第94話 『ナツ神』目覚めか?
表層意識が目覚めようとしていた。
『サナ』を通じ、並行世界側の段取りを見ていた『ナツ神』は……居住の中に隠していた自分の身体から『核』を動かして、『異世界ファーム』の全貌を見れるようになったのだ。
『ハル神』を通じ、並行世界側の存在たちが整えてくれた『ベースキャンプ』なるもの。国の礎を作り変え、新たに『国造り』を始めるところは、やはり『神』が担い手となるのも当然。
今まで吸い込んできた、『宝物の種』から循環してきた活動力で『核』が起き上ってきたのなら……次は、ハル神が逆に担当していた『地底変動』のところをナツ神が整えなくてはいけない。
単純に言えば、並行世界側……藍葉たちの住む『地球サイド』に異変が生じたのを感じ取れたことからの対処だ。
あちら側では、『三富夏奈』というのがナツ神と表裏一体の存在。しかしながら、核としては別の人間でしかないので、向こうの小鳥遊美晴が気づかないのも仕方がない。
だからこそ、ハル神も『サナ』を見つけるまで相当時間をかけた。今頃は、礎を整えるためにナツ神同様に、『核』を沈めているのだろう。その場所は、おそらくナツ神のすぐ近く。固めてしまった、『ファーム内』のどこかだ。
『……こちらの育成とかを、住民たちが滞りなく出来るようにしなくちゃ。地球サイドは……ハルが支えてくれていても、今頃凍り付いているでしょうね?』
記録的な大寒波。
豪雪地帯以外も凍り付くほどの、最悪な事態。
それをニュースにさせないように、このファーム運営の一部をメディアと連携させてきたのが、あちら側の『クロニクル=バースト』の運営陣らだ。
人間たちの自律神経たちを狂わせ、『眠り』の時間を長く与えるように見せているだけ……が、操作方法もなかなかに大変だったそうだが。
この時期予測をしてきた『加東奈月』の肉体をコントロールする方も、相当無茶をしてきたらしい。『サナ』を通じて、ナツ神が得た情報たちはそれはもうめちゃくちゃでしかなかった。
『……まったく。現との境目をどこもかしこも『こちら』に押し付ける理由はわからなくもないけど。せめて、もう少し応援がほしいところだわ』
なにも、あちらでは『新年』という一大イベントの時期のはずなのに、日本を中心に『誰も起きていない』現象を広めたのはいいタイミングというべきか。瞬間的に凍り、半永続的な『夢想状態』を引き起こすのに、こちらのファームで集めてきた『ポイント還元』を一気に使い果たした。
『ハルのやりそうな手口だけど。……ちょっと、雑。向こうの私たちが『生きている』からこそ出来る手法でも、死なないように誘導くらいしているのかしら?』
していなかったら、並行する世界側の『自分たち』も生きていける保証がない。誤差が少しあるくらいで、『死』を迎える可能性は大いにある。なのに、それすらも待てないほど……『どこの』世界にも危機が訪れてしまったのか。
『いいわ。『核』がきちんと守られているのなら、私がこちら側を整えてあげる。けど、向こう側の『一部』は起きてもらわなくちゃ。えーっと、藍葉だっけ? パートナーは……ダメね。完全に、別の業務理由にして身体は寝ているわ。一瞬、無理やり起きたみたいだけど』
愛する少女のために、VRMMOの業務から無理やり抜け出したが……そちらに意識が引きずられ、身体は完全に『冬眠』状態となってしまったらしい。
とくれば、意識はその並行世界側では起きているはず。そこまで、藍葉を導いてやるところから……まずは、リンクをあちら側へ繋げてみる。
『ON.OFF……コード、ON.藍葉、小鳥遊藍葉~? 起きて~?』
サイドでは義理の姉になる予定ではあるが、一度も会ったことがないので優しくそれっぽく呼んでみたところ。
後ろの方で、ガタっとなにかが落ちてくる音が聞こえてきた。とりあえず、成功したようだ。『核』の一部がこちらに繋がったのか、振り返れば、幻影のような少女のそれがあった。
次回はまた明日〜




