第168話 避難しようにも
夏奈は今、スマホを手にしながらも隔離室の隅っこで待機していた。
外から聞こえる、ガラス窓を割ったっかのような爆音。
看護師らが廊下で叫びながらも、患者らには部屋から出ないでと指示する声たち。
なにがなんだかで起きていることがよくわからないでいるが、空調が利きすぎるにしては暑かったり寒かったりの繰り返しが続く。それに乗じて、患者らが混乱しているのか。看護師に混じって叫んだりする声が聞こえたりもする。
だが、夏奈はそれ以上にスマホのディスプレイの中で起きている変化に、口がぽかんとするしか出来ないでいた。
「広告? ゲーム仕様?? これって……現実??」
数値のカウンターがどんどん桁数を増やしていく一方で、ポイ活内で変換できるポイントが異様な数値と言えるくらいに貯まっていくのだった。
藍葉の助けになりたい。そのために、出来るかぎりのポイ活を連続で行っただけなのだが。ある程度完了したら、外の様子がおかしくなって今に至るというわけ。自分がなにか仕出かしたとか思いかけたが、看護師らには特に注意されていないので大丈夫だろうと思った。
「……このポイント。宅配弁当以外に利用できないよね? あの世界でも魔法かなにかに利用出来たわけじゃないし」
出来ても、魔法でだいたいイメージするようなパフォーマンスを披露できるくらいだった。あの世界では。
美晴とデートをする中で、アミューズメント施設みたいなところで遊んだときに、キャストらしき登場人物らがそんな演出を振舞ってくれたのだ。
それがもし、今の現実と結びついているとしたら……自然の天災とは言わずとも、地球環境の劣悪を整備するために起こしたと言うのか。美晴の言っていた、役割を持つ人間たちがサポートする地球汚染の改善策。
その代表人物に『加東奈月』が立っているのなら、今どこにいるというのだろうか。藍葉にそれを託すべく、メールが来ても回答は特にしていない。ポイ活のチェックインをしまくったのと、半分暇つぶしに使っていたソシャゲでも頭脳ゲームをやり込んでいた。
「……うーん。外落ち着かないだろうし、ご飯も怪しいな? 病院食も遅れるとなると、差し入れが基本ないあたしって、結構ピンチ??」
日用品については叔母があらかじめ振り込んでくれた預り金で、看護師が代理で購入してくれたものの。シャワーや衛生用品ばかりで、お菓子なんかはすぐになくなった。ここ最近は購買の在庫数もほとんどないということで購入できるものも限られてきたから……アイスやポテチは禁止されるくらい。
なので、お腹が空いたら病院食が来るまで待つしかなかった。それを楽しみにポイ活に勤しんでいたら、今日は周囲がこんな感じになってしまったので……実は、昼ご飯がまだ来ていない状態。
お腹はぺこぺこだが、下手に動いてもなにも出来ないことを叫んでも意味がない。いやに冷静になれているのは、手元のスマホという端末があるおかげで外との連絡が断絶させられていないからだろう。
そろそろ、美晴からの連絡もまたほしいところだが。VRゴーグルとかから覚醒したばかりなので、SNSでもメッセージのやり取りしかしていない。今日はまだだったが、この状況を説明してもなにか解決が出来るか難しいだろう。
「ん?」
じっとしていたら、スマホから通知音が。美晴ではなく、ポイ活の連絡事項のようなもので……『新任務追加』とのバナーが出たためにタップしてみれば。
PV動画を二本流している間に、好きなポイ活任務を一定値まで制覇せよ、との内容だった。
このタイミングで、外の荒れ模様を見ても交通網が復活しているかわからないが……せめて、美晴とかがこの病院へ見舞いに来れるくらいに回復してほしい気持ちはあった。幻のようなあの世界の中ではなく、リアルタイムできちんと知りたい彼氏の存在。
なら、と、音量には気を付けながら動画を流しつつ、電子書籍の読書に勤しむことにした。
次回はまた明日〜




