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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

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20/23

20.今頃どうしてるのかしら

「また何かあったら、ここへ寄って頂戴ね」


「は、はい……」


 フェンスター市の冒険者ギルドの正面玄関。

 ギルド長のロレッタ・ピゼンデルは、アレクの手を握って別れを惜しむ。

 まるでアレクの手の感触を楽しんでいるかのよう。

 なかなか離してくれないので、アレクは困っている。

 むりやり振りほどくのも、ピゼンデルの気持ちを害しそうで躊躇う。

 そばに立つ受付嬢は、呆れた笑みを浮かべている。

 ルナとミサキは、むすっとむくれた表情だ。


「ええと、あたしたち、急ぎますんで」


 ルナが、強引にピゼンデルの手をアレクから引っぺがす。


「お世話になりましたこん」


 素早くお辞儀をするミサキ。

 二人は、アレクを左右から手を引っ張って走り出す。


「それじゃ……ああ」


 アレクは、まともな挨拶もできずに引きずられる。




「ピンクの猫だなんて、変わったパーティー名ですよね」


 アレクたちを見送りながら、受付嬢が、ピゼンデルに話しかける。


「私も、気になってアレクさんの心の奥を読もうと手を握ったんだけど、わからなかったわ。

 だけど、ただ奇を衒ったわけではない、しっかりした由来のある名前だと思うのよね。

 アレクさん自身もよくわかっていないようだけど」


 ピゼンデルは、ピンクの猫の三人が走って行った方を見つめる。

 三人の姿は、すでに人混みの中に消えている。


「あの子たちは、歴史に残る存在になるわね」


「そんな気がします」


 微笑みながらギルドの中へ戻るピゼンデルたちだった。




 ピンクの猫の一行は、フェンスター市の南門近くにいる。

 市の何カ所かの出入り口の中で最も人通りの多い門だ。

 活気に満ちあふれている。


「お昼ご飯も済んだし、ミサキちゃんの宝石を探す旅に行くわよ」


 ルナは、元気いっぱいだ。


「というわけで、あたしたちに幸運付与の魔法をかけて」


 目的の宝石との遭遇率を上げるのだ。

 アレクは、ルナとミサキに手をかざす。


「どこへ向かえばよいのであるかこん?」


「ミサキちゃんの行きたい方向へ行けばいいのよ」


「僕も、それがいいと思う。

 宝石と宝石の所有者が特別な力で結びつくという話もあるからね。

 幸運付与は、その結びつきを少しばかり強めるかもしれない」


「それでは、その南門から出て南へ向かうのであるこん」


 三人は、フェンスターを後にした。

 それから何日かは、特に大きな出来事もなく旅を続けた。




 それでは、憤怒ふんどしょうの一員だったソロ冒険者のイヨを見てみよう。


「何か思い詰めていることがあるぞな?」


「え?」


「表情に表れているぞな」


「そんなことまでわかっちゃうのね」


 川沿いの道。

 イヨは、腰をかけるのにちょうどよい大きさの石に座っている。

 猫の顔に似た小型飛行物体である相棒のゾナと話をしている。


「アレクって人なんだけど、今頃どうしてるのかしら。

 あの人が私の所属していたパーティーを追放される時、何もしてあげられなかった」


 暗い顔で川の流れを眺めている。


「多分、その人は、どこかで元気にやっていると思うぞな。

 それより、イヨも一人では苦労も多いぞな。

 冒険者を続けるつもりなら、冒険者パーティーに加入した方がよいと思うぞな」


「私なら、ゾナがいてくれるから一人でも平気よ」


 無理に笑顔を作るイヨだったが……。



ᓚᘏᗢ



 イヨは、うつろな目で川を眺めていた。

 暖かな日差しが、次第に眠気を誘う。

 石の上に座ったまま、うとうとする。

 それを見たゾナは、イヨの両膝の上に降りる。

 目に相当する二つのレンズを閉じ、機能を停止させる。

 イヨと一緒に寝ているかのようだ。


 ややあって、ゾナが目を覚ます。

 何者かの接近を感知したのだ。

 イヨの足下を小さな黒い蜘蛛くもっている。

 イヨの片足に糸をかけると、糸を伸ばして川の中へ入ってゆく。

 一分ほどして、その蜘蛛が川から出てくる。

 同じようにイヨの足の同じところに糸をかけて川へ戻る。

 これを何度も繰り返す。


「イヨ、起きるぞな」


「ん?」


 イヨは、寝ぼけまなこをこする。


「足を見てみるぞな」


 眠気のせいで意識のはっきりしないイヨ。

 ゾナの言葉を理解するのが遅い。

 足と言われたのに、あさっての方向に目をやる。


「お前の足ぞな」


「足?」


 ようやく自分の足を見る。

 すでに紐ぐらいの太さになった蜘蛛の糸が足に巻き付いている。

 糸の先は、川の中だ。


「何かしら、これ?」


「水中から出てきた蜘蛛が、何度もお前の足に糸をかけていたぞな」


 ゾナが説明している間に、また蜘蛛が来る。

 足に糸をかけて川へ戻る。


「本当だわ」


 イヨは、恐くなってくる。

 蜘蛛の目的は何だろうか。


「怪しいから、どうにかするぞな」


「ええ」


「蜘蛛をやっつけるぞな?」


「待って」


 イヨは、蜘蛛の正体が知りたくなった。

 だが、何もせずにいたら、恐ろしいことが起こるだろう。

 幸いにも、全ての蜘蛛の糸がイヨの片方の靴下についている。

 靴下を脱いだイヨは、近くの木に蜘蛛の糸を結びつける。

 替えの靴下に履き替え、様子を窺う。


 ぎぎぎ……。

 ばきばきばき……。


 糸を結ばれた木が、強い力で引っ張られてきしむ。

 ついには、根ごと引き抜かれ、水中に引きずりこまれる。

 浮力のある木の幹が、完全に水中に沈められる。

 ほんの数秒の出来事だった。

 イヨは、目を丸くして立ちすくむ。

 引きずりこまれたのは自分だったかもしれなかったのだから。


「川の中にとんでもない化け物がいるぞな」


 ゾナは、川の上空を飛んで警戒する。

 川の幅は十メートルほどで、流れはゆっくりだ。

 深さは、見た目からでははっきりしないが、浅くはない。

 水面を見つめていると、突然、何かが勢いよく浮かび上がってきた。

 沈められた木だ。

 水中の何者かが、木を手放したのだろう。

 次の瞬間、水面が山のように盛り上がった。


 ザッバーン。


 象ほどもある巨大な蜘蛛が現れた。

 イヨの足に糸をかけていた蜘蛛を何万倍にも大きくしたような姿だ。


「逃げるぞな」


 走り出そうとするイヨだが、河原の石に足を取られ転びそうになる。

 巨大蜘蛛の八つの目がイヨをロックオンする。

 這うようにして逃げるイヨ。

 八本の足で器用に素早くイヨに接近する巨大蜘蛛。

 ゾナが、レーザー光線を巨大蜘蛛に発射する。

 巨大蜘蛛の動きが一時的に止まるが、すぐに動き出す。

 レーザーを大した攻撃でないと判断したらしい。

 なおもイヨを追う。

 ゾナは、最大出力のレーザーを連射する。

 巨大蜘蛛は、全身から体液を流しながらも攻撃を続ける。


「おいらのエネルギーが持たないぞな」



ᓚᘏᗢ



 ゾナのレーザーが弱まってくる。

 試作品の試供品の悲しさで、長時間戦えないのだ。

 飛行もできなくなり、ゆらゆらと地面に近づく。


「ゾナ!」


 イヨが、ゾナを受け止める。

 両手でゾナを包みこむように守りながら走る。

 背後に迫る巨大蜘蛛。

 足の速くないイヨだが、限界を超えた全速力で逃げる。

 林の中へ入りこむ。

 巨大蜘蛛は、木の間を通れず、追いかけてこられない。


「はあ、はあ」


 イヨは、木にもたれかかって呼吸を整える。


「もう大丈夫よ」


 手の中のゾナに話しかける。


「すまないぞな」


 ゾナは、小さな音声で答える。


「謝ることなんてないわ」


 少しずつ林の奥へと歩く。

 巨大蜘蛛に見つからないように林を抜けるためだ。


 ぎぎぎ。

 ばきばきばき。


 またしても、木々の軋む音が林に響く。

 巨大蜘蛛が近づいているのだ。

 イヨが、周囲を見渡す。

 上にいた。

 木の上からイヨを狙っているのだ。

 走り出すイヨ。

 そこへ、巨大蜘蛛が尻から糸を飛ばす。

 イヨの横すれすれに綱のように太い糸が張られる。

 少しでも触れれば、粘着して脱せなくなっていたはずだ。


 ばきっ。


 巨大蜘蛛の糸が絡みついた木が引っ張られて折れる。

 林に隙間ができ、巨大蜘蛛が降りてくる。

 イヨは逃げ続ける。

 地面が落ち葉や枯れ枝が散乱していて走りにくい。

 蜘蛛の足の一本が、イヨのすぐ後ろに振り下ろされる。


「おいらにしっかりつかまっているぞな!」


 ゾナが、イヨごと浮かび上がる。

 イヨは、手足を丸めて、小さなゾナにしがみつく。

 地面から一メートルほどの空中を飛んで逃げる。

 木々の間を縫うように飛行する。

 エネルギーが足りないので、ふらふらしている。

 スピードは、人が走るぐらいだ。

 エネルギーがあればもっと速いのだが。


「大丈夫なの?」


「心配するなぞな」


 後ろからは、木々を押しのけながら迫る巨大蜘蛛の音が聞こえる。

 さらに何度も糸をイヨに向けて発射する。

 イヨを運ぶゾナは、ぎりぎりで糸の攻撃をかわし続ける。

 だんだんゾナの速度が遅くなる。

 とうとう蜘蛛の糸がイヨのスカートに絡まる。

 巨大蜘蛛に手繰たぐり寄せられるイヨ。


 ずずずず……。


「あああ……」


 イヨの悲鳴にゾナは反応しない。

 完全にエネルギー切れだ。

 巨大蜘蛛とイヨの距離が縮まる。

 イヨは、スカートを脱ぐ。

 スカートだけが蜘蛛の口に届く。

 スカートに噛みつき、体液を吸おうとしている。

 その間に、かぼちゃパンツ丸出しで逃げるイヨ。


 巨大蜘蛛は、スカートが餌にならないことになかなか気づかない。

 スカートをくわえて味が出てくるのを待っている。

 まるで変態だ。


 イヨは、しばらく林の中を進む。

 急に目の前が開けたかと思うと、急な坂だった。

 足を踏み外したイヨは、ずるずると坂を滑り落ちる。

 落ちたところは、石の多い川岸だった。

 イヨの手には、動かないゾナがしっかりと握られている。

 途中で落としていなかったことに安心して息をつく。

 自分の手足を見ると、切り傷やり傷だらけだ。

 治癒魔法師であるイヨは、自分に治癒魔法をかけて治す。

 その後、すぐに川沿いを通って逃げることにする。

 人のいそうな場所にたどり着きやすいと考えたからだ。

 しかし、大きな問題があった。

 この川は、巨大蜘蛛が現れた川とつながっているのだ。

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