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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

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15/19

15.あいつがラスボスか……

「あいつらがそうなのね。

 やっぱりぶん殴ってやる」


 ルナが、残った力を振り絞って歩き出そうとする。


「待つこん。

 あの者たちは、われの敵であるのであるこん」


 ルナを押しとどめるミサキ。

 一人で呪いの獅子のいるところへ向かう。


 呪いの獅子の面々は、冒険者の死体をあさっている。

 金目のものをせしめるつもりだ。

 死体あさりも、この世界の冒険者に認められた行為ではある。

 しかし、善良な人物のすることとは思われていない。


「そなたたち、そのような行い、恥ずかしくはないのかこん!」


 ミサキは、大きな岩の上から呪いの獅子を見下ろしながら叫ぶ。

 呪いの獅子が見上げると、ケモ耳の獣人のシルエットがあった。

 火の玉がミサキの背後にあったからだ。


「げっ」


 呪いの獅子全員が、腰を抜かさんばかりに驚く。

 角が生えた、いかにも凶悪そうな魔物だと錯覚したのだ。

 慌てふためいて逃げようとする。

 最初に逃げた一人が、地面の出っ張りに躓いて転ぶ。

 その上に残りの四人が倒れる。

 ひっくり返った虫のようにもがく。

 なかなか立ち上がれない。


「邪魔だ」


 リーダーが、仲間を払いのけて起き上がる。

 一人で逃げようとする。

 仲間に足をつかまれ、また転倒。

 足をつかむ手を蹴りながら、魔物に見えた影に目をやる。


「おい、待て。

 あいつ、あの時の魔物だ」


 仲間に教えるリーダー。


「本当だ」


「なんでこんなところに?」


「そんなこと、どうでもいい」


「ぶっ殺してやるぜ」


 途端に元気を取り戻す。

 リーダーの指示で、手下の四人がミサキに襲いかかる。

 身構えるミサキ。

 体力が、すでに限界だ。

 雪泥鴻爪ファントムクローを使おうにも、魔力もかなり減っている。

 戦っていない男たちに勝てるはずがない。

 四人が、ミサキのいる岩によじ登る。

 ミサキは、自分の無鉄砲を後悔する。

 その時だ。


 ごごごごご……。


 洞窟内に轟音が鳴り響く。

 岩の壁が崩れる音だ。

 壁面に大きな穴ができる。

 中から巨大な生物が現れる。

 生物の大きさは、十メートルはあるだろうか。

 洞窟全体が暗いので、形はわかりにくい。

 だが、暗闇でも目の利くミサキには、火の玉の光だけでも見える。

 蛙を馬鹿でかくしたような怪物だ。


「くっ、まだあんなのが残っていたのか」


 コンラッドは、絶望の表情だ。

 さすがの勇者も、もう戦う気力がない。


「魔物の大量発生の元兇かもしれない」


 アレクが、周りにいる人に言う。


「あいつがラスボスか……。

 どうやって戦えばいいの……」


 ルナは、戦えない自分を恨む。


「げこっ」


 蛙型巨大生物の鳴き声が轟く。

 それだけで、洞窟全体が振動する。

 重低音の振動は、冒険者たちの体を貫き、体力をさらに削ぐ。

 立っていることすらできなくなる。

 逃げる力があるのは、呪いの獅子の五人だけだ。

 五人は、そそくさと出口を目指す。


 ミサキは、五人を追いたいが、足がよろめいてしまう。

 岩の上で四つん這いになってしまう。

 逃げる五人を恨めしく見つめる。

 あやつらが生きてわれが死ぬとは……こん。



ᓚᘏᗢ



 巨大蛙は、大きな二つの目をぎょろぎょろと動かす。

 獲物を探しているのだろうか。

 眼球にミサキが出した火の玉の光が反射して光っている。


 ぴょーん。


 突然、巨体からは想像のつかない身軽さで跳ねる。

 逃げている呪いの獅子たちのそばに着地する。


「うわー、来るなー」


 方向を変えて逃げようとする。

 巨大蛙の大きな口を開く。

 瞬時に赤く長い舌が伸びる。

 呪いの獅子の五人全員を舌で絡め取って口に運ぶ。

 五人は、武器を振り回し、舌に突き立てようと暴れる。

 へとべとしてゴムのように柔らかい舌には傷をつけることができない。


「ぐえー……」


 断末魔の悲鳴は、巨大蛙が口を閉じると聞こえなくなった。

 呪いの獅子は、あっけなく全滅した。


 アレクら冒険者たちは、その光景をただ見ていることしかできなかった。

 次は自分たちが食われる番だ。

 だが、どうすればよいのか。

 巨大蛙の跳躍力と舌から逃げられるのか。

 立ち尽くしたまま、動くこともできない。


 巨大蛙は、また目をぎょろつかせる。

 新たな餌を探しているのだろうか。

 しかし、目を動かすばかりで襲っては来ない。

 もう腹は満たしたのか。

 安心した何人かの冒険者が、洞窟の出口へと歩き始める。

 すると、巨大蛙が体を震わす。


 ぴょーん。


 再びジャンプする。

 出口へ向かう冒険者の前に立ちはだかる。

 食べられそうになる冒険者たち。


 ごごごごご……。


 再び洞窟が鳴動する。

 洞窟全体にひびが入る。

 巨大蛙が開けた穴から割れ目が広がっているのだ。


 ががががが……。

 

 巨大蛙の体の下に大きな亀裂ができる。

 亀裂は、みるみる大きくなる。

 巨大蛙の巨体が、地中に飲み込まれてゆく。

 地下にさらに空洞があったらしい。

 飛び出そうとするが、地面が崩れるので脚が空回りする。

 ついに、暗黒の大穴の奥に消えてしまった。


 食べられかけた冒険者は、ぎりぎりで回避できた。

 これも、アレクの幸運付与のおかげだろう。

 やがて洞窟は静かになり、岩の崩れるのも止まった。

 魔物の気配もなくなったようだ。




「あたしたち、生き残ったんだね」


 ルナが、アレクのそばで呟く。


「そうだね」


 呆然とした顔で頷くアレク。

 ここまで大変な仕事になるとは思ってもいなかった。


「犠牲者も多かったのであるこん」


 ミサキが、アレクのところに戻ってくる。

 呪いの獅子のことは何も言わなかった。


「我らがあの蛙に似た生き物に食われずにすんだのも、アレクっちの幸運付与の力であろうこん」


「あの怪物は、蛙に似ていたから、性質も蛙と同じなんじゃないかな。

 蛙は、動くものしか餌と思わないらしい。

 きっと、僕たちは、動かずにいたから襲われなかったんだよ」


「あたしたちは、疲れて動けずにいたのが幸いしたってことか。

 あの泥棒たちは、逃げようとしたことがよくなかったのね。

 それにしても、蛙のことまで知ってるなんて、さすがアレク」


「頭がいいのであるこん」


 他の冒険者たちもアレクに合流する。


「また何かが現れるといけない。

 今のうちにこの洞窟から脱出だ!」


 コンラッドが、全員に号令をかける。

 魔物のドロップ品を集める暇もないが、コンラッドの言葉は正しい。

 皆、出口へ急ぐ。

 全員が洞窟の外へ出た時、すでに空は白んでいた。

 空を見て、初めて自分が生きていることを実感する。



ᓚᘏᗢ



「後は我々が処理を行う。

 協力してくれた者たちには、害悪駆除作戦参加証明書を発行するので、係の者から受け取ること。

 その証明書を役所に持ってくれば報酬が出る」


 兵士の一人が、生き残った冒険者たちに事務的に告げる。

 多くの冒険者が死んだのに、国の兵士には被害はほとんどない。

 捨て駒にされるのも、冒険者の現実なのだ。




「予想外に大変な仕事だったけど、あたしたち全員無事でよかったわね」


 ルナは、晴れやかな表情だ。

 今まで何度か凄惨な冒険者の死に立ち会っている。

 気にしすぎれば冒険者が務まらない。

 なるべく思い詰めないように心がけているのだ。


「冒険者がこんなにつらいとは思っていなかったのであるこん」


 ミサキは、悲しげな様子だ。

 一人旅に出てから初めて人の死に直面したのだ。


「こういう経験の積み重ねが、僕たちを強くすると思うんだ」


 アレクが、ミサキを励ます。


「アレクっち、こん」


 ミサキは、アレクを頼もしく思うのだった。




「君たちのおかげで、俺たちは皆生き延びることができた。

 感謝に堪えない」


 コンラッドと蒼穹の迅雷のメンバーだ。

 アレクたちに頭を下げて礼を述べる。


「助けられたのは僕たちですよ」


「あたしたちだって、あなたたちがいなかったらどうなってたことか」


 アレクとルナは、照れくさそうだ。

 人から頭を下げられることが滅多にないのだ。


「あなた方のパーティーの名前は?」


 魔術師の女が尋ねる。


「結成したばかりで、まだ名前はないんですよ。

 パーティーの等級もついてなくて」


 アレクの答えに、蒼穹の迅雷の四人は驚く。


「あんなに強いのに信じられない」


 と、女魔法戦士。


「あなたの幸運付与なんて凄かった。

 私の魔法攻撃の精度が恐ろしいほど上がった」


「それだけが僕のできることですし」


「それだけではない。

 君は、的確な指示を出すことのできる指揮官でもあるではないか」


 コンラッドは、アレクの肩に手を乗せて褒め称える。

 アレクの戦闘での働きをしっかり覚えていたのだ。

 アレクは、照れ笑いを浮かべる。




「それでは、あなたたちは、宝石を探す旅を続けるのですね。

 私たちと一緒になれればと思ったのですが」


 蒼穹の迅雷の魔術師は、少し残念そうだ。

 アレクたちを自分たちのパーティーに誘ったが断られたのだ。


「ええ、あたしたちの都合をあなたたちに押しつけることになってしまうので、申し訳ないのですけれど」


 ルナは、誘いを断ったことをわびる。

 内心では、すでにチームワークのよいパーティーに入って上手に立ち回れる自信がなかったのだ。

 アレクとミサキも同じ考えだった。


「残念だが仕方がない。

 君たちは、君たちの冒険を続けてくれたまえ」


 コンラッドは、アレクたち三人と握手を交わす。

 他のメンバーも同様に握手を交わす。


「それでは、また会うこともあるであろう。

 その時まで、さらばだ」


「さようなら」


 両方のパーティーは、別れの挨拶をして、別々の方向へ歩き出す。


「おっと、少し待ってくれ!」


 何かを思い出したコンラッドが、アレクたちの方に振り向いた。

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