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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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42/52

42.是非私と結婚して欲しい

「この邪妖精を治癒してあげて」


「わかりました」


 イヨは、アレクに言われて、先輩邪妖精に治癒魔法を施す。

 先輩邪妖精は、意識は失ったままだが、徐々に外傷が消えてゆく。


「この気持ち悪い顔は、イヨちゃんのヒールでも治らないみたいね」


「本当にあの邪妖精と同じ種族なのであるかこん?」


 美少女の姿をした後輩とは外見が全然違う。

 誰もが不思議に思うところだ。


「邪妖精は性的二型がはっきりした種族だと本に書いてあったから、こっちは男なんだろう」


「アレクさんって、そんなことまでご存じなのですね。

 それにしても、同じ男とは思えないほどアレクさんとこのクリーチャーとは美しさが違いますわね」


 またしてもアレクに体を密着させるギーゼラ。


「うぐぐ……」


 男邪妖精のうめき声。

 意識を取り戻し、もぞもぞと身をよじる。

 おもむろに立ち上がると、寝起きのように大きなあくびをする。

 その顔があまりに醜いので、その場の女たちが一斉に顔をしかめる。


「お前たち、俺を助けてくれたのか」


 男邪妖精は、周囲を見回し、ぶっきらぼうにしゃべる。


「この人が、あんたを殺さないと決めてくれたんだから、感謝しなさいよ」


 ルナは、アレクを指し示す。


「ほお……」


 アレクの顔を見上げる男邪妖精。

 突然、男邪妖精の体に変化が起こる。

 人間の赤ん坊ほどの大きさだった体が大きくなる。

 顔が人間的になり、服まで貴族男子の礼服に変化する。

 ほんの五秒ほどで美形青年に変わってしまったのだ。

 その場の一同は、魂が抜かれたように立ち尽くす。


「あなたが私の命を救ってくれたのですか」


 アレクより背の高い美形青年は、間近からアレクの目を見つめる。

 まるでそのままキスでもしそうな雰囲気だ。


「あなたのような美しい乙女に救われるなんて、ああ、私はなんて幸せな男なんだろう」


 女装のままのアレクを女だと思っている。


「あの……、その……」


 返す言葉が出てこないアレク。

 はっきり「僕は男だ」と告げてよいものか迷う。

 誤解したままでいてくれた方が平和な気がするのだ。


「ちょ、ちょっと、あんたたち、にゃににょ……」


 ルナは、男邪妖精に言いたいことがあるが、舌がもつれてしまう。

 美しい男同士が見つめ合う姿に心が乱れるのだ。

 ミサキ、イヨ、ギーゼラ一味も同様だ。

 美形男邪妖精には、勘違いを続けていて欲しいと思ってしまう。


「あなたの名前は?」


 男邪妖精は、アレクの両肩に手を当てて尋ねる。


「アレク……」


 目の前に顔がある状況で答えるのが照れくさい。

 声が上擦ってしまう。

 答える時のアレクの仕草も、妙に女っぽかった。

 男邪妖精は、まだアレクを女だと勘違いし続ける。


「私は、妖精の王子、クラレンス。

 是非私と結婚して欲しい」


「え……?」


 アレクの思考回路がフリーズする。

 体が完全に固まってしまう。

 男邪妖精の唇が、ゆっくりとアレクの唇に接近する。

 唇と唇の距離が三ミリになった時、アレクの意識が再起動。

 慌てて飛び退き、ぎりぎりで危機を回避。


「な、何を……?」


「ついに理想の人を見つけたのです。

 私とともに妖精の国に来てはいただけませんか」


 返答に困るアレク。

 ますます自分が男だと言い出しにくくなる。

 本来邪悪な邪妖精が真実を知ったら何が起こるのかを考えると恐ろしい。

 ルナたちとギーゼラたちは、固唾をのんで二人の男を見守っている。

 成り行きが気になって、助けようとしないのだ。

 アレクはどうなってしまうのか。



ᓚᘏᗢ



 アレクは、覚悟を決め、正直に言うことにする。


「僕は、こう見えても男なんです!」


 しかし、男邪妖精は、大して驚かない。

 一瞬迷いを見せただけで、何でもないような顔をしている。


「それがどうしたというのですか。

 欠点は誰にでもあるものです」


 ぐいぐいとアレクに迫る男邪妖精。

 たじたじとなるアレク。

 周りで見ている女たちは、手に汗を握り、頬を紅潮させる。

 アレクを助けることを完全に忘れている。

 アレクは、後ずさりを続けるが、背中に木の幹が当たる。

 もう後ろには逃げられない。

 横に移動したいが、男邪妖精に肩を押さえられてしまう。

 アレクの額から冷や汗が流れる。


「だ、だ、だから、僕は、その……」


 がくがくと顎が震えて話もできない。

 肩を押さえる手の力が強くなる。

 この場に押し倒されそうだ。

 アレクも抵抗するが、相手の力の方が強い。


「私は、あなたを一目見て私の妻にしたいと強く思ったのです。

 もはやそれ以外の気持ちは今の私にはない」


 熱い眼差しの美形男邪妖精。

 その真摯な表情に、アレクは、拒否しづらい気分になってくる。

 だが、ここで男邪妖精と結婚などできるはずもない。

 必死に心を強く持ち、拒絶の言葉を絞り出そうとする。


「だけど、こんなところで……」


「今ここでなければ駄目なのです」


「そんな……」


「待てーい!」


 突然、頭上から甲高い声がした。

 後輩の女邪妖精が、ミサイルのような勢いで戻ってくる。


 どがっ。


 先輩邪妖精の頭に強烈な蹴りを食らわす。

 先輩の首から上が、ボブルヘッドのように揺れる。


「いてて……」


 先輩が、元の醜悪な男邪妖精に戻ってしまった。


「何をふざけてるんすか、先輩」


 後輩が、先輩を叱りつける。


「ふざけてたわけじゃねえよ」


 頭を押さえて痛がる男邪妖精。

 苦悶の表情が、醜さを倍増させる。

 女たちは、夢から覚めたような気持ちになる。


「アレク、こんなの相手に何やってんのよ」


 ルナたちが、アレクに駆け寄る。


「妖精の王子だなんていい加減なことを」


 ギーゼラは、男邪妖精を上から睨みつける。


「本当に邪妖精の女王の息子だ」


 男邪妖精が言い返す。


「先輩が王子なのは本当だよ。

 五百人ぐらいいる王子のうちの四百番目ぐらいだけどね」


「第三百八十八王子だ」


「そう、三百八十八番目でした……って、そんなことより大変っすよ」


 後輩邪妖精は、慌てた様子だ。


「早くしろって、女神が怒ってるんすよ」


「まずいなあ」


 頭を抱える男邪妖精。

 女神とは、よほど恐ろしい存在らしい。


「その女神とは何者ですの?」


「あんたが契約したってのは、まさか本当の女神じゃないわよね?」


 ギーゼラとルナが、女邪妖精に迫る。


「あちゃ、また口を滑らせちゃった。

 でも、もうすぐここに来るから隠すこともないか」



ᓚᘏᗢ



「ここに女神が?」


 一同が驚く。


「そんなに簡単に女神様が現れるはずはないのであるこん」


「しかも、このような不気味な場所に」


 ミサキもイヨも、女邪妖精の話を信じていない。


「女神の名前は?」


 アレクが、女邪妖精に尋ねる。


「君たちも知ってるかもしれないけど、ルーレだよ」


「町の名前にもなった、あのルーレ?」


 ルナは、町の庭園にあった女神像を思い出す。


「そんな悪い女神様には思えないんだけど」


「どうせ悪い妖術使いが神の名を騙っているのでしょう」


 ギーゼラが推理する。


「それで、その自称ルーレ神は、いついらっしゃるの?」


「いつって……」


 女邪妖精が言いかけた瞬間、薄暗かった空間が突如明るくなる。

 地上から数メートルのところに大きな光の玉が出現する。

 あたかも太陽が地上付近まで降りてきたかのようだ。

 皆は、手で庇を作りながら光の中心を見る。

 光が次第に弱くなり、光の中心に人の形が浮かび上がる。

 その形は、庭園の女神像に似ているような気がする。


「役に立たない邪妖精たちね。

 早く私に豚を用意しなさいよ」


 光の中の女神とおぼしき存在が怒鳴る。

 声は女だが、女神らしい上品さには乏しい話し方だ。


「それがですね、ちょっと手違いがあったもんで」


 女邪妖精が弁解する。


「手違いって何よ。

 あら、もう焼けたのがあるじゃない」


 女神は、ルナが倒した最初の封豨に気づく。

 封豨が巨大だったので、ほとんど食べられずに残っているのだ。

 女神を包む光がさらに弱まる。

 姿が見えるようになった女神が、地面に降り立つ。

 アレクら全員は、女神を目にして驚愕する。

 顔も体つきも、庭園の像にそっくりだったのだ。


「信じられない」


 思わず声を漏らすルナ。


「ええ、信じませんわ」


 ギーゼラは、女神を睨みつける。

 偽の女神である証拠を探そうとしているのだ。


「可愛い女の子たちね。

 しかも、若い元気にあふれている」


 女神は、舌なめずりをしてアレクたちを眺める。


「あなたたちも、後で食べてあげる」


 悪そうな笑みを浮かべて封豨の方へ進む。

 二人の邪妖精が、女神の後ろに従う。

 アレクたちは、その場を動かず、女神の歩くのを見ている。


「本当に女神なのでしょうか」


 イヨが、不安そうに周りに尋ねる。


「強い魔力を放っているのを感じるのであるこん」


「でも、女神がこんなところに現れるわけがない」


 アレクが断言する。


「まして、邪妖精を使うはずがない」


「じゃあ、やっぱり魔物か何かなの?」


 ルナの問いにアレクは考えこむ。

 女神とされる女には、ただの魔物だとは思えないところもある。


「あの女神が何者なのかをしっかり見極めないと」


「こちらから仕掛ければよいのですわ」


 ギーゼラは、女神に戦いを挑むつもりだ。

 取り巻きたち三人に目配せをする。

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