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ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!  作者: 櫛田こころ


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第93話 連絡が来ない?

 年末のカウントダウンがそろそろ来ると言うのに……成樹から、連絡が来ない。


 それともうひとつ、おかしいことがある。兄の美晴も小鳥遊の家に帰ってこないのだ。年末までギリギリの業務があるにしてもおかしい。ポイ活のアプデやバグの修正はそれなりに頑張っているはずなのに、藍葉以外のモニターのために対応しているのか。


 それだったら、ついさっき送ったメッセージにどちらか気づくはずだ。いつもなら。



「……普通に使えるように、リリースさせるの大変だって左藤さんも言ってたしね」



 年末の番組も見る気が失せて、部屋で成樹から連絡が来るのを待つことにした。待っていたら来るかもしれない。カウントダウンが終わってもいい。今日は一晩中起きていてもいい日なのだから、と自分に言い聞かせて。


 仕事だから、と放って置かれる彼女の気持ちがなんとなくわかった気がするものの……淋しいものは淋しい。直接会いたいのが本音だけれど、もしかしたら車を走らせて実家に向かっていたら……とか。


 考えるだけ考え、とりあえず暇だからとポイ活の方を開くことにした、特に不具合などはないが、モニターの中でも一番彼らに近いところで仕事をしているんだと思いつつ……今から出かけることは足の関係上出来ないので、チェックイン以外の機能でポカスカ稼いではみたが。



「……つまんない。シゲくん、まだ……?」



 夜の11時過ぎから話し合おうという約束くらいはしていたのに、再会してから遅れることなどほとんどない彼がサボりなんて考えたくない。


 メッセも、着歴も美晴を含めて何回か試したが……一向に返事が来ないので不貞腐れているしかない。ベッドで横になっても着信音が全然来ないので、そろそろ寝てしまいそうだ。数時間前に食べた年越しそばでお腹がふくれて眠くなってきたかもしれない。やはり、炭水化物は油断ならない代物だ。



「……お父さんたち、まだ起きているだろうし。混ぜてもらおうかな?」



 社会人としては彼らの方が上だし、『仕方ない』と慰めてくれるかもしれない。杖を持ち、階段をゆっくり降りていくと……下の階がやけに暗く感じた。眠くて彼らの方が先に寝てしまったのか。


 考えてみれば、定年ではないものの彼らもそれなりの壮年だ。美晴が三十路近い分、歳の差のある妹の藍葉が若いだけで。


 だとしたら、戻った方がいいと部屋に引き返したときだった。


 かすかだが、着信のバイブレーションの音が聞こえてきた。走りはしないが、こけないように気を付けてドアを開け放つ。ベッドに置きっぱなしだった、スマホの画面が点滅していたので嬉しさがこみ上げてきた。


 切れてもいいように、ゆっくり近づき、画面を確認すれば相手はやはり『成樹』の文字が。スライドで通話機能をオンにすると、息切れた呼吸音が聞こえてきた。



『……すまん。待たせ、たか?』



 慌てた様子がどうしてなど、もうどうだっていい。テレビ通話にする余裕は藍葉にもなくて、『うん』しか言えず、涙と鼻水が同時に出てきた。



「……遅い、よぉ」

『ほんますまん。色々立て込んでた』

「……お兄ちゃんも出ないし。大丈夫?」

『おぅ。……最悪手前のバグと戦ってたわ。今時間見て焦った』

「……いいよ。実家には帰れそう?」

『帰りたくないが。……しゃーないし』

「帰ってあげて? おじさんたちも心配するだろうし」

『うーん。藍葉んとこのおじさんらの方が心配するじゃろ』

「そんなにうちのお父さんたち気に入ってるの?」

『そりゃそうじゃ。いつでも嫁に欲しい女の親じゃぞ』

「……ふふ」



 耳で聞き取れる声の、息切れが落ち着くのはそう時間もかからなかったが。もっと話していたいけれど、移動時間のこともあったので十分程度で通話は終わってしまった。カウントダウンなどとっくに過ぎていたし、新年の明け方には程遠いけれど。


 やっぱり、夜更かしに慣れていない藍葉には眠気が勝ってしまったので……ベッドに入るとそのまま、寝てしまった。


 寝たと同時に、『START』という音声が聞こえた気がしたが、蕩けた意識の中でまた成樹に会えたような幻影が見えたので……彼を追いかけた。


 その日から日本全土が沈黙に包まれたのは、外の国も誰も何も知らなかった。

次回はまた明日〜

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