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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第二部。ピンクの猫は、温泉郷でゆっくりしたいのに。

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27.この腐れ外道があっ!

「やめるのであるこん」


 ミサキは、雪泥鴻爪ファントムクローを指先に伸ばし、ニックの腕を振り払う。


「おお、痛いなあ」


 ニックが咄嗟に腕をどけたので、大した傷にはならなかった。


「いやあ……」


 イヨの悲鳴。

 ビルが、イヨを木の幹に押しつけている。

 犬が匂いを嗅ぐように、鼻先をイヨに近づける。


「やめなさいこん」


 ミサキが、イヨの方を向く。

 すると、ニックが、ミサキの背後から抱きつき、腕ごと体を締め付ける。

 骨が軋むほど力が強い。

 ミサキは、体を動かすこともできない。


「何も町まで戻らなくても、ここで楽しんでもいいか」


 ミサキの耳元でささやくニック。


「おいおい、お前らだけで楽しむつもりかよ。

 俺は、あの巨乳の女がいいのによ」


 不満げなコウトク。


「あの女は、どこへ行ったんだ?」


 ニックに締め上げられたままのミサキに尋ねる。


「し、しらない……こん」


 ミサキは、渾身の力で身をよじる。

 ニックの腕が緩んだ瞬間、後ろ向きにニックの股間を蹴る。


「うっ」


 思わずうずくまるニック。

 だが、ミサキの受難は続く。

 コウトクが、咄嗟にミサキの尻尾をつかんだのだ。

 力を失い倒れるミサキ。


「あぐ……こん」


「こいつ、尻尾が弱点らしいぞ」


 コウトクは、両手で尻尾を握ってミサキの体を持ち開ける。


「よくもやりやがったな、この畜生があ」


 ニックが、ミサキの獣耳をつかみ頭を持ち上げる。

 抵抗できないミサキ。

 声も出せない。

 悔しさで涙だけが流れる。


「どう遊んでやろうかなあ」


 下卑げびた笑みを浮かべ、ミサキを見下ろすニック。


「いやあっ」


 イヨの危機も続いている。

 ビルが、イヨを地面に押し倒したのだ。

 体力の乏しいイヨがいくらもがいても、押し返すことができない。


「いい表情だ」


 イヨの絶望に満ちた顔を喜ぶビル。


「やっぱ眼鏡は可愛いぜ」


 ビルは、イヨの服の胸元に手をかける。

 服を引きちぎろうとしているのだ。

 イヨが抵抗して腕を振ると、地面に落ちた木の枝が指に触れた。

 その枝を握り、ビルの右手の甲に突き刺す。


「ぎゃっ」


 ビルが痛がっている間に、イヨが逃げ出そうとする。

 だが、ビルの体重をはねのけられない。


「てめえ」


 ビルの顔が怒りでゆがむ。

 マウントを取った体勢でイヨに拳を振り下ろそうとする。

 死を覚悟するイヨ。

 その時だった。


 どどどどど……。


 突然、ボナコンが現れた。

 気づいた時には、すぐ目の前にまで突進してきていた。


「ぐわっ」


 ボナコンが、ビルをはじき飛ばす。



ᓚᘏᗢ



 数メートル飛ばされたビルは、木の幹にたたきつけられ気絶する。

 走り去るボナコン。

 幸いにも、イヨを踏むことはなくイヨの体の上を通り過ぎた。

 イヨは、すぐに立ち上がり、木の陰に隠れる。


「どうしてあれがいきなり?」


 驚いたコウトクは、ミサキの尻尾を握る手を緩める。

 イヨのいるところに走るミサキ。


「昨日のと同じ魔獣じゃねえか」


 ニックが、異空間から剣を取り出す。

 同時に、ゾナが、異空間から脱出する。


「しまった」


「何やってんだよ」


 ボナコンが、向きを変えて戻ってくる。

 コウトクたちに体当たりしようとしている。

 ニックが、剣を構える。


「いっ」


 ゾナのレーザーが、ニックの腕を貫く。

 剣を落としたニックにボナコンが激突。

 ボナコンの角がニックの腹に刺さる。

 ニックを刺したまま、首を大きく縦に振るボナコン。

 五メートルほど上に飛ばされ、地面に落下する。

 糸の切れたマリオネットのような形で倒れるニック。


「死ねっ」


 ボウガンに矢をつがえるコウトク。

 コウトクを目指して突進するボナコン。

 ボナコンの眉間みけんに飛ぶ矢。

 命中。

 脚がよろける魔獣。

 コウトクは、射止めたと安堵する。

 ところが、ボナコンの背後から人影が飛び出してきた。

 宙に舞う人影。


「この腐れ外道があっ!」


 どがっ。


 空中で前転し、コウトクの額に怒りのかかと落としをくらわす。

 そのまま着地してしゃがみ、すぐさま勢いよく立ち上がる。


 ぼごっ。


 全身をバネにし、コウトクの顎にロケットの如きアッパーカット。

 下顎骨かがくこつが折れる鈍い音。

 顔面がひしゃげたコウトクは、声もなく倒れる。


「ルナっち!」


「ルナさん!」


 ミサキとイヨが駆け寄る。

 人影の正体はルナだった。

 ルナにしがみつくミサキとイヨ。

 声を上げて泣く。

 ルナは、二人を優しく抱きしめて慰める。


「だけど、どうしてここに来たのであるこん?」


 涙を拭ってミサキがルナに尋ねる。


「あたしたちを追ってきた魔獣が、急に向きを変えて走り出したの。

 それを見たアレクが、何かあるかもって言うから、あたし一人で魔獣を追いかけてきたってわけ」


 ルナは、眉間を射られて死んだボナコンに目をやる。


「可哀想に。

 理由はわからないけど、私たちを助けることになったのに」


 イヨが、ボナコンの死体に頭を下げる。


「丁重に葬りたいのであるが、においが……こん」


 悪臭が酷いので、近づくのははばかられる。


「ああ、みんな無事みたいだね」


 アレクが、ルナに遅れてやってきた。

 状況を見て、大体何があったかを察する。


「この人たちは生きているの?」


 倒れているコウトクを見下ろすアレク。


「かろうじて息はあるみたいだけど、どうでもいいじゃない。

 ほっとけば野獣が始末してくれるわ」


 ルナにコウトクたちを助ける意思はない。


「さっさと行こうよ。

 もう一度ユーザーワの温泉に入りたいわ」



ᓚᘏᗢ



「それにしても、何故あのボナコンは、我たちの方に来たのであるこん?」


「確かに、人助けなんてしそうに見えない魔物よね」


「僕の想像だけど、何らかの魔力に反応して凶暴化したんじゃないかな。

 不思議なのは、突然現れたみたいなところなんだけど」


「昨日も町の中に突然現れましたし」


 街道をユーザーワの温泉街の方へ戻るアレクらピンクの猫の一行。

 にこやかで、ついさっきの危機などなかったかのよう。

 気持ちの切り替えが早くないと冒険者は務まらないのだ。


「魔獣だから不思議なこともあると言えばそれまでだけど、何か理由がある気がするなあ」


 アレクは、考えながら歩く。


「これもアレクの幸運付与のおかげじゃないかな。

 だから、昨日も今日も都合よく出てきてくれたんだよ」


 楽観的なルナ。


「そんなことより、もうすぐお昼だよ。

 あたし、お腹すいちゃった」


 早足でユーザーワへと急ぐルナ。

 他の三人が、ルナを追いかける。




 林の中で動かなくなっているコウトクたち。

 生きているのか死んでいるのかもわからない。

 そこへ、どこからともなく何者かが出現する。

 赤黒く禍々しいオーラに包まれた男だ。

 背が高く筋骨隆々。

 重そうな鎧を身にまとい、大剣を背負っている。


「起きろ」


 地面に倒れているコウトクを指さす。

 男の指先から流れ出たオーラが、コウトクの体に染みこんでゆく。

 すると、コウトクの手足が、ぴくぴくと震え出す。

 ゆがんでいた顔が、少しずつ元に戻る。


「な、何だ……」


 上半身を起こす。

 状況が理解できず、辺りを見回す。


「ん……、あんたは?」


「お前らの新しいボスだ」


「何を言って……るんだ?」


 立ち上がるコウトク。

 顔のゆがみが完全に治っていないので、うまくしゃべれない。


「言葉の通りだ」


 オーラの男は、コウトクより体が大きい。

 見るからに強そうだ。

 体格差だけでなく、放たれる雰囲気も恐ろしい。

 コウトクは、勝てる相手ではないと悟る。


「よ、よろしく……お願い……し、します、ボス」


 オーラの男は、ニックとビルも同じように蘇生させる。

 二人も、子分になることを誓わされた。


「それで、ど、ど、どうして俺たちを助けてくれたんすか?」


 コウトクは、身を低くし、上目遣いで尋ねる。


「黙って言うことを聞け」


 男は、威圧的にコウトクたちを睥睨する。


「は、はひっ」


 思わず声が裏返るコウトク。

 恐怖で身がすくむが、同時に大きな頼もしさも感じる。

 このボスに従っていれば、今まで以上に威張れるに違いない。


「お前たちも、しっかり頭を下げろ」


 ニックとビルに命令する。

 これにより、グループの二番手の地位を確固たるものとする。


「お前たちのパーティー名は?」


「一級冒険者パーティー『射怪の魔弩』っす」


「では、今から俺がそのリーダーだ」


「そうしてくれれば、一級から特級に昇格も確実っすよ」


「階級などどうでもいい」


 この謎の男は、一体何をしようとしているのだろうか。

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