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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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35/52

35.じゃあ、これで一度歌ってみよう

 イヨは、ゾナのアイテムボックスからノートを取り出す。


「これなんですけど」


 ルナとミサキだけをそばに呼んで、そっとノートを見せる。

 アレクだけ仲間はずれだ。


「へえ……」


「ほお……こん」


 ルナとミサキは、感心しながらノートを読む。

 イヨがこっそり書きためておいた詩集だ。


「あんまり、その、真剣に読まないで……」


 イヨは、終始照れくさそうだ。


「あの、僕には見せてくれないの?」


 ちょっと淋しいアレク。


「イヨちゃん、恥ずかしいのよ。

 アレクへの熱い想いが綴られてるから」


「ちっ、ち、違いますーっ」


 顔を耳まで真っ赤にするイヨ。

 部屋の隅に逃げて、顔を壁に向けて膝を抱えて座りこむ。


「冗談よ、冗談。

 謝ります、謝ります」


 ルナは、イヨに体を猫のように擦り寄せて機嫌を取る。

 しばらくして、機嫌を直したイヨは、再び女子二人にノートを見せる。


「イヨちゃんに詩を書く才能があったなんて」


「なかなかよい詩だと思うのであるこん」


「そんな……」


 褒められて喜ぶイヨ。


「このノートの中のどれかの詩にメロディーをつけて歌うのであるこん」


 女子三人は、歌いやすさなどを考えて詩を選ぶ。


「これがいいんじゃない?」


「聞く人の印象に残るのであるこん」


 詩が決まった。


「どんな詩なの?」


 アレクが尋ねる。


「もうちょっと待って。

 これからあたしたちが頑張って曲をつけるから。

 踊りを考えるのは、その後ね」


「時間がかかりそうだね」


 アレクは、作曲はルナたちに任せることにした。

 自分だけ蚊帳かやの外なので暇だ。

 部屋の窓から外の通りを眺める。

 さっき外を見た時にいた通行人が、まだ視界の中にいる。

 何分もたったのに数メートルしか進んでいないのだ。

 強力すぎる魔法に恐ろしさを感じるのだった。




「ここのフレーズは、こんなメロディーでどうかな?」


 広くない部屋なので、ルナたちの会話はアレクの耳にも入る。


「この言葉は、こう変えた方が歌いやすいかもしれません」


「らーららーららららー……こん」


 ものの一時間ほどで、だいぶ曲が形になってきた。

 意外と悪くない旋律だ。

 三人娘の音楽的才能に、アレクは目を見張る。

 これはいけるかもしれないと思うようになってきた。


「じゃあ、これで一度歌ってみよう。

 アレクも聞いてて」


 ついにデモ版の完成だ。

 三人で声をそろえて歌う。


「ベーコンエッグにジャムを塗る

 桃のタルトの山葵わさび入り

 食べてみる気にならないが

 ちょっと意外な組み合わせ

 ピンクの猫の四人組

 らしくないけど冒険者

 何が起こるかケミストリー

 予想裏切るミステリー」



ᓚᘏᗢ



「どうだった、アレク?」


 ルナとミサキは、自信ありげな表情だ。

 イヨは、恥ずかしそうにうつむいている。


「ええと……、何というか……」


 感想の言葉がなかなか出てこないアレク。

 どう評したらよいのか困る、わけのわからない歌詞だ。

 ルナたちの会話から断片的に聞こえてはいたが、ああなるとは。


「メロディーはいいと思うんだけど」


 アレクの言葉に、イヨのうつむいた頭が、さらに下がる。


「いや、歌詞もいいと思うよ」


 慌ててイヨを慰めるアレク。


「ただ少々難解な気がするだけで」


「そうかもしれません」


 イヨが頷く。


「あたしは、これでいいと思うよ」


「というと?」


 アレクは、ルナの意見を聞く。


「アレクだって、他と違ったことをって言ってたでしょ。

 それに、イヨちゃんが恥ずかしいのを我慢して出してくれた詩だもん。

 イヨちゃんの、そして、あたしたちの気持ちがこもってるんだよ」


「わかったよ」


 納得するアレク。

 イヨも、晴れ晴れとした顔になる。


「それじゃあ、次に踊りの振り付けを考えないと。

 みんなは、どんなふうに踊りたいとかのアイディアはある?」


 アレクが尋ねると、三人娘は、顔を見合わせてくすくすと笑う。

 そして、にたあっと意地悪そうな笑みを浮かべながらアレクを見る。


「さっきの歌にもあったでしょ。

 『ピンクの猫の四人組』って」


われたち三人だけでは、人数が合わないのであるこん」


「ま、まさか……」


 アレクの背筋せすじが凍る。


「アレクさんも一緒に踊るのです」


「で、でも、女の人だけが出られるんじゃなかったっけ」


「上手にあたしたちと同じ恰好をすれば、ばれやしないって。

 そうすれば、いけ好かないあの女たちと同じ人数になるわ。

 人数が少ないせいで淋しく見えちゃうのも嫌だしね」


「そうかなあ……」


 アレクに拒否権はなかった。




「な、な、な……」


 三人娘は、眼前の光景に言葉を失う。

 わなわなと震えている。

 その原因はアレクだった。

 アレクの女装が似合いすぎているのだ。


「そんなに驚かれても……」


 ルナたちの着替えを身につけたアレク。

 短いスカートが恥ずかしい。

 照れてもじもじしている。

 その姿が、さらに三人娘の胸をキュンとさせる。


「アレクがこんなにも女装が似合うなんて思わなかったよ」


「もうずっとそのままでいて欲しいのであるこん」


 イヨは、二人に同意して、黙って何度も首を縦に振る。


「ずっとは無理かなあ」


 アレクは、女子たちの反応に困惑する。


「練習の時は普通の恰好で、本番だけ女装にしてくれないかなあ」


「仕方ないわね」


 常時女装は免れた。

 しかし、アレクも三人娘と同じダンスをしなければならなくなった。

 アレクに女の子らしい踊り方ができるのだろうか。



ᓚᘏᗢ



 アレクを含めた四人は、意見を出し合いながら振り付けを考える。

 一時間ほどで、振り付けもほぼ形になった。

 もちろん、この空間での一時間だ。

 部屋の外では、ほんの数分しかたっていない。


「この振り付けを間違わないように完璧にこなせるようにする。

 そのためには、何度も練習が必要だ」


 熱血教師のようなアレク。

 三人娘も真剣な眼差しだ。

 四人は、同じダンスを繰り返し、完璧へと近づけてゆく。

 いつの間にか、木でできた床が汗で変色している。

 ちなみに、他の部屋への騒音が気になるが、問題はない。

 時空間の壁ができているため、外部に音が伝わらないのだ。


「はあ、はあ、もう体が……」


 イヨが、とうとうを上げる。

 何時間もレッスンを続けたのだから、無理もない。


「じゃあ、今日はここまでにしようか。

 といっても、いつまでが今日なのかわからないけど」


 他の三人も練習をやめる。

 タオルで汗を拭う。


「外は明るいのであるが、この部屋だけもう夜であるはずであるこん」


「アレクがこんなに歌と踊りが好きだったなんて、びっくり」


「これもみんな君たちのためで……」


「ほんとかなあ」


 からかうような目でアレクを見るルナ。


「本当だってば。

 君たちはみんな可愛いのに、僕と一緒に冒険者なんてやってるせいでその可愛さを発揮できないでいる。

 だから、そのチャンスを与えたいんだ」


 三人娘は、ぽかーんとした顔になる。


「あれ、僕、何か……?」


「アレク……」


「アレクっち……」


「アレクさん……」


 三人の瞳が潤む。

 はにかんだ様子で、もじもじしている。


「アレクが、あたしたちのことを可愛いなんて言ってくれたの、初めてね」


「あっ、いや、それはその……」


 赤面するアレク。

 喜んだルナたちは、やる気に拍車がかかった。




 体感時間で次の日の朝。

 部屋の外では、まだ数時間しかたっていない。

 朝食を終えた四人は、練習を再開する。


「笑顔を絶やさないように。

 でも、わざとらしいと媚びてる感じになるから気をつけて。

 女の子らしい元気さをアピールするんだ」


 アレクが、三人娘に指示する。

 自分も同じことをしないとならないのが恥ずかしい。

 これも三人のためだと我慢する。


 こうして、練習に明け暮れる日々が続く。

 皆は、冒険者としての生活とは違った充実感を味わっていた。

 やがて、歌も踊りもほぼ完璧な状態に近づく。


「だいぶよくなったよ。

 他の参加者がどんな歌や踊りを見せてくれるのかわからないけど、僕たちは僕たちで悔いのない形になったと思う」


「あとはもう本番で一生懸命やるだけね」


 ルナは、ギーゼラのことなどどうでもよくなっていた。


「今度は、装束しょうぞくを考えるのであるこん」


「そうだったわね」


「どんな衣装にしましょうか」


 三人は、わいわいと楽しそうに服のデザインのアイディアを出す。

 女物の服に無知なアレクは、また蚊帳の外だ。

 裁縫ができるのかを気にしながら、離れて様子を見守っている。

 しばらくして、案がまとまった。


「ねえ、こんなのはどうかな?」


 紙に描いたスケッチをアレクに見せる。

 それは、今まで目にしたことのない衣装だった。

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