表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/19

12.酷い人間もいたものだ

 早速身支度を調えたミサキは、宝石探しの旅に出発した。

 お供もつけない一人での行動は、生まれて初めてだった。

 旅立ちからしばらくは、順調だった。

 山林を軽快に進む。

 宝石はなかなか見つからないが、特に困ったことはない。

 獣人特有の身体能力のおかげで、魔物に遭遇しても簡単に倒せた。

 食事は、狐の主食である小動物を捕まえればよい。

 ところが、人間の住む世界にやってきてからが大変だった。


「なんだ、あいつ?」


「頭に動物の耳みたいのがあるし、尻尾も生えてるぞ」


「魔物じゃないのかしら?」


「可愛いけど怪しいよな」


 ミサキを目にした人々は、皆恐れて距離を取る。

 普通の人間は、獣人を見たことがない。

 ミサキの衣装も珍しい。

 そのせいで、魔物の類いだと思ってしまったのだ。


 ミサキも、自分が人間に避けられていることがわかってきた。

 次第に悲しい気分になってくる。

 困ったのが食事だ。

 人里では小動物が少なくて捕まえにくい。

 人間の店で使うためのゴブリン金貨は持っている。

 しかし、店の人が、ミサキを怖がって逃げ出してしまう。


 それでも、どうにかこうにか旅を続ける。


「いたぞ!」


 武器を手にした五人の男たちが、ミサキを追ってきた。

 見た目だけは勇者っぽい冒険者パーティーだ。

 ミサキを魔物と思った誰かに退治を依頼されたらしい。

 全員、同じような簡素な鎧を着用している。


「この辺をうろついてる魔物ってのは、こいつだな」


「こんな女の魔物なら簡単に倒せるぜ」


 ランクの低い冒険者パーティーだ。

 冒険者なら、魔物と獣人の区別ぐらいつくのが普通なのに。

 だが、威勢だけはよい。


「俺たちは、冒険者パーティー『呪いの獅子』だ」


 リーダーらしき男が、剣を振りかざして叫ぶ。

 低ランクなのに、慣例に反してパーティー名をつけている。


「そなたたち、ノロ猪とは何であるこん?」


 首をかしげるミサキ。


「うりゃー!」


 呪いの獅子の一人が、斧を振り上げて、問答無用で斬りかかる。

 ミサキは、ひらりとジャンプして躱す。

 続いて、メイスを持った別の男が襲いかかる。

 これも簡単によける。


「くそっ、生意気な」


 残りの三人が、一斉に攻撃する。

 チームワークがなっていない。

 ミサキにかすりもしない。

 互いが邪魔になって、しっかりした行動ができていないのだ。

 そもそも、アタッカーだけのパーティーなので、バランスが悪い。

 盗賊と区別のつかない集団だ。


「なぜわれに戦いを挑むのであるこん?」


 ミサキは、五人の攻撃をかわしながら尋ねる。


「何をほざくか、魔物め」


 聞く耳を持たない男たち。

 出鱈目な攻撃を続ける。

 何度やっても、ミサキにはかすり傷一つつかない。


「こいつ、ただの魔物じゃないっすよ。

 全然攻撃が当たらないっす」


 男の一人が、怯えながらリーダーに言う。


「逃げるのがうまいだけだ」


 リーダーは、なおも闇雲に剣を振るう。

 ミサキよりも仲間を先に斬ってしまいそうだ。


「もう行くのであるこん」


 馬鹿らしくなって走り出すミサキ。

 男たちには追いつけない速さで林の中へ姿をくらます。


「くそっ、逃げ足の速い魔物だ。

 よし、こうなったら……」


 呪いの獅子のリーダーには、何か作戦があるようだ。



ᓚᘏᗢ



「この林に火を付けるんだよ」


 呪いの獅子のリーダーは、ミサキが入りこんだ林を指さす。

 しばらく雨が降っていないので、乾燥していて燃えやすそうだ。


「この林は、そんなに広くない。

 お前らが四方から火を放てば、すぐに燃えちまうはずだ」


 凶悪な笑みを浮かべるリーダー。


「そこまでするんすか」


「あんなわけのわからない魔物なんて、ほっときゃいいんすよ」


「どうせ大した報酬は出ないんだし」


 仲間たちは、リーダーの作戦に乗り気でない。

 割に合わない仕事など御免なのだ。

 しかし、リーダー一人が、やる気満々だ。

 自分の力を示したくて躍起になっている。

 山火事を起こしたらどうなるかまで考える頭はない。


「やると言ったらやるんだよ!」


 リーダーが一喝する。

 渋々従う他のメンバー。

 絶対的な権力を持つリーダーには逆らえない。

 マッチで林のあちこちに火を付けて回る。

 風にあおられて、すぐに火が燃え広がる。




 ミサキは、林の中をとぼとぼと歩いている。

 これからどこへ行こうか。

 変な人間がいないところがいい。

 それより、お腹がすいた。

 食べられる小動物を探そう。

 鼠とか兎とかがいればいいのだが。


 そう考えていると、焦げ臭い匂いがしてきた。

 風に乗って白い煙が漂ってくる。


「山火事こん?」


 木々の間を素早く走る。

 火の回りが意外と早い。

 全方位から煙が上がっている。

 必死に逃げる方向を探す。

 煙で目も鼻も利かなくなってくる。

 木の焼けるばちばちという音が次第に大きくなる。

 煙の向こうに赤い火が見える。

 もう迷ってはいられない。

 とにかく全速力で林を抜ける。

 途中で荷物の一部を落としてしまったが、気にする余裕はない。

 火の強いところに飛びこまずにすんだのは、偶然だった。

 林がひらけてくる。

 その先に川があったので飛びこむ。

 火の危険から免れることができた。


 川を犬掻きで泳ぐミサキ。

 燃える林から遠ざかる。

 上陸する場所を探す。

 呪いの獅子のリーダーの声が聞こえてくる。


「ちゃんと火ぃ付けたか」


「付いたと思います」


 手下の一人が答える。

 しばらくすると、他の手下も集まってきた。

 ミサキは、川の中から頭だけ出して見ていた。


 別の場所からも声もする。

 立ち上る煙に気づいた近隣の村民たちが、状況を確かめに来たのだ。


「あんたたち、冒険者の。

 なんで林が燃えてるんだ?」


 村人が、呪いの獅子の男たちに尋ねる。


「えっと、それは……」


 リーダーは、ようやくとんでもないことをしたことに気づく。

 しどろもどろになる。

 大抵の土地は、誰かが所有しているものだ。

 村の近くの山林は、村の土地であり財産なのだ。


「付け火の犯人は、その者たちであるこん!」


 ミサキが、村人たちの前に立ち、呪いの獅子の連中を指さす。

 しかし、村人たちは、突然獣人が現れたことに驚く。

 うろたえながら、ひそひそと話し合う。

 信じてよいのか迷っているのだ。

 獣人と魔物の違いがわからないので、無理もない。


 この時、呪いの獅子のリーダーは、急に悪知恵が働いた。

 いかにも英雄らしい口調で叫ぶ。


「こんな奴の言うことを信じてはいけない。

 林に火を放ったのは、この魔物だ!」



ᓚᘏᗢ



 村人たちは、呪いの獅子のリーダーの台詞を信じてしまった。

 勇者風の男が力強く言い放ったのだ。

 もっともらしく聞こえたのも無理はなかった。

 村人たち全員が、ミサキに怒りの眼差しを向ける。


「わ、われは、犯人ではないのであるこん」


 ミサキは、激しい恐怖を感じた。

 思わず、その場から逃げ出す。


「逃げたぞ!」


「追え!」


 呪いの獅子たちが追いかける。

 本来なら、ミサキの方が足が速い。

 だが、気が動転していたのと服が濡れていたせいで、足がもつれる。

 転倒したところに呪いの獅子たち追いつく。


「とうとう捕まえたぞ」


 リーダーが、うつ伏せに倒れているミサキの背中を踏みつける。


「ううっ」


 ミサキは、立ち上がれない。


「早くぶっ殺しちまいましょう」


 手下たちは、ミサキに武器を突き立てようとする。


「まあ、待て。

 ただ殺したんじゃ面白くねえ。

 魔物をいたぶって人間様の強さを示さねえと」


 リーダーは、足に力を入れ、足首をぐりぐりと回す。

 ミサキの体が、地面にめりこむ。

 手下たちも、調子に乗って何度も蹴りを入れる。


「うぐぐ」


 ミサキは、口が土に埋まって話すことができない。

 両手両脚をじたばたさせるが、五人の男の足にはかなわない。

 次第に動きが弱くなる。


「魔物を捕らえたのですか、勇者様」


 村人たちが駆け寄る。

 リーダーに踏まれたミサキを見て、感嘆の声を上げる。


「おお、なんとも奇っ怪な生き物ですなあ」


「人間のようなのに尻尾が生えている」


「こいつが火を吐いたのか」


 いつの間にか、火を吐く怪物にされていた。


「さっさと殺さないと、また何をするかわかりませんよ」


 不安そうな顔の村人が、呪いの獅子に言う。


「まあ、待ちたまえ、村の者よ。

 他の魔物への見せしめとして、目立つ場所で処刑を行うつもりだ」


 勝ち誇った表情のリーダー。

 ミサキの首根っこをつかんで、むりやり起こす。

 ミサキは、力なく項垂れている。


「こいつを村の広場に連れて行くのだ」


 ミサキを引きずって歩き出そうとした時だった。


 がぶっ。


 ミサキが、渾身の力でリーダーに噛みつく。

 歯が鋭いので、かなり痛かったはずだ。

 リーダーが怯んだ隙に全力で走り出す。

 意識がほとんどない状態で野山を駆け抜ける。

 気がつくと、麦畑の中で眠っていた。


 その後、食べ物を求めて忍びこんだのが、アレクたちと出会った家だ。

 家の人は、魔物だと思い、恐れをなして逃走。

 フェンスターの冒険者ギルドに退治依頼を出したのだ。




 以上のことを、ミサキは、要約して語った。


「そんなことが……」


 ルナは、目に涙を浮かべる。


「酷い人間もいたものだ。

 またそんなことが起こらないようにしたいな」


 アレクは、ミサキの助けになりたいと思う。

 そこへ、ルナが提案をする。


「ねえ、ミサキちゃんにあたしたちの仲間になってもらおうよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ