第163話 やっと、ヒントをもらえた
成樹が『起き上がれた』。その事実は何よりものご褒美だと言っていい。
だけどすぐには、この家には戻ってこれないのは承知の上。藍葉が自力でなんとかたどり着ける距離に、成樹たちが匿われているかどうかもわからない。成樹からの連絡によると、都内でもかなり離れたところに移動させられたそうだ。
『悪かったな……。めっちゃ心配かけて』
「もういいよ。VRの方でも謝ってもらったし」
今でこそ、普通に通話できるようになってはいるものの、まだ本調子ではないのは精神よりも身体の方だと。本当にSF世界であるような機械の中で、半分仮死状態で寝かしつけられていたのは本人の証言でわかった。
『加東奈月』が世界各国の要人らとも契約し、現実的には『あり得ない機材』を買い取って実用化させていたのだと言う。それに、成樹や美晴以外にも何名もの『モニター』らを匿って、日本を中心とした『世界災害』をこの程度にまで落ち着かせたのも、事実としか言いようがない。
それだけのバックアップをしても、被害はかなり甚大なモノ。本人の肉体などを保険にしてでもこれで最小限だとは思えなかったが。
藍葉が出歩ける範囲だったのは事実だった。クロードと連絡を連携しまくって、この段階まで落ち着かせたのもまた事実。
そんな不可思議なことを信じて進めてくれたのは、『加東奈月』。今肉体そのものは、廃病院の『田室第一病院』にあるポッドに運ばれている最中だと成樹経由で判明しているが。
『俺があいつ叩き起こしてやりたいけど。おそらく、自力で這いずり回れるまで快復しとる気がする』
「……病弱な身体なんでしょ? あたしより大丈夫なの?」
『さあな? 別次元の『自分たち』で必死こいて動かしとるじゃろ。俺らじゃそこは関与出来ん』
「……場所わかったけど。これ、報酬ってどう受け取ればいいの?」
クロードとのやり取りで場所の特定が出来たから、そこをチェックインのスクショでメールで送信して……『解答』を待っている最中だ。
ほかのモニターたちはどう見つけたかまでは、藍葉たちにはわからない。ユニークユーザーの数は想像を超えるものを確保できても。還元されたポイントを利用して自分たちの物資確保をしている方が優先しているだろう。
しかし、『加東奈月』は自分たちになにを成し遂げてほしいのか。
人類救済なのか。
地球の保護なのか。
それぞれの子孫保護なのか。
どれにしても中途半端過ぎて意味が分からない。
だが、実際に災害が起きて地球環境がめちゃくちゃになっているのは事実でしかないのだ。それを安全なものに切り替えるためには、ここからが再スタートなのだろう。
でなければ、成樹たちをわざわざ『起こす』手段を取らない。彼らの取るべき仕事を中断させてまで、藍葉の心の安寧を確保してくれたのだから、あの陳腐な曲づくりのご褒美なのか。
とりあえず、ヒントが少ないのでそう思うしかなかった。
『奈月のことやから、盛大ないたずらでも考えてると思う。それは解答のメール来るまで待っとけ』
「うん。……体調大丈夫?」
『ちと頭痛い以外なんともない。……家んこと以外も、守ってくれてありがとな?』
「ううん。あたしが自分で動きたかっただけだから」
家族以外のために、こんなにも必死になったことはない。彼氏とは言え、一応は他人。しかもどこにいるのかもわからないのに、障がいを振りほどく勢いで行動したのも初めてだ。それくらい、トラウマを振り切って大事だと思える相手だと……この通話をしながらも理解している。
生涯を通じて、この男性を愛し抜く覚悟は、もうとっくに出来ていたのだと。
次回はまた明日〜




