第169話 青と黒を融合させ
『クロニクル=バースト』が危険視されたのは、奈月の容態が少し悪化し始めた頃だった。
アンチコメントからゆるやかにスタートを切り、そこからレビュー、AIを二次利用した質の悪い詐欺商法や乗っ取りなどなど。
すべて外部からのやり口だったが、奈月を筆頭に対策措置を敷くのは早かった。
役割を持つ人間らが、わずかな歪み程度に屈してはいけない。
周囲への影響があれど、奈月を中心に容態のあったとしても……役目として『予知者』でいた彼には地球を滅亡させてはならない重要任務を任されていた。
並行する同一のようでいて似て異なる世界との共有。
それらを隠しながらも、創作集団と銘打って行動していたら奇異の目で見られるのも仕方がない。
身体を壊してまで。
心と神経をすり減らしてまでも。
成し遂げようとしていた行動を認識されないように、隠れながら行動するのは骨が折れた。
今も、救急隊らによってコールドスリープのポッドに押し込まれたが、ようやく安心して『寝ていられる』場所を得たとほっとしたくらいだ。
「……いたたた。寒いけど、逆に心地いいや」
今の奈月の身体に、『どの』彼が代替わりしいるかは不明。
奈月自身もあやふやになっているから、どこがどこだかさっぱりわからない。出来るだけ、『異世界ファーム』と共有したいところだったが、あの世界よりもそろそろ現実サイドに近い方とリンクしたいところだ。
地球が青なら。
他は黒。特に、『異世界ファーム』はまっくろくろすけというくらいに黒に染まっていなくてはいけない。
地球の青をインクのようにして、少しずつ黒とまじわり合うようにしないと情報共有ができないからだ。
藍葉たちと作った曲をPVにした任務のコマンドはこの身体にも行き届いている。
なら次は、身体を仮死状態になるまで凍らせて、並行世界すべてで組み立ててきた偉業たるシステムを展開していけばいい。
地球滅亡なんてさせないために。紗夜との生活もかかっているのだから、ここから奈月は何か月かけてでも人柱となって構わない。
外界の安寧を重視するためにも、危険視される犯罪者紛いはここで一旦退場するのがいいだろう。
シナリオのストーリーでいうのであれば、幕間がいくつもあって当然。それらを繋ぎ止める本筋を書き連ねていくのは、雇ったモニターたちでもあるから藍葉も含まれて当然のことだ。
少し特別扱いしたが、学生時代の先輩たちへの恩返しついでに引き込んだまで。あの逸材をこれから育てていくのが、予知者の中で読み取れた未来の希望だ。
(最高の愛と絆。それ一組だけじゃないのを、マッチングアプリとかだなんて簡単に言わせないし、させない)
美晴と夏奈は少し強引な引き合わせだったが、藍葉と成樹のようにゆるやかな再会を望むようにはさせてあげたい。
全人類がそうとは限らない。レズやバイ、ゲイなどの性別に関する問題も多々あるように。引き離された『魂の核』が整うのはここから未来以降ずっとの課題だ。
近親婚が激しいとされていた神々の恋愛伝説はともかくとして。遺伝問題としてのそれをリアルで引き起こすわけにもいかない。だからこそ、愛を確かめ合うのは大事だ。そのマッチングアプリもどきをひとつ作って、問題視されかけたのがアンチのきっかけだったとしても。
最上の最愛を引き合わせるには、AIだけで引き合わせるわけにはいかない。
間違いからの引き合わせなど、愛情問題は特に大変だからだ。
身体に沁み込んだ意識を閉ざし、仮死状態になった奈月はVRMMOの中にログインするために切り離しを始めた。同時進行で『異世界ファーム』のリンクも共有していたので、あとは成樹らに表舞台を任せるのが無難だと決めて。
地球の中での『加東奈月』という存在を『パンドラの箱』にすべく、凍結していた氷を利用して廃病院の外側をコーティングするのだった。業者にも誰にも見つかり難いようにするため……場所は特定されても、小鳥遊藍葉以外には賞品として明け渡さないためだ。
次回はまた明日〜




