表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/30

19.どんな名前がいい?

 ミサキは、必死に運命の輪の車輪部分に手を伸ばす。

 届かない。

 だが、運命の輪が回転する。

 魔法の爪である雪泥鴻爪ファントムクローが届いていたのだ。


 どすんっ。


 オーガが、ミサキのうつぶせの体に落ちてくる。

 潰されると覚悟するミサキだったが、平気だった。

 顔を上げて背中の方を見ると、オーガが小さくなっている。

 人間の半分くらいの大きさだ。

 戸惑うミサキだったが、起き上がるなり雪泥鴻爪ファントムクローを振るう。

 オーガの体が、上半身と下半身に真っ二つ。

 次の瞬間に消滅。

 他の二体のオーガも小型化している。

 ミサキは、すぐさまその二体も切り裂く。

 全てのオーガが消えた。

 ミサキは、信じられない様子で辺りを見回す。

 倒れているルナのそばへ走る。


「ルナっちこん!」


「凄いね、ミサキちゃん」


 ルナの意識はしっかりしていた。

 ミサキに支えられながら起き上がる。


「だけど、最後のは何だったの?」


われにもわからないのであるこん」


 そこにアレクと腕を組んだピゼンデルが現れる。

 アレクは、ルナとミサキの前なので、居づらそうだ。

 目が泳いでいる。


「運命が変わったのよ。

 悪い方に変わることもあり得たけど、そうはならなかったわね。

 ちょっと残念」


 悪女っぽい笑みを浮かべるピゼンデル。


「どういうことであるこん?」


「簡単に言えば、運命の輪とは、試験の難易度を変える装置なの。

 難易度が上がるかさがるかは運次第だけど。

 で、アレクさんの幸運付与無しで使ってみてもらおうと思ったんだけど、運のいい結果になっちゃったのよね」


「オーガの能力を凶悪にしすぎた反動じゃなんいんですか、ギルド長。

 あれだけ高難度なら、大抵次は難度が低くなりますよ」


 助手の受付嬢が口を挟む。


「そんなにハードだったかしら」


「そうですよ。

 ギルド長って、若くて可愛い女の子には異様に厳しいですからねえ。

 って、冗談ですけど」


 迂闊うかつな発言にうろたえる受付嬢。


「ほんとに冗談が上手ね」


 微笑むピゼンデル。

 しかし、目が笑っていない。


「と、ところで、審査はどうするんですか?

 まだ続けますか?」


 受付嬢は、ピゼンデルの怒りをそらすために話を進める。


「実力はわかりましたから、もう審査は終わりでよろしいでしょう。

 その子に治癒魔法をかけてあげなさい」


 受付嬢にルナの治癒を行わせる。


「あ、どうも」


 こくんと受付嬢に頭を下げるルナ。

 一瞬で体の痛みが取れた。


「凄くレベルの高い治癒魔法ですね」


 ただの受付嬢でないことに感心する。


「実戦審査で怪我をする人が多いものでして」


「死者を蘇生させることだってよくあるのよ。

 幸いにも今回はやらずにすんだけどね」


 ピゼンデルの補足に、アレクたち三人は驚く。

 蘇生魔法の使い手は珍しい。

 多くの冒険者パーティーから誘いがかかるだろう。

 なのに、ギルドで受付の仕事をしているのだ。

 それに加えて、審査で死人が出るということに恐怖を覚える。

 さすがのアレクも、死人が出るほどの等級審査を知らなかった。


「あの……、僕は、まだ何もやっていないのですけど……」


 ピゼンデルと密着したままのアレクは、おずおずとピゼンデルに尋ねる。

 なぜアレクの審査をしないのだろうか。



ᓚᘏᗢ



「アレクさんは、もう結構なの。

 もうあなたの力はわかったから」


 と言うピゼンデル。


「え?」


 ピゼンデルの言う意味がわからず、きょとんとするアレク。


「私はね、こうやって体をくっつけると相手のスキルや各種ステータスが読めるのよ」


「そうだったんですか……」


 アレクの体から変な汗が流れる。

 今も自分のことが読まれているのだ。

 思考まで読む能力があったりしたら恐ろしい。

 ピゼンデルは、もう必要ないのに、まだアレクにしがみついている。

 ルナとミサキは、呆れた視線をピゼンデルに送る。

 ピゼンデルは、その視線すら楽しんでいるようだ。

 大人の女としての余裕なのだろうか。


「あれ?」


 ルナは、ふと疑問に思う。


「体をくっつけるだけでステータスがわかるのなら、どうしてあたしたちをオーガと戦わせたんですか?」


「確かにそうであるこん。

 どれだけ戦えるのかなどのことも、その方法で審査すればよいはずでありますこん?」


「勘のいいガキ……、いえ、お嬢さんね。

 でも、戦闘力があっても実際にその力を有効に使えるとは限らないわ。

 だから、実戦に近い模擬戦は必要なのよ」


「はあ、なるほど……」


 ルナとミサキは、納得できないが、反論もできない。

 だが、アレクに絡みついたままのピゼンデルには苛立つ。


「審査は終わったんですから、あたしたちに等級をつけてくださいよ」


「もうここにいる必要はないのであるこん」


 ルナとミサキは、アレクを引っ張る。

 ピゼンデルから強引に引き離す。

 アレクは、ほっと息をつく。


「しょうがないわねえ。

 私についてきなさい」


 ピゼンデルは、アレクたちをギルド長室へと案内する。




 ギルド長室は、ピゼンデルの仕事場である。

 広さは六畳ほどで、中央に古風で重々しいデスクが置かれている。

 四方の壁は全て本棚で、小さな図書室のようだ。

 貴重そうな書物がずらっと並んでいて、圧迫感がある。

 ピゼンデルのキャラクターからすると意外な印象だ。


「じゃあ、これから認定証を書くわね」


 ピゼンデルが、デスクの椅子に座る。

 アレクたち三人は、その前で立って待つ。

 助手の受付嬢が、羊皮紙らしい丈夫な紙をピゼンデルに渡す。


「あなたたちの等級は、そうねえ……」


 頬杖をついて、しばし考えるピゼンデル。


「ま、一級でいいか」


 紙に流麗な文字でさらさらと文章を書く。

 フェンスターの冒険者ギルド長がこの者たちを一級冒険者パーティーと認めたという内容だ。


「本当ですか、ギルド長?」


 受付嬢は、鼻息が荒い。

 伝説級のパーティーの誕生に立ち会えて興奮しているのだ。


「三人組でいきなり一級だなんて、実に凄いことですよ。

 ほとんど前例のないことのはずですよ」


「その実力は十分にあるわ」


 冒険者パーティーの等級は、六つに分かれている。

 最低ランクが五級で、一級の上に特級がある。

 一級の中でも特に優れた働きが認められた場合に特級が与えられる。


「あたしなんかが一級をもらっちゃっていいんですか?

 オーガにやられちゃいましたけど」


 申し訳なさそうなルナ。


「あなたたち二人の戦い方とアレクさんの能力を総合的に判断したのよ」


「そうなんですか」


 ルナは、ピゼンデルが自分を高く評価していてくれたことに驚いた。

 もっと性格の悪い女のような気がしていたからだ。



ᓚᘏᗢ



「ところで、皆さんは、パーティーの名前をどうしますか?」


 ピゼンデルが、アレクたちに尋ねる。


「名前があるなら、この認定証に記入するわよ」


「そういえば、僕たちの名前なんて考えてなかった。

 どんな名前がいい?」


 アレクは、ルナとミサキに話を振る。

 顔を見合わす二人。

 よいパーティー名など、すぐには思い浮かばない。


「今すぐ考えなくてもいいわよ。

 通例として上級の冒険者パーティーがパーティー名を名乗れることになっているというだけの話だから」


「だけど、通り名があると、やっぱりかっこいいわよね」


「覚えてもらいやすい名前がよいと思うこん」


「パーティー名があると、世間からの認知が格段に高くなる。

 人々からの扱いが、無名のパーティーとは全く違うんだ」


 アレクは、特級冒険者パーティーに所属した経験から言う。

 不安定な職種である冒険者は信用されにくい。

 その信用を担保するのが、パーティー名を持つことなのだ。

 もちろん、ギルドが発行する認定証も大事だ。

 しかし、権威のありそうな名前の方が紙一枚だけよりもものを言う。

 これが世間というものなのだ。


「やっぱり、アレクは頭がいいから、アレクに考えて欲しいな」


「賛成であるこん」


 ルナとミサキは、アレクに命名権を委ねる。


「そうだなあ……」


 アレクは、首をひねったり目を天井に向けたりしながら考える。

 ルナとミサキは、その様子をわくわくしながら注目している。


「ピンクの猫……」


 アレクが、恥ずかしそうに小さな声で呟く。


「え?」


「え? こん」


 ルナとミサキは、自分の耳に入った音が信じられずに聞き返す。


「ピンクの猫……」


 もう一度小声で言うアレク。


「ピンクの猫って……」


「いかなる意味であるこん?」


 二人は、もっとかっこいいパーティー名が出てくると期待していた。

 予想外すぎる名前に、二人は困惑。

 ギャグなのか本気なのかもわからないので、反応の仕方に迷う。


「自分でもよくわからないんだけど、急に頭に浮かんできた言葉なんだ。

 何か意味があるような気がするんだけど、思い出せなくて」


 アレクは、照れくさそうに余所見をする。

 ピンクの猫だなんて、がらにもない言葉だった。


「こんな名前、やっぱり嫌だよね?」


「かような可愛らしい名前も悪くはないと思うのであるこん」


「冒険者パーティーの名前って、勇ましい感じなのが普通だけど、普通じゃないのがあってもいいんじゃないかな」


 二人は、アレクの案に賛成する気になった。

 アレクの考えに間違いはないと信じているからだ。


「決まったみたいね」


 ピゼンデルは、認定証をアレクたちの前に差し出す。


「あなたたちの代表が、この認定証のこの部分にその『ピンクの猫』というのをサインして」


「代表が誰なのかも、まだ決めてなくて……」


 アレクは、ルナとミサキに視線を送る。


「もちろんアレクだよ」


 ルナの言葉にミサキが頷く。


「僕が代表のようです」


 アレクがサインをする。

 さらにピゼンデルが、ギルドの紋章を押印する。


「それでは、この認定証を受け取って頂戴」


 これで、アレクたちは、晴れて一級冒険者パーティー「ピンクの猫」となったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ