第167話 災害の再来か
救急搬送していた隊員らは、こんな廃病院のどこに『コールドスリープ』なるポッドがあるのか心配になっていた。
患者のひとりをこの中に搬送してほしいと、あの病院の医師からのコールで頼まれたものの……ただでさえ、輸送が難しい屋外環境だというのに、無理な行動を任されたものだ。
しかし、凍っていた地面が急にシャーベット状になって数日ぶりだがスムーズに運転できるようになったときは、『なにかの奇跡』と思いかけたのだが。
「ここでいいのか?」
「そう、コールでは聞いている」
「まだ苦しがっている患者をだろ? どんな要人扱いなんだ?」
「とにかく、俺らができるのは搬送だけだ。行くぞ」
設備がまともに動いていると思えないので、患者である『加東奈月』を背負って連れて行くことにした。過呼吸くらいに息が荒いが、搬送されている最中もほとんど呼吸が落ち着いた様子はない。処置がそれなりに必要だと思うのに、『出来るだけなにもするな』との指示も出ているために何も出来ないのだ。
こんな乱雑に処置を行う医師なんて久々だ。精神科病棟に居たとはいえ、内科外科の簡単な処置判断もできるだずだというのに。
それでも、自分たちは下っ端の下っ端だ。バイタルとかその程度くらいの簡単な処置しか可能にしてはいけないので……仕方なく、田室第一病院の奥に運ぶことにした。
「どこだ?」
「2Dの三階……らしい」
「階段、使えるか?」
「まだ、そんな廃れてはないらしい」
隊員のひとりが患者を背負い、経路確保のためにほかの隊員が誘導していく。
消防隊員の訓練はほとんど参加していないが、男性隊員だけなので腕力などはそれなりにある。
(……軽い。こんな軽い成人男性をこんなところで、ひとりにするなど……何の意味が?)
命令に背いて動くことは簡単かもしれない。しかし、過呼吸の間に聞こえる『連れて行って……ください』の繰り返しの言葉が聞こえてからは、仕方がないとポッドのある棟へ向かうことにした。
階段はすぐに終わり、周囲は氷ではなく水浸しになっていたのだが……。
目的の病室に到着したら、そこはまさに『異空間』とも言える場所となっていた。映画か何かで見るような『科学技術の粋』で作られたかのような……機械の塊があったのだ。
「これが」
「コールドスリープ?のポッド?」
「この中に、患者を入れろと?」
その指示を完遂すれば、自分たちはここから離れなくてはいけない。しかし、『加東奈月』の安否は保証されないのではと思ったが、背負っている彼からの言葉に止むを得ずにそれらしい解除方法を見つけて、蓋を開けてやった。
「……見殺しではない、はずだ」
「ここで、迎えを待つのか?」
「そうとしか思えない。だけど」
隊員らは蓋を閉めたときにも悔やんだ言葉が口から出たが、次の救急出動の指示が出るかもしれないと救急車の方へ戻ることにした。
これは自分たちだけが知っているわけではない。なにかの計画が動いているのに巻き込まれただけ。その首謀者があの患者だとしても、どうか生き残ってほしいと願うしかなかった。
次回はまた明日〜




