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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第二部。ピンクの猫は、温泉郷でゆっくりしたいのに。

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26.二手に分かれよう

「よくわからないんだけど、何か凄い人が、ミサキちゃんに予知夢を見させたってこと?」


 ルナの問いにミサキが首を縦に振る。


「近くにいるとは?」


 イヨが尋ねる。


「おそらく、あの人であるこん」


「あの人?」


「静かにぞな」


 ゾナが、ミサキたちの会話を遮る。


「敵がこちらに迫っているぞな。

 五十メートルぐらいまで接近しているぞな」


「向こうは一級冒険者パーティーだし、こっちの気配を察知するぐらいのことはできるのかも」


 アレクは、小声で仲間に注意を促す。


「それで、あの人ってのは誰のこと?」


 ルナが、ミサキの耳元でささやく。


「それは……」


 がさがさ。


 ミサキが言いかけた時、近くの茂みから物音が。

 いつの間に近づいたのだろうか、一頭の大きな魔獣がいた。

 またしてもボナコンだ。

 強烈な悪臭を放っている。


「何でこんなところに?」


 鼻を押さえて後ずさるルナ。

 戦いたい相手ではない。

 だが、ボナコンは、鼻息を荒くしてアレクたちを睨む。

 今にも突進してきそうだ。


「温泉街に戻るこん」


 ミサキの意思を察し、他の三人が頷く。


「二手に分かれよう」


 アレクが提案する。

 全員が同時に襲われないようにするためだ。


「わかったわ」


 ルナの返事と同時にボナコンが襲いかかる。

 四人は、二人ずつ左右に走る。

 アレクとルナ、ミサキとイヨの組み合わせが自然にできた。


「うわ、こっちに来た」


 眉をしかめながら逃げるルナ。

 必死にルナに追いすがるアレク。

 アレクは、ルナほどの体力がないのだ。

 間近に迫るボナコン。


「ぶわっ」


 ボナコンは、体が大きすぎて木々の間に挟まってしまう。

 体をよじって抜け出ようとする。


「早く、アレク」


 ルナが、アレクの手を引く。

 手をつないでいると、かえって走りづらい。

 あと少しで、ボナコンが、自分を邪魔している木を倒しそうだ。

 ばきばきと木が割れる音がする。


「あたしに乗って」


 ルナは、アレクに背を向けてしゃがむ。

 アレクを背負うつもりだ。

 一瞬躊躇うアレクだが、そうするしかない。

 ルナにおんぶされながら逃げることに。

 自分より体の細い女の子におんぶされるのは、男として恥ずかしい。


「しっかりしがみついててね」


 言われたとおりにするアレク。

 林の中は走りにくく、激しく揺れる。

 暴れ馬に乗っているようなもので、落ちないようにするのが大変だ。

 それでも、ルナのおかげで、ボナコンからだいぶ離れることができた。

 しかし、射怪の魔弩の存在も忘れてはならない。

 アレクは、周囲に意識を集中する。

 急にルナが叫ぶ。


「あっ」


「どうしたの?」


「温泉町の方向がわからなくなっちゃった」



ᓚᘏᗢ



「温泉町の方向はあっちだよ」


 アレクが、ルナの背から指さす。


「助かるう。

 あたしって、よく迷っちゃうのよね」


 ルナは、周りが全て木である林の中で方向感覚がおかしくなっていた。

 アレクを背負ったまま、アレクが示した方へと走る。


「よく迷わないね、アレク」


「自分が来た方向ぐらいわかるのが普通だと思ってたけど」


「えーっ、それじゃ、あたしが方向音痴みたいじゃない」


 むすっとした顔をしながらも、アレクを背負って走り続ける。

 むしろ、アレクの方向感覚を頼もしく思っている。


「今のところ、あいつらはいないみたいね」


 射怪の魔弩の面々を気にかける。

 幸いにも、アレクとルナを追っていないようだ。

 しかし、三人ともミサキとイヨの方を狙っているということでもある。




 別ルートのミサキとイヨ。

 ゾナも、イヨについてくる。

 アレクたちと同じく、林の中を走る。

 足の遅いイヨをミサキが気遣いながら進む。

 ミサキには、イヨを背負って走り続けるほどの体力はない。


「さっきの魔獣は、アレクっちたちの方へ行ったみたいであるこん」


「ルナさんなら、きっと大丈夫なはずですが」


 心配なのは、射怪の魔弩の動向だ。

 三人全員と出くわせば、ミサキとゾナだけで戦えるか不安だ。


「あの男たちが近づいてくるぞな」


 ゾナのセンサーが感知した。


「何ですって」


「あいつらも、お前たちの存在を感知しているらしいぞな」


「困ったのであるこん」


「人数は?」


「三人ぞな」


 本当に三人と戦わなければならなくなったようだ。


「イヨっちは、我と別れてゾナとともに逃げるのであるこん。

 我が、あの者たちを引きつけるのであるこん」


「そんなことはできません。

 あなた一人で応戦できる相手ではないと思います」


 イヨは、治癒魔法専門の自分が足手まといなのは自覚していた。

 かといって、ミサキだけを残して逃げるのは気が引ける。

 大いに迷う状況だ。


「早く行くのであるこん」


「でも……」


 逡巡するイヨ。

 その間にも、コウトクたちは近づいてくる。


「もうすぐだぜ。

 魔力探知機の針がぶるぶる震えてやがる」


 ニックは、いやらしい笑みを浮かべる。

 方位磁針に似た円形の道具を手に持っている。

 文字通り魔力を発生する人や物体を探知する機械だ。

 今は、ミサキとイヨだけを指し示している。

 アレクとルナに反応しないのは、探知機のレンジの外に出たからだ。


「おーい、聞こえるかー」


 声を張り上げるコウトク。


「何も逃げなくたっていいんだよ。

 友達になりたいだけなんだからさあ」


「あんなこと言っているのであるこん」


 当然、ミサキもイヨも信用しない。

 しかし、どうすれば射怪の魔弩との戦闘を回避できるのか。

 二十メートルぐらいまで接近してきている。

 もはや逃げるのも難しい。

 ミサキとイヨは、一人ずつ一本の木の陰に立って敵の動きを窺う。


「そこにいるんだろ」


 コウトクたちとの距離が、数メートルに縮まる。



ᓚᘏᗢ



「あいつらには、あの変な機械がついてるはずだ。

 どうするよ?」


 立ち止まったコウトクが、ニックとビルにささやく。

 先ほどはゾナを追い払ったコウトクだが、ゾナが厄介なのは確かだ。


「収納魔法で異空間に閉じこめられればいいんだが」


 ビルが答える。


「なるほど、その手があったか。

 うまくやってくれよ」


 歩き出すコウトク。


「うまくやれって言われてもなあ」


 ビルは、都合よくゾナを異空間に誘いこむ方法が思いつかない。

 だが、なんとかなるだろうと考え、コウトクに続く。

 ミサキたちに二メートルまで近づいたところで、木の陰からミサキが姿を現す。

 無駄な抵抗はしないことに決めたのだ。


「何の用であるこん?」


 ミサキの獣耳は、横向きになっている。

 最大限に警戒している印だ。


「やあ、奇遇だね、こんなところで」


 白々しい態度のコウトク。


「君、一人だけ?

 他の子たちはどうしたの?」


 きょろきょろと辺りを見回す。

 木の陰に隠れていたイヨが、ゾナとともに出てくる。


「イヨっち……こん」


 イヨは、無言でミサキの目を見つめる。

 逃げ隠れする意思のないことを表情で伝えているのだ。

 ミサキも、黙って頷く。


「もう一人いたよね?

 あと、男も」


「ここにはいないのであるこん」


「そりゃ残念。

 だったら君たちだけでもいいや」


「俺たちと遊ぼうぜ」


 ニックが、目をつけていたミサキに近寄る。

 ミサキは、一歩も引き下がらずニックを睨む。


「こんな場所じゃ何だから、ユーザーワの町に戻ろうか」


 ビルが、イヨに体を押しつける。

 露骨に嫌そうな顔をするイヨ。

 相手の迷惑など全く気にしないビル。


 ごんっ。


「痛っ」


 ビルの頭に何かが勢いよくぶつかった。


「何……、あっ、こいつは」


 ゾナが体当たりをしたのだ。

 イヨとビルの間に入り、二人を引き離そうとする。


「やりやがったな」


 ビルは、左手で頭をさすりつつ、右手で剣を構える。

 ゾナは、レーザーを発射しようとする。


「いいのかな?」


 再びイヨに体を密着させるビル。

 ゾナは、攻撃を躊躇う。

 その瞬間をニックは見逃さなかった。

 収納魔法を発動し、ゾナを異空間に閉じこめてしまった。


「ゾナ!」


 イヨが叫ぶが、ゾナの返事はない。

 絶望的な表情のイヨ。


「ははっ、厄介な虫もいなくなったぜ。

 どうする、お二人さんよ?」


 嘲笑うコウトクの顔が憎々しい。

 ミサキは、悔しさに歯を食いしばる。

 ニックが、ミサキの肩に腕を回す。

 さらに襟元に手を伸ばし、胸を触ろうとする。


「そんな恐い顔するなって。

 ほんとにただ君と遊びたいだけなんだからさ」

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