかかり、ミサキとイヨを弾き飛ばす。

 アレクの体を胴でぐるぐる巻きにする。

 そのまま空に浮かび上がる。


「アレク!」


 ルナは、跳び上がってアレクを助けようとする。

 だが、あと数センチ届かずに重力に負ける。


「ついにその醜い正体を現しましたわね」


 ギーゼラは、苦々しげに上空の蛇体となった女神を見上げる。

 取り巻きABCにハンドサインで指示を出す。

 すると、取り巻きAの肩の上にBが跳び乗って立つ。

 取り巻きCが、ABを梯子のように登り、Bの肩からジャンプ。

 女神と同じ高さに到達し、剣を振るう。


 がちっ。


 女神の蛇体が金属のように堅い鱗に守られている。

 小さな傷しか与えられなかった。


 ルナたちは、火の玉で攻撃しようとする。

 だが、アレクが人質状態なので攻めあぐねる。


「無駄なことはしないで、そこにおとなしくしてなさい」


 女神は、蛇の姿で下の人間たちに命じる。

 口を大きく開け、アレクを飲みこもうとする。

 蛇に巻きつかれたアレクは、必死に体をよじる。

 しかし、抜け出すことはできない。

 蛇の口が、アレクの上半身を覆う。

 喉の奥が波打って、口に入れたものを胃の方へ引きずりこむ。

 わずかな時間で、完全に飲みこまれてしまった。


「アレク……」


 何もできずにいたルナが叫ぶ。

 泣き崩れるミサキとイヨ。

 三人の脳裏には、アレクとの思い出が走馬灯のように流れる。

 ルナは、絶望感のせいで足ががくがくと震え出す。

 立っているのがやっとだが、目を見開いて女神を睨み続ける。

 その時だった。


「うっ……」


 女神が苦しみ始める。

 蛇の体を激しくくねらせる。


「ぐええっ」


 アレクを吐き出す。

 地面に落下するアレクをルナが受け止める。


「アレク!」


「ルナ……」


 アレクは生きていた。

 ルナは、大粒の涙を流して喜ぶ。

 ミサキとイヨもアレクに抱きついて喜びを共有する。



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 空中でもがいていた蛇の姿をした女神も、地面に落ちてきた。

 ギーゼラの取り巻きたちが、すかさず剣で襲いかかる。

 だが、女神は、堅い鱗に覆われた体を鞭のように振り回す。

 取り巻きたちは、接近することができない。

 女神は、また宙に浮き上がり、空高くへと登ってゆく。


「男なんか食べさせやがって」


 人間の姿に戻る女神。

 体じゅうから脂汗が流れ、服がべとついている。

 息を切らしながら地上の人間たちを睨みつける。

 下では、ルナたち三人娘がアレクを介抱している。

 アレクに大きな怪我はなかったが、イヨが治癒魔法を施す。


「くそっ、あんにゃろめ」


 女神は、両手を広げる。

 両手の先が光り、ばちばちと火花が散る。


「上に気をつけなさい」


 ギーゼラが、アレクたちに注意を促す。


 ビシッ。


 雷撃が地面に突き刺さる。

 さらに連続して雷魔法攻撃が降り注ぐ。

 逃げ惑うアレクたち。

 女神は、怒り任せて雷を連発する。

 興奮しているせいで、なかなか狙い通りに当たらない。

 地面から土煙が立ち、視界が悪くなる。


「ぶひっ」


 一頭の封豨に雷撃が直撃した。

 痛がって暴れる封豨。

 他の封豨も、つられて草原を走り回る。

 アレクたちは、封豨に蹴飛ばされないように逃げる。

 フレンドリーファイアーを繰り出す余裕もない。


「こうなったら、最後の手段ですわ」


 女神に体の正面を向けるギーゼラ。

 自分のドレスのスカートを大きくめくり上げる。

 あらわになった右の太腿には、拳銃を納めたレッグホルスター。

 銃は、装飾の施されたアンティークなデザイン。

 その銃を抜き、上空の女神へ銀の弾丸を放つ。

 女神の眉間を銀の弾丸が貫通。

 飛行能力を失った女神は、地面にたたきつけられ、動かなくなる。


「たった一発しかない」


「銀の弾を当てるなんて」


「さすがお嬢様ですわ」


 取り巻きABCが、口々にギーゼラを褒め称える。

 ギーゼラは、再びスカートをめくり、拳銃をホルスターに戻す。


「何よ、あの武器?

 何がどうなったの?」


 拳銃を初めて目にしたルナは、驚きを隠せない。

 立ち止まって、倒れている女神と立っているギーゼラを交互に見る。

 弾丸を目視できなかったので、女神が墜落した理由がわからないのだ。

 ミサキとイヨも、呆気にとられている。

 封豨は、全て離れたところに走り去っていた。


「あれがピストルか」


 アレクがつぶやく。


「知っているの、アレク?」


「火薬の力で弾を飛ばす武器だよ。

 遠くの国で開発されたそうなんだけど、専用の強力な火薬がかなり貴重なので実用的ではないとされているんだ」


「よくご存じでいらっしゃるわね、アレクさん」


 ギーゼラは、誇らしげな態度でアレクに近づく。


「まさかあんな隠し球を持っていたとは驚きました」


 アレクは、ギーゼラに頭を下げる。


「そんな凄い武器があるなら、もっと早く使えばいいのに」


 助けられた手前、強くも言えないが、不満げなルナ。

 ミサキとイヨも、同意して何度も頷く。


「次は、ここから元のところへ戻る方法ですわ」


 ギーゼラが、邪妖精たちを睨みつける。


「戻る方法と言われてもねえ、えへへ」


 女邪妖精は、困り顔で苦笑いをする。

 先輩の男の方も、醜い顔がさらに醜くなる。


「まさか、あなたたちにもわからないというの?」



ᓚᘏᗢ



「こんなだだっ広くて何もないところに一生いなきゃならないってこと?」


 ルナは、頭を抱えて叫ぶ。


「こういう場合、悪者を倒せば自然に全て元通りになりそうな気がするのであるこん」


「ですよね」


 ミサキとイヨは、周りを見渡す。

 何の変化もない。

 なだらかな平原が広がり、逃げた封豨の群れが遠くで草を食んでいる。


「この辺で一番高いところから周りを見てみよう」


 アレクが提案する。


「あの丘みたいになっているあたりがいいんじゃない」


 ルナが指さしたところへ全員が向かう。


「民家とかそういうのが全然見えない」


 必死に目をこらすアレクだが、どこにも人工物は確認できない。

 当然、この空間からの出口の目印もない。


「空からは何も見えませんの?」


「全然」


 ギーゼラの質問に、上空の女邪妖精は、ぶっきらぼうに答える。


「君たちは、ここで暮らすしかないようだね」


「あなたたちは、どうなさるつもりなんですの?」


「私たち妖精は人間と違うから、こんな環境でも生きていけるの」


「ああ、そうですか……」


 溜息をつくギーゼラ。


「仕方ないから、あの遠くに見える森まで歩こう」


 ルナが、遠くの森を指さす。


「見た目より距離があると思いますよ」


 イヨは、不安そうに森の方向を見つめる。

 森までは、十キロ以上ありそうだ。

 自分の脚力では他の人の迷惑になりそうなのを心配している。


「森に行けば食べられるものが手に入るかもしれないのであるこん」


 ミサキは、この世界での生活を考える。

 元に場所に帰れなければ、ここで生きるしかないのだ。

 イヨの肩を叩いて励ます。


「あの豚だか猪だかを狩ろうにも、こんな平原では難しいでしょうから、あの森で食べ物を探すしかないでしょうね」


 ギーゼラも、森まで歩くつもりだ。

 もちろん、取り巻きたちは、ギーゼラに賛成する。


「じゃあ、みんなであの森へ行こう」


 アレクの号令で全員が歩き出す。

 ルナたちとギーゼラたちの二組は、距離を取って歩いている。

 一緒に行動する気にはならないのだ。

 邪妖精たちも、人間が気になるのか、飛びながらついてくる。


 アレクには気がかりなことがあった。

 女神の死体を放っておいて大丈夫なのだろうか。

 歩きながら振り返る。


「ない」


 女神が倒れているはずの場所を見たが、何もないのだ。


「何がないの?」


「女神が消えた」


「魔物みたいに溶けちゃったとか草の陰になってるとかじゃない?」


 ルナも、背伸びをして確かめる。

 すでに百メートル近く進んだので、女神の位置がわかりにくい。


「あの状態で生き返るとは思えないのであるこん」


「魔力も感じませんよ」


 三人娘は心配していない。


「でも、曲がりなりにも女神を称しているぐらいだし」


「アレクって、気にしすぎなところがあるからなあ」


 笑いながら歩き出すルナたち。

 ギーゼラたちに負けじと早足で進む。

 アレクも、仕方なくルナに従う。

 それにしても、本当に女神は死んだのだろうか。

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