第155話 お互いがお互いに
成樹はコールドスリープにもう一度入ったっきり、『起きれず』にいた。
VRゴーグルを外せないどころか、VRMMMO側の世界である『スカベンジャー・ハント』の担当NPCから意識を切り離せないため。
(奈月のど阿呆!!)
NPC側のサポートとしては追いかけているものの、肝心のプレイヤーである奈月には追い付けず。躍起になっても全く距離が縮まらない。ほかのNPCと連携を取ろうにも美晴がログインしていないのかで、ちっとも連絡がつかないのだ。
(なにしとるんじゃ? 藍葉の方か??)
藍葉はこのVRMMO側には、あの一度きり以来ログインしてこない。そもそも、成樹の自宅には予備のゴーグルはあっても最低出力のものでしかないので、藍葉には負担が大きいから使用していないのか。それをクロードが伝えていてもなんら不思議ではない。
それよりも、『イバラキ』のプレイヤーとして脱獄した奈月を追いかけているが。『タチカワ』の担当であれど、自転車とバイクでこんなにも差が大きく出るはずがない。そればかりは、ゲームワールドの特性としか言えないのだろうか。
(俺かて、仕事関係なく藍葉といっしょに居たい!! やっとカレカノになったんやぞ!!? イチャイチャとか色々したいのに!!?)
それに、結局藍葉の脚に関する人工骨手術が出来ていない。この大災害を機に、あの医師らは避難できるように『クロニクル=バースト』側で手配されているにしても……藍葉は自力で成樹の自宅にいるのだ。最後に連絡を取り合ってから五日くらいは経っているが、世界大震災くらいの被害は日本で起きていて当然。
と言っても、矮小にできるくらいに避難経路は『加東奈月』『まちゃ』『メメ』らが並行世界側で整えてくれているのも認識しているが。うちひとりのボスがVRMMOで好き勝手動いているのには納得いかないが。
『止まれ、イバラキ!!?』
声を張り上げても何の意味もないくらいはわかる。わかるが、イライラする現状せざるを得ないというか。バイクの操作も少し雑になりかけていたため、クラッシュしないように気を付けていると前方の『イバラキ』が一瞬だけこちらに振り返った。
『あ・と・で』
と、口パクで意味不明な回答をしたかと思えば。ゲーム内で使えるチート武器を使用して地面に亀裂を走らせた。
慌ててバイクを止めれば、亀裂を走らせた以外の破壊行為はない。単なる足止め、というところか。
『……やって、くれたな?』
次のイベントに向けての『インターバル』をつくるための工作。
周りにいるモブとも呼ばれる、サブプレイヤーたちはチャット機能で『どこだ?』『見つかんね』とかガヤガヤしているだけだ。プレスリリースしたばかりとは言え、VRに慣れていない者もいるから仕方ないだろう。
ここは、仕方なく『タチカワ』として演じることを選んだ。
『うっせぇ!! ガチャガチャ騒いでないで、先回り出来るルートを探して足止めするとか考えろ!!』
『『『『『は、はい!!?』』』』』
内心は藍葉に会えないことへの苛立ちが表に出ているだけなのだが、効果覿面だったようでサブプレイヤーたちは一斉に散って仕事をし出した。さて、自分はどうするかと決めても彼らと同行する気はないので……もう一度、『ドクター』に声掛けすれば藍葉と話せるのでは?と今更ながら思いついたのだが。
藍葉はまったくログインしていなかったため、『ドクター』もだがほかのNPC担当がほとんどいない状況。
これだと、『異世界ファーム』の方にログインした方がいいのか、となんとかゴーグルを外せないのかと意識を浮上させてみたが勝手に出来なかった。
(奈月がいじったんんか??)
藍葉の保護はこちらに任せ、仕事を半分任せるのに成樹を留めさせているのは。付き合いがそこそこある先輩としては容易に想像がつくので、諦めるしかなかった。
次回はまた明日〜




