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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第二部。ピンクの猫は、温泉郷でゆっくりしたいのに。

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22/23

22.なかなかいい温泉ですよねえ

「なんか独特の雰囲気がある町だね」


「我の生まれた国に少し似ているのであるこん」


「久しぶりにしっかり体が洗えますね」


 ピンクの猫の一行は、温泉町のユーザーワに到着。

 木造の旅館が建ち並ぶ様子は、確かに若干日本的な印象だ。

 普段なら絶対買う気にならないような品ばかり売っている土産物店。

 いかがわしげな遊戯施設。

 浴衣に似た服で町を歩く客たち。

 どれも非日常の情緒を感じさせる。


「数日ここでのんびりするのもいいかも」


 アレクは、町を見回し、よさそうな宿を探す。

 だが、少し見ただけでは宿の違いなどわからない。

 女子たち三人の意見も聞くことにする。


「みんなは、どの宿に泊まりたい?」


「どこと言われてもねえ」


 三人も迷う。

 結局、宿の決定は、アレクに一任された。


「じゃあ、あそこにしよう」


 適当に目についた建物を指さすアレク。

 日本の城を思わせる立派な建造物だ。


「まあ、いいけど……」


 ルナは、怪しい笑みを浮かべる。

 ミサキとイヨは、少し顔を赤らめている。

 アレクには、ルナたちの反応の意味が理解できない。


「他のところがよかった?」


「別にいいんだけどぉ、アレクってぇ、意外とぉ、……エッチ」


「エッチこん」


 続いて、無言で頷くイヨ。


「はあ?」


 慌てて城のような旅館を見直すアレク。

 看板をよく読むと、旅館名の下に「混浴」の文字があるではないか。


「あっ、いや、あれはその、気がつかなくて、決して、その、つまり」


 アレクは、狼狽して言い訳も考えつかない。

 体中から汗が流れる。


「でも、いいわ。

 アレクに決めさせたのは、あたしたちなんだから」


「冒険者に二言はないこん。

 一度口に出したことを変えるのはよろしくないのであるこん」


 続いて、無言で頷くイヨ。

 三人の女子は、アレクを押して旅館の門をくぐらせる。

 混浴でも構わないらしい。

 むしろ、混浴を楽しみにしているようですらある。




「ふーっ、生き返るーっ」


「極楽、極楽こん」


「ですねえ」


 ルナとミサキとイヨは、旅館の温泉につかっている。

 日本によくある、裸で入浴する露天の岩風呂だ。

 お湯が白く濁っているので、三人の体はよく見えない。

 しかし、ルナが大、ミサキが中、イヨが小なのははっきりわかる。

 何の大中小?

 そりゃ、あれだよ。

 服という束縛から解放されたルナの胸は、一際存在感を放っている。

 いつもは、揺れないようにきつい服でしっかり押さえつけているのだ。

 ミサキのも、形がよくて美しい。

 普段目立たないのは、体型の隠れる衣装とそばにルナがいるせいだ。

 それに比べると、イヨの胸は残念だ。

 顔も体つきも、かなり子供っぽい。

 当人も、ルナとミサキに少しコンプレックスを感じている。


「客が少なくてよかったね」


 ルナは、湯の中で体を大の字に広げる。


「他の客に気を遣わなくていいから気が楽なんだけど、そこに飛んでるのが気になるのよねえ。

 機械に見られたって別に構わないんだけど」


 ルナが、イヨの頭上を指さす。

 ゾナが宙に浮いて、イヨたちを監視するようにレンズを向けている。

 イヨに対して過保護なところがあるのだ。


「もう、ゾナったら……」



ᓚᘏᗢ



「何か問題ぞな?」


「お風呂にまでついてこなくてもいいわ」


 イヨは、風呂につかったまま、頭上のゾナと話す。


「このような無防備な状態は危険ぞな。

 特に、あそこにいる男が、いつお前を襲うか警戒する必要があるぞな」


 ゾナの顔が、浴場の端を向く。

 ルナたちと離れた場所でアレクが湯につかっている。

 広い風呂なので、十メートルほど距離がある。

 他に人はいない。

 ピンクの猫の貸し切りみたいな状態だ。

 アレクは、女子たちを見ないように背を向けている。

 小さく縮こまっていて、リラックスできていない様子だ。


「アレクさんはいいのよ。

 いえ、よくないけど、ここは混浴で……」


 イヨの声が、恥ずかしさでだんだん小さくなる。




 何分か前のことだ。

 四人は、旅館の一室にいた。


「夜の食事の前にみんなで温泉に入ろうよ。

 露天の大浴場があるんだって」


 と、ルナ。


「君たちは先に入ってきていいよ。

 僕は、後から入るから」


 アレクは、ルナたちとの混浴を避けるつもりだ。


われたちと一緒に入りたくないのであるかこん?

 後からにしたところで、他の女と一緒になるかもしれないのであるこん」


「そ、それはそうだけど」


 たじろぐアレク。


「他の女の人と鉢合わせして、万が一よからぬことを……」


 眼鏡の奥から疑いの目を向けるイヨ。


「よ、よ、よからぬことなんて、僕がするわけないって」


 アレクは、顔を赤くして首を大きく横に振る。


「女の人から、ということです」


 今度はイヨの方が赤面。

 ルナとミサキは、イヨに同意して首を縦に振る。


「さすがに風呂でそんなことは……」


 アレクは、引きつった笑みを浮かべるのだった。


「ま、とにかくお風呂に入ろ。

 入っちゃえば気にならないって」


 ルナは、躊躇ためらうアレクの手を引く。

 ミサキとイヨは、アレクの背中を押す。

 半ば強引に大浴場に向かう。

 大浴場は、脱衣所だけ男女別々だった。

 アレクは、さっさと服を脱ぎ、女子たちより先に入浴。

 やや遅れて女子たちが来る。

 全裸だが、一応前をタオルで隠している。

 イヨは、眼鏡を外している。

 さすがにアレクの近くには湯には入らなかった。


「おーい、アレクー、こっちに来なーい?」


 ルナが、手を振ってアレクを呼ぶ。

 もちろん、恥ずかしがるとわかっていてからかっているのだ。


「僕は、ここが落ち着くんで」


 アレクは、横目でちらっとルナの方を見て、すぐに目をそらす。


「きゃはははは」


「うふふふ……こん」


「くすくす」


 女子三人は、アレクの照れっぷりを見て笑う。


 アレクは、女子たちの大胆さにつくづく驚嘆する。

 温泉地という特別な環境が女子たちを大胆にさせるのだろうか。

 この状態だと、体を洗うのも大変そうだ。

 異性に見られながら体を洗うなんて、考えただけでも爆発しそうだ。

 他に入浴の客がいないから、女子と時間をずらしてもよかったのに。

 そもそも、混浴なんて恥ずかしがり屋泣かせの風呂を運営しているこの旅館の神経を疑うぞ。

 などと考えつつも、女子のことが気になってしょうがないアレクだった。


 なお、後で知ったことなのだが、この旅館には、混浴とは別に男湯と女湯もあったのだ。



ᓚᘏᗢ



「とにかく、アレクさんはいいの」


「了解ぞな」


「それから、ここでは目を閉じていて」


「了解ぞな」


 イヨに言われたゾナは、目に相当するレンズを閉じる。


「泳いじゃおっと」


「我もこん」


 広い風呂が貸し切り状態なのをいいことに、ルナとミサキが泳ぎ始める。

 ルナは平泳ぎで、ミサキは犬掻きだ。

 きゃあきゃあ言いながら、愉快そうに泳ぎ回る。

 イヨだけは、湯の中でおとなしくしている。


「イヨちゃんも泳ごうよ」


「三人で競争するのであるこん」


「私は、泳ぎは苦手でして」


「それじゃあ……」


 ルナは、両手でお湯をすくうと、イヨの顔にかける。


「きゃっ」


 続けざまに、ミサキがイヨの頭にお湯を浴びせる。


「もう」


 反撃に出るイヨ。

 ルナとミサキに、ばしゃばしゃとお湯をかける。

 なんとも楽しそうだ。

 三人は、立ち上がってお湯をかけ合う。

 自分たちが全裸なのを忘れているかのようだ。

 水しぶきの中の少女たちは、芸術的なまでに美しい。

 胸の大きさの違いなど些末なことだ。


 アレクの視線は、いつの間にかルナたちに向いていた。

 見ないようにしていたはずなのに。

 イヨは、だいぶ変わったなあ。

 アレクは、こんなにはしゃぐイヨを見るのは初めてだった。

 憤怒の掌の一員だった頃は、アレクと会話すらほとんどなかった。

 かなり内気で口数の少ない少女だったのだ。

 ルナとミサキのおかげで、性格が明るくなってきている。




 女子三人が水しぶきの音を立てているところへ別の音が混ざる。

 浴場の扉が開く音だ。

 一人の黒髪の美女が入ってくる。

 三人は、気まずくなって湯の中にしゃがみこむ。

 他人がいると、さすがにふざけづらい。


「女一人で混浴なんて、凄い度胸ね。

 胸も凄いし」


 ルナは、美女に聞こえないようにささやく。


「温泉に入り慣れている感じであるこん」


 美女は、湯につかる前に、片膝をついてかけ湯をする。

 その姿勢が、実に様になっている。

 大人の色気を感じさせる。

 美女は、三人娘に軽く会釈してから風呂に入る。

 三人も会釈を返す。

 相手の気品に圧倒されている。


 美女は、三人娘とアレクの中間ぐらいの位置で湯につかる。

 温泉の宣伝に使えそうなほど絵になっている。

 三人娘は、その美しさに感心してしまう。

 ところが、しばらくして、異変に気づく。

 美女が、少しずつアレクに近づいているのだ。


「あいつ、アレクを狙ってやがる」


「恐れていたことが、こん」


「アレクさんを一人にしなくてよかった」


 三人は、額を寄せ合って小声で会話する。


「なんとか引き離さないと、こん」


「よし、あたしが」


 ルナが、美女の方へ向かう。

 ミサキとイヨは、ルナを制止しようとするが、できなかった。

 立つと胸が水面から出てしまうので、中腰で風呂の底を歩くルナ。

 ルナの接近に気づいた美女が、流れるようにすうっとアレクに近寄る。

 ミサキとイヨは、動かずにルナと美女を注視している。


「あの人から魔力を感じるのであるこん」


「私もです」



ᓚᘏᗢ



「ここ、なかなかいい温泉ですよねえ」


 ルナが、美女に近寄りながら話しかける。

 気さくな感じの笑顔を作っているが、目が笑っていない。


「ええ、そうですわね」


 美女は、アレクのすぐそばまで迫っている。


「広くて開放感があって、ゆったりできますわね」


「ですよねえ。

 せっかく広いんだから、もっと人から離れたらどうです?」


「あら、迷惑でした?」


 美女が、アレクに尋ねる。

 アレクが返事をしようとすると、ルナが先手を打つ。

 アレクが迷惑だなどと答えるわけがないからだ。


「この人は、あたしと凄く親しい仲間なんですよ。

 でも、孤独を愛する男? って感じで、一人でいたがるんですよ」


 美女とアレクの間に自分の体をねじこむ。

 アレクと肌が触れそうになるが、ぎりぎりで躊躇ためらう。


「仲がいいみたいね」


 美女は、アレクを挟んでルナの反対側へ来る。

 アレクが女二人を左右に侍らせているかのような状態になる。


「よろしいかしら?」


「駄目です!」


 アレクへの問いかけをルナが答える。


「この子に聞いてるのよ」


 美女は、自分の肩をアレクの肩にすり寄せる。


「あ、あ、あ……」


 ルナは、美女の大胆な行動に対して言葉がなかなか出てこない。


「まだ体を洗っていないんでしょう。

 だったら、背中を流してあげましょうか」


 艶めかしい目つきでアレクに話しかける美女。


「い、いえ、自分でできますので」


 アレクは、必死に美女から目をそらして答える。

 水面に顔を出すご立派な胸の谷間は、男の視線を吸い寄せるブラックホールだ。

 胸の大きさはルナと同程度だが、醸し出される色気が違う。


「あ、あ、あんた、それは公序良じょくに反するってやつで……」


「陵辱? って、ぷふっ」


 ルナの恥ずかしい言い間違いに、美女が吹き出す。


「あわわ……」


 顔がトマトのように真っ赤になるルナ。

 風呂の熱さも相まって、頭に血が上る。

 とうとうその場に倒れてしまう。


 その後、ルナは、美女とミサキとイヨによって湯から引き上げられた。

 アレクは、ルナの裸体を見るわけにもゆかず、何も手助けできなかった。

 女三人で脱衣所に運び、床に寝かせる。

 軽く浴衣を羽織った三人が手当を開始する。

 まずイヨが治癒魔法を試みる。


「駄目だわ」


 のぼせにはイヨの治癒魔法がほとんど効かない。

 冒険者の負傷を治すのとは勝手が違うかららしい。


「やはり、普通にやった方がいいみたいね」


 美女は、水で濡らしたタオルをいくつか用意していた。


「こうやって、首や足にタオルを当てるの」


 ルナのほてった体を濡れたタオルで冷やしてゆく。


「飲み水も持ってきて」


 ミサキとイヨに指示を出す。

 二人がコップに水を入れて持ってきたとき、ルナが意識を取り戻した。

 少しずつ水を飲ます。

 数分後には、すっかり回復。

 元々人並み外れた体力の持ち主だから、回復も早いのだ。


「えっと、その、何というか、助けてくれて……(ぼそぼそ)……」


 渋々礼を述べるルナ。

 アレクを奪おうとした女に命を救われるなど、屈辱でしかない。

 それにしても、この美女は、一体何者なのだろうか。

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