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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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43.美味しそうなのが集まってきたわ

 三人の取り巻きは、女神の背後から迫る。

 邪妖精たちを追い越し、女神の前へ回る。

 無言で剣を構える。


「あら、先に食べられに来たの?」


 女神は、余裕の態度で全く怯まず歩き続ける。

 取り巻きたちは、恐怖を感じる。

 どうしても、剣が届くほど女神に接近できない。

 歩く女神に道をあけてしまう。

 ギーゼラは、取り巻きたちの心理状態を察する。


「戻ってらっしゃい」


 取り巻きたちは、ギーゼラのそばに戻る。


「本当に食べられそうな気が……」


 取り巻きAが言う。


「冗談とは思えません」


「かなりの相手です」


 取り巻きBとCが続ける。


「何なんですの、あいつ」


 ギーゼラは、悔しげに顔をゆがめる。




「誰かが食べた後じゃないの!」


 肉を切り取られた封豨を見た女神が怒る。


「フェスティバルの女の子たちが食べちゃったんすよ」


「倒したのは、あの八人の女の子ってわけね」


 女邪妖精の言葉で女神は理解する。


「ますます美味しそうに見えてきた」


 アレクたちの方へ振り返って微笑む。


「その前に、せっかくだからこの豚もしっかり食べちゃいましょう」


 封豨の巨体に顔を突っこもうとする。


「ところで、この封豨、まだ女の子を一人も食べてないっすよ」


「それを先に言ってよ。

 だったら食べてもしょうがないじゃないの」


 女邪妖精が叱られる。


「あの人たち、女の子を食べるとかなんとか、変な話をしているのであるこん」


 耳のよいミサキは、女神たちの会話を聞いていた。


「さっきのあいつの言葉は、聞き間違いでも冗談でもなかったのね」


 ルナは、強敵との戦いを予感し、身震いする。


「人食い妖怪の類いが女神に化けているのに違いありませんわ」


「妖怪だとしても、かなり強いかと」


 取り巻きの一人が、ギーゼラに忠告する。


「わかっていますわ。

 ほら、戻ってきますわよ」


 女神は、きびすを返してアレクたち八人に狙いを定めた。

 すたすたと早足で接近する。

 身構えるアレクたち。

 だが、女神の行動が予測できない。


「あなたの目的は?」


 アレクが、女神の前に進み出る。


「あなたたちを連れ帰って豚の餌にするの」


 耳を疑うアレクたち。

 女神の言葉を理解するのに数秒を要した。


「豚の餌って言ったような気がするけど」


 ルナは、苦笑しながら柳眉りゅうびを逆立てる。


「女神にしては、おふざけが過ぎる発言ですわね」


 ギーゼラも、怒りと呆れが混ざった表情になる。


「他の女の子たちはどこかに隠れちゃったみたいだけど、あなたたちだけで十分」


 女神が微笑みながら両手を広げると、両手の先から光が放たれる。

 光に包みこまれるアレクたち。



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 まぶしさに目がくらむアレクたち。

 気がつくと、また別の場所に来ていた。

 邪妖精二人も一緒だ。


「私の豚牧場よ」


 女神が言う。

 一面に草花が生い茂り、なだらかにうねる広い平原だ。

 空は晴れ渡り、空気が澄んでいる。

 遠方に緑の森や雪をかぶった山脈が見える。

 つい先ほどまでいた薄暗い枯れ木の森とは大違いの風景だ。


「こんな退屈そうなところに私たちを連れてきて、何のつもりですの?」


 ギーゼラは、動じる様子もなく尋ねる。


「退屈はしないと思うわよ」


 女神が微笑むと、遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。


 どどどどどどっ。


「またこの音であるこん」


 ミサキが、音のする方に振り向く。

 緩やかな丘の向こうに土煙が立っている。


「またあの大きい豚?」


 疲れたような顔になるルナ。


「今度は一頭じゃないぞ」


 アレクが、仲間に注意を促す。

 丘を越えて、十頭ほどの群れをなして封豨が走ってくる。


「あなたたちは、あの豚の餌になるのよ。

 そして、その豚を私が食べるの」


 女神が宙に浮かび上がる。

 上空からアレクたちを見下ろしながら邪悪な笑みを浮かべる。


「何か変なこと言ってるけど、あんな豚、またやっつけてやる」


 ルナが、ミサキとイヨに目配せする。

 頷くミサキとイヨ。


「でも、あの封豨、さっきのとちょっと違うような」


 アレクが、今度の封豨が前のと異なることに気づく。

 二頭目の封豨よりさらに野性味があり凶暴そうなのだ。


「どんなのだって大丈夫」


 ルナの表情は、自信に満ちている。

 一頭目の封豨を倒し、二頭目を退散させているのだ。

 群れで攻めてこようと恐れはしない。


「行くのであるこん」


「行きます」


 ミサキとイヨが、火の玉を作り出す。

 ルナが、火の玉を右手にまとわす。


 どどどどどどっ。


 封豨の群れは、猛烈な速度で間近まで迫る。

 先頭の封豨を目がけて走り出すルナ。

 巨体の鼻先を狙って跳躍。


「フレンドリーファイ……」


 ルナは、パンチを繰り出す瞬間、はっと目を見開く。

 咄嗟に腕を止める。

 ルナの体が封豨の鼻にぶつかり、ひたいから背中へと転がる。

 封豨の尻のあたりで体勢を治し、他の封豨の背に跳び乗る。

 左手で封豨の剛毛を握りしめ、地面に落下しないように耐える。

 落ちれば封豨の群れに踏み潰されてしまう。

 封豨の群れは、このまま進むとアレクたちを蹴散らすだろう。

 だが、アレクたちの寸前で走る速さが遅くなる。

 人を踏まないようにアレクたちの周りを回る。


「どうなってますの?」


 剣を持った取り巻きたちに守られたギーゼラが不思議がる。


「皆、おとなしいのであるこん」


「全然敵意を感じません」


「むしろ、僕たちに興味があるみたいだ」


 アレクたちは、巨大な封豨たちを見上げる。

 封豨たちは、興味深そうに人間たちを見下ろす。

 鼻を近づけて人間の匂いを嗅ぐ。

 生暖かい鼻息で髪が乱れる。

 すでに右手の火の玉が消えたルナが、封豨の背から飛び降りる。

 

「ぎりぎりで気づいてよかったわ」



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「どうして気づいたの?」


「何となく……かな」


 アレクの疑問に、頼りない答えのルナ。


「何となく悪くなさそうな感じがしたから」


「そうなんだ……」


 ルナの天然お気楽ぶりに驚くアレク。

 しかし、ルナは、直感力に長けている。

 実際に、今度もルナの直感は当たったのだ。


「ぶひ、ぶひ」


 封豨たちは、ルナに感謝しているかのようだ。

 ルナが封豨の顎に手を伸ばして撫でる。

 封豨が気持ちよさそうな表情になったように見える。


「どういうことなのよ!」


 上空から見ていた女神が、そばにいる邪妖精たちを怒鳴りつける。

 女神にとっても、封豨の行動は想定外だった。


「ほんとに、どういうことなんだか」


 女邪妖精は、首をかしげる。

 男邪妖精も、相方に合わせて首をかしげる。


「女たちを食べるどころか、手なずけられてるじゃないの」


 女神は、苛立ちながら地上に降りる。


「お前たち、何故その女たちを食べないの!」


 今度は、封豨たちを叱りつける。

 さらに、両手から光の玉をいくつも出し、封豨の群れに飛ばす。

 光の玉が封豨に当たると雷のような爆発が起こる。


「ぶひっ、ぶひっ」


 痛がる封豨たち。

 群れがちりぢりになる。


「何すんのよ。

 可哀想じゃないの」


 ルナが、女神の前に立つ。


「威勢のいい女の子は嫌いじゃないわ。

 直接食べちゃおうかな」


 女神は、ルナの体を嘗めるようにじろじろ見る。


「な、何こいつ」


 ルナの全身に悪寒が走る。


「ルナっち、気をつけるのであるこん」


「この人の魔力は本物です」


 ミサキとイヨが、ルナに駆け寄る。


「美味しそうなのが集まってきたわ」


 女神は、ますます嬉しそうだ。

 口角を横に広げ白い歯をのぞかせ、にやりと笑う。


「封豨に人間を食べさせ、その封豨を食べることで人間の精気を取りこむんじゃないのか?」


 アレクも、女神の前に進み出る。


「そうだけど、人間の肉自体はまずいし。

 その豚たちは、美味しい上に餌の精気を溜めこむから重宝してたんだけどねえ」


「うげっ、気持ち悪い」


 またしても、ルナの全身に悪寒が走る。


「だけど、あなたたちには、まずいのを我慢して肉を食べる価値がある」


「まずくて悪かったわね」


 ルナが、女神に殴りかかる。

 女神は、すうっと横に移動してルナの拳をよける。


「な、な……」


 勢い余ってつんのめりそうになるルナ。

 転ばないように踏ん張りながら体の向きを変え、再び女神に殴りかかる。

 だが、またしてもあっさりと躱される。

 水中の魚を手で捕らえようとして失敗した時のような感覚だ。

 愕然として声も出ないルナ。

 本当の女神なのではとすら感じてしまう。


「あなたみたいな威勢のいい女の子は好きだけど、一番美味しそうなのは、そっちね」


 女神が指さしたのはアレクだった。

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